買い物山脈

ミニLEDの4Kモニターをまた購入。「27M2V」の画質は期待通りの仕上がりだった

製品名
Innocn「27M2V」
購入価格
11万円(セール価格)
購入時期
2023年12月
使用期間
約2週間
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです
27型パネルとミニLEDを採用するInnocnの「27M2V」。デザインは前回紹介した27M2Uとほとんど変わらない

 Innocnの「27M2V」は、昨年末に以下の関連記事で紹介した27M2Uと同じく、27型のパネルを採用する液晶モニターだ。ミニLEDの性能が大幅に向上し、HDMI 2.1やUSBハブ機能への対応など、27M2Uで残念に思っていた部分を解消した新製品である。

 「安いから買うはNG」だが、「欲しいから買うはOK」を信条としている筆者としては、27M2Uの購入から半年と経っていないものの、買うしかあるまいという結論にいたった。そもそも作業環境ではマルチモニターを丸ごとリプレースすることを想定しているのだから、2台目の液晶モニターを購入すること自体は問題ない。ということで今回は、購入した27M2Vについていろいろと検証していこう。

ミニLEDの領域分割がさらに細分化、基本スペックも強化

 27M2Vでも27M2Uと同じく、バックライトにミニLEDを採用している。まずは簡単にミニLEDの特性を解説しよう。

 一般的な液晶モニターではパネルの背面に、光源となるLEDなどを搭載する。そしてPCの利用中には、そうした光源が常時点灯した状態になっている。液晶モニターのドットに組み込まれた素子がシャッターの役割を果たし、その光源の色を変更したり、遮ったりすることで液晶モニターに映像を表示している。

 対してミニLEDでは、光源となるLEDの発光領域を細かく分割し、表示する映像の状況に合わせて点灯/消灯したり、光を弱めたりといった制御を行なっている。

 こうした特性の違いが一番よく現われるのが、暗い場面だ。一般的な液晶モニターでは、バックライトの光源が常時点灯しているため、真っ黒な場面でもバックライトの光が漏れてしまい、かすかにグレーがかかった状態に見える。

 しかしミニLED搭載モデルでは、暗い場面では光源となるバックライトのLED自体を消灯する。そのため暗い場面はより暗く、そして明るい部分をより明るくしやすく、コントラスト比を高めやすいのだ。前回の検証でも紹介したが、ミニLEDモデルの「黒」は、本当に黒い。

 こうした特性もあって、LED光源の分割領域が多ければ多いほど、こうした表現力は高まる。前回購入した27M2Uではこの光源が384の領域に分割されているということだが、27M2Vではさらに1,152の領域に細分化された。27M2Uと比べても、さらに精細で美しい映像を表示しやすくなっているということだ。

Amazonの製品紹介では、1,152の領域で分割されたLEDを搭載するミニLEDの仕組を解説している

 また基本スペックもかなり強化された。4K解像度ながらも、DisplayPortでの接続では160Hzのハイリフレッシュレートに対応する。また、こうしたハイリフレッシュレート化に伴い、HDMIはHDMI 2.1に対応し、HDMIでの接続でも144Hzのハイリフレッシュレートが利用できるようになった。

 Type-Cを利用した映像入力機能とUSB PD対応の給電機能はそのままに、さらにUSBハブ機能も利用できるようになった。これも27M2Uにはなく、せっかくType-Cを搭載しているのにもったいない部分だったので非常にうれしい。

 以下の表は27M2Vと27M2Uの主なスペックを比較したものだだが、HDMI 2.1やハイリフレッシュレートへの対応が目を引くところだ。

【表】27M2Vと27M2Uのスペック比較
メーカー名InnocnInnocn
製品名27M2V27M2U
パネルサイズ27型27型
解像度3,840×2,160ドット3,840×2,160ドット
HDR対応HDR1000HDR1000
リフレッシュレート 160Hz60Hz
ミニLEDの領域分割 1,152384
DisplayPortDisplayPort 1.4×1DisplayPort 1.4×1
HDMI HDMI 2.1×2HDMI 2.0×2
Type-CType-C×1Type-C×1
Type-Cの供給電力90W90W
USBハブ機能 搭載非搭載
内蔵スピーカー5W×25W×2

 価格も相変わらず安い。ミニLEDを搭載する高機能な液晶モニター自体はまだ非常に少なく、実売価格も20~30万円が主流だ。しかし27M2VはAmazonの販売価格で12万5,000円。12月末に購入したときは1万5,000円のクーポンが付いて11万円だった(さらに12,500ポイント付き)。

1月下旬の段階では、1万6,000円割引きのクーポンのほかに、1,250ポイントが付与されていた

ミニLEDによる表現力の高さは折り紙付き、PCゲームも快適に

 シルバーを基本色としたゴツゴツとしたデザインは、27M2Uと同じだ。どちらかと言えばゲーミングモデルに近く、作業用モニターとしてはやや主張が強いものの、見慣れれば特に気にならない。

 上部と左右は狭額縁で、表示領域と外枠の隙間は7~8mmといったところでかなり狭い。狭額縁の液晶モニターを並べてマルチモニターにすると、デスクトップ同士が近く表示されるため見やすく使いやすい。筆者の場合は特に重視するポイントの1つである。

背面はゲーミングモデルでよく見かける無骨なデザイン
額縁部分は非常に狭い

 スタンドも27M2Uと同じものが付属しているようだ。パネルを上下に移動して高さを調整する機能、上下左右に向きを変える機能、90度回転させて縦型で利用するピボット機能にも対応する。ケーブルをまとめて引き出す穴もある。実売価格8~10万円の4K対応液晶モニターでは当然の装備であり、価格帯に合わせた利便性は確保している。

スタンドには、上下に液晶モニターの高さを変更できる機能を備える
スタンド下部には、ケーブルを通してまとめやすい穴がある

 外観と言うか付属品でちょっと変わったのがACアダプタで、27M2Uでは180Wモデルであるのに対し、本機では240Wモデルだった。付属する導入マニュアルには「ハイリフレッシュレート時は消費電力が上がる」という記述があり、その辺の影響かとも思われる。

 モニターケーブルとしてHDMI 2.1対応のHDMIケーブル、DisplayPort 1.4対応ケーブル、DisplayPort Alternate Mode対応のType-Cケーブルが付属するほか、PCからUSBハブを利用するために接続するType-AとType-BのUSBケーブルが付属する。USBハブの機能については後述するが、簡易的なKVMとしても利用できた。

映像入力端子の構成はHDMI 2.1が2基、DisplayPort 1.4が1基、Type-Cが1基という構成で、27M2Uと同じ。ただし本機ではアップストリームポートのType-Bと、USBハブ用のUSB 3.0ポートも装備する
平べったい大きめなACアダプタを同梱する。出力は240Wだった

 ミニLEDとHDRを有効にしたときの表示性能の高さは、前回レビューした27M2Uとほぼ同様だ。動画配信サイトで4K解像度とHDRに対応した都市の夜景のサンプル動画を表示してみたところ、夜の闇に包まれた暗い場面は本当に暗く、きらびやかなイルミネーションは鮮やかでグラデーションも美しい。

 また本機ではLEDの制御領域が大きく増えており、その分表示性能も高くなっているはずだ。ただその点に関しては、体感的にはそれほど違いはないようにも思った。それだけ、27M2Vや27M2Uが搭載するミニLEDの制御能力が高いということでもあるのだろう。ともあれ実際の表示性能は、今まで使ってきた5、6年前の液晶モニターとは比べ物にならない

標準ではミニLEDは有効になっていない。OSDの[ゲーミング設定]から、[ローカルディミング]を有効にする
またHDR機能を利用する場合は、まず27M2VのOSDにある[ピクチャ設定]から、[HDR]を有効にしよう。今回は[標準]に設定してテストした
さらに接続しているPCの設定アプリにある[システム]の[モニター]から、[HDR]を有効にする
HDR内にはHDR非対応コンテンツ表示時の明るさを設定するバーがある。必要に応じて調整しよう

 ハイリフレッシュレートについては、付属のDisplayPortケーブルやType-Cケーブルで接続した場合に160Hz、HDMIケーブルなら144Hzとスペック通りの機能が利用できることを確認した。さすがにこの価格帯の液晶モニターで、本体のスペックに見合わない低いグレードのケーブルをバンドルするということもないようだ。

 ハイリフレッシュレートの検証は、Ryzen 9 5900Xと、GeForce RTX 3070搭載ビデオカードを組み合わせた自作PCに、レインボーシックス シージをインストールして行なった。

 プレイ人口が多いPCゲームの中でも描画負荷は低めであり、4K解像度でもハイリフレッシュレートの恩恵を受けやすいタイトルだ。今回のテストではグラフィックス設定の品質を[最高]にしてプレイしたところ、くっきりとした映像がヌルヌルとスムーズに動く様子を確認できた。

リフレッシュレートは、設定アプリのモニターから設定する
フレームレートとリフレッシュレートを同じ状態に保ち、画像のブレを防ぐV-Syncを有効にしたときのベンチマークテストでは、すべての場面で160fpsを保った

複数のPCを併用するユーザーはKVM機能にも注目

 27M2VのUSBハブ機能だが、最初はアップストリームポートのType-Cと接続したPCから利用できるシンプルなUSBハブかと思った。しかしType-Bポートも搭載しているので不思議に思って確認してみると、どうやらKVMスイッチ機能にも対応していた。KVMとは「Keyboard Video Mouse」の略で、KVMスイッチ機能とはPC切り換え機能のことだ。

隣り合うType-CとType-BポートにそれぞれUSBケーブルを挿し、どちらからUSBハブ機能を利用するかを設定できる

 スイッチの切り換えは、Type-CとType-Bの二系統だ。OSDから映像入力をType-Cにすると、Type-Cで接続するノートPCなどからUSBハブに接続したキーボードとマウスが利用できる。HDMIやDisplayPortに変更すると、Type-Bに接続したPCからUSBハブに接続したキーボードとマウスが利用できる。

 映像入力を切り換えるだけで、キーボードやマウスの接続先も自動で切り換わることを確認した。またOSDにはUSBハブの接続先を選択する機能もある。この機能を使えば、DisplayPort接続のPCとHDMI接続のPCを切り換えることも可能。ただこの場合、映像入力端子を切り換えてもUSBハブの接続先は連動しないので、映像入力の切り換えとUSBハブの切り換えで2回操作が必要になる。

OSDから映像入力を切り換えると、USBハブの接続先も自動で切り換わる
同じくOSDから、USBハブの接続先のみを変更する機能もある

 こうしたKVMスイッチ機能は、メインPCのほかにサブPCなどを併用している場合に便利な機能だ。普段はデスクトップPCをメインで使っていても、サブのノートPCをType-C経由で接続すれば、デスクトップPCで利用しているキーボードやマウスを、ノートPC側で使えるようになる。

 デルの液晶モニターでは、KVMでのアップストリーム用USBポートと映像入力端子を自由に組み合わせられるモデルもあるが、そこまで多機能ではない。とは言え、やはり搭載していれば便利なのは間違いなく、個人的には非常にうれしい誤算だった。

 こうした細かな使い勝手はもちろん、動画再生時の映像の品質やハイリフレッシュレート時にくっきりとした映像が滑らかに動く様子を見ると、今まで使ってきた5、6年前の液晶モニターとはレベルが違う。

 液晶モニターはCPUやビデオカードとは違い、あまり頻繁に買い換えを考える機材ではない。そのため最新の状況やその機能性を、積極的にはチェックしない傾向があるユーザーも多いだろう。筆者にしてもそうした傾向はないでもなかったが、今回のような驚きがあると、やはりそれなりのタイミングで液晶モニターも買い換えていかなければならないな、と改めて思った。