西川和久の不定期コラム

第8世代Core搭載で約1kgの12.5型2in1「東芝 dynabook VC72/J」

dynabook VC72/J

 東芝は7月9日、12.5型で第8世代のCore iプロセッサを搭載し、ヒンジが360度回転する2in1を発表した。編集部から実機が送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。

4コア8スレッド第8世代のCore i5を搭載した2in1

 同社ビジネス用の2in1現行機種としては、今回ご紹介する12.5型の「dynabook VC72/J」と、13.3型の「dynabook D83/J」、2モデルが用意されている。特徴としてはどちらも第8世代Core i/vPro対応。前者はヒンジが360度回転、後者はキーボード部分が着脱式となっている。

 本連載のバックナンバーを見直してみると、これまで扱ったdynabookに関しては、15.6型か10型がほとんどで、12.5型で2in1というのはじつは初パターンだ。このパネルサイズは以前連載で書いたと思うが、筆者の好きな大きさだ(ThinkPad X2xx系が好きなので)。いつも以上に興味をそそる。おもな仕様は以下のとおり。

東芝「dynabook VC72/J」の仕様
プロセッサCore i5-8350U vPro(4コア8スレッド/1.7~3.6GHz/キャッシュ6MB/TDP 15W)
メモリ8GB/LPDDR3-2133
ストレージ256GB SSD
OSWindows 10 Pro(64bit)
ディスプレイ12.5型1,920×1,080ドット、非光沢、10点タッチ/ペン対応
グラフィックスIntel UHD Graphics 620/Thunderbolt 3
ネットワークIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.2、LTE対応SIM(オプション)
インターフェイスThunderbolt 3、USB 3.0、音声入出力、約92万画素前面Webカメラ、約200万画素背面Webカメラ(オプション)、顔認証/指紋センサー(同)
拡張アダプタ入力:USB Type-C、出力:GbE/USB 3.0/HDMI/ミニD-Sub15ピン、Type-C(電源)
バッテリ/駆動時間リチウムポリマー/約16.5時間
その他アクティブ静電ペン付属
サイズ/重量約299×219×15.4mm(幅×奥行き×高さ)/約1,099g
税別価格224,800円から

 プロセッサはKaby Lake-Rこと第8世代のCore i5-8350U。4コア/8スレッドでクロックは1.7GHzから3.6GHz。キャッシュは6MB、TDPは15Wと、強力なSKUだ。なお、本機のオプションでは、Core i3-8130Uと、第7世代のCoreプロセッサ(Core i5-7300U/Core i3-7130U)にも対応している。メモリはLPDDR3-2133の8GB。ストレージは256GB SSD。OSは64bit版Windows 10 Proを搭載。

 グラフィックスはIntel UHD Graphics 620。外部出力用に本体のみだとThunderbolt 3/Type-Cからとなる。ディスプレは12.5型非光沢の1,920×1,080ドット。10点タッチと、ワコムAES方式ペン(2,048段階筆圧検知)によるペン入力にも対応。またヒンジが360度回転し、タブレットモード、テントモード、スタンドモードなどへ変身可能だ。

 ネットワークは、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.2。LTE対応SIMはオプション。インターフェイスは、Thunderbolt 3、USB 3.0、音声入出力、約92万画素前面Webカメラ。約200万画素背面Webカメラはオプションで、顔認証/指紋センサーとは排他となる。

 加えてType-C(Thunderbolt 3)を使った拡張アダプタも付属する。こちらはGigabit Ethernet、USB 3.0、HDMI、ミニD-Sub15ピン、Type-C(電源)……と、ケーブル1本でこれだけのポートを追加することができる。

 サイズは約299×219×15.4mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1,099g。筐体はMIL規格(MIL-STD-810G)とTÜV Rheinlandの耐久テストをクリアする高耐久性だ。リチウムポリマーを内蔵し、バッテリ駆動時間は約16.5時間。30分で約7時間のバッテリ駆動「お急ぎ30分チャージ」にも対応する。税別価格は224,800円からと、少し高めだ。

パネルは非光沢。中央上に約92万画素前面Webカメラ
底面。手前のスリットにスピーカー。四隅にゴム足。後ろにファン
左側面はType-C(Thunderbolt 3)/電源込み、音声入出力
右側面はロックポート、USB 3.0、電源ボタン
斜め後ろ。結構薄いのがわかる。バッテリは内蔵式で着脱できない。上左側に約200万画素背面Webカメラ
タブレットモード
スタンドモード
テントモード
10キーなしのアイソレーションタイプ87キー 。タッチパッドは1枚プレート型。左上に指紋センサー
キーピッチは実測で約19mm。仕様上、キートップ幅15.3mm、キーストローク1.5mm。またキートップ中央に0.2mmのへこみがある
付属のACアダプタはサイズ約60×60×25mm(幅×奥行き×高さ)、重量190g、出力5V/3A,、9V/3A、15V/3A、20V/2.25A。拡張アダプタはサイズ120×45×20mm(同)、重量98g。写真からは見えない裏側に給電用Type-Cがある
本体重量は実測で1,031gと仕様より若干軽い
アクティブ静電ペンを使用中。なお、バッテリは単6電池1本

 梱包から取り出した第一印象は「軽い!」だった。筐体自体はブラックでかつ、各耐久テストをクリアしているだけあって、かなりカッチリしているのだが、その見た目に反して片手で楽々持ち上がる。実測は1,033g=ほぼ1kg。なるほど納得と言ったところ。また仕様では厚み15.4mmとなっているが、これは天板を閉じた状態。図ってみると本体側が約1cm、パネル側が約0.5cmと結構薄い。

 筐体は前面パネル中央上にWindows Hello対応(赤外線顔認証)の約92万画素前面Webカメラ。左側面にType-C(Thunderbolt 3)/電源込み、音声入出力。右側面にロックポート、USB 3.0、電源ボタンを配置。天板に200万画素Webカメラ。裏には、手前のスリットにスピーカー、四隅にゴム足、後ろにファンがある。本体側の汎用インターフェイスはThunderbolt 3とUSB 3.0たった2つ。後は拡張アダプタに任すという潔さだ。

 付属のACアダプタのサイズ約60×60×25mm(幅×奥行き×高さ)、重量190g、出力5V/3A、9V/3A、15V/3A、 20V/2.25A。拡張アダプタのサイズ120×45×20mm(同)、重量98g。写真からは見えない裏側に給電用Type-Cがある。本体が約1kgなので、両方持ち歩いても計1.3kgほどだ。ただ拡張アダプタも含めmicroSD/SDカードスロットがないのは残念なところか。

 12.5型のディスプレイは、明るさ、コントラスト、発色、視野角すべて良好。なかなかハイクオリティのものが使われている。とくに赤が綺麗だ。加えて非光沢なので目にも優しい印象。フチは狭額縁には程遠いものの、その分、キーボードの大きさが確保されている。タッチやペン入力にもスムーズに反応。ヒンジが360度回転し、タブレット、スタンド、テントモードに変身できるのは写真の通り。

 キーボードは、テンキーなしのアイソレーションタイプ87キーで3段階のバックライト付きだ。仕様上、キーピッチ19mm、キートップ幅15.3mm、キーストローク1.5mm。右端のキーピッチが若干狭いものの許容範囲だろう。またキートップ中央に0.2mmのへこみがあり、感触が良い。最近本連載で触ったキーボードの中では一番好みかも知れない。

 タッチパッドは1枚プレートタイプで加えて左上に指紋センサーがある。フットプリントの割にパームレストと共に十分面積が確保され扱いやすい。

 ノイズや振動は試用した範囲ではとくに気にならなかった。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると、キーボードの上の部分とパネルの下側(ヒンジ側)に熱を持つ。サウンドは、あと数歩パワーが欲しいところだが、この手のビジネス用としては鳴る方だ。左右スピーカーに幅もあるので、ステレオ感もそれなりにある。

 総合的にパネルサイズが12.5型、ガッチリしているにもかかわらず1kgと軽量、非光沢で綺麗なディスプレイ、打ちやすいキーボードで且つバックライト付き、しかもハイパワー…筆者としてはかなり好みのマシンだ。ただ価格が価格なので手は出ないが(笑)。

約1kgでハイパフォーマンスな上にBBenchで15時間以上!

 OSは64bit版のWindows 10 Pro。4コア8スレッドのCore i5、メモリ8GB、ストレージはM.2 SSDなので快適に作動する。筐体が軽い2in1は非力なマシンが多いだけに、一見あまり速く見えないが、操作するといい意味で「え!?」と言う感じだ。

 初期起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面。作る/遊ぶのグループ下段にあるタイルがプリインストールとなる。デスクトップは壁紙の変更と左側にウィルスバスターとEdgeのショートカットを配置。

 ストレージは、256GB M.2 SSDのSAMSUNG「MZNLN256HAJQ」。C:ドライブのみの1パーティションで約221.88GBが割り当てられ空き198GB。Wi-FiとBluetoothはIntel製だ。今回手元に届いたのはSIM非対応モデルだった。

 拡張アダプタに備わっているEthernetは確認したところ、「Realtek USB GbE Family Controller」が使われていた。

スタート画面(タブレットモード)は1画面。作る/遊ぶのグループ下段にあるタイルがプリインストール
起動時のデスクトップ。デスクトップは壁紙の変更と左側にウィルスバスターとEdgeのショートカット
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージ256GB M.2 SSDのSAMSUNG「MZNLN256HAJQ」。Wi-FiとBluetoothはIntel製。手元に届いたのはSIM非対応モデル。前面と背面にそれぞれWebカメラ
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約221.88GBが割り当てられている

 プリインストールのアプリケーションは、「dts Studio Sound」や「つながれたThunderboltデバイス」、「ワコムペン」などのシステム系と、手書きノートをイメージした同社独自のビジネスアプリ、「TruNote」、「TruNote Clip」、「TruCapture」、「TruRecorder」、「TruNote Share」。

 画面キャプチャからもわかるように、TruNoteを中核として、クリップ、キャプチャー、レコーダー、共有などの機能が用意されている。

TruNote(1/2)
TruNote(2/2)
TruCapture
TruNote Clip
TruRecorder
TruNote Share
dts Studio Sound
つながれたThunderboltデバイス
ワコムペン(1/2)
ワコムペン(2/2)

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R15、CrystalDiskMark、BBench。結果は以下のとおり。

PCMark 10 v1.0.1457
PCMark 10 Score3,655
Essentials7,958
App Start-up Score10,664
Video Conferencing Score6,749
Web Browsing Score7,004
Productivity5,886
Spreadsheets Score7,074
Writing Score4,898
Digital Content Creation2,831
Photo Editing Score3,330
Rendering and Visualization Score1,851
Video Editting Score3,683
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.03,268
Creative Accelarated 3.03,416
Work Accelarated 2.04,677
Storage4,981
3DMark v2.4.4264
Time Spy404
Fire Strike Ultra277
Fire Strike Extreme528
Fire Strike1115
Sky Diver4,461
Cloud Gate8,324
Ice Storm Extreme50,274
Ice Storm69,353
CINEBENCH R15
OpenGL49.07 fps
CPU520 cb
CPU(Single Core)153 cb
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード549.580 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト532.845 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード400.071 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト348.880 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード217.340 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト184.695 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード33.507 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト79.921 MB/s
BBench(ディスプレイの明るさ0%、電源モード:バッテリー節約機能)
バッテリ残量2%まで15時間17分31秒

 各スコアはさすがに4コア8スレッドのCore i5といったところ。12.5型のこのタイプではかなり高速。ビジネス用としては十分(以上)のパフォーマンスだ。

 バッテリ駆動時間は仕様上約16.5時間。BBenchを使った実測でも残2%でなんと15時間以上とかなりのスタミナ。ただ輝度0%でも見えるには見えるが、実質25%以上で使うことを考えるともう少し短くなる可能性もある。とは言え、12時間をはるかにオーバーする駆動時間は魅力的と言えよう。

 「お急ぎ30分チャージ」=30分充電で約7時間駆動は、一度バッテリを放電した後、30分充電したところ、43%まで復活した。BBenchから逆算すると約6.5時間となり、ほぼ仕様とおりだった。

 以上のように東芝「dynabook VC72/J」は、12.5型で第8世代Core iプロセッサを搭載し、メモリ8GB、ストレージ256GB SSDを搭載、ワコムAES方式ペンやオプションでLTE対応、各種耐久テストをクリアした2in1だ。

 重量約1kgでこのパネルサイズはモバイルPCとして非常に扱いやすく、さらにバッテリ駆動時間が軽く12時間超え。なかなか魅力的な1台に仕上がっている。

 価格が高めであるものの、仕様上気になる部分はなく、dynabookファンのみならず、モバイル用途はもちろん、拡張アダプタを使いデスクトップ的にも十分活用できるPCを探しているユーザーや企業にお勧めしたい1台である。