続・バッファロー「WZR-HP-G300NH」
~NAS、メディアサーバー、NASのWebアクセスを試す



品名バッファロー「WZR-HP-G300NH」
購入価格11,800円
購入日2009年12月
使用期間1カ月半

「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです。

 バッファローのルータ「WZR-HP-G300NH」の記事を1月に掲載したが、NAS機能なども試して見たので、続編としてお届けする。

●「WZR-HP-G300NH」のNAS機能

 NAS(Network Attached Storage)はLANに直接つなぐことができるストレージ(普通はHDDを指す)だ。最近では大きさに関してはUSB接続のHDDと変わらないものも出てきたが、価格は大体3割くらいは高い。逆に言えばUSB接続のHDDならその分お安く手に入るのは皆様ご存知の通り。

 「WZR-HP-G300NH」は嬉しいことにUSB接続のストレージをNAS化する機能が組み込まれている。接続できるストレージは1台のみで4パーテーションまでと制約はあるが、1TBを越える容量のHDDが安価で出回っている昨今、容量が不足するような使い方ができる人もそうそういないだろう。

 さらに、面白いことに、「WZR-HP-G300NH」がNAS化できるのはHDDだけではない。USBでつながるストレージであれば、1台4パーテーションまでの制約はあるがいろいろつなげてしまう。USBメモリが使えるのは当然として、USBハブはダメだが、メモリカードリーダに対応しているのでたとえばSDメモリーカードも使えてしまう。ホットプラグ対応だから急に古いストレージの中身を引っ張り出したくなった時にも対応できる。節電機能があるので電気代の気になる人も安心だ。

専用のUSBコネクタを使って外部ストレージと接続する。USBメモリも利用可能取り外しの際は、写真の「USB EJECT」ボタンか、[NAS-ディスク管理]の「取り外し」ボタンを使う

 「WZR-HP-G300NH」が認識・フォーマットできるのはFAT12/16/32とXFS形式。ただし「WZR-HP-G300NH」のフォーマット機能は、32GBを越えるパーテーションをFAT32でフォーマットできない。必要なときは別途フォーマットソフトを用意しよう。

 もっとも、以降で紹介するベンチマーク結果からも分かる通り、大容量ストレージを扱う際は、速度面ではXFSの方が有利だし、ディスクの使用効率の高さ、デフラグ要らずな仕様等、他にもXFSの方が優れている面が多い。FAT32であれば取り外してWindows PCにつないで即使うこともできるが、XFSもLinuxであればつないで即使うことができる。一般にはまだ遠い存在のLinuxだが、たまにバックアップしたり緊急時にファイルの取り出しをする程度であれば、インストール要らずなLive CDやLive USBのLinuxでその都度対応するのもありだと思う。

[NAS-ディスク管理]HDDが認識された状態Windowsからみた共有フォルダ。共有名は管理画面の[NAS-共有サービス]のエアステーション名の項目で変更できるXFSでフォーマットしたディスクはLinuxなら扱える

 アクセス制限は「読み書き可」「読み取り専用」「登録ユーザーのみ読み書き可」の3種類。

●外付けHDDとUSBメモリを使ったベンチマーク

 今回測定に使ったのは、バッファローのUSB接続HDD「HD-CL1.0TU2-WH」(1TB)と、サンディスクのUSBメモリ「Cruzer Colors+」(4GB)。「HD-CL1.0TU2-WH」はFAT32フォーマットとXFSフォーマットで、「Cruzer Colors+」はFAT32フォーマットで測定した。測定はいずれもWindows 7上のCrystalDiskMark2.2で行なった。

HD-CL1.0TU2-WH。同梱物は、HDD本体、USBケーブル、ACアダプタ、取扱説明書同梱ソフトは、フォーマッター、TurboUSB(高速化)、Picasa、DigiBookブラウザ(写真管理、写真集作成)など。HDDにプリインストール本体正面。一番上に見えるのがパワー・アクセスランプ
本体背面。通気孔、セキュリティスロット、USBコネクタ、DCコネクタが縦に並ぶ本体上面。通気孔とパワー・アクセスランプ本体底面。通気孔とシリアル及び型番。ゴム足の保護シールは剥がして使う

 それでは、実際につないで、どのくらいの速度が出るのか見ていこう。

 まずはUSB接続HDD「HD-CL1.0TU2-WH」の場合。

11n(150Mbps)でつないだUSB外付けHDD(FAT32)1GbpsでつないだUSB外付けHDD(FAT32)
11n(150Mbps)でつないだUSB外付けHDD(XFS)1GbpsでつないだUSB外付けHDD(XFS)

 結果は、11n接続の場合、FAT32フォーマットの際は読み込み約17Mbps/書き込み約26Mbps、XFSフォーマットの際は読み込み約33Mbps/書き込み約42Mbpsだった。同じハードでもフォーマットの違いで、読み込み約2倍/書き込み約1.6倍の速度差があった。

 続いて、1Gbps(ケーブル)接続の場合だが、FAT32フォーマットの際は読み込み約87Mbps/書き込み約59Mbps、XFSフォーマットの際は読み込み約109Mbps/書き込み約77Mbpsだった。11n接続の場合と比べて差は縮まったが、フォーマットの違いで読み込み書き込み共1.3倍近くの速度差があった。

 また、11n接続と1Gbps(ケーブル)接続を比較してみると、FAT32フォーマットの際は読み込み約5倍/書き込み約2倍の速度差が、XFSフォーマットの際は読み込み約3倍/書き込み約1.8倍の速度差があった。

 面白いことに、11n接続と1Gbps(ケーブル)で読み込み速度と書き込み速度の関係が、FAT32の場合もXFSの場合も、読み込み速度<書き込み速度から読み込み速度>書き込み速度という具合に逆転している。

 次にUSBメモリ「Cruzer Colors+」の場合。

11n(150Mbps)でつないだUSBメモリ(FAT32)1GbpsでつないだUSBメモリ(FAT32)

 結果は、11n接続の場合、読み込み約20Mbps/書き込み約30Mbpsで、1Gbps接続(ケーブル)の場合、読み込み約88Mbps/書き込み約52Mbpsだった。USB接続HDDと比べると、読み込み速度はわずかに速い程度で、書き込み速度は4~7Mbps程度遅いという結果になった。

 以上の結果に、参考までにローカルドライブ及びUbuntu 9.10 共有ドライブを使った速度測定結果を加えてまとめたのが以下の表になる。

【表】測定結果
ハードフォーマット接続規格readwrite
MB/SMbpsMB/SMbps
Windows 7NTFSCドライブ59.12484.3159.71489.14
Ubunutu 9.10 共有Ext311n4.8839.9810.8889.13
Ubunutu 9.10 共有Ext31Gbps45.93376.26105.6865.08
理論値
100Mbps12.2110012.21100
HDCL1.0TU2FAT3211n2.0616.913.2126.31
HDCL1.0TU2FAT321Gbps10.6387.087.2559.38
HDCL1.0TU2XFS11n4.0833.45.1141.48
HDCL1.0TU2XFS1Gbps13.29108.879.3576.57
Cruzer Colors+FAT3211n2.4319.93.730.28
Cruzer Colors+FAT321Gbps10.787.656.3552

●メディアサーバー

 WZR-HP-G300NHはメディアサーバー機能を搭載している。メディアサーバー機能を使うとLANを通じてメディアファイル(画像・音声・動画ファイル)を手軽に共有・視聴できるようになる。具体的には、本機のものも含め、複数のハードウェア(メディアサーバー)にまたがったメディアファイルすべてを、分類・整理した状態でリストアップ・視聴できる。対応機器は、WindowsなどPCだけでなく、ゲーム機やAV家電など多岐に渡る。

Windows Media Player 12ではPVConnectと表示されたPS3ではWZR-HP-G300NHのアイコン画像が表示された

 対応ファイル形式は、手持ちのファイルで確認したところ、Windows Media Player 12では、JPG、BMP、TIF、PNG、MPEG-2、WMV、DivX、MP3、AAC、M4A(Apple Losslessは除く)であれば再生及びタグ情報の認識が正しく行なわれていた。さらに、OGGやFLACにも対応していることは確認できたが、こちらは再生環境によっては対応できない。ちなみに、WZR-HP-G300NHに搭載されたメディアサーバーは、Windows Media Playerでの表示から、米国Packet VideoのPVConnectメディアサーバー(=DLNA準拠のUPnPメディアサーバー)の同等品だと思われる。対応ファイル形式はPVConnectの資料が参考になるかもしれない。

 なお、メディアサーバーに詳しい人の中には送出先に合わせてファイル形式を変換するトランスコーディング機能を期待する人も居るかもしれないが残念ながら搭載していないようだ。

 使い方は、あらかじめUSB接続のHDD等をつないで(NASと共用)設定画面でメディアサーバー機能をオンにして、あとは必要に応じてメディアファイルのコピーとデータベースの更新を行なえばよい。なお、データベース更新時にサブフォルダの中身もチェックされるので、整理しやすいように適宜フォルダを作って構わない。

 個人的にはデータベースの自動更新機能は欲しいと思うのだが、ファイル数が増えてきた時の処理負荷を考えるとやむを得ないのかもしれない。ネットワークドライブに音楽ファイルを置いてiTunesを使っているような人ならわかると思うのだが、たまに起きる楽曲データベースの更新は非常に時間のかかる作業だからだ。

●NASのWebアクセス機能

 「WZR-HP-G300NH」はNAS化したドライブをブラウザベースのUIを通じて外部から利用できるようにする「Webアクセス機能」を搭載している。PPPoEクライアント機能を使ったり、上位に接続しているルーターでDMZを設定するなどして、外部から直接「WZR-HP-G300NH」が見えるようにする手間やリスクをかけなくても使える。初心者向きとは言えないが、初心者でも使えてしまう易しい機能だ。

 アクセス制限は「読み込みのみ可」「登録ユーザーのみ読み書き可、もしくは読み込みのみ可」の3種類。ユーザーの登録は[NAS-ユーザー管理]で行なう。なお、サブフォルダにアクセス制限はできない点に注意したい。

 アクセス方法だが一般的なISPユーザーであればbuffalonas.com経由で誘導してもらうのが一番簡単なようだ。他にも、ダイナミックDNSサービスで取得した静的なホスト名や、通常のDNSサービスを使った静的なホスト名も使うことができる。

 初回アクセス時は、接続の安全性が証明できない旨の警告画面をブラウザが開くはずだが、その際はメニュー従って接続を続行すればよい。

アクセス制限をするときはあらかじめ[NAS-ユーザー管理]でユーザーを登録しておく。ユーザーが登録されていないとアクセス制限はかけられないさらに、[NAS-共有フォルダー]で「Webアクセス設定」にチェックNASのWebアクセス機能を有効にするには、[NAS-Webアクセス]で設定変更する
Webアクセス機能を使うときはbuffalonas.comを使うのが便利だ。なおbuffalonas.comへのユーザー登録作業はこの管理画面を出ることなく完了する親切設計だブラウザによって表示は異なるがセキュリティ証明書に関する警告を出される。しかし、そのまま続行して構わないWebアクセス画面でNASの共有フォルダを開いたところ

 なお、特にルーターモードで利用する時の注意点だが、ISPが提供するセキュリティフィルタにひっかかってしまうことがある点に注意したい。Webアクセス画面が開いて、ダウンロードもちゃんと開始するのに、必ず途中でダウンロードが中断される、というような症状の場合はISPのセキュリティフィルタに引っかかった可能性が高い。実際に使用する際はあらかじめセキュリティフィルタをオフにしておこう。

●まとめ

 「WZR-HP-G300NH」に搭載されているNAS機能、メディアサーバー機能、Webアクセス機能はどれも使わずに置いておくのはもったいないくらいの機能だ。簡単に使い始められる点もいい。特にNAS機能はフォーマットされているHDDがあれば、文字通りつなぐだけで使い始められる(Windows Vista/7の場合)。メディアサーバー機能についてはOS同梱のものもあるのでどちらを使うか悩むところだが、OSの再インストールやPC本体の買い替えに影響されず動き続けるライブラリとして一定の魅力はある。Webアクセス機能に関しては同様のサービスもあるのでどちらを取るかというところだが、いつでも使える大容量対応のファイル交換機能としてのアドバンテージはある。

 あえて何かを言うとすれば、Webアクセス機能については、いっそセットアップを誘導してくれるウィザード的なものがあれば嬉しかったかもしれない。本機自体の設定項目は少ないのだが、上位ルーター、モデム、ISPのセキュリティフィルタなど、気を回さなければいけないことがあるので。

 1点ないものねだりはしたが、どれも使って損の無い機能だ。もし本機を手に取る機会があれば是非活用することをおすすめしたい。

(2010年 2月 8日)

[Text by 井上 繁樹]