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エプソン「Endeavor Pro8000」

~IntelのクライアントPC向け最高峰CPU「Ivy Bridge-E」搭載のフラグシップ

エプソン「Endeavor Pro8000」
発売中

価格:191,100円~

 エプソンダイレクトから登場した「Endeavor Pro8000」は、2011年12月に登場した「Endeavor Pro7500」の後継となるミドルタワーPCであり、CPUとして2013年9月にIntelから発表された「Core i7-4960X」、「Core i7-4930K」、「Core i7-4820K」を搭載したフラグシップモデルだ。

 約2年ぶりの更新となり、筐体も「Endeavor Pro7500」のものではなく、2013年6月に登場したHaswell搭載ミドルタワーPC「Endeavor Pro5500」と同じものに変更されている。Endeavor Pro8000は、フラグシップモデルだけあり、性能、拡張性、メンテナンス性の三拍子揃った製品である。今回は、このパワーユーザー向けの製品を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。

Haswellよりも高性能なIvy Bridge-Eを搭載

 Endeavor Pro8000は、エプソンダイレクトが販売しているPCの中でもフラグシップに位置する製品であり、PCとしての基本性能は非常に高い。そこでまず、スペックから見ていこう。Endeavor Pro8000は、CPUとして開発コードネーム「Ivy Bridge-E」を搭載していることが特徴だ。Ivy Bridge-Eは、その名称からも分かるように、第3世代CoreプロセッサであるIvy BridgeベースのCPUである。

 すでに、開発コードネーム「Haswell」こと第4世代Coreプロセッサが登場しているが、Haswellの最上位モデルCore i7-4770Kが、4コア/3.5GHz/L3キャッシュ8MBという仕様なのに対し、Ivy Bridge-Eの最上位モデルCore i7-4960Xは、6コア/3.6GHz/L3キャッシュ15MBという仕様になっており、演算性能はCore i7-4960Xの方が高くなる(もちろん、Haswellには高度な省電力機能など、進化している点も多いが)。Ivy Bridge-Eは、プラットフォームもLGA2011となり、HaswellのLGA1150とは異なるので、互換性はない。

 現時点でIvy Bridge-Eには、Core i7-4960X、Core i7-4930K、Core i7-4820Kの3モデルがあるが、Endeavor Pro8000では、BTOによって、これらの3モデルからCPUを選択できる。なお、Core i7-4960XとCore i7-4930Kは6コアだが、Core i7-4820Kは4コアである。また、Ivy Bridge-Eは、メモリインターフェイスがクアッドチャネルであり、DDR3-1866まで対応する。Endeavor Pro8000では、メモリスロットを8基備えており、最大64GBという大容量メモリを搭載可能なことも魅力だ。チップセットは、Intel X79 Expressである。マザーボードの電源回路には、一般的なチョークコイルよりも効率が良く、耐久性に優れたSFC(スーパーフェライトチョーク)と呼ばれるパーツが多数使われており、品質へのこだわりが感じられる

Intel X79 Express搭載ATXマザーボードを採用
一般的なチョークコイルよりも効率の良いSFCが多数搭載されている

最大4基のSSD/HDDを搭載可能

 ビデオカードの選択肢も多く、NVIDIAのQuadro K2000D、Quadro K600、GeForce GTX 770、GeForce GT 640B、AMDのRadeon HD 7770、Radeon HD 6570から選べる。高い3D描画性能が必要な3D CADソフトや3D CGソフトなどにも余裕を持って対応できる。

 ストレージの選択肢も充実している。ケースには、工具を使わずにストレージを着脱可能な3.5インチシャドウベイが4基搭載されており、最大4台のSSDやHDDを搭載できる。ただし、シャドウベイのうち2つはSATA 6Gbp対応で、残りの2つはSATA 3Gbps対応となっている。BTOで選択できる1台目のストレージは、HDDが500GB~2TB、SSDが128GB/256GB/512GBだが、さらに2台目や3台目、4台目のストレージの追加も可能で、RAID 1やRAID 0、RAID 10、SSDをキャッシュとして利用するISRT構成にも対応する。

 光学ドライブは、DVD-ROMドライブかDVDスーパーマルチドライブを選択でき、5インチベイを2基装備しているため、2基目の光学ドライブとしてDVDスーパーマルチドライブを搭載することも可能だ。

 今回の試用機のスペックは、CPUが最上位のCore i7-4960X、メモリが16GB、ビデオカードがGeForce GTX 770(VRAM 2GB)、ストレージが256GB SSD×2のRAID 0構成、光学ドライブがDVDスーパーマルチドライブというハイエンド構成であった。なお、OSは、Windows 7 Home Premium/Professional/Ultimateのそれぞれ32bit版と64bit版を選択可能であり、試用機にはWindows 7 Professional 64bit版が搭載されていた。

 また、キーボードやマウスもBTOで選択でき、PS/2対応の標準的なものから、USB対応製品やワイヤレス対応製品まで用意されている。

試用機には、ビデオカードとしてGeForce GTX 770が搭載されていた
GeForce GTX 770では、追加電源端子として、8ピンコネクタと6ピンコネクタが用意されている
試用機のビデオカードはZOTAC製であった
試用機にはkingston製256GB SSDが2基搭載されていた
試用機のキーボードは、PS/2対応の109キーボードであった
試用機のマウスは、PS/2対応の光学式マウスであったが、USB対応マウスやコードレスマウスも選択できる

インターフェイスも充実

 Endeavor Pro8000は、インターフェイスも充実している。背面に、USB 3.0×2とUSB 2.0×6、Gigabit Ethernet、PS/2×2、ライン入力、マイク入力、フロントスピーカー/ライン出力、センタースピーカー/サブウーファー出力、リアスピーカー出力、サイドスピーカー出力を備えるほか、GeForce GTX 770搭載時は、ディスプレイ出力としてDVI-I×1、DVI-D×1、HDMI出力、DisplayPortを備え、3画面同時出力が可能である。

 フロントインターフェイスとしては、USB 3.0×2とUSB 2.0×1、ヘッドフォン出力、マイク入力がフロントI/Oユニットとして用意されているほか、マルチカードリーダの搭載も可能だ。マルチカードリーダには、スマートメディア、CF、メモリースティック(PRO-HG対応)、SDカード(SDHC/SDXC対応)、MMCに対応したスロットが用意されているので、デジカメで撮影した写真や動画などのデータの転送などに便利だ。試用機にもマルチカードリーダが搭載されていた。マルチカードリーダは、ふた付きの3.5インチベイに装着されており、隣にはセキュリティロックの鍵穴がある。鍵をかけることで、フロントアクセスベイがロックされ、ストレージの盗難を防げる。

 また、フロントI/Oユニットには電源スイッチも用意されているが、フロントI/Oユニットの位置も変更可能であり、本体を机の上に設置する場合は下側に、本体を机の下に設置する場合は上側に配置することで、手が届きやすくなる。

Endeavor Pro8000の背面。数多くのインターフェイスが用意されている
背面のインターフェイス部分のアップ。USB 3.0×2とUSB 2.0×6、Gigabit Ethernet、PS/2×2、ライン入力、マイク入力、フロントスピーカー/ライン出力、センタースピーカー/サブウーファー出力、リアスピーカー出力、サイドスピーカー出力が用意されている
ビデオカードの端子部分。試用機にはGeForce GTX 770が搭載されており、ディスプレイ出力としてDVI-I、DVI-D、HDMI出力、DisplayPortを備えている
フロントI/OユニットにUSBポートなどが用意されており、位置も変更可能だ。下側のマルチカードリーダーはBTOによって搭載可能

メンテナンス性に優れたツールフリー設計のミドルタワーケース

 メンテナンス性に優れたミドルタワーケースを採用していることも、Endeavor Pro8000の魅力の1つだ。このケースは、Endeavor Pro5000やEndeavor Pro5500でも使われていたものだが、非常に好評であったという。まず、ケース上面には、キャリングハンドルが用意されており、本体を移動させる場合に便利だ。Endeavor Pro8000のケースの最大のウリは、ドライバーなどの工具を一切使わずに、拡張カードの追加や内部のメンテナンスなどが可能なツールフリー設計を採用していることである。

 左側面のサイドパネルは、背面のストッパーをスライドさせるだけで取り外しが可能であり、さらにケースファンや拡張カードを押さえているステーも、工具を使わずに着脱できる。拡張カードは、ステーによってしっかりと押さえられているため、輸送中の振動などで外れてしまう心配はない。5インチベイも、ネジを使わずにドライブの着脱が可能になっている。フロントパネルも簡単に外すことができ、はめ込みもワンタッチだ。

 中でも便利なのが、フロントアクセスベイと呼ばれる3.5インチシャドウベイだ。この3.5インチシャドウベイは、4台分まとめて本体前面から手前に引き出せるようになっている。フロントアクセスベイを引き出したら、さらにその中からHDD/SSDケースを引き出すことで、HDDやSSDの交換や増設を行なえる。もちろん、ホットプラグ対応ではないが、HDDやSSDの交換や増設を、いちいちサイドパネルを開けずに行なえるので、非常に便利である。HDDやSSD固定用のネジもHDDケースに取り付けられているので、ネジを探す必要もない。このフロントアクセスベイは、マルチカードリーダの横にあるセキュリティロックで鍵をかけることができるので、セキュリティ面も安心だ。

 拡張スロットは、PCI Express x16が2基(ただし、ビデオカードが装着されているので空きスロットは1基)、PCI Express x8が1基、PCI Express x1が3基(ビデオカードが装着されている場合空きスロットは2基)と、充実しており、すべての拡張スロットで、フルサイズ(長さ312mm)の拡張カードを装着できることも評価できる。

Endeavor Pro8000の前面
Endeavor Pro8000の左側面。こちら側が簡単に着脱できる
Endeavor Pro8000の右側面
左側面のサイドパネルを外したところ。左側に拡張カードを押さえるステーが装着されている
拡張カードを押さえるステーも簡単に着脱できる
拡張カードを押さえるステーを外すと拡張カードの取り外しが可能になる
左にある青色のプラスチックカバーが付いた部品がケースファン。このカバーごと工具を使わずに着脱できる
ケースファンを外したところ。直径120mmのミネビア製ファンが採用されていた
フィンの中央にファンが組み込まれたタイプのCPUクーラーが使われている
前方にある青色のプラスチックパーツを引くことで、フロントパネルを外すことができる
フロントパネルを外したところ
拡張ベイ部分。5インチベイ2基とフロントI/Oユニットがある
光学ドライブなどは、このプラスチックパーツで固定されている
黒い部分を左にスライドさせるとロックが外れ、青色のパーツを上げることで、ドライブを動かせるようになる
拡張スロットは、PCI Express x16が2基、PCI Express x8が1基、PCI Express x1が3基で、すべて長さ312mmまでの拡張カードを装着できる
拡張カードのブラケットは、ネジではなく、プラスチックパーツで固定されている
このように青色のパーツを回転させることで、ブラケットの固定が外れる
フロントアクセスベイは、このように前面から手で引き出すことができる
フロントアクセスベイを引き出したところ
右側のPort0とPort1はSATA 6Gbps対応で、左側のPort2とPort3はSATA 3Gbps対応となっている
HDDケースをつまんで引き出すことができる
HDDケースは2.5インチ/3,5インチ両対応で、固定用ネジも裏側に取り付けられている
フロントアクセスベイの内部

電源ユニットも選択できる

試用機の電源ユニットは1,000W仕様で、ビデオカード用補助電源コネクタを4系統装備している

 Endeavor Pro8000では、電源ユニットもBTOによって650W仕様と1,000W仕様の2種類から選べるようになっている。どちらの電源ユニットを選択しても、BTOで選べるビデオカードなどの選択肢は変わらない。購入時構成のまま使うのなら、650W電源で十分だが、将来、ビデオカードを2枚差しして使うなど、容量に余裕がほしい場合は1,000W電源をお勧めする。1,000W電源ユニットでは、ビデオカード用補助電源コネクタが4系統用意されており、ハイエンドビデオカードの2枚差しにも対応する。

Ivy Bridge-EとSSD RAIDで非常に高いパフォーマンスを実現

 参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark03」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark 2.2」である。比較用として、エプソンダイレクトの「Endeavor Pro5000」とパナソニック「Let'snote LX3」のスコアも掲載した。Endeavor Pro5000は、2011年5月に登場したやや古い機種だが、当時のフラグシップモデルであった、Endeavor Pro7000に次ぐハイエンド機である。

 結果は、下の表に示したとおりで、CPU性能、グラフィックス性能ともに、Endeavor Pro5000を大きく上回っていることが分かる。今回試用したEndeavor Pro8000は、6コア12スレッドの同時実行が可能であり、12スレッドをフルに使うようなベンチマークテストでは、さらにEndeavor Pro5000やLet'snote LX3との差が開くことになる。試用機はメモリも16GBと潤沢に搭載しており、2台の256GB SSDによるRAID0構成のストレージの性能も非常に高い。

 Endeavor Pro8000Endeavor Pro5000Let'snote LX3
CPUCore i7-4960X (3.6GHz)Core i7-2600 (3.4GHz)Core i7-4500U (1.8GHz)
ビデオチップGeForce GTX 770GeForce GTX 460Intel HD Graphics 4400
PCMark05
PCMarksN/AN/AN/A
CPU Score14622126669379
Memory Score14461117368599
Graphics Score39639204193302
HDD Score835664887756040
PCMark Vantage 64bit
PCMark ScoreFailed1920215540
Memories Score18421127358493
TV and Movie Score93777317Failed
Gaming Score270222132911030
Music Score252421965518077
Communications ScoreFailed1852117972
Productivity Score243502014921503
HDD Score630513846947907
PCMark Vantage 32bit
PCMark Score220381740714111
Memories Score17485120088104
TV and Movie Score92437237Failed
Gaming Score23264187709699
Music Score244841896416543
Communications ScoreFailed1814016043
Productivity Score222141819219719
HDD Score641703908548117
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score5682未計測5310
Lightweight score6120未計測5789
Productivity score4970未計測4724
Entertainment score5545未計測3816
Creativity score7468未計測9986
Computation score7267未計測16901
System storage score5644未計測5491
Raw system storage score8763未計測6121
3DMark03
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks)1071555682412856
CPU Score381434862072
3DMark
Ice Storm291316未計測44155
Cloud Gate52344未計測4900
Fire Strike7629未計測721
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH10006110927598
LOW120381280810899
FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
1,280×720ドット 最高品質18028未計測1580
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC)19478未計測1598
1,280×720ドット 高品質(ノートPC)22512未計測1894
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC)25666未計測3350
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)25499未計測3279
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP99.97100100
HP99.9799.97100
SP/LP99.9799.97100
LLP99.97100100
DP(CPU負荷)2542
HP(CPU負荷)1234
SP/LP(CPU負荷)0128
LLP(CPU負荷)0127
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード1,036MB/sec370.3MB/sec513.8MB/sec
シーケンシャルライト558.7MB/sec205.7MB/sec455.1MB/sec
512Kランダムリード862.8MB/sec316.0MB/sec454.6MB/sec
512Kランダムライト494.2MB/sec198.9MB/sec444.9MB/sec
4Kランダムリード40.78MB/sec20.46MB/sec24.57MB/sec
4Kランダムライト108.1MB/sec43.15MB/sec56.09MB/sec

パフォーマンスとメンテナンス性にとことんこだわる人にお勧め

 Endeavor Pro8000は、高い性能とメンテナンス性を誇るミドルタワーPCであり、フラグシップモデルの名に恥じない魅力的な製品である。クライアントPCとしては最高レベルの性能を実現できるため、フルHDを超える4K解像度の動画編集やCAEなど、高い性能を必要とする業務を行なっている人はもちろん、BTO選択肢が充実しているので、とりあえずはスペックを抑えておいて、将来拡張していきたいという人にもお勧めだ。ケースのメンテナンス性は非常に高く、HDDやSSDの増設も簡単にできるので、長い間第一線で使い続けることができるだろう。

(石井 英男)