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Macの高速化に効果的!「ストレージ不足」を解消する"無料"のメンテナンステクニック

 Macが遅くなってしまう原因はさまざまあります。しかし、筆者の経験では「ストレージ(SSD)の空き容量不足」がその原因の多くを占めます。Macにはサードパーティのメンテナンスツールを使わなくても、システム(macOS)標準の機能だけで内蔵ストレージを整理できる機能が備わっています。今回は無料でできる簡単メンテナンスの方法と、それだけでは削除できない「その他」領域を減らすテクニックを解説します。

MacのSSDに空きがあれば、パフォーマンスの低下を最小限に抑えられます。macOS標準の最適化機能と手動メンテナンスでMacの健康状態を回復しましょう

ストレージを最適化して容量を確保しよう

 現行Macのほとんどはデータを格納するSSDがロジックボード(マザーボード、メイン基板)上にハンダ付けで固定されています。そのため、ユーザー自身で大容量のSSDに換装したり増設したりすることができません。その場合、外付けHDDや外付けSSDなどに使用頻度の低いファイルを退避するのが一般的ですが、現在のMacではクラウドストレージ(iCloud)と連携したデータ管理が可能となっています。

 このストレージの「最適化」を有効にすると、Macに保存されている書類や画像、動画などのファイルはiCloud上に自動的にコピーされ、Mac本体にはそのファイルの情報だけが残ります。そして、いざファイルを開くさいにはiCloudからオリジナルのファイルがダウンロードされます。この仕組みによって、MacのSSDの空き容量を確保できるのです。

 Macのストレージ管理機能は、Appleメニューの「このMacについて」から確認や設定ができます。「ストレージ」の項目を選んで現在のMacのストレージ使用状況を確認したら「管理」ボタンをクリックしましょう。

Appleメニューから「このMacについて」を選択し、システム情報から「ストレージ」タブを開くと使用状況や、その内訳が確認できます
「管理」ボタンをクリックするとストレージ管理のウィンドウが表示されます。サイドバーにある「おすすめ」では、ストレージを最適化するための設定がいくつか表示されるので、必要な項目を設定します

 ストレージの管理画面には「おすすめ」の設定として、①「iCloudに保存」、②「ストレージを最適化」、③「ゴミ箱を自動的に空にする」、④「不要なファイルを削除」の4項目があります。ここでは順番にその設定の意味と効果について確認していきます。

 まず、①「iCloudに保存」は上述のとおり、ファイルや写真、メッセージやその添付ファイルのオリジナルを自動的にiCloudへ保存して、Macのストレージ容量を節約するものです。「デスクトップと書類」「写真」「メッセージ」などの項目が表示され、チェックを入れることでオンにできます。

 たとえば、「デスクトップと書類」をオンにすると、ストレージ容量が不足してきたときには「デスクトップ」と「書類」フォルダのすべてのファイルをiCloudへ保存し、最近開いたファイルのみをMacに残してストレージを最適化します。「写真」の場合は、フォトライブラリをiCloudへ保存し、最適化済みの写真とビデオのみをMacに残してストレージを最適化します。

 ただし、ここで注意したいのは「デスクトップと書類」の項目です。Macのストレージ容量は節約できるものの、ファイルを開くさいにオリジナルのファイルがiCloudからダウンロードされるためネットの環境次第では動作が遅く感じる場合があります。そのため、頻繁に使うファイルは、「ホーム」フォルダや「ダウンロード」フォルダなどのiCloudと同期しない場所に保管して作業するのがおすすめです。

「iCloudに保存」をクリックすると、「デスクトップと書類」「写真」「メッセージ」といった項目が表示され、チェックを入れると自動的にオリジナルのファイルをiCloudへ保存します
「iCloudに保存」で表示される項目は「システム環境設定」の「Apple ID」パネルの「iCloud」→「iCloud Drive」や、「写真」アプリや「メッセージ」アプリの環境設定からオン/オフを変更できます

 次に②「ストレージを最適化」ですが、こちらは「Apple TV」で購入した映画のデータを視聴後に自動削除する機能とメールの添付書類を一定期間経過後にiCloudに移動する機能で構成されています。ダウンロードされた映画は1本数GB以上になることもあるため、基本的には自動削除をオンにしておくのがおすすめです。

コンテンツの自動削除設定は「TV」アプリや「メール」アプリの環境設定で変更できるので、使いにくいと感じる場合はオフにしておきましょう

 そして意外に盲点なのが③「ゴミ箱を自動的に空にする」です。初期設定ではユーザーが手動で操作しないとMacのゴミ箱に入れたファイルは空になりません。この自動的に空にする設定を有効にしておけば、ゴミ箱に入れてから30日が経過すると削除されるので、ストレージ使用量の肥大化を防げます。もちろん、問題がなければFinderのメニューからすぐに空にすることも可能です。

ゴミ箱を自動的に空にする設定をあとから無効にするには、Finderの環境設定から「詳細」タブを選び、「30日後にゴミ箱から項目を削除」のチェックボックスをオフにします
ここまでの最適化設定を有効にすると、項目のボタンに「実行済み」のチェックマークが付きます。さらに手動でファイルを整理していきたい場合は「ファイルを確認」をクリックします

手動でファイルや使わないアプリを削除する

 ここからは、より詳細にファイルを整理したい場合についても見ていきましょう。「ファイルを確認」ボタンをクリックして「大きいファイル」タブを選ぶと、容量の大きな順にファイルが表示されていますので、ここから不要なファイルを選んで「削除」します。
 同様に「ダウンロード」フォルダ内や使っていないアプリについても表示できるので、こちらも手動で削除していきましょう。なお、不要なアプリの見分け方や、設定ファイルを含めたアンインストールに関しては記事「「Mac使用中の遅さ」を解消する“正しい”高速化テクニック」を参照してください。

Mac内のファイルやアプリが「大きいファイル」「ダウンロード」「未対応のアプリケーション」「コンテナ」「ファイルブラウザ」で切り替えられます

 ストレージの空き容量を手動で増やすには、フォルダを圧縮して外付けのストレージに移動する、「メール」アプリから「メールボックス」→「迷惑メールを消去」を選び、さらに「メールボックス」→「削除済み項目の消去」で完全に削除するといった手段もあります。同様に「iMovie」アプリ内のゴミ箱も不要なクリップが残っている場合があるので、必要に応じて削除します。

 ここまでのMac最適化の設定と手動削除をしたら、いったんウィンドウを閉じて、再度「このMacについて」から「ストレージ」を表示してみましょう。「使用可能」な領域が増えていたら成功です。しかし、使用中のファイルのカテゴリで「その他」が減っていなかったらさらなるメンテナンスが必要です。

「その他」から遅さの原因を特定する

 Macのストレージ内にある「その他」は、写真やオーディオのようにカテゴリで分類できないファイルです。それにはいくつかの種類があり、Adobe Photoshopの「PSDファイル」や圧縮ファイルの「ZIP」、メールの添付ファイルやシステムキャッシュ、ユーザーキャッシュ、フォントやアプリの機能拡張などが含まれます。

 キャッシュなどの一時ファイルについては、記事「「Mac使用中の遅さ」を解消する“正しい”高速化テクニック」の「セーフブート」などで削除できます。また、Time Machineバックアップが行なわれるまでMacローカルに保管されている一部の差分ファイル(ローカルスナップショット)は、Time Machineバックアップによって解消されます。しかし、それでも削除できないファイルもあります。

 こうした「その他」ファイルの正体は使用している環境によって原因が異なるため、一概にこのファイルを削除すればよいという話にはなりません。しかし、その多くはユーザー領域の「ライブラリ」フォルダに存在します。そこで、ここでは「ライブラリ」フォルダ内で特にサイズが大きいファイルを特定するための方法を解説していきます。

 なお、サードパーティのメンテナンスツールを使って「ライブラリ」フォルダを自動で掃除したら、アプリの動作に必要なユーザー設定ファイルまで削除されてしまったという悲劇もあるので、慎重な操作が求められます。

Macのユーザー領域の「ライブラリ」フォルダにアクセスするには、Finderの「移動」メニューを「option」キーを押しながら表示すると表示されます

 「ライブラリ」フォルダにアクセスすると多くのフォルダが表示されるので、最初はどこに問題があるのかわかりません。その場合は、Finderの表示方法を「リスト」表示とし、さらに表示オプションを用いてフォルダの容量も計算する設定にしておきます。すると、「Caches」フォルダや「Application Support」フォルダに数GBを超えるようなフォルダが見つかることがあります。

 それらの多くはMacの動作に必要なもので基本的には触らないほうがよいでしょう。たとえば、「Mobile Documents」フォルダはiCloud Driveとの同期に用いられるもので、ダブルクリックして開くとサイドバーにあるiCloud Driveが開かれます。

 明らかに怪しいサイズになっているフォルダがあった場合は、外部ストレージに「command」キーを押しながら「移動」し、Macの挙動に問題がないかしばらく使ってみて確認しましょう。この方法であれば、もし支障があったとしても元の状態に戻せます。

 なお、筆者が以前発見した異常なサイズのファイルの例としては、Mac標準の画面収録機能のエラーファイルがあります。これは、「QuickTime Player」が作成する動画ファイルで、録画中に何らかの原因で中断してしまった場合に「ライブラリ」フォルダ内に自動で作成されるものです。どうやら録画を終了せずに、そのままシャットダウンしてしまっていたようで、ファイルサイズは9GB以上ありました。

 このように、想定外な理由で「その他」ファイルが生成されてしまうことはよくあります。最終的にはmacOSの再インストールなどで解消するほかありませんが、ときどきストレージの使用状況をチェックして「その他」が肥大化していないか確認しておきましょう。ストレージの状態を適切に保つことは、Macのパフォーマンス向上にもつながります。

容量の大きな「その他」ファイルは「ライブラリ」の「Caches」フォルダに保管されていることがほとんどです。しかし、Finderの初期設定ではフォルダの容量が表示されていないので、どのファイルが容量を取っているかわかりにくいのが問題です
Finderの表示オプションから「すべてのサイズを計算」のチェックを入れると、フォルダのサイズも表示されるため肥大化している場所を特定しやすくなります。作業終了後は再び「すべてのサイズを計算」はオフにしておきます
サイズが肥大化しているフォルダやファイルは、いったん外部ストレージなどに移動(コピーではない)して、動作に支障がないか確認します。もし、問題があれば元の場所に移動したフォルダやファイルごと戻しておきましょう