買い物山脈
14型にして約1kgの高性能ノート「ThinkPad X1 Carbon」を3年ぶりに新モデルへ買い替え
2019年8月29日 12:22
- 製品名
- ThinkPad X1 Carbon(2019年モデル)
- 購入価格
- 216,216円
- 購入時期
- 2019年7月11日
- 使用期間
- 約1カ月
かねてより愛用しているレノボの薄型14型ノート「ThinkPad X1 Carbon」を、2016年以来3年ぶりに買い替えた。本製品は1年ごとに新しいモデルが登場しているので、世代を2つ飛ばして新しいモデルを手に入れた計算になる(第4世代→第7世代)。
今回は、3年前に購入した第4世代モデルが今も使えているにもかかわらず買い替えを決めた理由に加え、USB PD(Power Delivery)まわりの挙動についても検証を行なったのでお届けする。製品はすでに平澤氏によるレビューが掲載されているので、ベンチマークなどを含む製品の詳細はそちらをご覧いただきたい(より軽く薄くなった約1.09kgの14型ノート「ThinkPad X1 Carbon 2019年版」を検証参照)。
買い替えにいたった3つの理由
筆者が今回買い替えにいたった理由は大きく分けて3つある。
1つは、これまで所有していた2016年モデルが、USB Type-Cを搭載していないことだ。ThinkPad X1 CarbonがType-Cを搭載したのは2017年モデルからで、そのためUSB PDによる充電などの恩恵を受けることができなかった。
USB Type-C搭載モデルへの買い替えでUSB PDが使えるようになれば、ACアダプタや充電器を、USB PD対応のスマートフォンやタブレットと兼用可能になる。筆者の私物でiPad ProやPixel 3など、USB PD対応のデバイスが増えてきたため、早いタイミングで統一したかったというわけだ。
もう1つ、外出先で利用する頻度が増え、LTE搭載モデルへの買い替えが必要になったのも理由だ。従来もLTEはオプションとして用意されていたが見送ったため、外出先で使う場合はスマートフォンによるテザリングを行なっていた。テザリングのこまめなオン/オフをわずらわしく感じる機会が増えてきたため、買い替えを考えはじめたというわけだ。
これに加えてもう1つ、筆者自身のPC環境の変化も理由として挙げられる。従来モデルを購入した3年前は、別のデスクトップ機がメインマシンとして存在しており、ThinkPadは外出先や遠征先のホテルで使用するサブマシンという位置づけだった。
しかしその後デスクトップを処分し、すべての作業をThinkPadで行なうようになったため、スペック的にもうワンランク上のモデルが必要になった。具体的に不足していたのはメモリ(従来モデルは8GB、今回は16GB)で、オンボード仕様であとからの増設ができないため、メモリを増やすために本体ごと買い替えざるを得なかったというわけだ。
ちなみにThinkPad X1 Carbon以外の機種への買い替えは、まったく頭になかった。画面の広さと軽さは従来モデルでもなんら不満はなく、筆者的に欠かせないトラックポイントも搭載している。さらに従来モデルを3年間使っていてハード/ソフトとも故障や不具合は皆無だったのも大きな理由だ。
コストを抑えつつ直販モデルをカスタマイズ
今回は、同社のオンラインショップで直販モデルをカスタマイズして注文したので、筆者なりの各パーツの選定理由を紹介しておく。興味のない方は読み飛ばして次に進んでいただいて問題ない。
まずプロセッサ。上位の製品ほど望ましいのは言うまでもないが、今回は予算の関係もあり、下位モデルを選択した。もっとも下位と言ってもCore i7なので、さしあたって不足はない(ちなみに従来モデルではCore i7-6500U)。
OSは、リモートデスクトップを使う関係でWindows 10 Proが必須なのだが、選択肢にないためやむなくHomeを選び、購入後にProへのアップグレードを行なった(後述)。メモリは前述のとおり、16GBを選択。ここは迷う余地がない。
SSDは、大容量モデルが大幅値引きされており心を奪われそうになるが、筆者はほとんどのデータをPCではなくNASに保管しており、従来モデルでも150GBちょっとしか使っていないため、最小容量の256GBモデルを選択。2モデルのうち、高速なPCI Express接続のNVMe対応品を選択している。
ディスプレイは、マルチタッチ対応、WQHD(2,560×1,440)対応、4K(3,840×2,160)対応と候補は目白押しだが、普段は外部ディスプレイを接続していることもあり、あえて標準のフルHD(1,920×1,080)対応の非光沢パネルを選択。SSDにも言えるが、従来モデルの使用状況を鑑みつつ、過剰なコストはかけないという方向性だ。
このほか、NFCは「なし」、内蔵カメラももっとも標準的な720pのモデル、電源アダプタはUSB Type-C対応の45Wと65Wの選択肢から65Wを選択。そして今回の目的の1つであるWWAN対応を選び、カスタマイズは完了だ。
これにマルチディスプレイ構築に必要なオプション「ThinkPad Thunderbolt 3 ドック 2」を追加し、Eクーポン割引で価格は239,009円(本体216,216円、ドック22,793円)。前回が16万円台だったので5万円ほど高額だが、メモリを増量していること、また今回は発売直後で値下がりのないタイミングで注文しているのでやむを得ない。
ちなみに以下の画面では出荷予定日が7月18日~19日と、注文日(7月11日)から約1週間後となっているが、実際には同社工場からの出荷が7/30、配送センターからの出荷が8/5で、筆者の手元に届いたのは8/6だった。明らかに説明が不足しており、印象はよくない。納期最優先で購入する人は、よく確認したほうがよいだろう。
Windows 10 Proにアップグレードしていざ利用開始
さて3週間ほど待たされたのち届いた本製品だが、手持ちの第4世代モデルよりもひとまわり小さいものの、ルックス自体にそれほど違いはない。指紋認証センサーが中央寄りに、電源ボタンが側面へと移動しているが、見た目はまぎれもなくThinkPad X1 Carbonだ。普段使っていない人が見れば、どちらが新製品かわからないだろう。
さて、購入後にまず行なったのは、Windows 10をHomeからProへとアップグレードすることだ。コントロールパネルを開き、購入済みのライセンスを追加すればよい。従来の2016年モデルも同様に、購入後にProへとアップグレードをはたしており、とくに問題はない。
LTEについては、手持ちのIIJmioのSIMカードを使用した。APN情報を自力で入力する必要はあるが、接続自体はとくに問題なくあっさりと成功。普段はオフにしておき、必要なときは画面右下の「クイックアクション」で「携帯ネットワーク」のアイコンをオンにして利用する。
以上が利用開始に当たって行なった設定だが、製品としての使い勝手については、従来とそれほど差を感じない。画面サイズやキー配置は変わっておらず、またプロセッサも世代は違えど同じCore i7なので、当然と言えば当然だ。今回の第7世代モデルはマイクやスピーカー機能の強化が売りだそうだが、筆者の用途とは方向が違うため評価できない。
もっとも、メモリ容量が倍になっているため、いざ画像の編集を行なうと、1つ1つの処理が圧倒的に速い。また筆者は普段、仕事に必要なWebサイトを20個ほどまとめてChromeで開くことがあるのだが、以前は開き終わるまで1分近くかかっていたのが、十数秒で完了するようになった。このあたり、やはりメモリの恩恵は大きいと感じる。
USB PDの挙動をチェック
さて、本製品の電源コネクタはUSB Type-Cであり、USB PDによる急速充電に対応している。ACアダプタは45Wと65Wの2種類から選べることからして、45W以上あれば利用可能、65Wにも対応できることが示唆されているわけだが、むしろどれだけ低い供給電力で使えるかは気になるところだ。
手持ちのUSB PD対応充電器やモバイルバッテリを総動員して挙動をチェックしたところ、本製品は18W(9V/2Aまたは12V/1.5A)あれば、きちんとUSB PDの規格に則って電力供給が行なわれるようだ。これが12W(5V/2.4A)だと、警告が出て給電自体が行なわれない。
つまりこれは、市販されている最大出力18WのUSB PD充電器やモバイルバッテリを使えば、本製品に給電が可能なことを意味する。USB PD対応をうたう市販の充電器やモバイルバッテリで、最大出力が18Wに満たない製品は現在ほぼ皆無なので、そうした意味でも心強い。
試しに、最大18W対応のUSB PD充電器としてはもっともメジャーな、iPad Pro付属のUSB Type-Cアダプタに本製品をつなぎ、Wi-Fi経由でのブラウジングやテキスト入力などの作業を行なってみたが、2時間40分ほどかけて65%から99%までバッテリが回復した。減りが緩やかになるだけで回復はしないだろうと予想していたので、これはうれしい誤算だ。
これならば、1台のUSB PD充電器をスマートフォンと共有し、ふだんは本製品に給電しつつ、必要なときだけ取り外してスマートフォンの充電に使い、終わったらまた元に戻すという運用も可能だろう。今後の外出や遠征では、積極的に使っていこうと考えている。
ちなみに、1時間でバッテリをどれだけ回復させられるか、USB PD充電器の最大出力ごとに実験したところ、18Wだと20→31%、45Wだと20→77%、65Wで20→88%となった。前述のように12Wは接続していると見なされず、また15Wは認識はされるものの20→19%と逆にバッテリは減少したので、実質使えるのは18W以上ということになる。
今回は手持ちの機材の関係で30Wはチェックできていないが、45Wと65Wはそれほど極端な差はないため、本製品用にUSB PD充電器を調達するならば、コスパや本体サイズも考慮すれば、45Wの充電器がベターだろう。今回のBTOでは45Wではなく65WのACアダプタを選んだが、45Wでよかったかもしれない。
ポート類の配置を除けば不満らしい不満はなし
今回の第7世代モデルの購入にあたっては、メモリ容量を除き、BTOの選択肢のなかでもかなりひかえめな選択をしている。そのためこの第7世代モデルならではの進化はあまり感じなかったが、これはある意味、ベースモデル自体の完成度が高い証明だろう。BTOの選択肢は格段に増えており、買いやすくなっていることは間違いない。
実際に使って逆にマイナスだと感じたのは、タッチパッド上のボタンがかつてに比べて平らになったことくらいだろうか。今回のモデルではじめてこうなったのか、それとも第5世代や第6世代ですでにこうだったのかは不明で、もう少し厚みのあるほうが操作しやすいのだが、そのぶん本体の薄型化に貢献していると考えれば許容できる。
個人的に次期モデルでぜひ見直してほしいと感じたのは、USB Type-Cポートの配置だ。本製品のUSB Type-Cポート×2は、そのいずれもが左側面に搭載されている。これが左右に1ポートずつ搭載していれば、充電時に左右どちらにもつなげて便利なのだが、本製品は左側面にしか接続できない。
本製品と同時期に発売されたサブディスプレイ「ThinkVision M14」はUSB Type-Cポートが左右に1つずつ搭載されており、どちらにも接続できる(かつどちらも給電に使える)ので、比較すると余計にもったいなく感じる。
またこれ以外にも、必ずしも手が届きやすい位置になくてもよいであろうHDMIポートが前方寄りにあったり、その隣りにあるUSB Type-Aポートと非常に紛らわしかったりと、ポート配置は個人的にはやや不満がある。次回のモデルチェンジ時期にはUSB Type-Cの普及度にも変化が生じているはずで、そのあたりのブラッシュアップも期待したい。
ともあれ、これまで3年にわたって使用してきた第4世代モデルも、ここまで故障や不具合は一切なく使えており、製品としての信頼性は非常に高い。買い替えの目的を達成できたことで、今回のモデルも長い付き合いになりそうだ。