Mac Info

「Macの起動が遅い」を解消する“正しい”高速化テクニック

電源ボタンを押してからデスクトップが現れるまでの起動の時間は、Macを使っていればいるほど遅くなりがちです

 「最近なんだかMacの起動が遅いんです。どうにかなりませんか?」。Macユーザー歴30年になる筆者がよく聞かれる質問です。購入したときはあんなに早かったのに、Macを使い続けているとだんだん起動が遅くなってしまう……。誰しもが一度は経験することでしょう。でも、ご安心ください。遅さの原因はさまざまですが、正しいテクニックを知っていればユーザー自らで解決することが可能です。ただし、ネットなどには間違った方法が載っていたり、新しいアーキテクチャを採用したM1チップ搭載のMacでは使えない方法があったりするので注意が必要。ここでは、Macの起動の高速化にまつわる最新のテクニックを解説していきます。

Macの高速化……でもその前に

 もしMacが遅くて困ると思ったら、Googleなどの検索エンジンで「Mac 遅い 理由」、「Mac 高速化」などのキーワードで検索するのではないでしょうか。多くの検索結果が表示され、さまざまな記事がヒットするでしょう。しかし、注意してほしいのは、そうした記事で解説されている対策方法には効果の大きいものもあれば、現在は使われていなかったり、逆効果になってしまったりするものがあるということ。なかには、アフィリエイト目的かな? と首を捻ってしまう方法もあります。そこで、ここではMacの「起動が遅い」場合に有効な正しい高速化の手法を順に整理していきたいと思います。

 まず、手軽に試せる高速化テクニックとしては、①「再起動する」、②「起動項目を整理する」、③「macOSやアプリを最新版にアップデートする」の3つが挙げられます。再起動は不具合が生じているアプリやプロセスを確実に終了することで遅さの原因を解消できますし、ログインするさいに自動的に読み込まれるアプリやプロセスである起動項目を最小限にすれば起動までの時間を短縮できます。また、ソフトウェアが何かしらの問題を抱えていることでMacの起動に影響している場合がありますので、OSやアプリをつねに最新バージョンに保っておくのも大事です。どれも時間がかかるものではありませんので、Macの起動が遅いと感じたらすぐに試してみましょう。

システム環境設定の[ユーザとグループ]パネルで[ログイン項目]を表示すると、自動的に起動するアプリの一覧が表示されています。必要なもの以外は削除しておくことでログインのスピード改善が期待できます

従来手法が通じないM1 Mac

 次に簡単に行なえるのは、④「SSDやHDDの空き容量の確保」です。Macの内蔵ストレージの空き容量が少ないと、Macの起動だけでなく、使用中の速度も遅くなります(製品寿命にも直結します)。定期的にゴミ箱を空にする機能を有効にしたり、macOSに標準搭載されるストレージ最適化機能を利用したり、iCloudなどのクラウドサービスや外部ストレージにデータを移行したりして、ストレージの消費量を削減しましょう。目安としては、少なくともストレージの10~20%以上は空き容量を確保したいところです。

SSDの空き容量の少なさは、Macの起動はもちろんすべての性能に悪影響をおよぼします。Appleメニューの[このMacについて]→[ストレージ]タブから自分のMacの状況を確認しましょう
[ストレージ]タブの右上にある[管理]をクリックすると、macOSに標準搭載されている各種ストレージ管理機能を利用できます

 また、意外に見落としがちな手軽な方法として、⑤「セーフモードで起動」があります。Macを[Shift]キーを押しながら起動するセーフモードは、起動ディスクを検証して必要に応じてディレクトリの問題を修復したり、フォントキャッシュやカーネルキャッシュ、そのほかのシステムキャッシュファイルを削除したりしますので、Macを使っているうちに自然に起きた問題を解消するのに役立ちます。

Intel Macでセーフモードを有効にするには、電源を切った状態から[Shift]キーを押したまま電源ボタンを押し(コールドスタート)、ログインウィンドウが表示されたら指を離します。画面の右上に「セーフモード」と表示されていればOKです

 さらに、⑥「SMCとNVRAM/PRAMのリセット」も試す価値ありです。SMC(システム管理コントローラ)は、おもに電源や各種センサー類、ノート型のMacではバッテリやキーボードバックライトなどの機能を管理するコントローラのこと。一方、NVRAM(不揮発性ランダムメモリ)もしくはPRAM(パラメータRAM)は、音量や画面解像度、起動ディスクや時刻などを電源オフ時にも保管できる小容量のメモリに書き込んでおき、起動時にその設定内容を読み出してMacのログイン時の設定をすばやく反映させます。これらに問題が生じているためにトラブルや性能低下が起きている場合は、リセットすることで効果が認められるでしょう。

Apple T2プロセッサ搭載の有無などモデルによってSMCのリセット方法は異なりますが、Intel Macでは電源ボタンの長押しやキーコンビネーションによってリセットできます
Intel Macでは、起動時に[command]+[option]+[P]+[R]キーの同時押しでNVRAM/PRAMをリセットできます。ファームウェアパスワードを設定してある場合は「macOS復旧」で無効にしておきます

 ただし、ここで注意したいのはIntel製CPUを搭載したMac(Intel Mac)と、Apple自社開発のM1チップを搭載したMac(以下、M1 Mac)では事情が異なる点です。M1 Macをセーフモードで起動するには、電源ボタンを10秒間程度押し続けると表示される「スタートアップマネージャ」から行ないます。一方、「SMCとNVRAM/PRAMのリセット」に関しては、Intel Macでは電源ボタンの長押しやキーコンビネーションによって行なえましたが、M1 Macではシステムの起動プロセスが変わっため廃止されています。

M1 Macでは起動時に電源ボタンを長押しすると「スタートアップマネージャ」が表示され、ここから起動ボリュームの選択や「macOS復元」、セーフモードでの起動などMacのメンテナンスに必要な機能を呼び出せます

効果絶大のクリーンインストール

 ここまでユーザーが比較的簡単に行なえるテクニックを紹介してきましたが、それでも改善されない場合は、やや面倒にはなりますが、⑦「macOSの再インストール」を試してみましょう。Macを使っていると知らず知らずのうちに内部にキャッシュと呼ばれる不必要なデータが溜まっていたり、何かしらの原因でOSが動作不良を起こしている場合があり、これが遅さの原因になっていることが考えられます。「macOSの再インストール」と聞くと面倒に思うかもしれませんが、Macはデータや設定を残したままOSだけを再インストールすることが可能です。再インストールの時間はかかるものの、そのあとは再セットアップ等をする必要はなくMacを使うことができます。

 もし、OSの再インストールでも効果が見られない場合は、最終手段とも言える、⑧「macOSのクリーンインストール」です。Mac内のデータや設定をすべて削除して初期化することになりますので、インストール後はこれまで使っていたデータや設定などの再セットアップが必要になりますが、Macを工場出荷状態から使いはじめることになりますので最大の効果を期待できます(macOSのクリーンインストールの場合は言うまでもありませんが、macOSを再インストールする場合にも、何かしらのトラブルに備えて実行前に必ずMacのデータのバックアップが必要です)。もし、これでも症状が改善されない場合は、Macのハードウェアの問題だったり、そもそもMacが古い場合が考えられますので、マシンの買い替えを検討するほうがいいでしょう。

Intel製CPUを搭載したMacの場合は、Macを再起動してグレーの画面が表示されたらすぐに[command]キーと[R]キーを同時に押します。「macOSユーティリティ」が表示されるので「macOSを再インストール」をクリックして、以降は指示どおりしたがって行けばmacOSの再インストールが行なえます
macOSのクリーンインストールは、macOSユーティリティ画面から「ディスクユーティリティ」で起動ボリュームを選択して消去し、「APFS」でフォーマットします。その後「macOSを再インストール」で工場出荷時に戻ります。ただし、ユーザーデータが完全に削除されること、事前に「Macを探す」を解除しておくなど注意が必要です

効果が望めない「間違った」高速化テク

 なお、インターネットで見かける高速化の手法として、⑨「『ディスクユーティリティ』でアクセス権を修復する」、⑩「メモリ解放ソフトを利用する」、⑪「アンチウイルスソフトやユーティリティツールを使う」、⑫「ダークモードなど視覚効果を無効にする」、⑬「デスクトップを整理する」などがあります。しかし、これらは以前は有効だったものの現在のmacOSでは効果が薄い/ない、もしくは逆効果なものです。

 まず、システムファイルのアクセス権については、OS X El Capitan(10.11)以降はmacOSが自動的に修復してくれるため、「ディスクユーティリティ」などを使って手動で修復する必要はありません。また、メモリの解放については、OS X Mavericks(10.9)に搭載された「メモリ圧縮」機能の搭載以降は有効性がありません。どちらも未だにネットに記事が掲載されている場合がありますが、現在は高速化にはつながらない手法です。

 さらに、サードパーティ製のアプリのなかにはMacの高速化を謳うものがありますが、なかにはAppleの公証を受けていないツールもあります。現在のmacOSでは悪質なソフトウェアからMacを保護するセキュリティ技術「システム整合性保護(SIP)」がデフォルトで有効化されているため、そもそもインストールに適していません。そのほか、視覚効果のオフやデスクトップの整理に関しては、心理的な効果以外の意味は見い出せないでしょう。

 ここまで見てきたように、Macの起動を高速化する手段はさまざまありますが、どれが効果があるのかはユーザーの環境次第です。ただし、少なくとも①~⑧のテクニックに関しては間違ったやり方ではありませんので、遅い! と感じたら順に試してみてほしいと思います。また、Macの起動が遅くならないようにするには、ログイン項目を整理したり、無駄なデータを削除したり、不要なソフトを削除したりするといった定期的なメンテナンスが重要となります。いざ! というときの高速化の手法だけではなく、日頃のMacのケアの方法もしっかりと知っておきましょう。