西川和久の不定期コラム

タッチパネル付液晶一体型ネットトップ「ASUSTeK Eee Top」



 タッチスクリーンを搭載したネットトップ、ASUSの「Eee Top 1602」が4月4日から発売開始となった。前回の「DELL Studio One 19」とは違い、CPUにAtomを使い、多くのコンポーネントはネットブックと同じとなる液晶一体型PCだ。

 日頃Eee PCを使っている筆者としては、発表当初から興味があったので、編集部へお願いした。そして製品版が届いたので早速ポートしたい。


●液晶一体型にワイヤレスのマウスとキーボード

 ASUSと言えばEee PCを連想するため、箱は小さいイメージを持つが、このEee Topは15.6型ワイド液晶を使っている関係でそれなりに大きく、パッケージサイズは520×150×440mm(幅×奥行き×高さ)だ。とは言え本体重量の約4.3kgにちょっとプラスアルファした程度なので、ショップで購入しても十分ハンドキャリーできる。本体の色はホワイトとブラックの2種類あり、今回届いたのはご覧のようにホワイトモデルだ。簡単に仕様をまとめると以下の通りとなる。

・OS Windows XP Home Edition SP3正規版
・CPU Atom N270(1.6GHz)
・チップセット Intel 945GSE Express
・ディスプレイ タッチスクリーン式15.6型ワイド光沢液晶/1,366×768ドット(アスペクト比16:9)
・メモリ 1GB/SO-DIMMスロット×2(使用済みスロット×1)
・HDD 160GB(光学ドライブ無し)
・インターフェース ワイヤレスマウス&キーボード、USB 2.0×6、130万画素Webカメラ、SDカード/メモリースティック対応スロット、音声入出力
・ネットワーク Gigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n(ドラフト2.0)無線LAN
・サイズ 407.4×42.5×336.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量約4.3kg
・価格 64,800円

 この仕様からもわかるように、多くの部分はAtom N270を搭載したネットブックと共通だ。異なるのは、形状に加えて、液晶パネルのサイズ(+タッチスクリーン)、解像度、ワイヤレス式のキーボードとマウス、USBポートの数、そして有線LANがGigabit Ethernetとなる。つまりネットブックの主要コンポーネントをほぼそのまま一体化PCに組み込んだイメージがこのEee Topだ。Atom 230(TDP 4W)を使わずにN270(TDP 2.5W)を使ったのは冷却の関係だろう。

シンプルなデザインで電源ボタンや明るさ、音量などを調整するボリューム、スピーカーなどがわかりやすく配置されている裏にはGigabit Ethernet、USB×3、電源入力、音声入出力、USB×1と並ぶ。ハンドルがあるので室内での移動も簡単だ左側には、SDカード/メモリースティック対応スロットとUSB×2。右側には何も無い。光学ドライブは非搭載
USBのワイヤレスアダプタ、キーボード、マウス。ワイヤレスユニットが内蔵ではなくUSB接続となる。USBポートが6つあるので特に問題は無いだろうACアダプタは19V/3.42A。Eee PC用の12V/3Aより若干出力が大きい。ACケーブルとのコネクタ部分はミッキータイプだインテリア性を高めたというブルーLEDライト。写真の状態が最大。右下の「Eee Manager」を使って明るさを調整できる

 まず机の上に置いた感想としては、非常に収まりが良く、そしてキーボードとマウスがワイヤレスなので手元はスッキリ! 液晶パネルのサイズが15.6型ワイドと小ぶりであるものの、逆にそれがパーソナル感をかもし出している。デザイン的にも安っぽい部分はない。ワイヤレスのアダプタがUSBで外付けというのは若干興醒めするが、USBポートが6つあるので、不足しないだろう。何かの拍子に本体が倒れた時に、USBアダプタの根元から折れそうな気がするのは考え過ぎか。

 触りだして一番驚いたのは「音がいい」こと。もちろんオーディオ機器レベルではないが、このクラスでこれだけの音質なら文句無し。出力も十分あり、最大にすると煩いほど。キーボードとマウスの感触も悪くなく、スタイラスペンはキーボードの左側に収納できるので、紛失も少ないだろう。気になるノイズ、振動、熱に関しても皆無。カタログで「26dBの静音動作」、「平均消費電力30Wの省エネ設計」となっているのもうなずける。CPUにN270を使った効果が十分現れている証拠といえよう。なかなか良くできたシステムだ。

 左の写真はその他の付属品。ユーザーマニュアル、リカバリーメディア、そして液晶パネルを拭くクロス。Quick Start Guideは英語のままであるが、1枚しかも片側のみの簡単なもの。絵が中心なので特に問題は無いと思われる。

 残念な点があるとすれば、仕様的にはSO-DIMMスロット×2(使用済みスロット×1)となっているが、本体の裏をご覧頂ければわかるように、メモリやHDDへ簡単にアクセスできない。

 パネル全体を外せば何とかなるのだろうが、交換と増設はほぼ不可に近いと考えた方がよい。同社のHP上にも「メインメモリ交換/増設は行なえません。また、サポートセンターにおいての交換/アップグレードサービスは行なっておりません。」と書かれている。従って購入時の構成のまま使い続けることになる。実にもったいない話だ。ASUSのネットブックは、簡単にメモリやHDD(SSD)へアクセスできる機種がほとんどだっただけに、何故Eee Topだけこのような仕様になったのか不思議だ。是非とも改善をお願いしたい。

●タッチスクリーン式液晶パネル

 このEee Topの操作は、「通常のWindowsをそのまま使う」(画面左)モードと「Easy Mode」(画面中央/右)と大きく別けて2パターンあり、更に補助的に「Eee Bar」(画面左参照)がある。もちろん「Easy Mode」と言っても仕掛け的には難しいものでなく、単にメニュー式のアプリケーションランチャーがWindows上で全画面表示されるだけだ。主にマウスを使い普通にWindowsを操作するなら前者、タッチスクリーンを多用するなら後者となる。またデル「Studio One 19」もそうだったが、タッチスクリーンでの操作を想定してか標準のテーマではタイトルバーなどが通常より太く設定されている。

 タッチスクリーンの感度はあまり高いものでなく、例えばスタイラスペンを使って普通に文字を書こうとすると追尾しない。少しのんびり目に扱うのが吉だ。指紋跡は液晶パネルが明るい時は気にならないが、暗くなると結構目立つ。付属のクロスでまめに掃除した方がいいだろう。

横一列に並んでいるアプリケーションランチャーが「Eee Bar」スライド式に画面の端に収納することができる「Easy Mode」の画面。タブで「コミュニケーション」「エンターテイメント」「ビジネス&スタディ」「ツール」の切り替えができるソフトウェアキーボード。左下にあるのはマウス、キーボードの状態、CapsLockなどのステータス表示パレット

 右側の画面、「ビジネス&スタディ」にある「Eee Memo」と言うアプリケーションがなかなか面白い。タッチスクリーンを前提としたアプリケーションで、通常は時計を表示、ページをめくるように画面をなでるとメモ帳の画面が現れる。言葉で書いてもイメージしにくいと思うので動画で撮影した。他のタッチスクリーン操作も含めご覧いただきたい。

【動画】タッチスクリーンの操作例
●使い勝手

 ベースがAtom N270にIntel 945GSE Expressチップセット、2.5インチHDD、メモリ1GBのWindows XPなので、多くのネットブックと速度的には同等だ。とりたて速いわけでも遅いわけでも無い。ただ画面解像度が1,366×768ドットで縦方向に768ドット確保できるのは非常に大きく、Webを見るにも狭い感じはしない。また、15.6型ワイドと言うこともあり、パネルと眼のとの距離を考えればちょうど良いパネルサイズと解像度のバランスだ。光沢タイプなので映り込みはそれなりにあるが、強烈に映り込む程ではない。

 無線式のキーボードとマウスは反応も良く数m離れても操作可能だ。また操作中何かの拍子で切れることもなく快適に使える。筆者はここ数カ月Bluetoothのキーボードとマウスを使っているものの、たまに切れたり一瞬反応が鈍かったり……。キータッチなどそのフィーリングはともかくとして、少なくとも無線と言う意味ではこちらの方が上だと思う。

Windows起動直後の使用メモリは331MB。1GBなのでまだまだ余裕がある。Hyper-ThreadingはONHDBench。Atom N270に2.5インチHDDを搭載したネットブックと同等の速度になっているCrystalDiskMark。HDDには「SEAGATE ST9160310AS」が使われていた
Soft Stylusの手書き入力。付属のスタイラスペンを使い手書きで「西」を入力した結果タッチパネルの設定。補正は画面上に表示される罫線上の9ポイントを指定する方式だ比較的大きいプリインストールのアプリケーション。OperaとStarSuite 9

 160GBのHDDは、Cドライブに40GB(NTFS/33GB空き)、Dドライブに104GB(NTFS)、リカバリーに5GB(FAT32/別途リカバリーメディアも付属)、EFIに31MB割り当てられている。このパーティションの切り方はEee PCと同じ構成だ。しかし、DドライブへMy Documentを移動するような設定にはなっておらず空のまま。初心者をターゲットにするのなら、工場出荷状態で一工夫欲しい。

 DVDドライブを搭載していないのは残念だが、試しにUSBでDVDドライブを接続、ビデオを再生してみた。このEee Topには「Eee Cinema」と言うアプリケーションがプリインストールされているため別途再生用アプリケーションを用意する必要はない。コンテンツが16:9だとちょうど全画面となり、改めて16:9の良さを感じることができる。ただ逆に4:3だと両端が大幅に余って逆に損した気分に……。Windowsの操作環境も含め、この16:9がPCに最適かは、現時点で総合的に考えると微妙なところか。

 デバイスマネージャの主要部分を開いた状態がこの画面キャプチャだ。一般的なAtom+945GSEの構成なのがわかる。唯一異なる部分は、NICに「RTL8168C」が使われ、Gigabit Ethernetになっている点だ。これならNASを接続してもストレス無くファイルなどのやり取りができる。ただこのEee Topの使われ方を考えると、「ケーブルは電源のみ、他は全てワイヤレス」が大多数と思われるため、宝の持ち腐れになる可能性が高い

 インテリア性を高めたというブルーLEDライトは、比較的上品な発光で常時ONでも嫌な気はしない。Eee ManagerでOFF/低/中/高の設定ができるので好みの明るさに合わせばいい。電源ボタンのLED、HDDアクセスLEDなども同じ色が使われデザイン的な統一感も良い。他の細かい部分を見てもデザインには拘りを感じ、安価な分、雑と言う印象は一切無い。

 このEee Topを使って1つ思ったのは「バッテリを搭載すればもっと便利かも」と言うことだ。主要コンポーネントがネットブックと同じであれば数時間程度のバッテリ駆動は十分可能なはず。設置場所を移動する時いちいちシャットダウンする必要も無く、(最近は滅多に無いが)停電でもシステムは落ちない。Core 2 DuoなどAtomプロセッサ以外の高性能CPUを搭載した液晶一体型PCが多い中、バッテリ駆動OKを売りにして差別化しても面白いのではないだろうか。

●総論
移動も楽々! でも少し重い

 非常にスマートに可愛くまとまっているEee Top。自宅でネットや音楽、動画の再生を中心に使うなら特に不満もなく扱えるのは、ネットブックでも証明済みだ。またタッチスクリーン搭載でこの価格だと場合によっては業務用途で使われる可能性も十分考えられる。

 惜しいのはメモリとHDDの交換が出来ないこと。加えて筆者としては、これでDVDドライブが付いていれば……と思うのは無いものねだりか。いずれにしてもASUSの液晶一体型ネットトップ第一弾として十分魅力ある製品に仕上がっていると言えよう。

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(2009年 4月 9日)

[Text by 西川 和久]