Hothotレビュー
日本HP「HP Pavilion 11-h004TU x2」
~Pentium N3510搭載の液晶着脱式PC
(2013/12/12 06:00)
日本ヒューレット・パッカード株式会社は、Pentium N3510(2GHz、ビデオ機能内蔵)を搭載した液晶着脱式PC「HP Pavilion 11-h004TU x2」(以下Pavilion 11 x2)を発売した。価格はオープンプライスで、実売価格は9万円前後だ。今回1台お借りできたので、試用レポートをお届けする。
シンプルで良く出来た着脱機構と、開くとチルトするキーボードドック
Pavilion 11 x2は最近流行となっている、いわゆる2-in-1に属するPCだ。キーボードと液晶が分離できるようになっており、キーボードを付ければ一般的なクラムシェルノートPCとして、キーボードを外せば純粋なタブレット端末として利用できる。
同じ機構を採用した同社の製品としては、海外では8月から「HP Split x2」という名前の製品が発売されているが、こちらはCPUがIvy Bridgeベースで、液晶が13.3型だった。一方でPavilion 11 x2はCPUがBay Trail-Mベース、液晶が11.6型となっている。
また、HP Split x2はキーボードドック側にバッテリとHDDを内蔵する構成で、キーボードドック装着時は大容量を実現できるが、本製品ではHDDが省かれた(バッテリは継続搭載)。しかしながら11.6型への小型化も相まって、公称重量は2.26kgから1.55kgへ大幅な軽量化を実現し、可搬性が向上している。
着脱は非常に容易で、キーボード上部にあるスライド式のスイッチをスライドしながら液晶部分を持ち上げると外れる構造となっている。装着時はそのままコネクタの位置を合わせて嵌めるだけでいい。
ユニークなのは、このスライドスイッチの機構が、外した時にはフックが隠れる側が標準位置、装着時にはフックが掛かる側が標準位置となる点。具体的な仕組みとしては、キーボードドック側には弱めのバネが仕込まれており、取り外し時はフックが隠れる。一方タブレット側のドック接合部にはこのバネより強い磁石が装着されており、装着するとフックが吸い出されてロックする仕組みだ。このため装着時にロックし忘れてどちらか片一方を持った時にもう片方が落ちることはないし、外した時にフックを戻すのを忘れて装着できなくなるということもない。
もう1つユニークなのは、クラムシェルとして開いた時に、接合部がせり上がりキーボードをチルトしてくれる点。キーボードドックの側の接合部は回路や機構などを内蔵する関係上、どうしてもタブレット部よりはみ出してしまうが、これを利用時に機能的なキーボードチルトスタンドとして使い勝手の向上に繋げたのは、なかなか良く考えられていると言えよう。薄型化と使いやすさを両立させたという面からも評価できる。
天板と底面にHP Imprint採用
タブレットの背面(クラムシェル時の天板)とキーボードドックの底面は、先日レビューした「HP Pavilion10 TouchSmart 10-e000」と同様にHP Imprintを採用。深みのある黒に薄いドットパターンが描かれており、シンプルなデザインだ。
Pavilion10が天板とパームレスト部にImprintを採用していたのに対し、本製品は天板と底面で、パームレストは一般的な塗装となっている。ただしこちらのほうが指紋が付きにくく、実用的な観点からすれば上だ。一方、Imprint採用面はPavilion10と同じく指紋が付くと目立ちやすく、クロスファイバーによる手入れが欠かせなくなりそうだ。
本製品はファンレス構造のため、発熱が気になるところだが、PCMark 7などのベンチマーク中はタブレット側中央背面の「HP」ロゴだけが熱くなっていた。確証はないのだが、HPロゴの鏡面部は金属で、ヒートシンクの役割を果たしているのではないかと推測される。
先日Intelの技術説明会で明らかになったAtomの熱制御技術だが、デバイスマネージャーや稼働プロセスなどから、本製品にも適用されていることが分かる。タブレット状態とドック装着状態の両方でPCMark 7を走らせてみたが、有意義な性能差は見いだせなかった。11.6型の筐体はそれなりに熱設計に余裕があるためか、PCMark 7では無線LANモジュールがそれほど動作しないためだ思われる。
キーボードドックのキーは約19mmのピッチが確保されており、タイピングしやすい。タッチパッドも大型で操作しやすく、クリックボタン一体型ながらもPavilion10よりは操作が確実だ。クラムシェルノートとして使うときのストレスはほぼないと思っていいだろう。
排他になるインターフェイス
タブレット側背面のコーナーには、向かって左側に電源ボタン、右側に音量調節ボタンを装備。スイッチ式のボタンはこの3つしかないが、左右で独立されているので押し間違いが起きることはない。背面にはWebカメラがある。
一方タブレット側の底面には、左からDC入力、ドックコネクタ、ヘッドフォン/マイクコンボミニジャック、microSDカードスロットを装備する。この底面の各種インターフェイスはキーボードドックに装着すると完全に隠れるため、常時装着したままにできるmicroSDカード以外は排他使用となる。
キーボードドック側には、左側面にUSB 2.0とステレオミニジャック、右側面にはDC入力とUSB 3.0、HDMI、SDカードスロットを搭載する。マウスとUSBメモリなどを接続する分には不足はないが、Ethernetを搭載していない点はややマイナスだろう。
デバイスマネージャーから確認したところ、キーボードとタッチパッド、SDカードリーダはUSB接続のようである。つまりドックのコネクタは、電源、USB 3.0、USB 2.0、HDMIの信号が通っていると思われる。なお、本体側のmicroSDカードリーダはPCI Express接続のようだ。
液晶はIPS方式で、視野角は比較的広い。色味も不自然さはない。ただし光沢処理で映り込みはある。
オーディオシステムとしては「Beats Audio」への対応が謳われている。ヘッドフォン出力などは申し分ないが、内蔵スピーカーは中域から下が薄い印象。Pavilion10と比較すると筐体が薄いため、エンクロージャの容積などで影響が出るのは致し方ないところだろう。
付属のACアダプタはPavilion10より薄い45Wのタイプ。ACアダプタ自体の可搬性は高いが、電源ケーブルは相変わらず3ピンタイプであり、この辺りは改善の余地があると言えるだろう。しかしウォールマウントアダプタが付属しているため、どうしても持ち運ぶ必要が出てきた時はそちらを利用すれば良い。
BBenchでバッテリ駆動時間を計測したところ、キーボードドック装着時が約9.5時間、タブレット単体時が約6.1時間だった。一般的なノートPCはバッテリ残り5%で休止状態に入るが、本機はデフォルトで3%となっていた。その分加味する必要があるが、一般的なモバイル用途では十分な駆動時間だと言えるだろう。
十分なシステム性能
最後にベンチマークを行なってみた。使用したベンチマークは「PCMark 7」、「SiSoftware Sandra」、「ファイナルファンタジーXIオフィシャルベンチマーク3」の3種類。比較用として、Pentium N3510の前身アーキテクチャを採用したAtom Z2760搭載の富士通「ARROWS TAB Wi-Fi QH55/J」、およびAMD Temash最上位SoCを搭載した日本エイサー「Aspire V5」、そして先日レビューした日本HP「Pavilion10」の結果を加えてある。
Pavilion 11x2 | Pavilion10 | Aspire V5 | ARROWS TAB Wi-Fi QH55/J | |
---|---|---|---|---|
CPU | Pentium N3510 | A4-4000 | A6-1450 | Atom Z2760 |
メモリ | 4GB | 2GB | 4GB | 2GB |
ストレージ | 128GB SSD | 320GB HDD | 500GB HDD | eMMC 64GB |
OS | Windows 8 | Windows 8.1 | Windows 8 | Windows 8 |
PCMark 7 | ||||
Score | 2992 | 767 | 1225 | 1358 |
Lightweight | 1864 | 604 | 679 | 1378 |
Productivity | 1180 | 328 | 355 | 946 |
Entertainment | 2094 | 649 | 1241 | 956 |
Creative | 4600 | 2003 | 2877 | 2815 |
Computation | 6064 | 1427 | 3855 | 3208 |
System storage | 4938 | 1429 | 1515 | 2930 |
RAW system storage score | 3422 | 277 | - | 719 |
ファイナルファンタジーXIオフィシャルベンチマーク3 | ||||
Low | 4072 | 2520 | 3196 | 1424 |
High | 2537 | 1737 | 2206 | 858 |
Sisoftware Sandra | ||||
Dhrystone | 23.5GIPS | 7.33GIPS | 18.21GIPS | 9.14GIPS |
Whetstone | 12.77GFLOPS | 4.54GFLOPS | 12GFLOPS | 5.8GFLOPS |
Graphics Rendering Float | 43.16 Mpixel/sec | 66.7 Mpixel/sec | 115.34Mpixel/sec | 3.11Mpixel/sec |
Graphics Rendering Double | 8.07 Mpixel/sec | 4.34Mpixel/sec | 7.46Mpixel/sec | 0.33Mpixel/sec |
内蔵ストレージがeMMCではなく、SATA 6Gbps接続のSSDで非常に高速であるため、PCMark 7は比較対象内で抜群のスコアを記録。掲載はしていないが、描画中心の「Entertainment」や演算中心の「Computation」以外ではCore i5/HDD搭載機も上回る。一般的な作業はかなり快適だと言っていいだろう。
SiSoftware SandraでCPUとGPUの性能を計測してみると、AMDのTemashと比較するとCPU性能が優秀だが、GPU性能では劣ることが分かる。最大TDPはPentium N3510が7.5W、A6-1450が8Wとさほど変わらない。駆動周波数も考慮すると、ややA6-1450に分があると言えるかもしれない。
ただ、GPUだけでなく整数演算や1コアあたりの性能も重視されるFFXIベンチでは、A6-1450を上回った。もちろんプレイするゲームタイトルのエンジンがGPUに注力するかCPUに注力するかどうか次第だが、こういった古めのゲームではIntelに分があると言えるだろう。
1日中使っていられる1台
Pavilion 11 x2は1日中どのようなシーンでも使えるというのがポイントだ。例えば筆者の場合、会社など取材や会議のメモ取り用としてキーボードドックが活躍し、家に帰ってホームページを閲覧したり、寝る前に動画を見たりするようなシーンではタブレットとして使えばいい。こういった利用では、キーボードドックを会社に置きっぱなしにして、最小限の荷物で移動できるわけだ。
HPは以前の発表会で、近年のユーザーはオフィスでも家でも同じ1台のPCを使うようになり、そのためにPCは両方のニーズに応えなければならなくなったと語っていた。Pavilion 11 x2はまさにその両方のスタイルで使えるPCの代表格だと言えるだろう。仕事用PCと家庭用PCを1本化したいユーザーにとって良い選択肢になるのではないだろうか。