2009 International CESレポート【ASUSTeKプレスカンファレンス編】 ASUSTeK、将来のEeeソリューションをCESでデモ
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ASUSTeK Computer会長のJonney Shih氏。手に持つのはCESで発表された512GB SSDを搭載することができるEee PC S121 |
会期:1月8日~11日(現地時間)
会場:Las Vegas Convention Center
Sands Expo and Convention Center/The Venetian
2008年、ワールドワイドで最も勢いのあったPCベンダと言えば、ASUSTeK Computer(以下ASUS)だったことは衆目の一致するところだろう。1月に国内販売が開始されたEee PCは、瞬く間に日本市場も席巻し、ネットブックブームの立役者となった。そのASUSがCESで記者会見を開催し、今後6カ月の間にリリースを予定している複数の製品を参考展示。採用した新技術を公開した。
また、Eee PC S101の上位機種として、Menlowプラットフォームを採用した「Eee PC S121」を発表し、その最上位グレードには512GBのSSDを搭載することなどを明らかにした。
●急速な成長を実現したASUSが2009年も新しいイノベーションを提供していく
ASUS 会長のJonney Shih氏は、これまでのASUSを振り返り「当初台湾で創業した時には社員数人の小さい会社だった。それが今や米国ドルで220億ドル(筆者注、日本円で約2兆円)の売り上げを実現するまでになっている」と述べ、ASUSがここ10年で急速な成長を遂げたことをアピールした。さらに、「昨年はEee PCのおかげで大きな躍進を果たすことができた。特に2008年の第3四半期には前年比166%の成長を果たし、世界のノートブックPC市場で第5位のシェアを獲得した」と、昨年のASUSが非常に大きな成長を遂げ、その最大の要因がEee PCであったと振り返った。
Shih氏はこの成功を次へ続けるため、「ASUSはエンジニアオリエンテッドな会社で、これからもEee PCが実現したようなイノベーションを提供していきたい」と、引き続き新しいイノベーションをエンドユーザーに提供していくと説明した。その中で、「今年(2009年)にASUSが実現するイノベーションは、モバイルコンピューティング、タッチベースコンピューティング、シェアードコンピューティングという3つの方向性を持っている」と述べ、それに沿って実際に開発中の製品などを見せながら説明した。
ASUSのここ十年の売上高の推移。特にここ数年で急速に伸びたことがわかる | 2008年のワールドワイドのノートPC市場。ASUSが急速に伸張したことがわかる | ASUSの今年実現したい3つの方向性は、モバイルコンピューティング、タッチベースコンピューティング、シェアードコンピューティング |
●いち早く512GB SSDを搭載したネットブックEee PC S121を製品化へ
モバイルコンピューティングという方向性の中で紹介されたのが、今回唯一正式発表となったEee PC S121(以下S121)だ。S121は、10月に台湾で発表されたEee PC S101の後継となる製品で、ハイエンドなEee PCの流れを汲む製品となる。サイズは297×210×23~26mm(幅×奥行き×高さ)で、4セルバッテリー込みの重量は1.45kgだ。
その最大の特徴は12.1型のワイド液晶ディスプレイを搭載していることだろう。これまでのASUSのEee PCでは10型のS101などが最大の解像度になっていたのだが、この製品ではそれを超える12.1型のパネルを採用している。ただし、10型以下というIntelの“ネットブック規定”から外れることもあり、CPUに関してはN系のAtomではなく、Z系のAtom(本製品ではAtom Z520)が採用されている。それに併せてチップセットもIntel SCH US15Wになっており、従来のS101などとは大きく異なる仕様になっている。
OSに関して、デモ機にはWindows Vista Home PremiumとWindows 7が搭載されていたが、配布されたプレスリリースによれば、Windows Vista Home BasicとWindows XP Home Edition、Linuxとなっているため、HDDが160GB、SSDが16GB以下であるSKUのOSに関してはULCPC版のWindows Vista Home BasicとWindows XP Home Editionである可能性が高い。
Shih氏によれば「S121ではネットブックとしても、ノートPCとしても世界で初めて512GBのSSDを採用する」とのことで、いくつかあるSKU(発表会では具体的には明らかにされなかった)の中に512GBのSSDを搭載したモデルがあることが明らかにされた。
なお、Shih氏によれば512GB SSDを搭載した最上位SKUの価格は1,649ドル(日本円で約16万円)程度であることが明らかにされている。他のSKUの価格は公開されていないが、スペック的にはDellのInspiron Mini 12の対抗製品となるので、そちらと同じような価格体系になるのではないだろうか。
システムのプロパティ。デバイスマネージャはロックがかかっていて確認することができなかった | 本体右側に用意されているポート類 |
10型のEee PCとの比較。液晶の大型化に伴いサイズも大きくなったが、薄くなった。またキーボードやタッチパッドが大きくなっているのもわかる | 本体の左側に用意されているポート類 |
【表1】Eee PC S121のスペック表(ASUS社が公開したものより作成)
CPU | Intel Atom Z520(1.33GHz) |
メモリスロット | 1(DDR2-533 SO-DIMM、最大2GB) |
ディスプレイ | 12.1型ワイド液晶 |
ストレージ | 1.8インチHDD/SDD(SATA) |
光学ドライブ | 外付け(オプション) |
ビデオカメラ | 内蔵1.3Mピクセル(マイク付き) |
無線 | IEEE 802.11n+Bluetooth |
イーサネット | 1000BASE-TX |
サイズ | 297×210×23~26mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 1.45kg |
OS | Windows Vista Home Basic |
Windows XP Home Edition | |
GNU Linux |
●PCでもタッチUIに対応した製品を開発中
2つめの方向性として紹介されたのがタッチベースコンピューティングだ。iPhoneの成功もあり、デジタル機器の世界ではタッチパネルによる新しいユーザーインターフェイス(タッチUI)が流行になりつつあり、それは携帯電話だけでなくPCの世界にも大きな影響を与えつつある。実際、MicrosoftはWindows 7の重要な機能の1つとして、タッチUIを挙げており、ノートPCや液晶一体型PCなどでタッチパネルを搭載した製品が増えつつあるのが現状だ。
ASUSが今回公開したのは、Eee PC T91という製品だ。ただし、タッチパネルのデモにこの製品は利用されず、実際に利用されたのはN20というすでに発表済の12.1型液晶を搭載したモデルだ。MicrosoftのVirtual EarthやASUS独自のタッチ対応アプリケーションを利用したデモが行なわれたが、ASUS独自のタッチ対応アプリケーションの方は開発中のようで、途中でアプリケーションがクラッシュしてしまうトラブルが発生した。
さらにASUSはM50というノートPCを公開した。M50のタッチパッド部分は、別のタッチパネル液晶となっており、そこはARMアーキテクチャのCPUを持ち、メインのCPUなどに電源が入っていなくても小さな独立したコンピュータとして動作させることができる。そこではウィジェットを走らせることや、動画の再生などが可能で、動画はメインのディスプレイ部分に表示させることなどが可能であるという。
また、同じように別の液晶を搭載した製品として、Eee Keyboardと呼ばれるコンセプトモデルを公開した。これは、キーボードの下部にCPUやメモリ、ストレージなどのコンポーネントを実装し、Ultra Wide Band(UWB)を利用してHDMI端子にディスプレイ出力を飛ばすという仕組みを利用したPCだ。M50と同じように、ARMアーキテクチャのCPUを内蔵して独立して動作するタッチパネルディスプレイを備えるだけでなく、HDMI端子を備えたPCで動画などを再生したりという使い方が可能になっている。
このほか、Eee Topと呼ばれる液晶一体型ネットトップを紹介した。Eee Topはすでに昨年の11月に概要が発表されていたこともあり、特に目新しくはないが、実機が公式の場で公開されたのは初めてで、Eee Topを利用したタッチUIのデモなどが行なわれた。
Shih氏によれば、タッチコンピューティングは次世代のUIになるとのこと | M20を利用して、Virtual EarthのズームをタッチUIで操作しているところ | 参考展示されたEee PC T91、コンバーチブルタイプのタッチパネルPC |
Eee PC T91のスペック。8.9型のタッチパネル液晶、CPUはAtom Z520、OSはWindows XP Home EditionでTVチューナーとGPSが内蔵されている | Eee PC T91のキーボードとタッチパネル部 | 本体の左側面 |
本体の右側面 | 背面と液晶回転部 | M50のタッチパネル部に埋め込まれた液晶ディスプレイ。ARMベースのCPUを内蔵しており、PDAのように動作させることができる |
ファイラーから、ミニ液晶部分のOSはWindows CEベースであることがわかる | 選択した動画ファイルをメインの液晶を利用して再生できる。この時、PC側のコンポーネントは停止しているので、低消費電力で動作させることができる | Shih氏が手に持っているのがEee Keyboard |
Eee KeyboardはUWBでHDMI端子に画像データを転送できる | やはり小型の液晶を備え、タッチ操作ができる他、PCとして利用する際にはタッチパッドとして利用できる | 背面端子部。ACアダプタ端子の他、ミニD-Sub15ピン、USBといった端子が見える |
液晶一体型ネットトップになるEee Top | Eee Topの背面 | Eee Topもタッチパネルを備えており、タッチUIでの操作が可能 |
Eee Top向けに開発されたタッチUIのアプリケーション |
●今回公開された製品の多くは今後3~6カ月の間に投入する予定
最後にShih氏はシェアードコンピューティングの方向性についてふれ、新しく2人のユーザーで同時に使えるPCのコンセプトなどを公開した。折り紙から思いついたというそのボディは、2つに分離して使うことも可能だし、合体させて1つのPCに2つのキーボードという状態で使うなど、さまざまな使い方ができるのだという。ただし、今のところは、コンセプトを考えている段階ということで、会場にコンセプトモデルのモックは展示されていたが、実際に動作するというものではなかった。
今回ASUSは多数の製品を参考出品したが、価格が明らかにされたのはEee PC S121だけで、出荷時期が明らかにされたのもEee PC S121の今月末に限られた。他の製品に関しては「今後3~6カ月以内に投入する予定だ」(Shih氏)との通り、3月に開催されるCeBITや6月のComputex Taipeiあたりがターゲットであることを伺わせた。このため、今回の発表はあくまで参考展示という形での、デモンストレーションということなのだろう。
シェアードコンピューティングの方向性を目指して試作されたPC | 折り紙からできた発想なのだという | 折りたたみ型のコンセプト |
このように分離しても使える | 合体して二人で共同作業などにもつかうことができる | 現時点ではコンセプトのモックで、キーボードなどが光っているだけだった |
□2009 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
□ASUSTeKのホームページ(英文)
http://www.asus.com/
(2009年1月8日)
[Reported by 笠原一輝]