第23回「電子部品人形劇『白雪姫と7色のLED』」
作・乙幡啓子



 今回はすべて乙幡啓子さんの手による写真と文章でお届けします。

 最近になって電子工作に興味を持ち、あれこれいじっては何か達成できたり、逆に何がどうなっているのかさっぱりわからず投げ出したり、という日々を送っている。

 制作に行き詰まって、ふと目の前に雑然と撒かれた電子部品どもを眺めるとき、これらが人間のように思えてくることがあるのだ。例えばこんな風に……。

~ 白雪姫(スチロール・コンデンサ)と7色のLED ~

「私スチロール・ホワイト(Snow White)」。“ス”しか合ってないけど

 誘電体のフィルムが雪のように白く光ってかわいらしい、白雪姫というお姫様がいました。

森の中のお花畑(Lilypad Arduino)を駆け回って遊ぶのが大好き

 ある日、新しいおきさき(アルミ電解コンデンサ)がお城にやってきました。おきさきは魔法の鏡(スピーカー)を毎日覗いては、同じ質問をしていました。

「おお、私は美しい。鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰じゃ?」。凸面鏡だけどこれでいいのだろうか
鏡「ソレハアナタデス! That's You!」。どこかで見たような文

 ところがやがて、鏡はこんな返事をするようになります。

「コノヨデ イチバン ウツクシイノハ シラユキヒメ! ソノウエ 高精度デス!」
「おのれ、白雪姫め」

 おきさきは大いに怒り、白雪姫をお城から追い出すことにしました。

「アマリ タイオンヲアゲルト ブヒンジュミョウガ チヂマリマス」
かわいそうな白雪姫は、あてどなく森をさまよいました。歩き疲れ、精根尽き果てようとしたそのとき、かわいい1軒の家を見つけました
「かわいいおうち! ベッド(PICマイコン、タイマーIC)も小さいわ」
疲れ果てていた姫は、ベッドを寄せ集めてその上に寝てしまいました

 やがて日も暮れ、この家の住人「7色のLED」たちが仕事から戻ってきました。

「ハイホー、ハイホー!」。これが撮りたかった

 家に入ってびっくり! スチロールコンデンサがICの上に寝ています。いえ、白雪姫がベッドの上に寝ています。

LED「君は、誰だい? 」
姫「ハッ! ごめんなさい……」

 LEDたちは姫を囲んで、身の上話を聞きました。

LED「そんなことなら、僕たちと暮らせばいいよ!」
姫「ありがとう……」
明かり当番は日替わりで。今夜は白キャップのLED
「アハハ」「ウフフ」。木を切ったり洗濯したり踊ったり電気蓄えたり光ったりして暮らします

 さてお城では、今日もおきさきが魔法の鏡に問いかけていました。

既出なのでダイジェストで「おのれ、白雪姫」

 恐ろしいことを思いついたおきさきは、おばあさん(トロイダルコイル)に化けて、白雪姫に会いにいきました。姫に毒リンゴを売りつけるために……。

突然トロイダルコイルを採用したのは、単に顔が悪人ぽかったから
おばあさん「おやそこのお嬢さん、リンゴはいらんかえ」
姫「あらおいしそう」
リンゴらしく丸くつるっとした部品を探したが、赤いのがなかった。どう見てもミカン
「おいしそうだから今いただきましょう。ぱっくり」
「ああっ!」。たぶんショートか何かが生じた!

 毒リンゴをかじった白雪姫はその場に倒れ、死んでしまいました。7色のLEDたちは嘆き悲しみました。

「ウエーン!」「オーイオイオイ!」。姫はお棺(電池ボックス)に納められました

 お葬式の最中、隣の国の王子様(コイル)が通りかかりました。

王子様「おお、いったいどうしたのだ?」。馬(可変型レギュレータ+タイマーIC)にさっそうとまたがって
LED「じつはかくかくしかじかで……」
王子「なんと美しい人(コンデンサ)だ」
「お別れのキスを……」
「バチッ!」(回路復活)
部品の相性がよかったのか、王子様のキスで白雪姫は生き返りました

 そして王子様は姫を自分の城に迎え、末永く幸せに暮らしましたとさ。

~おしまい~

 電子工作初心者のため、部品の特性をすっとばして「見た目」だけで構成しました。ところどころに出てくる知識は専門書を逐一調べて書いてます。大目に見てください。

作業風景。ちまちま、ちまちま……