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「Mac使用中の遅さ」を解消する“正しい”高速化テクニック
2021年3月30日 06:45
前回、Macを起動する際の高速化テクニックを解説しました。OSの再インストールやクリーンインストール、M1チップ搭載のMacで大きく変わった「スタートアップマネージャ」などについてはそちらを参照ください。今回は「Macを使っているときに感じる遅さ」のよくある原因と、その対策について解説します。macOSに標準で用意されている設定を1つ1つ確認しながら、Macのパフォーマンスを改善していきましょう。
システムの設定変更でMacを高速化
まずは、macOS標準のSpotlight検索に関してです。Spotlight検索では、Macのボリューム内全体のインデックス(索引データ)ファイルを作成して随時更新しています。このインデックスが何らかの理由で破損すると、検索の反応が遅くなったり、Finderで「最近の項目」を表示する際に不具合が生じたりすることがあります。
この問題は、システム環境設定のSpotlight検索の設定からインデックスを作り直すことで解消します。ただし、インデックスの再作成中はMac全体のパフォーマンスが落ちることがありますので、作業は就寝前など時間に余裕があるときに行ないましょう。また、Spotlight検索の検索結果に表示する項目を絞り込んでおくことも操作性の向上につながります。
次は、キャッシュ(一時ファイル)のクリアです。macOSでは1日ごと、1週間ごと、1カ月ごとに自動的に実行される3種類のメンテナンススクリプトがあります。これは深夜の時間帯に実行されますが、Macの電源がオフになっていると行なわれません。今すぐ実行したい場合は、とてもシンプルな方法ですがシステムを再起動してみましょう。
これだけでもキャッシュの扱いが安定することもあります。それでもダメなら「セーフブート」を試してみましょう。
普段は気にならないものの時々Macが遅くなる場合は、Time Machineバックアップの設定も確認しましょう。Time Machineは1時間ごとにバックグラウンドで実行されますが、この作業中にパフォーマンスが低下することがあります。特にIntel製CPUを搭載したMacで「VMWare」や「Parallels Desktop」などの仮想化ソフトを使用していると、その傾向は顕著です。
その場合、システム環境設定の「Time Machine」の設定から仮想マシンのイメージファイルが保存されているフォルダごとバックアップ対象から外します。すると作業時間が短くなり、結果的に普段のパフォーマンスの低下が抑えられます。メニューバーに表示したTime Machineアイコンでいつまでも作業が終わらない場合も、この設定を確認しましょう。
Time Machineがバックグラウンドで実行される際には前面に出ているアプリの優先度が高くなり、Time Machineのプロセスの優先度が低くなります。この優先度を変更してTime Machineをスピードアップする方法もあります。「ターミナル」でのコマンド操作が必要な中級者テクニックですが、興味のある人はバックアップ直前に試してみてはどうでしょうか。
方法は、ターミナルを起動し「sudo sysctl debug.lowpri_throttle_enabled=0」とコマンドを入力したら、「return」キーを押して管理者パスワードを入力します。コマンドの最後の数字はTime Machineの低プロセス優先度(Low Process Priority)のリミッターで、「1」が有効、「0」が無効を意味します。
このリミッターを解除するとTime Machineは文字どおりスロットル全開で作業しますので、通常よりもバックアップは高速に終わります。環境にもよりますが、体感的には2~3割ほど速く感じられるはずです。もちろん、この作業中はほかのアプリの作業は遅くなってしまうので、バックアップ後は同じくコマンド操作でリミッターの設定を「1」に戻しておきましょう。
ストレージの設定もしっかり見直そう
Apple純正のクラウドストレージ「iCloud Drive」の設定も動作に影響します。Macに限らず、最近のパソコンOSの多くはクラウドとデータを同期する運用が前提になっており、macOSではiCloud Driveがこの役割を担います。iCloudの初期設定ではユーザーがデスクトップや書類フォルダに保管したファイルは、自動的にiCloud Driveにアップロードされます。
このiCloud Driveの機能はMac本体のストレージ容量が少なくても済む点や、iPhoneやiPad、ほかのMacともファイルを同期できる点など大きなメリットがあります。しかし、一方で必要なファイルをダブルクリックしてすぐに開けなかったり(オリジナルのファイルがダウンロードされるのを待つため)、アプリによっては参照エラーが生じるなどのトラブルの原因となります。
Mac1台でしか利用しないという人であれば、このデスクトップや書類フォルダを同期する設定をオフにすることで、パフォーマンスが向上することがあります。なお、同期をオフにするとデスクトップにあるファイルやフォルダが消えることがありますが、これは「iCloud Drive」フォルダ内にまとめて保存されていますので心配は不要です。
なお、Macの内蔵ストレージの空き容量不足もMacが遅くなる主要な原因です。そのため、ゴミ箱を空にしたり、不要なデータやアプリなどを削除したり、Macを定期的にメンテナンスすることが必要となります。Macのメンテナンス方法にはさまざまありますが、もっとも手軽に行なえるのはmacOS標準のメンテナンス機能を利用した方法です。
アプリの設定や使い方でも速くなる
システム全体の遅さとは別に、アプリの動作が遅いと感じることもあるでしょう。その場合にまず考えられるのはメモリ不足です。写真や動画編集のように多くのメモリを消費するアプリだけでなく、メモやメールのような比較的軽いアプリでも、同時に多数起動しているとメモリ不足に陥ることがあります。
現在のMacでメモリ不足を解消するには「使わないアプリを終了する」のが単純でもっとも効果的です。「command」+「tab」キーを押してアプリケーションスイッチャーを表示すると、起動中のアプリが一覧表示されるので、ここから不要なアプリを「command」+「Q」で終了する方法がスマートでおすすめです。
なお、メモリ不足を解消するために「メモリ解放機能」を謳ったユーティリティソフトがMac向けにも存在します。しかし、そもそも現在のMacには少ない物理メモリでも有効に使えるようにする「メモリ圧縮」機能がありますので、こうしたメモリ解放機能は逆効果となる場合がありますので注意しましょう。
また、アプリが遅くなる原因としては、アプリの設計自体から来る問題もあります。macOSではこれまで10年以上かけて32bitアプリから64bitアプリへの移行を進めており、2019年のmacOS Catalina以降では32bitアプリの互換性のサポートは完全に終了しました。さらに、2020年に登場したARMアーキテクチャをベースにしたApple Silicon(いわゆるM1 Mac)の登場で、さらなる設計の更新が開発者に求められています。
もちろん、現在は「Rosetta 2」という技術により、Intelプロセッサ向け(x86アーキテクチャ)に作られたアプリでもエミュレーションで動作します。変換に伴う速度低下も最小限に抑えられてはいますが、M1 Macを導入したユーザーは今後「Universal Binary」対応のアプリを優先的に選んでいく必要があります。
しかし、アプリの1つ1つの動作対応状況を確認するのは大変なので、一括で確認するツールを利用してみるとよいでしょう。最新のmacOSでサポート対象外となった古いアプリについては削除し、M1 Macに未対応なアプリについては最新アップデートの状況などを確認してアプリ自体のパフォーマンスアップを実現しましょう。
Macが遅い原因として、特定のアプリやプロセスに大きな負荷がかかっている場合もあります。その場合、macOS標準搭載の「アクティビティモニタ」を使用すると、アプリのCPUやメモリの使用状況や、Webページごとの負荷(Safariの場合)、バックグラウンドで動作するプロセスの動きなどがわかります。ここで明らかに暴走しているアプリやプロセスがあれば強制終了することが可能です。
ここでは、普段よく目にするプロセス名とその役割についてまとめたので、トラブルが起きた際の参考にしてください。ただし、システムに関わるプロセスを強制終了すると動作に支障が出る場合があるので、可能であれば通常の再起動などで対応しましょう。
プロセス名 | 役割 |
---|---|
accountsd | Apple IDでログインするサービスの同期 |
backup | Time Machineバックアップ作成時に動作する |
kernel_task | CPUの温度管理、負荷を下げるために動作するので直接の原因ではないことも。Intel Macの場合はSMCのリセットが有効 |
launchd | ユーザーログイン時の処理を行なう |
lsd | LaunchServiceDaemonのことで、アプリと書類の紐付けなどを管理 |
mds | Meta Data Serverの略で、Spotlightのメタデータを管理 |
mds_stores | Spotlightのメタデータの保存場所を管理 |
mdworker | Meta Data Workerの略で、Spotlightのインデックス作成中に動作する |
mdworker_shared | Spotlightのインデックスを共有する |
SystemUIServer | メニューバーのアイコン項目の管理 |
WindowServer | デスクトップやDock、メニューバーなどウインドウの管理。一部のmacOSでは不具合により暴走することがあるので、最新版へのアップデートを推奨 |
Safariと「写真」の高速化テク
補足として、個別のアプリの高速化についても少し説明しておきましょう。まずWebブラウザのSafariでは、ブラウザキャッシュという表示高速化のためのファイルが自動で生成されます。通常は表示の高速化に役立ちますが、長期間利用しているうちに不具合が生じることもあります。
この場合の基本は、キャッシュをクリアすることです。ただし、標準の状態ではメニューにこの項目はありませんので、環境設定から開発メニューを表示してキャッシュをクリアしましょう。次に同じページを再表示した際にかえって遅くなることもありますが、基本的にはWebブラウズ時の不具合の多くは解消されるはずです。
Webブラウザと並んで使用頻度が高いであろう「写真」アプリについても、フォトライブラリを再構築することで表示の不具合が解消したり、動作速度が改善することがあります。普段から写真やビデオの管理に使っていて、ライブラリのサイズが大きくなっている人は試してみる価値はあるでしょう。ライブラリの容量によって所要時間が変わりますので、こちらも時間の余裕のあるときに実施するのがおすすめです。
ここまで、macOSのシステムとアプリの標準機能による高速化とメンテナンスについて解説してきました。これらの作業を効率的に行うためにサードパーティのメンテナンスツールを使うという選択肢もあります。しかし、インターネットから直接ダウンロードできる無料ツールの中にはAppleの公証を受けていないものや、マルウェア(コンピュータウイルス)など悪質なものも存在します。
もしくは、そこまで悪質な挙動でなくても、個人情報の収集や使用ログの収集、広告の表示を目的としたPUP(潜在的に迷惑なアプリ)もあります。そのため、基本的にAppleによる審査をクリアしている「App Store」で配布しているツールから選ぶことをおすすめします。
また、2020年12月以降は、App Storeで配布するすべてのアプリの詳細ページに「Appのプライバシー」という項目が表示されるようになりました。ここではそれぞれのアプリのプライバシー方針が掲載され、収集するデータの種類、データとユーザーの紐付け、ユーザーのトラッキングをしているかなどの情報が確認できます。アプリを利用する前にこれらの項目も確認しましょう。
なお、セキュリティ面を考えると市販のセキュリティソフトの導入も視野に入ってくるでしょう。これらのソフトはバックグラウンドで動作を監視し、アプリ起動時にスキャンするため、Macのパフォーマンスに影響を及ぼす場合もあります。しかし、環境設定から「Time Machine」など定期的に動作するアプリを除外しておけば、動作への悪影響を最小限に抑えられます。