買い物山脈
超激安のミニLED搭載4K対応モニター「27M2U」を購入。光の鮮やかさと舞台が暗転した瞬間の「黒」に驚く
2022年12月31日 07:01
- 製品名
- Innocn「27M2U」
- 購入価格
- 5万7,800円(セール価格)
- 購入時期
- 2022年9月
- 使用期間
- 約1カ月
長くPCや周辺機器に関する仕事をしていると、たまにビックリするような製品が、あまり聞かないメーカーから出てくることがある。今回購入したInnocnの「27M2U」もその1つだ。7万円弱という価格ながら「ミニLED」に対応するということには正直驚いた。
他社のミニLED搭載液晶モニターや液晶TVの価格を考えると、正直ちょっと信じられない。とは言え、仕事場で利用している液晶モニターのリプレースを考えていた筆者としては、かなり心動かされたのも事実であり、結局購入してしまった。今回はこの27M2Uについて、いろいろと検証していこう。
多数のLEDバックライトを精密に制御するミニLED
ミニLEDとは、バックライトとして利用するLEDの素子を多数組み込んで、「必要な部分のみを点灯する」というかなり特殊な制御を行なうバックライト機能のことだ。こうした制御により、明るいところは明るく、暗いところは暗くというコントラストの表現力が大きく向上する。
簡単に原理を説明しよう。一般的な液晶モニターのパネルには、有機ELのような自発光機能はないのはご承知の通りだ。そのため光源としてバックライトを搭載しており、液晶パネルの画素をシャッターのように使うことで、バックライトからの光量や色を調整し、映像を表現している。
ただこうした構造上、バックライトの光を完全に遮ることは難しい。たとえば真っ黒な場面でも、薄いグレーがかかったように見えるように感じる人は多いだろう。画素自体が自発光するため、画素自体の点灯を消すことで「黒」を表現できる有機ELと比べると、前述のコントラストや色再現性に劣るという弱点がある。
こうした弱点を補う1つの方法として、いくつかのメーカーが開発し、採用しているのがこのミニLEDだ。ミニLED搭載の液晶モニターでは、バックライトとして利用するLED光源を多数搭載する。そしてそれぞれのLED光源を、画面の状態に合わせて細かく制御する。
1つの画面でも暗い部分ではLEDの光量を低くしたり消したり、明るい場所では光量を高めたりと言った制御をきめ細かく行なうことで、映像素子自体が自発光できる有機ELと同じような仕組を作り、高いコントラスト比を実現する。
いろいろはしょった部分はあるが、おおまかに考えればこんな技術と考えてよい。そして画素とバックライトのミニLEDを精密に制御しなければならないこともあり、ミニLEDを搭載する液晶モニターや液晶TVはかなり高い。
たとえば、ASUSのプロクリエイター向け液晶モニター「ProArt」シリーズでこのミニLEDを採用しているのだが、いずれも20万円を超える高性能モデルである。なのに27M2Uは、Amazonの販売価格で6万9,800円。筆者は9月に行なわれた1万2,000円の割引セールで購入したため、5万7,800円だった。
ただ安いとは言っても、約6万円は簡単には出せない金額ではある。事前にいろいろと調べたところ、一番重要な画質では肯定的な評価をしているユーザーが多かったため、えいやっと購入ボタンを押した。ちなみに現在も割引きセール中で、8,500円引きのクーポンが配布されている。
ミニLED機能とHDR機能は27M2U側で有効にする必要がある
27M2Uは、27型パネルを搭載する液晶モニターだ。つや消しのシルバーを基調とした、鋭角的なデザインを採用している。正直なところ、あまり高級感のある色味や質感ではない。スタンド部分にはスイベルやチルト、画面の回転機能のほか、液晶パネル部分の高さを調整する機能を搭載するなど、一般的な4K対応液晶モニターらしい機能は備えている。
なお、27M2Uについてはすでにレビュー記事が上がっているので、基本的な機能についてはそちらも参照してほしい。
映像入力端子はHDMI 2.0が2基、DisplayPort 1.4が1基、90WのUSB PD対応給電機能とDisplayPort Alt Modeに対応するType-Cが1基という構成で、これも最近の高機能液晶モニターとしては平均的な構成である。せっかくType-Cを搭載しているのだから、USBハブ機能くらいは欲しかった。
今回は付属のDisplayPortケーブルでテスト機と接続したところ、標準状態でも自然な色合いの映像を楽しめた。27M2Uは、仕事場のメインPCに接続する液晶モニターとして利用するつもりだったので、この時点でひとまずは安心だ。
底面右に5つのボタンを装備するが、一番右は電源ボタン。ほかの4つのボタンを使ってOSDを呼び出し、各種設定を行なう。一昔前のOSDの構成でちょっと面倒だが、設定自体はそれほど頻繁にいじるものでもないので、個人的には許容範囲内。それでもType-Cを搭載しているのであれば、PCから制御できるユーティリティが欲しかった。
そして気になるミニLED機能だが、実は標準状態では有効になっていない。OSDの項目から[ローカルディミング]という項目を[オン]にする必要がある。さらにミニLEDの特性を最大限に貸すためにも、OSDからHDR機能を有効にしておこう。
現在仕事場でメインPCに接続しているレノボの「ThinkVision P27」とLGの「27UD58-B」は、いずれも5、6年前の液晶モニターであり、色鮮やかでコントラスト比に優れる映像を表示できる「High Dynamic Range」(HDR)規格に対応していない。こうした部分も、買い換えを考えるきっかけになっている。
ともあれローカルディミングとHDRを有効(設定は標準)にして、さらにWindows 11の設定アプリからもHDRを有効にすると、はれてHDRコンテンツを視聴できるようになる。結構めんどくさい作業ではあるので、Windowsのウィザードなどを利用して設定できるようになると便利だろう。
黒の美しさは今までの液晶モニターの比ではない
これまでに有機EL TVや有機ELモニターを搭載したノートPCを何度かレビューしており、漆黒の闇に映像が浮き上がる有機ELモニターの美しさはよく知っているつもりだ。そしてそうした本物の有機ELモニターと比べると、非現実的なまでの奥行き感を感じるほどではなかったのも事実ではある。
ただし、HDR対応のPCゲームや4K対応の各種配信動画で、雷が暗闇に走ったときの一瞬の光、そして舞台が暗転したときの暗闇のリアルさは、おおげさではなく一般的な液晶モニターの比ではない。勘違いかと思って、部屋の光源をすべて消して真っ暗な中で今まで使ってきた液晶モニターと比べても、やはり明確な違いがあった。「黒」が、しっかりと黒いのだ。
また、そうした黒から明るい部分へのグラデーションも非常に美しく、これは購入した甲斐があったなあ、と思った。今回はPCだけではなく、PlayStation5(PS5)やメガドライブミニ、ネオジオミニといったゲーム機も接続してみたところ、HDRに標準で対応するPS5の利便性は高い。
PS5では、27M2Uと付属のHDMIケーブルで接続するだけでHDR用の設定ウィザードが起動し、適切な設定に変更できる。ゲーム側でも対応済みであれば、ユーザーのほうで何か設定する必要はなかった。
PS5用のいくつかのゲームソフトをプレイしたところ、HDRによる光や闇の表現はWindows版と似たような印象を受けた。個人的には、4K解像度をサポートする「Ultra HD Blu-ray」対応の映画ソフトを鑑賞したときの感動が一番大きかったように思う。そもそも今までは、フルスペックの環境でこれを再生する機会はなかったわけだし……。
たとえば「天気の子」では、何度か場面切り換えで暗転するが、前述した通り真っ暗な画面になる。また途中で雷が落ちる場面があるのだが、画面を走る稲光の質感もすごい。液晶TVやPCと接続した液晶モニターでは味わえなかった、映画館での体験がここにあるように思った。もちろん部屋は真っ暗にして鑑賞しよう。
ちなみにHDRモードを有効にすると、ゲームやUltra HD Blu-ray映像ソフトの視聴時は問題ないが、一般的な作業中だとちょっと明るくて目が疲れてくるようにも思う。しかしOSDでは輝度やコントラスト比を調整する項目がグレーアウトしてしまい、調整できなくなる。
そこでWindowsの設定アプリにある[システム]の[モニター]から、さきほどのHDR項目を確認してみると、明るさを設定できるバーがあった。とりあえずこれを使って明るさを低くして調整することで、目への負担は少なくなったように感じる。
液晶モニター自体の設定はそのままに、コンテンツプレーヤーのほうから調整することを想定しているのだろう。複数台の機器を接続し、それぞれにマッチした設定で利用することを考えると、なるほど合理的だ。
ただ、本当に明るさしか調整できない状態なので、もうちょっと細かい設定を行ないたい場合は同じく設定アプリからHDRの設定を無効にするとよい。すると液晶モニターのOSDでグレーアウトしていた項目が元に戻り、設定できるようになる。
画質面では文句なし、しかし新機種も気になる……
あまり聞いたことのないメーカーではあるので不安はあったが、実際に使ってみるとかなりよい製品であることが分かった。最後の運用面でちょっと悩ましい結果になりそうだったが、HDRの設定をショートカットキー割り当てることで解決。当初の予定通り、メインPCとゲーム機兼用のモニターとして、また長く使っていきたいものだ。
ところがつい先日、同じInnocnからやはり27型で4K対応の新モデルが発売された。パネルサイズやミニLEDの搭載など27M2Uに似たスペックやデザインを採用するほか、HDMI入力端子はHDMI 2.1対応でUSBハブ機能に対応、さらには4K解像度で160Hzのハイリフレッシュレートにも対応するという。
現状ではまさしくハイエンドと言ってよいほどのスペックであり、本来は20~30万円でもおかしくない製品だが、Amazonの販売価格は12万5,000円。そして現在も1万5,000円引きのクーポンが付いており、何と11万円だ。うーん、本当に悩ましい……。