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より軽く薄くなった約1.09kgの14型ノート「ThinkPad X1 Carbon 2019年版」を検証

レノボ・ジャパン「ThinkPad X1 Carbon」2019年モデル

 レノボ・ジャパンは、14型モバイルノートPC「ThinkPad X1 Carbon」の2019年モデルを発売した。CPUなどのスペック面を強化するだけでなく、従来モデルからのさらなる薄型化と軽量化を実現することで携帯性を高め、ハイエンドモバイルPCとしての魅力が向上している。すでに発売済みで、直販価格は179,172円から。

さらなる薄型化と軽量化を実現し携帯性を向上

 ハイエンドビジネスモバイルノートPCとして根強い人気のある、レノボのThinkPad X1 Carbon。年々機能面や携帯性が追求され、魅力が高められてきているが、通算7代目となる2019年モデルでは、さらなる携帯性の追求が実現されている。

 本体デザインは従来モデルからほとんど変わっていない。マット調のブラック筐体は、シリーズおなじみのフラットかつ直線的なデザインを採用しており、ほかにはない独特の存在感がある。天板にはThinkPadシリーズおなじみのThinkPadロゴに加えて、2018年モデルから採用している“X1”ロゴも引き続き配置しており、ハイエンドモデルであるX1シリーズであることをさりげなくアピール。これ見よがしな雰囲気は一切なく好印象だ。

ディスプレイを開いて正面から見た様子。従来モデル同様の狭額縁仕様を採用し大型液晶と筐体の小型化を両立
天板。従来同様のフラットな天板は、カーボン素材を採用し軽さを剛性を両立。2018年モデルから採用されているX1ロゴもある

 なお、2019年モデルでは特殊な半透明塗料を採用することでカーボンの織り目がそのまま見える“カーボン柄天板”が新たに用意され、4K液晶搭載モデルに採用される。試用機はカーボン柄天板ではなかったが、ほかとは違う見た目をアピールしたいなら、4Kパネルを選択し、カーボン柄天板モデルにするのもおすすめしたい。

4Kディスプレイ搭載モデルでは、特殊な半透明塗料を採用しカーボンの織り目がそのまま見える特徴的な天板を採用

 サイズは、約323×217×14.95mm(幅×奥行き×高さ)となる。フットプリントは従来モデルと比べて幅が0.5mm、奥行きが0.1mm短くなっているが、ほとんど変わらないと言える。それに対し高さは1mm薄くなっている。わずか1mmとはいえ、高さが15mmを下回っており、薄い鞄などへの収納性が向上したと言っていいだろう。

 また、重量は約1.09kgからと、従来モデルから100gほど軽くなった。実測では1,095gとなっていたが、本体の薄型化と合わせて、さらなる軽量化を実現したことで、携帯性が高められている。

天板はカーボンの内部構造を改良することで剛性を落とすことなく10%の軽量化を実現
試用機の重量は実測で1,095gだった。従来より100gほど軽くなり、携帯性が高められている

 この、筐体の薄型化と軽量化を実現する1つの要因となっているのが天板だ。天板の素材には、従来同様カーボンファイバーを採用しているが、その構造が見直されている。従来モデルのカーボン天板は、低密度カーボンファイバー網を積層高弾性カーボンプレリグではさむ構造を採用することで優れた剛性と軽さを両立していた。

 それに対し2019年モデルのカーボン天板では中心の低密度カーボンファイバー網に改良を施すことで、剛性を維持しつつ10%の軽量化を実現。この天板の進化が、本体の軽量化と薄型化双方に貢献しているという。

 もちろん、優れた堅牢性も一切失われていない。2019年モデルでもThinkPadシリーズでおなじみの、”拷問テスト”と呼ばれる過酷な堅牢性試験を実施し、米国国防総省が定める調達基準「MIL-STD-810G」の12項目に準拠する優れた堅牢性が確認確認されている。そのため、従来同様に安心して毎日持ち歩けるだろう。

正面
左側面。高さは14.95mmと従来モデルから1mmの薄型化を実現
背面
右側面
底面。フットプリントは323×217mmmm(幅×奥行き)と、従来モデルとほぼ同じ

4K液晶は新たに4K表示対応パネルも選択可能に

 ディスプレイは、従来モデル同様に14型液晶を採用。パネルの種類はIPSで、表示解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)、WQHD(2,560×1,440ドット)に加えて、新たに4K(3,840×2,160ドット)表示対応パネルも選択可能となった。このうち、4KパネルではHDR 400準拠のHDR表示や10bitカラー表示、Dolby Visionに対応した高性能パネルとなっており、映像や画像処理などのクリエイティブ用途にも対応。

 また、フルHDパネルでは10点マルチタッチ対応タッチパネル搭載モデルや、水平方向の視野角をせばめて覗き見を防止する「ThinkPad Privacy Guard」機能を内蔵するパネルなども選択可能だ。

 試用機には、WQHD表示対応パネルが搭載されていた。パネル表面は非光沢処理となり、外光の映り込みがほとんど感じられず、文字入力などの作業も快適に行なえるだろう。加えて、発色の鮮やかさも申し分ない。非光沢液晶ながら赤の鮮やかさはなかなかのもので、光沢液晶にも十分劣らない印象で、写真や映像を扱う作業も問題なく行なえるはずだ。

ディスプレイは14型IPS液晶を採用。表示解像度はフルHD、WQHD、4Kから選択可能で、タッチ対応モデルや、覗き見を防止する「ThinkPad Privacy Guard」機能搭載モデルも用意
試用機ではWQHD表示対応パネルを搭載。非光沢液晶で外光の映り込みがほとんど感じられず、発色も鮮やかで表示品質はかなり優れる印象だ
ディスプレイ部は、従来同様180度開く

定評のキーボードやポインティングデバイスもそのまま継承

 ThinkPadシリーズと言えば、扱いやすさにこだわったキーボードとポインティングデバイスが大きな特徴の1つとなっており、もちろん2019年モデルにもしっかり受け継がれている。

 キーボードは、従来モデル同様のアイソレーションキーボードを採用。主要キーのキーピッチは19mmフルピッチを確保。キーストロークも同様に約2mmと、薄型モバイルノートPCとして破格の深さとなっており、非常に扱いやすい。

 キーは適度な硬さとクリック感があり、打鍵感も良好だ。もちろん、配列は標準的で無理な部分はなく、一般的なモバイルノートPCでは省かれることの多い[Page Up]や[Page Down]も独立したキーで用意するなど、扱いやすさは群を抜いている。このあたりのこだわりを一貫して崩さない姿勢はさすがのひと言で、人気を維持する理由の1つだ。

 ポインティングデバイスも、従来同様にスティックタイプのトラックポイントとクリックパッド双方を備える「ThinkPadクリックパッド」を搭載する。トラックポイントは、細かな操作には向かないものの、文字入力が中心の作業中にホームポジションから大きく手を動かさずにカーソル操作が行なえる。そして、操作状況に応じて扱いやすいポインティングデバイスを選んで利用でき、操作性を大きく高められる点は大きな魅力となるだろう。

従来モデル同様の扱いやすいアイソレーションタイプのキーボードを搭載
主要キーのキーピッチは19mmフルピッチを確保。配列も標準的でタッチタイプもまったく問題ない
ストロークは約2mmを確保。適度な堅さとしっかりとしたクリック感もあり、打鍵感は非常に良好だ
キーボードバックライトも搭載しているため、暗い場所でのタイピングも快適だ
ポインティングデバイスも、従来同様にスティックタイプのトラックポイントとクリックパッド双方を備える「ThinkPadクリックパッド」を採用する

オンライン会議の需要増に応えスピーカーとマイクを強化

 近年、1億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジである、労働環境を見なおす取り組み、いわゆる「働き方改革」の推進に注目が集まっている。レノボでも、テレワーク制度を積極的に活用したり、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会期間通に2週間連続で全社テレワークや特別休暇を実施するなど、働き方改革に積極的に取り組んでいる。

 そういった働き方改革に対応できるように、X1 Carbon 2019年モデルにもいくつかの新機能が取り入れられているそれが、オンライン会議をより快適に行なえるようにする、スピーカーとマイクの搭載だ。

 スピーカーについては、キーボード奥に高音域スピーカーを2個、底面に低音域スピーカーを2個の、合計4個のスピーカーを搭載。それぞれのスピーカーの穴の位置や直径、間隔などを最適化するとともに、低音ユニットの大型化などを実現することで、サウンド再生品質が高められている。大きな音を割れることなく再生できるのはもちろん、人間の声も非常に聞き取りやすくなっている。加えて、Dolby Atmosスピーカーシステムもサポートしており、電話会議だけでなく映像や音楽のサウンドも高品質に楽しめる。

 マイクは、ディスプレイ上部の側面側に4個のマイクを搭載。ディスプレイを開くと上部に4個のマイクが来ることとなり、360度全方向からの音をしっかりとキャッチ。さらに、マイクの搭載位置や、マイク穴の形状なども、人の声の帯域を最大限拾えるように最適化されている。

 こういったスピーカーやマイクの進化を実現することで、とくにオンライン会議での快適性が大きく高められている。今後はモバイルノートPCでもサウンドやマイクの性能が重視される場面が増えると予想されるが、その点でもX1 Carbon 2019年モデルは申し分ない仕様を実現している。

オンライン会議の需要増を受け、4スピーカーかつ4マイク仕様を実現している
キーボード奥には高音域のスピーカーを左右に2つ搭載
底面には低音域スピーカーを左右に2つ搭載。4スピーカーで大音量かつ優れた音質を実現。Dolby Atmosスピーカーシステムもサポートし、モバイルノートとは思えない高音質サウンドを実現している
ディスプレイ上部の側面に左右2個ずつ、計4個のマイクを搭載。ディスプレイを開くと360度全方向からの音を拾うため、オンライン会議でも参加者全員の声がしっかり伝わる

スペックやポート類も充実

 では、X1 Carbon 2019年モデルのスペックを確認していこう。ただ、直販モデルではCPUやメモリ、内蔵ストレージ容量などを自由にカスタマイズできるため、ここでは試用機のスペックを中心に紹介する。

 CPUは第8世代のCoreプロセッサーを採用。試用機にはCore i7-8565Uが搭載されていた。メモリはLPDDR3-2133を採用しており、容量は最大16GB。試用機では最大の16GB搭載していた。内蔵ストレージはSATAまたはPCIe仕様のSSDを選択でき、容量は256GBから最大2TBまで用意。試用機では容量512GBのPCIe SSDを搭載していた。

 無線機能は、IEEE 802.11ac準拠無線LANとBluetooth 5.0を標準搭載。さらにオプションでLTE対応のワイヤレスWANの搭載も可能となっているが、試用機は非搭載だった。

 生体認証機能としては、右パームレストにWindows Hello対応の指紋認証センサーを標準搭載。オプションとしてWindows Hello対応の顔認証カメラも選択可能となっている。顔認証カメラは従来モデルでも選択可能だったが、2019年モデルでは顔認証カメラ選択時にもカメラを物理的なシャッターで隠せる「ThinkShutter」が新たに搭載され、セキュリティが高められている。もちろん、Webカメラ選択時にもThinkShutterが搭載されるので、カメラまわりのセキュリティ性は万全だ。

右パームレストにWindows Hello対応の指紋認証センサーを搭載
ディスプレイ上部中央にはWebカメラまたはWindows Hello対応の顔認証カメラを搭載
2019年モデルより、顔認証カメラにもカメラを物理的に覆える「Think Shutter」が搭載されるようになった

 ポート類は、左側面にThunderbolt 3×2、Gigabit Ethernetアダプタ接続用の専用コネクタ、USB 3.0、HDMI、オーディオジャックを、右側面にUSB 3.0×1の各ポートを用意する。

 また、電源ボタンが右側面に用意されている点も2019年モデルの特徴の1つだ。なお、microSDカードスロットは用意されず、外部メモリカードはアダプタ経由での接続となる。この点は少々残念だ。

左側面には、Thunderbolt 3×2、イーサネットアダプタ接続用の専用コネクタ、USB 3.0、HDMI、オーディオジャックを用意
右側面には、USB 3.0×1を用意。また、電源ボタンもこちらに配置されている

 付属のACアダプタは従来モデル同様にUSB Type-C接続のものとなり、左側面のThunderbolt 3ポートに接続して利用する。ACアダプタはまずまずコンパクトで、付属電源ケーブル込みの重量は実測で260gだった。

付属ACアダプタは出力45Wで、USB Type-C接続のものとなる
ACアダプタの重量は、付属電源ケーブル込みで実測260gだった

申し分ない性能を発揮し駆動時間も十分長い

 では、ベンチマークテストの結果を紹介しよう。

【表1】検証機
ThinkPad X1 CarbonVAIO SX12 VJS12190111B
CPUCore i7-8565U(4コア/8スレッド、1.8~4.6GHz)
ビデオチップIntel UHD Graphics 620
メモリLPDDR3-2133 SDRAM 16GBLPDDR3-2133 SDRAM 8GB
ストレージ512GB SSD(PCIe)
OSWindows 10 Pro 64bit

 今回利用したベンチマークソフトは、ULの「PCMark 10 v2.0.2115」、「PCMark 8 v2.8.704」、「3DMark Professional Edition v2.9.6631」、Maxonの「CINEBENCH R15.0」と「CINEBENCH R20.060」の5種類。比較用として、VAIOの「VAIO S12」の結果も加えてある。

【表2】検証機
ThinkPad X1 CarbonVAIO SX12 VJS12190111B
PCMark 10v2.0.2115v2.0.2115
PCMark 10 Score4,1673,977
Essentials9,0738,903
App Start-up Score12,42612,217
Video Conferencing Score7,4307,473
Web Browsing Score8,0907,730
Productivity6,7435,839
Spreadsheets Score7,6595,382
Writing Score5,9386,336
Digital Content Creation3,2103,286
Photo Editing Score3,8174,146
Rendering and Visualization Score2,1272,113
Video Editting Score4,0764,052
PCMark 8v2.8.704
Home Accelarated 3.03,5133,710
Creative accelarated 3.03,7253,880
Work accelarated 2.04,8522,985
Storage5,0415,073
CINEBENCH R15.0
OpenGL (fps)56.5756.66
CPU702740
CPU (Single Core)176188
CINEBENCH R20.060
CPU1,602-
CPU (Single Core)433-
3DMark Professional Editionv2.9.6631v2.8.6578
Cloud Gate9,60910,453
Graphics Score10,43111,392
Physics Score7,5328,114
Night Raid5,5836,138
Graphics Score5,5776,151
CPU Score5,6186,070
Sky Diver4,9195,031
Graphics Score4,5434,625
Physics Score8,5429,221
Combined score4,8464,920

 結果を見ると、X1 Carbon 2019年モデルが上回る部分と劣る部分があるものの、全体的にはほぼ同等レベルの結果が得られている。比較機のスペックがほぼ同じということもあり当然の結果かもしれないが、VAIO S12はCPUの性能を引き上げる「VAIO TruePerformance」を有効にした結果であり、その点を考慮するとX1 Carbon 2019年モデルの結果はなかなかの好結果であり、CPUの性能をほぼ最大限引き出せていると言えるだろう。

 続いてバッテリ駆動時間だ。X1 Carbon 2019年モデルの公称の駆動時間は最大約18.9時間(JEITAバッテリ動作時間測定法 Ver2.0での数字)となっている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を50%、キーボードバックライトをオフに設定し、無線LANを有効にした状態で駆動時間を計測してみた。

 まず、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて測定した結果は約15時間52分だった。また、PCMark 10のBatteryテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用して計測した結果は11時間41分だった。

 BBenchよりもPCMark 10のBatteryテストのほうが負荷が大きいため、駆動時間は短くなるものの、それでも11時間超を計測しており、申し分ない駆動時間が確保できている。これなら、1日の外出時にバッテリ切れを心配する必要はないはずで、安心して外出先で利用できると言っていいだろう。

性能や利便性重視のモバイルノートPCを探している人におすすめ

 このようにX1 Carbon 2019年モデルは、従来モデルの魅力はそのまま維持しつつ、さらなる薄型化と軽量化を実現。加えて、働き方改革を見据えた機能面の向上も実現したことで、ビジネスモバイルPCとしての魅力がさらに高まっている。これまで、キーボードやポインティングデバイスの扱いやすさ、充実したスペックなどからThinkPadシリーズを選択してきたという人にとっても、それら魅力がまったく失われることなく進化を遂げている部分は、大きな魅力と感じるはずだ。

 近年のモバイルノートPCは、1kg切りの軽さが競われており、1kgを超える重さのX1 Carbonがやや不利なのは確かだろう。ただ、14型液晶を搭載し、優れた堅牢性を備えた上での約1.09kgと考えると、十分に軽いと感じるはずだ。モバイルノートPCに、軽さだけでなく優れた性能や操作性、毎日安心して持ち歩ける優れた堅牢性を求めるなら、間違いなく考慮すべき1台と言える。