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Macのテキストエディタは「Ulysses」がイチ推し! の7つの理由

 原稿やプログラムなどのテキストを記述するうえで欠かせないのが、「テキストエディタ」です。Macにも多種多様なアプリが存在し、好みは人それぞれ。特定のアプリに思い入れの強い方も多いでしょう。職業ライターである筆者も長年手に馴染んだ「Jedit」を使ってきましたが、このたび四半世紀ぶりに乗り換えを決意。なぜ、「Ulysses(ユリシーズ)」に惚れ込んだのか。理由はたくさんありますが、その中でも声を大にして言いたい7つのポイントを教えます。

20世紀を代表する文学作品の名を冠したテキストエディタ「Ulysses」。一部で「神アプリ」と称されるテキストエディタです

テキストエディタに求めるもの

 macOSにはリッチテキストエディタの「テキストエディット」が標準で搭載されています。当然ですが、問題なく日本語テキストを入力できますし、書式情報を含まないプレーンテキスト(標準テキスト)やWordとの互換性があるDoc形式の取り扱いもできます。特別なことを求めない限り、ドキュメント制作はこのアプリだけで十分と言えるでしょう。

 ただ、テキスト入力を毎日のように頻繁に行なう場合は、使うかどうか分からない機能の豊富さよりも、たとえば動作の軽快さや安定性、インターフェイスのシンプルさといった執筆に影響する部分を重視したいところです。また、筆者のように執筆だけでなく、原稿を掲載媒体の仕様に合わせて編集することがある場合は、文字数のカウントや正規表現に対応した一括検索・置換などの機能も重要となります。

 このように、一口にテキストエディタといっても目的やスタイル、フィーリングなどによって「何がベストなのか」は人それぞれ。テキストエディタの使いやすさは作業効率に大きく影響するため、なるべく自分に合ったものを探し出したいところです。

「Jedit Ω」とついにお別れ

 筆者は今年まで「Jedit Ω」を利用してきました。初代の「Jedit 1.0」から数えると、26年間も使い続けてきたことになります。26年前の1995年というと、TV版『新世紀エヴァンゲリオン』の放映が開始され、Windows 95が発売された時期ですから、とても息の長いアプリですね。なお、最新のMac App Store版「Jedit Ω plus」はUniversal 2 Binary化され、Apple Silicon搭載のM1 MacとmacOS Big Surにも対応しています。

 もちろん、今でもJeditはMac用テキストエディタとして最強クラスだと思っていますが、この数年で仕事の内容やテキストエディタに求めるものが次第に変わってきました。そこで、Jeditに変わり得るいくつかのアプリを比較した結果、「Ulysses」が一番だと気づいたのです。

macOS標準の「テキストエディット」(画面左)と筆者が長年愛用してきたテキストエディタ「Jedit Ω plus」(画面右)。いずれも機能面では必要十分で完成の域に達しています

優れたファイル管理とモバイル連携

 Ulyssesに惚れ込んだ理由として真っ先に挙げられるのは、「作成した文書をライブラリ内で管理できること」です。1つのアプリ内で自分の書いたすべての原稿(覚え書きのメモやメールの下書きから雑誌や書籍の原稿まで)を管理できるので、Macの中でテキストファイルが散乱しません。

 この仕組みは標準アプリの「メモ」や、最近話題の情報共有ツール「Notion」とも共通していてとても使いやすく、「自分の書いたテキストはこのアプリに全部あるのだ」という安心感と効率性を得られます。見つからないファイルをMacの中で探し回る時間は本当に無駄ですよね……。

 2つ目の理由は、「iPhone版とiPad版アプリもあること」。クラウドですべての文書が同期されるので、移動中の原稿確認やちょっとした修正はiPhone、外出先ではiPad、自宅ではMacといった使い分けが可能です。特にMac版とiPad版のインターフェイスがほぼ共通なので、作業するデバイスを切り替えても違和感なく執筆を続けられるのもメリット。将来的にiPad Proがメインのツールになる可能性もありますから、そのときでも困ることはありません。

Ulyssesでは、3カラム表示の場合は左サイドバーに進行中のプロジェクト、中央にドキュメント、右側に文書の内容が表示されます。編集した内容はクラウドで同期され、ほかのAppleデバイスにもすぐ反映されます

心地よさには理由がある

 「第2のエディタ」という表示モードがあることが3つ目の理由です。最近のテキストエディタアプリはフルスクリーン表示に対応しているものがほとんどです。確かに執筆時の集中を妨げないという意味では効果的で見た目もスタイリッシュです。しかし、業務での原稿執筆では、取材時のメモや構成案などの画面を開いて見比べながら書き進めるケースも多くあります。

 macOSではSplit Viewによる2画面分割を行えますが、Ulyssesでは「第2のエディタ」によって1つのアプリ内で画面を並べて作業できます。もちろん通常のタブ表示にも対応しているので、同時にいくつもの原稿を書き進めるといった場合にもすぐ切り替えられます。なお、iPad版のUlyssesでは「新規ウインドウを開く」からSplit Viewで2画面表示になりますが、こちらも作業を快適に進めるうえで必須の機能と言えます。

Mac版のUlyssesで「第2のエディタ」を表示したところです。画面の左側に下書きなどを表示しておき、右側で本番の原稿を書くというスタイルを基本にしています
iPad版のUlyssesをダークモードで表示したところです。Split Viewで画面を2分割し、2つの文書を同時に表示しながら執筆を進められます

 4つ目の理由は、「1行あたりの文字数などが細かく調整できる」ことです。一般的なWebメディアでは段落あたりの文字数を指定されることが多く、紙のメディアではこれに加えて1行あたりの文字数も指定されることがあります。Jeditなど従来からあるテキストエディタはこうした調整に長けていたのですが、最近のアプリでは段階的にしか設定できなかったりと対応はまちまちです。

 Ulyssesでは環境設定で1行あたりの文字数が柔軟に設定できる点に加え、行間や段落の間隔も好みに合わせて調整できます。行間をどのくらいに設定するかは書く内容によっても異なりますが、日本語の文書では標準の設定だとやや行間が狭く息苦しく感じられることがあるので、文字のサイズなどとも照らし合わせてベストな設定を探せるのがグッドです。

 そして、5つ目は文字数とも関係しますが、「表示フォントのカスタマイズ性の高さ」です。フォントなんて今時どのアプリでも自由に選べるでしょ?と思われるかもしれませんが、海外のアプリでは数種類のシステムフォントしか選べないこともあり、特に日本語フォントの選択肢は少なめです。UlyssesはMac版はもちろんiPad版でも同じ種類のカスタムフォントを利用できるので、執筆のモチベーションが高まります。

Ulyssesの環境設定の[一般]では、表示フォントが選べます。Macでは先頃バリアブルフォントとなった「源ノ角ゴシック(Source Han Sans)」を設定し、そのときの気分によって文字の太さを変更しています

執筆を快適にする細かな機能

 Ulyssesは文字入力のユーザインターフェイス以外にも優れた点があり、「書いた文書の構造化が手軽にできる」ことが6つ目の理由になります。Markdown形式に対応したアプリでは共通ですが、たとえば小見出しとしたい文字列の頭に半角英数で「###」のように入力すれば、見出しレベルを設定したり、リストが作れます。これによって文章が構造化されてウインドウ右側のダッシュボードにはアウトラインとして表示されます。

 全体の話のあらすじや構成を書き進めるには欠かせない機能ですし、このダッシュボードには文字数や単語数、読む際にかかる時間の目安などを表示する機能もあります。ダッシュボードを閉じた状態でも単語数だけ小さく表示できるので、全体の進捗状況も直感的に把握できるのも便利です。

 そして最後に忘れてはいけない極めつけが、7つ目の理由である「タイプライターモード」です。これはタイピングする際の行を画面の任意の場所に固定できるもので、長文の入力作業を格段に楽にしてくれます。設定は好みですが、入力する行の位置を固定することでスクロール時の視線移動も少なくなり、下線やハイライト表示をオンにすれば「書く」という行為にさらに集中できます。

執筆時はフルスクリーンモードにし、ダークモードとタイプライターモードがオンにするのが筆者の基本スタイルです。右側のパネルを表示すると、文字数やアウトラインが確認できて便利です

「書くこと」に特化したエディタたち

 もちろん、Ulyssesで感じた利点を備えたアプリはほかにもいくつかあります。代表的なものとしては「Scrivener」や「Bear」「iA Writer」などで、これらの有料版も数カ月試してみました。

 Scrivenerはテキスト以外の資料などを参考にしながら長文を書き進めるのに便利な機能を備え、前評判どおり長編小説や論文の執筆に適している印象。BearはテキストエディタとしてはUlyssesよりもさらにシンプルなのですが、メモアプリ寄りの作りで、アイデアを書き留めたり、ブログの執筆などに向いている印象でした。同様に、iA Writerもシンプルで好印象です。こちらは買い切りでコストを比較的抑えられること、さらにmacOSとiOS、iPadOSに加えWindows版とAndroid版のクライアントがあるのが特徴です。

 それぞれの良さはありますが、「テキストを入力する」という側面を重視するのであれば、やはりUlyssesに優位性があると感じました。特にドキュメントの文字数が数千字以内の原稿や、仕様がある程度定まっていて繰り返すことが多い文書の作成には効果を発揮します。

 無論、Ulyssesには不満もあります。サブスクリプション課金のため、長く使っているとそれなりにコストがかかること。また、標準のPDF書き出しに一部不具合があるので、書き出しスタイルを自分で修正する必要があること。連携可能なブログサービスの種類が少なく、日本語環境ではWordPress以外の選択肢が考えにくいことなどです。

 とはいえ、価格が高いと感じるかどうかは利用頻度にもよりますし、スタイルの不具合についても対策は可能です。ここまで挙げた7つの理由にすべての人が魅力を感じてくれたかは分かりませんが、少なくとも筆者にとってはUlyssesが現時点では最強の執筆のパートナーになりました。気になった方がいれば、ぜひ試してみてください。

ファイル書き出し時のスタイルは環境設定で選択できます。また、[その他のスタイルを取得]をクリックすると外部サイトに移動し、さまざまなスタイルをダウンロードできます
UlyssesScrivener 3BeariA Writer
価格サブスクリプション
(年間プラン5,400円)
macOS版5,980円
iOS/iPadOS版2,440円
無料
(Proは年間プラン1,500円)
macOS版3,680円
iOS/iPadOS版3,680円
対応OSmacOS
iOS
iPadOS
macOS
iOS
iPadOS
Windows
macOS
iOS
iPadOS
macOS
iOS
iPadOS
Windows
Android
クラウド連携
(ProはiCloud経由)
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