モバイラーが憧れた名機を今風に蘇らせる

第3回

ビクター「InterLink XP」

~隠れた銘機はネットブックの祖先だった!?

InterLink XP。壁紙は、イメージキャラクターを務めた菊川怜さん

 x86プロセッサが今ほどモバイル寄りに最適化されていなかった2000年代初頭、モバイルと性能は完全に相反する要素だったと言っても良い。メインストリームに耐える性能を追求しようとすると、重量やバッテリ駆動時間が犠牲になり、その逆も然りであった。

 Transmetaは2000年に、モバイルに最適化したx86互換CPU「Crusoe」を市場に投入した。2003年頃まで国内メーカーから多数の搭載モデルが発売され、強いニーズがある国内のミニノート市場において、Crusoeはサードパーティとしてはかつてないx86互換プロセッサシェアを握り、B5サイズ未満のミニノートは一世を風靡したと言っても過言ではない。本連載の1回目の「Libretto L2」と、2回目「バイオU」も、例に漏れずCrusoeを搭載していた。

 しかしご存知の通り、Crusoeの性能は芳しくないものであった。先述の通り、性能とモバイル要素は相反するものだが、Crusoeはその問題が顕著に露呈したプロセッサだったと言える。これは当時のモバイラーを悩ませたに違いない。

高性能を実現したInterLink XP

 「InterLink XP」はシリーズ名であり特定モデル名ではないため、まずはシリーズ全体の歴史について紹介したい。2002年6月に日本ビクターが投入したInterLink XPシリーズは、ミニノートPC市場におけるTransmetaのシェア拡大に歯止めを掛けた、Intelの反撃モデル第1弾であるとも言える。

 初代InterLink XPの最大の特徴は、本体サイズが225×152×28~29.5mm(幅×奥行き×高さ)というA5サイズであるにもかかわらず、メインストリームとしても十分な性能を持つIntelの超低電圧版Pentium III-M 800MHz(上位のMP-XP7210にて。下位のMP-XP3210はCeleron 650MHz)を搭載したことだ。

 これはIntelプロセッサを採用したWindows XP搭載PCとしては、当時世界最小であった(IntelでなければバイオUが世界最小)。Crusoeの性能がボトルネックで、ミニノート購入を躊躇していたヘビーモバイラーにとって、まさに福音のモデルだったと言えるだろう。

 性能面でもモビリティ面でも満を持して投入さいれたInterLink XPシリーズだが、歴史はそう長く続かなかった。2002年6月から2004年8月までという2年間、合計11モデルだけが投入され、販売終了となっている。系譜は下記の通りだ。なお、DVDドライブ内蔵の「InterLink XV」シリーズは省いてある。

【表1】InterLink XPシリーズの系譜
モデル発売時期CPUメモリHDDチップセット光学ドライブOS備考
MP-XP32102002年6月下旬Celeron 650MHz128MB20GBSiS 630ST-XP Home初代
MP-XP7210Pentium III-M 800MHz256MB30GBXP Pro
MP-XP52202002年11月中旬Pentium III-M 866MHz128MB20GBXP Home(SP1)初USB 2.0対応
MP-XP5220EX外付けUSB
MP-XP7220Pentium III-M 866MHz256MB30GB-XP Pro(SP1)
MP-XP7220EX外付けUSB
MP-XP72302003年3月中旬Pentium III-M 933MHz40GB-
MP-XP73102003年7月25日Pentium M 1GHzIntel 855GM初Centrino
MP-XP7310RC2003年10月23日リサイクル対応
MP-XP7310LL2003年11月中旬大容量バッテリ付属
MP-XP7412004年11月中旬Pentium M 733(1.1GHz)60GBIntel 855GME-XP Pro(SP2)最終モデル

 ところでプロセッサの話よりも、むしろなぜPCとは縁が薄い日本ビクターが、突如モバイルPCを投入できたのだろう、と思うユーザーの方が多いだろう。しかも、いきなり完成度の高い、他社が追従できない世界最小のPCを、AVメーカーが投入してきたのであるのだから、驚くほかない。正直筆者も当時店頭に並んでいるのを見て「えっ?」と思った。

 後述するが、本機を分解し基板を見ても、BIOS画面を見てもJVCやVictorのロゴしか存在しておらず、いかにも独自開発された製品のように見える。しかしその謎を解く鍵はデバイスマネージャにあった。「ATK0100 ACPI UTILITY」というデバイスがシステム デバイス下に見えるのだが、そう、これは自作ユーザーで知る人ぞ知る、ASUS製品伝統のハードウェア管理デバイスである。つまり、InterLink XPシリーズはビクターがASUSと共同開発した製品なのだ。

 実は、海外向けにもASUSから「S200N」という製品名(当然ロゴ/キーボード違い)で発売されている。ASUSから日本向けにアナウンスこそされなかったのだが、そういった背景がある製品なのであった。PC分野において経験豊富なASUSと共同開発なら、世界最小を実現できたのもなんら不思議はないだろう。

MP-XP7230本体
前面に大きなラッチがあり、これがアクセントにもなっている
アウターバッテリを装着しなければA5ファイルサイズのミニノートだ
アウターバッテリを装着すると後部にせり出す。このフットプリントは10.4型のLet'snote Rシリーズに近くなり、ミニノートの範疇を少し出てしまう
右側面に各種インターフェイスが集中している。ディスプレイ出力は独自のケーブルを利用する
左側面はIEEE 1394、排気口、PCカードスロット。IEEE 1394の隣には、ノートとしては珍しいストラップホールもある
天板はシルバーでシンプル。左右にダイバーシティの無線LANアンテナが内蔵されているため、別パーツでできている
入手したのは年代物としてはかなりの美品であり、天板にキズが少し入っている程度
本体底面。Pentium III-Mなので発熱はCrusoe以上に多く、通気口が多く設けられている
キーボード配列はクセが比較的少なく、一部ピッチが狭い以外は、タッチタイプできるだけの快適性が保たれている
一方で中央のスティック型ポインタは、ホームポジションから動かさずに使える意味では便利だが、キートップよりも低く、なおかつかなり硬いため、長時間の使用では指が痛くなる
加えてボタンのクリックもかなり硬めの感触で、この辺りはもう少し改善して欲しかった
こちらはMP-XP741。Centrinoのロゴが眩しい
前のMP-XP7310から、天板が黒く塗装された。ただしツブツブが見え、正直質感はよくない
本体底面。メモリ交換のカバーが大型化されている。これは無線LANアンテナの位置が奥まったためで、分解の際底面パネルを外して、アンテナを外してから液晶部を分離させる
ちなみに目立たない点だが、CentrinoモデルはPentium III-Mモデルより発熱が若干増えたためか、CPUクーラーが大型化されている。そのため、ややくさび形だった旧モデル(28~29.5mm)から、完全にフラットな筐体(29.5mm)となった

ありのまま 起こった事を話すぜ

 そんな高性能なInterLink XPシリーズだが、実は筆者にとってかねてからの“憧れの存在”ではなかった。というのも、当時筆者はInterLink XPのニュースを目にしておらず、ミニノートを買おうと検討していたところ、同僚に「Libretto L5」を薦められ、そちらの購入を検討していたからだ。

 とりあえずLibretto L5を一目見ようと、九十九電機のDOS/Vパソコン本館のノートPCコーナーに立ち寄った。ところがLibretto L5の在庫はなかった。代わりにInterLink XPが置いてあるのが目に留まり、ビクターが高性能なミニノートをリリースしていたと初めて知ったのであった。

 そこでInterLink XPの実物を目の当たりにし、スペックを見てものの30秒で、大して本体を試用をもせずに購入した筆者であった。つまり「おれはLibretto L5を買いに行ったと思ったらいつのまにかInterLink XPを手にしていた」のである。

 “不覚にも購入した”製品だったのだが、そんなわけで筆者はInterLink XPのユーザーとなった。PC Watchに携わるように(2005年頃)なってからもしばらく使い続けていたのである。

 ちなみに当時、「MP-XP7210」の方をお願いしたのだが、店員は下位の「MP-XP3210」を薦めてきたと記憶している。MP-XP7210は当時13万円、MP-XP3210は10万円台だったが、“MP-XP3210ならアウターバッテリをもう1本オマケするよ”と言われ、それでMP-XP3210に決めたのだ。

 InterLink XPシリーズは発表時、結構強気の店頭予想価格であったが、実際は時間が経つにつれ結構値下がりし、小型のモバイルノートとしては比較的購入しやすい価格だったと思う。20万円以上が当たり前だった「Let'snote R」や「ThinkPad X」シリーズと比較すると、憧れていた人よりもユーザーになった人の方が多いかも知れない。

時代が隔てた兄弟機

 ただ、筆者は既にMP-XP3210を母親に譲ってしまったため、今回新たにヤフオクで購入することにした。筆者ですら店頭で見て初めて知った製品ということもあり、InterLink XPはLibrettoやバイオUシリーズほど知名度や人気度が高くない。これだけ高スペックだが、競争相手が少ないため1,000円ちょっとで落札できる。

 今回購入したのはCentrino準拠前の最終モデル「MP-XP7230」と、シリーズ最終モデルとなった「MP-XP741」だ。MP-XP7230は動作確認済みだが、MP-XP741は動作非確認。いずれもACアダプタが付属しないジャンク品として出品されていた。落札価格は前者が1,000円、後者が1,210円。

 まずはMP-XP7230から。主なスペックは前表の通りだが、特筆すべき点は本製品はシリーズでSiS630STチップセットを搭載する最終モデルとなったことだ。MP-XP7230は2003年3月に発売されたモデルなのだが、7月に投入された後継の「MP-XP7310」はCentrinoプラットフォームとなり、チップセットはIntel 855GM、無線LANもIntel PRO/Wirelessとなっている。

 Centrinoプラットフォームは2003年4月以降のPCに順次搭載されたのだが、これを境目にサードパーティ製のIntel CPU用チップセットが順次市場から駆逐されている。MP-XP7230とMP-XP7310は兄弟機なわけだが、まさに時代の変化を象徴するモデルとなったわけだ。

 ちなみにこのSiS630STは、当時としては珍しく、ビデオ機能(SiS305)とノースブリッジとサウスブリッジ、Ethernetコントローラ(SiS900)、サウンド(SiS 7018)を全て1チップに収めたチップセットであった。統合されているビデオ機能の性能は決して高くはなかったものの、Intel 810シリーズの3Dとは異なり、多くのファンクションをサポートしていたため、3Dソフトとの互換性が高かった。さらに32bitカラーの3D描画も可能であったのも、Intel統合グラフィックスに対する優位性だったと言える(Intel 810はIntel 752をベースとしているのため、3D描画は16bitのみサポート)。

 CPUはIntelのPentium III-M 933MHzを搭載する。当時は対抗となるCrusoeも同じく900MHz超を実現していたのだが、性能で言えばCrusoeは同クロックのPentium IIIの6割程度の性能であったわけだから、本機がいかに高性能であったかが伺える。

 しかもInterLink XPシリーズに採用されたCPUは、当時最新鋭の130nmプロセスで製造されるTualatinベースのPentium III-Mである。Intelは当時Pentium 4の普及に努めていたため、デスクトップではそれほど普及しなかったが、低消費電力/低発熱が要求されるモバイルにおいて、Pentium 4のNetBurstアーキテクチャは適しているとは言えず、この分野においてはPentium III-Mが肩代わりをしていたのである。

分解するためにはまず底面のネジをすべて外し、ヒンジカバーを取る
後はキーボードの爪を外して、ケーブルを外し、見えるネジをすべて外す。
CPUはTualatinコアの超低電圧版Pentium III-M 933MHz。直接ハンダ付けされている
MP-XP7230のマザーボード。やはりノースブリッジとサウスブリッジが1チップになったSiS630STの存在が目立つ
SiS630STチップセット。当時SiSのチップセットは1チップ化を進めていたのだが、本チップもそれを象徴している
メモリはInfineon製の「HYB39L256160AC-7.5」であった
SiS630STにはUSB 2.0がないため、本機にはNECの「μPD720101F」が採用されている
SiS630STにはEthernetの論理層が内包されているが、物理層はない。本機にはIDTの「1893Y-10」が採用されている
ICSのクロックジェネレータ「9248AF-135」
CPU底面周りは比較的スッキリしており、低消費電力ぶりが伺える
InterLink XPシリーズはデュアルバッテリ駆動が特徴の1つでもあるわけだが、それを実現するためにMaxim Integrated製のデュアルバッテリシステム用電源セレクタ「MAX1773」を装備されている
Pricom製のバススイッチ「PI5C 3384Q」
Analog DevicesのAC'97コーデック「AD1885」。S/N比87dBと、今となっては一般的だが、当時のオンボードチップとしては良い方だろう
スピーカー出力周りにはきっちりヘッドフォンアンプなどを入れており、この辺りはさすがビクター製だ
リコーの「R5C576A」はSDカードコントローラである
Texas InstrumentsのIEEE 1394コントローラ「TSB43AB21」も搭載されている
基板の裏面
HDDにはHGST製の「IC25N040ATCS04-0」が採用されている
オンボードにはメモリとして128MBしか搭載されていないため、拡張スロットを用いて256MBを実現している。本機にはApacer製のモジュールが装備されていた
無線モジュール。本機にはMini PCIなどのスロットは用意されておらず、専用のコネクタでActiontec製無線LANモジュールを接続している。内部との接続はUSBだ
当時の無線LANはかなり大掛かりの実装であった
Maxim Integrated製のIntelモバイル電圧ポジショニング「MAX1718」。先述のバッテリセレクタと合わせて、電源周りはMaximだと見て良い
PCカードスロットはコネクタ式で、基板から取り外し可能だ
DothanコアのPentium M 733(1.1GHz)

 対するMP-XP741だが、これはCentrinoプラットフォームに準拠したMP-XP7310の最初で最後のモデルチェンジとなった。MP-XP7310投入から実に1年半ぶりのモデルチェンジであり、一見CPUのクロックが上がって5GHz帯の無線LANに対応した程度のマイナーチェンジに見えるのだが、大きなアップデートである。

 というのも、このPentium MがBaniasベースのPentium M 1GHzから、DothanベースのPetium M 733(1.1GHz)となったからだ。Pentium M 1GHzの製造プロセスは130nmであったのだが、Pentium M 733は90nmとシュリンクされている。InterLink XPシリーズとしては、初めて90nmプロセッサの搭載となったわけだ。

 ただし、特にバッテリ駆動時間が伸びているわけではない。加えてInterLink XPはIntel 900シリーズチップセットが発売される前の製品のため、DDR2メモリやPCI Expressなどの技術には対応していない。Dothanの恩恵(Sonomaプラットフォーム)を受けられた製品でないのも確かである。

 今回入手したMP-XP7230とMP-XP741の2機種だけだが、わずか2年しか続かなかった製品ラインナップの進化の中で、これだけ中身に大きな変化が見られるのも珍しい。無線LANが標準搭載となったのはCentrinoが功をなしたものだが、サードパーティ製チップセットが駆逐されたのもその時代からであった。その光と影を象徴するのが、InterLink XPシリーズかもしれない。

MP-XP741の基板
Intel 855GMEチップセットを搭載している
Intelのチップセットは当時2チップ構成であったため、サウスブリッジも搭載されている
メモリはInfineon製のSDRAMからNanya製のDDR-SDRAM「NT5DS16M16BF-6K」に変更されている
これはMP-XP7230からの大きな変更点である、リコーの「R5C551」。「同じSDカードコントローラか?」と思われたが、こちらはIEEE 1394とPCカードコントローラを1チップに集積した製品である
こちらはルネサスのマイコン「M38857M8-A02HP」。用途は不明である
もはや余談だが、モデムもActiontec製であった
サウンド周りは若干変更があるが、AD1885に変更はない

復活……していた。そしてできなかった

 さて、“さまざまなテクニックを用いて実用に耐えるよう復活させる”というのが、本コラムの重要なテーマの1つとして掲げたのだが、実は今回このテーマを達成できないようである。

 まずMP-XP7310の方だが、こちらは「ACアダプタが付属しないためジャンク品」として出品されたものを落札したのである。ところが、出品前に出品者が起動確認とリカバリを行なっている。つまり、ACアダプタさえ用意すれば普通に動作するのである。

 InterLink XPのACアダプタは19Vタイプ。実は19VタイプのACアダプタはノートPCの世界では結構使われており、プラグの形状が一致し、消費電力さえ満たせば同じ電圧のACアダプタが利用できることが多い。今回はHuntKey製の汎用ACアダプタ「PA1965S-B」を利用した(付属の変換プラグで利用できる)。

 MP-XP7310のHDDは流体軸受タイプであり、そのままでも結構静かで高速。CPUもCrusoeではなくPentium III-M、加えてメモリも256MB搭載されているため、正直、プリインストールされているWindows XP Professionalのまま使っていても何ら不満がない。インターネットに接続するのならば、OSをLinux系に入れ替えても良かったと思うのだが、今回はXPのまま使うあてがあったので、こちらはこのまま使うことにした。

 一方でMP-XP741の方だが、こちらは「ACアダプタがないため、動作確認できなかった」としてジャンク出品されていたものだ。こちらに同じACアダプタを接続して電源を投入したみたのだが、これがうんともすんとも言わず、まったく起動できなかった。

 ACアダプタを挿入した瞬間、PA1965S-Bの正常動作を示すインジケータLEDが消えるので、おそらく本体内部でショートしていると思われる。そこで分解して中を見たのだが、目立ったショートの痕が見られなかった。また、電源周りと思われる部分にテスターを当ててみて計測したのだが、故障部分を発見できなかった。

 MP-XP7310で充電したバッテリを接続しても電源が入らなかったので、おそらくバッテリの回路も含めてダウンしていると思われるのだが、筆者のスキルでは残念ながら故障部分を探し出すことはできなかった。基本的に電源が入らない場合は、コンデンサの故障(つまりショート)が原因となっているのだが、そこを見つけられなかった。

 MP-XP741は、うまく行けばWindows 10 Technical Previewを入れられそうなスペック(XD-bitをサポートしていないため、無理かもしれないが)なだけに、無念である。今後時間に余裕でき次第、再度部品を1個1個チェックして問題を見つけ出し、是非とも復活させたいところである。

クリアしてなかったあのゲームに再度トライするマシンへ

ファイナルファンタジーVIIIが快適に動作する(C)1999/2000 SQUARE

 さて、復活したMP-XP7310の方の活用方法である。先述の通り、InterLink XPシリーズは非常に高性能なミニノートであり、特にSiS630STが持つ3D性能を活かしたいところだ。というわけで、以前購入し、未だクリアしていなかったスクウェアの王道RPG、「ファイナルファンタジーVIII」をプレイすることにした。

 実は筆者はこのファイナルファンタジーVIIIを2002年初頭に購入してプレイしていたのだが、その後すぐにラグナロクオンラインを代表とする、オンラインでプレイするMMORPGが大流行。そして2002年11月には、ファイナルファンタジーXIのWindows版がサービスイン。筆者も発売翌日に、ファイナルファンタジーXIをプレイし始めたのだった。そんなわけで、ファイナルファンタジーVIIIはクリアせずに放置してしまったのである。

 当時も、ファイナルファンタジーVIIIをInterLink XPでプレイしていたので、問題なく快適に動作することは分かってのだが、改めてプレイしてみると、「そう言えばあの時代は、背景が2Dでキャラクターだけが3Dのゲームが多かったなぁ」と懐かしんでみたりする。もっとも、RPGにおいて重要なのはグラフィックスの完成度や、発売時期とかではなく、物語の内容だ。今はファイナルファンタジーXIをプレイしていないので、これを機にじっくり腰を据えてプレイすることにしよう。

 ちなみに、InterLink XPはCPUが高性能であり、IEEE 1394インターフェイスを備えているほか、動画編集ソフトや圧縮された音楽の音質を向上させるソフトなどがプリインストールされている。つまり、元々製品のコンセプトとしては、DVカメラからインポートした動画を編集したり、CDからリッピングしたMP3音楽の再生に向いた、ビクターらしいPCなのである。そういう意味では、そのコンセプトを是非とも活かしたいところなのだが、昨今の動画の解像度や、スマートフォンの普及からして、ちょっと無理があるだろう。

マップは2Dを背景に、キャラクターは3Dで表示されるのだが、戦闘画面は遠景を除き3Dである(C)1999/2000 SQUARE
派手な3Dエフェクトでも処理落ちしない(C)1999/2000 SQUARE
パネルスケーリングをBIOSでオフにすると、アスペクト比は正確だが、中央にしか表示されないため寂しい。キャラクターが横に伸びてしまうが、スケーリングをオンにした方が集中できる(C)1999/2000 SQUARE

InterLink XPはネットブックの祖先だったのか

 というわけで、「復活と活用」というコラムのコンセプトは残念ながら今回は薄れてしまったが、筆者がこのコラムでInterLink XPシリーズを取り上げたかった理由がある。

 筆者がユーザーの一人であり、思い入れがある製品……だというのも理由の1つなのだが、過去にASUSが2008年(海外では2007年)にネットブック市場旋風を巻き起こした「Eee PC」を投入した際、「あ、これはInterLink XPだ」と思ったのである。

 正確には、初代の「Eee PC 4G-X」ではなく、上位モデル(日本未発売)の「Eee PC 900」の方である。Eee PC 900は、InterLink XPと同じ1,024×600ドットの8.9型液晶を搭載している。これは、ネットブック向けの低価格Windows XP Home Editionのライセンスの制限であり、一部モデルを除くネットブックは、ほぼすべて1,024×600ドットであった。しかし2003年当初、この解像度はノートPCにとってポピュラーではなかった。

 加えて、Eee PC 900もMP-XP741と同じDothanコアのCPUを搭載していたし、そもそもInterLinkと同じASUS製である。つまり、InterLink XPはASUSが台頭したネットブックの礎になった製品だ。InterLink XPは質実剛健な作りで、尖ったフォームファクタではなかったため、残念ながらLibretto LやバイオUシリーズほど注目されなかったように思うのだが、6年間かけて大きく花を咲かせることに成功したとも言えるだろう。

 今回は、復活をテーマにしたコラムとしてやや路線が外れてしまったが、MP-XP741が復活した暁には、再度紹介することを宿題としたい。

【表】購入と復活にかかった費用(送料/税込み)
MP-XP72302,288円
MP-XP7412,340円
合計4,628円

(劉 尭)