Hothotレビュー
エプソン「Endeavor Pro8000」
~IntelのクライアントPC向け最高峰CPU「Ivy Bridge-E」搭載のフラグシップ
(2013/10/29 06:00)
エプソンダイレクトから登場した「Endeavor Pro8000」は、2011年12月に登場した「Endeavor Pro7500」の後継となるミドルタワーPCであり、CPUとして2013年9月にIntelから発表された「Core i7-4960X」、「Core i7-4930K」、「Core i7-4820K」を搭載したフラグシップモデルだ。
約2年ぶりの更新となり、筐体も「Endeavor Pro7500」のものではなく、2013年6月に登場したHaswell搭載ミドルタワーPC「Endeavor Pro5500」と同じものに変更されている。Endeavor Pro8000は、フラグシップモデルだけあり、性能、拡張性、メンテナンス性の三拍子揃った製品である。今回は、このパワーユーザー向けの製品を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。
Haswellよりも高性能なIvy Bridge-Eを搭載
Endeavor Pro8000は、エプソンダイレクトが販売しているPCの中でもフラグシップに位置する製品であり、PCとしての基本性能は非常に高い。そこでまず、スペックから見ていこう。Endeavor Pro8000は、CPUとして開発コードネーム「Ivy Bridge-E」を搭載していることが特徴だ。Ivy Bridge-Eは、その名称からも分かるように、第3世代CoreプロセッサであるIvy BridgeベースのCPUである。
すでに、開発コードネーム「Haswell」こと第4世代Coreプロセッサが登場しているが、Haswellの最上位モデルCore i7-4770Kが、4コア/3.5GHz/L3キャッシュ8MBという仕様なのに対し、Ivy Bridge-Eの最上位モデルCore i7-4960Xは、6コア/3.6GHz/L3キャッシュ15MBという仕様になっており、演算性能はCore i7-4960Xの方が高くなる(もちろん、Haswellには高度な省電力機能など、進化している点も多いが)。Ivy Bridge-Eは、プラットフォームもLGA2011となり、HaswellのLGA1150とは異なるので、互換性はない。
現時点でIvy Bridge-Eには、Core i7-4960X、Core i7-4930K、Core i7-4820Kの3モデルがあるが、Endeavor Pro8000では、BTOによって、これらの3モデルからCPUを選択できる。なお、Core i7-4960XとCore i7-4930Kは6コアだが、Core i7-4820Kは4コアである。また、Ivy Bridge-Eは、メモリインターフェイスがクアッドチャネルであり、DDR3-1866まで対応する。Endeavor Pro8000では、メモリスロットを8基備えており、最大64GBという大容量メモリを搭載可能なことも魅力だ。チップセットは、Intel X79 Expressである。マザーボードの電源回路には、一般的なチョークコイルよりも効率が良く、耐久性に優れたSFC(スーパーフェライトチョーク)と呼ばれるパーツが多数使われており、品質へのこだわりが感じられる
最大4基のSSD/HDDを搭載可能
ビデオカードの選択肢も多く、NVIDIAのQuadro K2000D、Quadro K600、GeForce GTX 770、GeForce GT 640B、AMDのRadeon HD 7770、Radeon HD 6570から選べる。高い3D描画性能が必要な3D CADソフトや3D CGソフトなどにも余裕を持って対応できる。
ストレージの選択肢も充実している。ケースには、工具を使わずにストレージを着脱可能な3.5インチシャドウベイが4基搭載されており、最大4台のSSDやHDDを搭載できる。ただし、シャドウベイのうち2つはSATA 6Gbp対応で、残りの2つはSATA 3Gbps対応となっている。BTOで選択できる1台目のストレージは、HDDが500GB~2TB、SSDが128GB/256GB/512GBだが、さらに2台目や3台目、4台目のストレージの追加も可能で、RAID 1やRAID 0、RAID 10、SSDをキャッシュとして利用するISRT構成にも対応する。
光学ドライブは、DVD-ROMドライブかDVDスーパーマルチドライブを選択でき、5インチベイを2基装備しているため、2基目の光学ドライブとしてDVDスーパーマルチドライブを搭載することも可能だ。
今回の試用機のスペックは、CPUが最上位のCore i7-4960X、メモリが16GB、ビデオカードがGeForce GTX 770(VRAM 2GB)、ストレージが256GB SSD×2のRAID 0構成、光学ドライブがDVDスーパーマルチドライブというハイエンド構成であった。なお、OSは、Windows 7 Home Premium/Professional/Ultimateのそれぞれ32bit版と64bit版を選択可能であり、試用機にはWindows 7 Professional 64bit版が搭載されていた。
また、キーボードやマウスもBTOで選択でき、PS/2対応の標準的なものから、USB対応製品やワイヤレス対応製品まで用意されている。
インターフェイスも充実
Endeavor Pro8000は、インターフェイスも充実している。背面に、USB 3.0×2とUSB 2.0×6、Gigabit Ethernet、PS/2×2、ライン入力、マイク入力、フロントスピーカー/ライン出力、センタースピーカー/サブウーファー出力、リアスピーカー出力、サイドスピーカー出力を備えるほか、GeForce GTX 770搭載時は、ディスプレイ出力としてDVI-I×1、DVI-D×1、HDMI出力、DisplayPortを備え、3画面同時出力が可能である。
フロントインターフェイスとしては、USB 3.0×2とUSB 2.0×1、ヘッドフォン出力、マイク入力がフロントI/Oユニットとして用意されているほか、マルチカードリーダの搭載も可能だ。マルチカードリーダには、スマートメディア、CF、メモリースティック(PRO-HG対応)、SDカード(SDHC/SDXC対応)、MMCに対応したスロットが用意されているので、デジカメで撮影した写真や動画などのデータの転送などに便利だ。試用機にもマルチカードリーダが搭載されていた。マルチカードリーダは、ふた付きの3.5インチベイに装着されており、隣にはセキュリティロックの鍵穴がある。鍵をかけることで、フロントアクセスベイがロックされ、ストレージの盗難を防げる。
また、フロントI/Oユニットには電源スイッチも用意されているが、フロントI/Oユニットの位置も変更可能であり、本体を机の上に設置する場合は下側に、本体を机の下に設置する場合は上側に配置することで、手が届きやすくなる。
メンテナンス性に優れたツールフリー設計のミドルタワーケース
メンテナンス性に優れたミドルタワーケースを採用していることも、Endeavor Pro8000の魅力の1つだ。このケースは、Endeavor Pro5000やEndeavor Pro5500でも使われていたものだが、非常に好評であったという。まず、ケース上面には、キャリングハンドルが用意されており、本体を移動させる場合に便利だ。Endeavor Pro8000のケースの最大のウリは、ドライバーなどの工具を一切使わずに、拡張カードの追加や内部のメンテナンスなどが可能なツールフリー設計を採用していることである。
左側面のサイドパネルは、背面のストッパーをスライドさせるだけで取り外しが可能であり、さらにケースファンや拡張カードを押さえているステーも、工具を使わずに着脱できる。拡張カードは、ステーによってしっかりと押さえられているため、輸送中の振動などで外れてしまう心配はない。5インチベイも、ネジを使わずにドライブの着脱が可能になっている。フロントパネルも簡単に外すことができ、はめ込みもワンタッチだ。
中でも便利なのが、フロントアクセスベイと呼ばれる3.5インチシャドウベイだ。この3.5インチシャドウベイは、4台分まとめて本体前面から手前に引き出せるようになっている。フロントアクセスベイを引き出したら、さらにその中からHDD/SSDケースを引き出すことで、HDDやSSDの交換や増設を行なえる。もちろん、ホットプラグ対応ではないが、HDDやSSDの交換や増設を、いちいちサイドパネルを開けずに行なえるので、非常に便利である。HDDやSSD固定用のネジもHDDケースに取り付けられているので、ネジを探す必要もない。このフロントアクセスベイは、マルチカードリーダの横にあるセキュリティロックで鍵をかけることができるので、セキュリティ面も安心だ。
拡張スロットは、PCI Express x16が2基(ただし、ビデオカードが装着されているので空きスロットは1基)、PCI Express x8が1基、PCI Express x1が3基(ビデオカードが装着されている場合空きスロットは2基)と、充実しており、すべての拡張スロットで、フルサイズ(長さ312mm)の拡張カードを装着できることも評価できる。
電源ユニットも選択できる
Endeavor Pro8000では、電源ユニットもBTOによって650W仕様と1,000W仕様の2種類から選べるようになっている。どちらの電源ユニットを選択しても、BTOで選べるビデオカードなどの選択肢は変わらない。購入時構成のまま使うのなら、650W電源で十分だが、将来、ビデオカードを2枚差しして使うなど、容量に余裕がほしい場合は1,000W電源をお勧めする。1,000W電源ユニットでは、ビデオカード用補助電源コネクタが4系統用意されており、ハイエンドビデオカードの2枚差しにも対応する。
Ivy Bridge-EとSSD RAIDで非常に高いパフォーマンスを実現
参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark03」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark 2.2」である。比較用として、エプソンダイレクトの「Endeavor Pro5000」とパナソニック「Let'snote LX3」のスコアも掲載した。Endeavor Pro5000は、2011年5月に登場したやや古い機種だが、当時のフラグシップモデルであった、Endeavor Pro7000に次ぐハイエンド機である。
結果は、下の表に示したとおりで、CPU性能、グラフィックス性能ともに、Endeavor Pro5000を大きく上回っていることが分かる。今回試用したEndeavor Pro8000は、6コア12スレッドの同時実行が可能であり、12スレッドをフルに使うようなベンチマークテストでは、さらにEndeavor Pro5000やLet'snote LX3との差が開くことになる。試用機はメモリも16GBと潤沢に搭載しており、2台の256GB SSDによるRAID0構成のストレージの性能も非常に高い。
Endeavor Pro8000 | Endeavor Pro5000 | Let'snote LX3 | |
---|---|---|---|
CPU | Core i7-4960X (3.6GHz) | Core i7-2600 (3.4GHz) | Core i7-4500U (1.8GHz) |
ビデオチップ | GeForce GTX 770 | GeForce GTX 460 | Intel HD Graphics 4400 |
PCMark05 | |||
PCMarks | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 14622 | 12666 | 9379 |
Memory Score | 14461 | 11736 | 8599 |
Graphics Score | 39639 | 20419 | 3302 |
HDD Score | 83566 | 48877 | 56040 |
PCMark Vantage 64bit | |||
PCMark Score | Failed | 19202 | 15540 |
Memories Score | 18421 | 12735 | 8493 |
TV and Movie Score | 9377 | 7317 | Failed |
Gaming Score | 27022 | 21329 | 11030 |
Music Score | 25242 | 19655 | 18077 |
Communications Score | Failed | 18521 | 17972 |
Productivity Score | 24350 | 20149 | 21503 |
HDD Score | 63051 | 38469 | 47907 |
PCMark Vantage 32bit | |||
PCMark Score | 22038 | 17407 | 14111 |
Memories Score | 17485 | 12008 | 8104 |
TV and Movie Score | 9243 | 7237 | Failed |
Gaming Score | 23264 | 18770 | 9699 |
Music Score | 24484 | 18964 | 16543 |
Communications Score | Failed | 18140 | 16043 |
Productivity Score | 22214 | 18192 | 19719 |
HDD Score | 64170 | 39085 | 48117 |
PCMark 7 v1.4.0 | |||
PCMark score | 5682 | 未計測 | 5310 |
Lightweight score | 6120 | 未計測 | 5789 |
Productivity score | 4970 | 未計測 | 4724 |
Entertainment score | 5545 | 未計測 | 3816 |
Creativity score | 7468 | 未計測 | 9986 |
Computation score | 7267 | 未計測 | 16901 |
System storage score | 5644 | 未計測 | 5491 |
Raw system storage score | 8763 | 未計測 | 6121 |
3DMark03 | |||
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks) | 107155 | 56824 | 12856 |
CPU Score | 3814 | 3486 | 2072 |
3DMark | |||
Ice Storm | 291316 | 未計測 | 44155 |
Cloud Gate | 52344 | 未計測 | 4900 |
Fire Strike | 7629 | 未計測 | 721 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |||
HIGH | 10006 | 11092 | 7598 |
LOW | 12038 | 12808 | 10899 |
FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編 | |||
1,280×720ドット 最高品質 | 18028 | 未計測 | 1580 |
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC) | 19478 | 未計測 | 1598 |
1,280×720ドット 高品質(ノートPC) | 22512 | 未計測 | 1894 |
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC) | 25666 | 未計測 | 3350 |
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) | 25499 | 未計測 | 3279 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | |||
DP | 99.97 | 100 | 100 |
HP | 99.97 | 99.97 | 100 |
SP/LP | 99.97 | 99.97 | 100 |
LLP | 99.97 | 100 | 100 |
DP(CPU負荷) | 2 | 5 | 42 |
HP(CPU負荷) | 1 | 2 | 34 |
SP/LP(CPU負荷) | 0 | 1 | 28 |
LLP(CPU負荷) | 0 | 1 | 27 |
CrystalDiskMark 2.2 | |||
シーケンシャルリード | 1,036MB/sec | 370.3MB/sec | 513.8MB/sec |
シーケンシャルライト | 558.7MB/sec | 205.7MB/sec | 455.1MB/sec |
512Kランダムリード | 862.8MB/sec | 316.0MB/sec | 454.6MB/sec |
512Kランダムライト | 494.2MB/sec | 198.9MB/sec | 444.9MB/sec |
4Kランダムリード | 40.78MB/sec | 20.46MB/sec | 24.57MB/sec |
4Kランダムライト | 108.1MB/sec | 43.15MB/sec | 56.09MB/sec |
パフォーマンスとメンテナンス性にとことんこだわる人にお勧め
Endeavor Pro8000は、高い性能とメンテナンス性を誇るミドルタワーPCであり、フラグシップモデルの名に恥じない魅力的な製品である。クライアントPCとしては最高レベルの性能を実現できるため、フルHDを超える4K解像度の動画編集やCAEなど、高い性能を必要とする業務を行なっている人はもちろん、BTO選択肢が充実しているので、とりあえずはスペックを抑えておいて、将来拡張していきたいという人にもお勧めだ。ケースのメンテナンス性は非常に高く、HDDやSSDの増設も簡単にできるので、長い間第一線で使い続けることができるだろう。