Hothotレビュー

レノボ・ジャパン「ThinkPad Helix」

~液晶分離タイプのコンバーチブル型Ultrabook

レノボ・ジャパン「ThinkPad Helix」
発売中

直販価格:159,810円~

 レノボ・ジャパンは、液晶部分が着脱可能となっているコンバーチブル型Ultrabook「ThinkPad Helix」を発表した。クラムシェル型ノートPCやピュアタブレットなど、4パターンの形状で利用でき、用途に応じた使いやすさが実現できる。また、コンバーチブル型Ultrabookながら薄型軽量ボディを実現し、携帯性に優れている点も特徴だ。今回、試用機を利用する機会を得たので、仕様面を中心に紹介していこう。ただし、試用機は製品版とは異なる評価版のため、製品版と一部異なる部分がある可能性がある点はご了承願いたい。直販価格は159,810円から。

液晶分離型で国内最軽量を実現

 ThinkPad Helix(以下、Helix)は、独特の液晶着脱構造を採用しつつ、薄型軽量ボディを実現している点が大きな特徴だ。

 一般的な液晶分離型ノートPCでは、着脱構造を盛り込むことで、後部のヒンジがやや分厚くなっている製品も少なくない。それに対しHelixでは、液晶部とキーボードドック部をドッキングさせ、液晶を閉じた状態では、本体前方から後方まで高さがほぼフラットとなっている。

 本体デザインは、クラムシェル型のThinkPadとほぼ同等。カラーはつや消しのブラックで、底面の側面付近が斜めに切り取られたデザインは、近年のThinkPadスタイルそのもの。天板部の側面付近がラウンドデザインとなっているのは、タブレットとして利用する場合の手触りを考慮してのものだろう。

 本体サイズは、ドッキング時で296.1×226×20.4mm(幅×奥行き×高さ)。Ultrabookとしては特に薄いわけではないが、液晶分離型ながら21mmを切る薄さを実現している。また、重量は液晶部とキーボードドックを合わせて約1.65kg(NFC搭載、デジタイザペン内蔵時)で、液晶分離型Ultrabookとしては国内最軽量となる。実測では、1,670gと公称よりもわずかに重かった。また、液晶部単体では、サイズは296.1×187.3×11.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約835g(NFC搭載、デジタイザペン内蔵時)。重量の実測は835gで公称値と全く同じであった。

 Ultrabookのカテゴリでは、14型とHelixより大型の液晶を搭載しつつ、高さ18.8mm、重量約1.36kgの「ThinkPad X1 Carbon」のように、より薄く軽い製品も多く存在しており、Helixが特別薄く軽いわけではない。とはいえ、Helixでは分離構造を実現するために一般的なUltrabookでは必要のないヒンジ構造が追加されていることや、液晶部だけでなくキーボードドック側にもバッテリを搭載していることを考えると、キーボードドック込みの重量でも十分に満足できる軽さと言える。鞄に入れて毎日持ち歩くとしても、それほど苦にはならないはずだ。もちろん、軽さを重視したいなら、液晶部のみを持ち歩けばよく、携帯性は優れると考えていい。

 そして、薄さや軽さだけでなく、優れた堅牢性を兼ね備えている点も、見逃せないポイントだ。Helixでは、液晶部の天板部分とキーボードドックの底面に、マグネシウム合金と樹脂のハイブリッド構造、キーボード面のフレーム部にマグネシウム合金を採用し、軽さと強度を両立。また、液晶表面にはCorningのゴリラガラスを採用し、強度を高めている。

 本誌読者であれば、ThinkPadシリーズで“トーチャーテスト”と呼ばれる過酷な堅牢性テストが実施されていることをご存じの方も多いと思うが、ThinkPad Helixでも同じ堅牢性テストが行なわれるとともに、レノボが定める基準を全てクリアしている。それも、ノートPC、タブレット、ドッキングステーションそれぞれの信頼性基準をすべて満たしているそうで、堅牢性に関しては他のThinkPadシリーズ同様、不安がないと言っていいだろう。

液晶部とキーボードドックを接続した状態での正面。底面の側面部分が斜めに切り取られた、ThinkPadらしい形状となっている
左側面。着脱式ではあるが、高さは20.4mmと21mmを切っている。また、前方から後方までほぼフラットだ
後部背面。こちらから見ると、通常のノートPCのように見える
右側面。ボディカラーはThinkPadシリーズおなじみのつや消しブラックだ
天板部分。天板の側面はラウンド形状となっている。天板はマグネシウム合金と樹脂のハイブリッド構造で、軽さと強度を両立
フットプリントは296.1×187.3mm(幅×奥行き)。一般的な11.6型液晶搭載ノートよりもやや奥行きが長い
キーボードドックの底面。こちらも天板同様にマグネシウム合金と樹脂のハイブリッド構造で、他のThinkPadシリーズ同等の堅牢性を実現
液晶部単体のフットプリントは、296.1×187.3mm(幅×奥行き×高さ)。こちらは11.6型液晶搭載タブレットとほぼ同等のサイズだ
液晶天板部分は、タブレット時の持ちやすさを考慮し、側面付近がラウンド形状となっている
液晶部底面。底面には各種コネクタが並ぶ
液晶部左側面
液晶部上部側面。左の赤い部分はデジタイザペンの収納スペースだ
液晶部右側面
液晶部の高さは11.6mmと12mmを切っている。右はMicrosoftのSurface RTだ
液晶部とキーボードドックを合わせた重量は、実測で1,670gと公称よりもわずかに重かった
液晶部単体(デジタイザペン含む)の重量は、実測で835gと公称値と同じだった
キーボードドック単体の重量も、実測で835gだった

独特のヒンジ構造により4パターンの使い分けが可能

 液晶部は、キーボードドックのヒンジ部左側に用意されているロック解除ボタンを押し、その後に液晶部を引き抜くことで取り外しが可能。ロック解除ボタンは比較的軽い力で操作でき、液晶部の引き抜きや固定にも大きな力は不要で、軽快に着脱が可能。また、ロック解除ボタンを押すと、ロック解除の状態が保持されるので、片手での取り外しも問題ない。加えて、セキュリティ性を高めるために、ヒンジ右側に用意されているケンジントンロックを引き出した状態では、ロック解除ボタンが押せないようになり、液晶部を切り離せなくなる。これは、特にビジネス用途で重宝する機能と言えるだろう。

 またHelixでは、独特のヒンジ構造を採用することにより、全部で4パターンの形状で使い分けが可能となっている。

 まず、基本的な使い方となるのが、クラムシェル型ノートPC同等の形状である「ノートブックモード」。また、液晶部を切り離してピュアタブレットとして利用するのが「タブレットモード」。それに対し、キーボードドックに対して液晶面が通常の天板側に来るようにドッキングさせ、液晶面を立てて利用するのが「スタンドモード」。そして、スタンドモードで液晶を閉じ、キーボードドックを含めたピュアタブレットスタイルとなるのが「タブレット+モード」となる。

 スタンドモードは、デスク上でタッチ操作をメインで利用したり、映像を閲覧する場合に最適のモード。そして、タブレット+モードは、キーボードドック内蔵のバッテリ併用で長時間利用できるとともに、キーボードドックに用意されているポートも利用できることになるので、重量は重くなるものの、単体のタブレットモードよりも利便性が高まることになる。

 「IdeaPad Yoga」では、液晶部が360度回転する構造によって、Helixと同じようにスタンド形状やピュアタブレット形状で利用可能となっている。それに対しHelixでは、液晶部を外して付けかえるだけで形状を変えられるので、よりスマートかつ手軽に形状を切り替えて利用できる。しかも、タブレット+モードではキーボードが完全に隠れる点も嬉しい。

 ヒンジの取り付け位置が、キーボードドックの最も後方ではなく、やや手前に用意されている点も、独特な構造といえる。液晶部着脱式のノートPCでは、どうしても液晶部が重くなってしまい、液晶を大きく開いて利用する場合などに、本体の安定性が損なわれてしまう。特にHelixのように、タッチ操作に対応している製品では、タッチ操作時に本体が後方に倒れてしまうこともある。しかしHelixでは、ヒンジの位置がやや手前にあることで、重心も手前に移動し、大きく液晶を開いた状態でタッチ操作を行っても安定して利用できる。さらに、この構造によって後方に用意されているポートが液晶部で隠れることもない。

 ただし、このような独特のヒンジ構造を採用するために、液晶部は180度開かない。それでも、4パターンの形状を切り替えて利用できるので、対面の相手に液晶画面を見せたい場合でも形状を変えることで対応でき、大きな問題はないだろう。また、ヒンジ部にはプラスチック製のカバーが取り付けられており、液晶部を開くと、このカバーによってヒンジが目隠しされるようになる。これによって、液晶を閉じると前方から後方までフラットとなり、液晶を開いた状態で後方から見ても、違和感のないデザインが実現されている。

液晶部は着脱式となっており、クラムシェル型ノートとしてだけでなくピュアタブレットとしても利用可能
着脱時には、ヒンジ左のロック解除ボタンを押した後に液晶部を引き抜く
ヒンジ部の取り付け用ガイドは先端がラウンド形状となっており、液晶の一方を持って回転させるように引き抜くことも可能
ヒンジ右側に収納されているケンジントンロックスロットを引き出しロックを取り付ければ、ロック解除ボタンが押せなくなり、液晶部の取り外しが行なえなくなる
真横から見ると、ヒンジが本体後部からやや前方の位置に取り付けられていることがわかる。これにより、液晶部の重心が前方に移動し、安定して利用できる
ヒンジ後方はプラスチックのカバーが取り付けられており、後方から見ても違和感がない
液晶部は、天板側に液晶が来るように取り付けることも可能。これは、逆向きに取り付け液晶部を立てた「スタンドモード」で利用している様子
こちらは、液晶部を逆向きに取り付け、キーボードドックに畳んだ状態の「タブレット+モード」の様子。液晶部単体よりも大きく重いが、バッテリ駆動時間が延び、キーボードドックのポート類も利用可能

形状によりCPUのTDPが変化する

 Helixでは、上で紹介したの4つの形状を使い分ける場合に、内蔵CPUである第3世代Coreプロセッサに用意されている「Configurable TDP」(cTDP)を利用し、形状によってCPUのTDPを変化させて運用するようになっている。具体的には、Helixに搭載されている超低電圧版の第3世代Coreプロセッサでは、標準のTDPは17Wとなっており、ノートブックモードではTDPが17Wで動作するように設計されている。それに対し、液晶面を前後逆に取り付けて利用するスタンドモードとタブレット+モードではTDPが13W、液晶部のみで利用するタブレットモードではTDPが10Wにそれぞれ設定され動作するようになる。

 このように形状によってCPUのTDPを変化させて動作するようになっているのは、形状によって放熱能力が変わるため、それぞれのモードで安定して利用できるようにするためだ。Helixでは、着脱式の構造を実現するため、PCを構成するパーツは全て液晶部に集約されている。しかし、薄型軽量ボディを実現するために、大型の放熱機構を盛り込むのは難しい。そこでHelixでは、液晶部には薄型の空冷ファンを1個内蔵するとともに、キーボードドックのヒンジ部に2個の小型ファンを用意し、ドッキング時にキーボードドックのファンで温度の低い外気を液晶部に送り込むことによって、冷却能力を高めるようになっている。タブレットモードでは、TDPを下げることで、内蔵の薄型ファン1個による冷却でも安定して運用できることになる。ちなみに、スタンドモードとタブレット+モードがノートブックモードよりTDPが抑えられているのは、タブレット+モードで天板部分がキーボードドックに覆われ、天板からの放熱能力が下がることに対応するためだ。また、ヒンジ部後方がカバーとなっているのは、ヒンジ部のファンから安定して外気を取り込むためでもある。

 ノートブックモードでは、ファンが3個動作することになるため、動作音が気になるかもしれないが、低負荷時ではほとんど動作音は聞こえず、静音性は申し分ない。高負荷時には、ファンが勢いよく回転するため、動作音が耳に届くようになるが、うるさいと感じるほどではない。図書館など静かな場所で利用する場合には若干気になるかもしれないが、オフィスなどでの利用では全く問題ないレベルだ。

ヒンジには2個の小型ファンが搭載され、液晶部をキーボードドックに取り付けると、外気を液晶部の中に送り込み、冷却能力が高められる
ヒンジ部のファンの空気は、液晶下部側面のスリットから内部に送り込まれる
液晶上部には排気口があり、内部のファンを利用して放熱される。ファンの音は比較的静かで、高負荷でなければうるさいと感じることはない

フルHD表示対応の11.6型IPS液晶を採用

 Helixに搭載されている液晶は、1,920×1,080ドット表示対応の11.6型液晶だ。パネルの種類はIPS方式で、視野角が広く顔が移動しても発色の変化は少ない。液晶表面は光沢処理となっており、発色は十分に鮮やかで、表示品質は申し分ない。反面、外光の映り込みは強い点は少々気になった。ビジネス用途での利用がメインになることを考えると、文字入力時などで外光の映り込みが気になる点は少々残念だ。もし、映り込みが気になるようなら、オプションで用意される非光沢の保護フィルムを貼って利用すればいいだろう。

 パネル表面には、10点マルチタッチに対応する静電容量方式タッチパネルを搭載する。また、デジタイザペン対応モデルには、ワコムの技術を利用したデジタイザペンが付属。256段階の筆圧検知対応で、本格的なペン入力が可能。デジタイザペンは液晶部に収納スペースが用意され、スマートに収納し持ち運べる。

【お詫びと訂正】初出時に筆圧感知を2,048段階としておりましたが、5月17日にメーカーより256段階の誤りであることが公開されました。

1,920×1,080ドット表示対応の11.6型液晶を搭載。非常に高精細な表示が可能で、デジカメ画像なども高品質に表示できる。また、作業領域が広くなり、ビジネスソフトの使い勝手も高いが、文字はやや小さく見にくく感じる場合もある
IPS方式の液晶パネルを採用しており、広視野角で発色もまずまず。ただし、光沢パネルのため外光の映り込みは気になる
液晶表面は10点マルチタッチに加えてデジタイザ対応モデルではワコム製のデジタイザペンも利用できる。2,048段階の筆圧検知で、本格的なペン入力が可能
デジタイザペンは、液晶部に収納スペースが用意されている
液晶面上部には、200万画素のカメラを搭載
液晶天板側にも500万画素のカメラを搭載している

独立クリックボタンのない5ボタンクリックパッドを新採用

 ThinkPadのキーボードは、1年ほど前より6列の新配列キーボードを採用しているが、Helixのキーボードドックに搭載されているキーボードも、それら同様に6列キーボードを採用。アルファベットなどの主要キーは、キーピッチ約19mmのフルサイズ。もちろん、配列も他のThinkPadシリーズのキーボードと同じだ。ただし、本体サイズが小さいこともあり、Enterキー付近の一部のキーはピッチがやや狭くなっている。また、キーボードドック自体がかなり薄型のため、ストロークもThinkPadのキーボードとしてはやや浅めだ。それでも、しっかりしたクリック感があり、打鍵感からはストロークの浅さは感じられない。レノボは、ThinkPad X1 Carbonと同等の打鍵感を実現したとしているが、確かにキーボードの使い勝手はかなり優れる。キー入力の多いビジネス用途でも、不満を感じることはないだろう。

 ポインティングデバイスは、ThinkPadシリーズでおなじみのスティック型トラックポイントと、パッド式のタッチパッドを同時に搭載する「ウルトラナビ」を採用。ただし、タッチパッドの構造が新しくなっており、従来までスペースキーの下に配置されていた物理クリックボタンが廃止され、5ボタンの入力に対応するクリックボタン一体型のタッチパッド「5ボタンクリックパッド」を新たに採用している。

 この5ボタンクリックパッドでは、上部に従来までの3個の物理クリックボタンに相当するクリック入力と、パッド下部での左右のクリックボタンに相当するクリック入力の、計5個のクリック入力をサポート。そのため、一般的なクリックボタン一体型タッチパッドと異なり、パッド上部も押し込める点が新しい。また、クリックボタンがなくなったことで、パッド面積が広くなり、Windows 8のチャームを呼び出すスワイプ操作や各種ジェスチャー操作もやりやすくなっている。

 ただし、物理ボタンがなくなったことで、トラックポイントを使う場合には、手触りでクリックボタンの位置がつかみにくく、やや違和感を感じるのも事実。このあたりは慣れの問題かもしれないが、個人的には物理ボタンも残してもらいたかった。

 タッチパッドは、ThinkPad x1 Carbon同様にガラス素材を採用し、表面が特殊加工されており、非常に手触りがいい。また、トラックポイント操作時に、誤動作防止のためタッチパッドの動作が自動で停止する点も、使い勝手を高める嬉しい仕様だ。

キーボードは、最近のThinkPadで採用されている6列キーボードを採用。配列は申し分ないが、Enterキー付近の一部キーのピッチがやや狭くなっている
主要キーのキーピッチは約19mmとゆったり。ストロークこそ他のThinkPadシリーズのキーボードよりやや浅いが、クリック感がしっかりしており、打鍵感は非常に優れる
ポインティングデバイスは、スティック型のトラックポイントと、タッチ型のタッチパッドを同時に搭載するウルトラナビを採用。
タッチパッド部は物理ボタンがなくなり、パッド面を押し込むことで上部3カ所、下部2カ所の計5カ所でクリックが行なえる、5ボタンクリックパッドを初採用。パッド面は広くなったが、物理ボタンがないためトラックポイント利用時にはやや違和感を感じる
トラックポイント操作中はパッドの動作が停止され、誤操作を防いでいる。また、トラックポイントのキャップは高さの低いものが採用されている

ハイエンドUltrabook相当のスペックを実現

 Helixの基本スペックは、Ultrabook準拠ということもあり、一般的なUltrabookとほぼ同じとなっている。直販モデルでは、CPUやメモリ容量など、細かなカスタマイズが可能だが、今回利用した試用機は、カスタマイズできるほぼ最強のスペックとなっていた。

 CPUは、Core i7-3667U(2.00GHz)、メインメモリはPC3-10600準拠DDR3L SDRAMを8GB搭載。チップセットは、Intel QS77 Express。ストレージは容量256GBのSSDを搭載。無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LANとBluetooth 4.0で、NFCも搭載可能となっている。センサー類は、加速度センサー、電子コンパス、照度センサー、ジャイロセンサーを内蔵。そのほかに、セキュリティ機能のTPMも搭載される。これらスペックは、直販モデルなら自由に変更できるので、予算や用途に応じて選択すればいいだろう。

【お詫びと訂正】初出時にGPU内蔵としておりましたが、6月6日にメーカーより搭載しないこと、返品対応が発表されました。

 側面のポートは、液晶部、キーボードドック部それぞれに用意されている。まず液晶部には、下部側面にUSB 2.0×1ポートとMini DisplayPort、電源コネクタとキーボードドック接続用の専用コネクタ、右側面にヘッドフォン・マイク共用ジャックをそれぞれ用意。また、キーボードドックには、背面側にUSB 3.0×2ポートとMini DisplayPort、電源コネクタが用意される。もちろん、液晶部とキーボードドック接続時には、液晶部の底面のポートは利用できなくなる。また、液晶部にはワイヤレスWAN用のSIMカードスロットも用意されているが、国内向けモデルではワイヤレスWAN対応モデルは用意されないため、SIMカードスロットも利用できない。

 ただし、有線LANや、SDカードなどが利用できるメモリカードスロットが用意されない点は少々残念だ。それに対応するため、オプションとしてUSB接続のLANアダプタや、Mini DisplayPortをDVIやVGAに変換する変換ケーブルなどが用意される。

液晶下部側面には、USB 2.0×1とMini DisplayPortがある。また、SIMカードスロットも見えるが、日本では利用されない
反対側には、角形の電源コネクタと、キーボードドック接続用コネクタがある
液晶部右側面には、ヘッドフォン・マイク共用ジャックとボリュームボタン。画面回転の停止ボタンがある
電源ボタンは、液晶上部にある
各種認証マークは、液晶底面側の引き出し式のカードに記載され、内部に収納されている
キーボードドック背面右側には、Mini DisplayPortとUSB 3.0×1を用意
同じくキーボードドック背面左型にはUSB 3.0×1と電源コネクタがある
液晶天板側には、NFCも搭載する
付属のACアダプタは小型のもので、本体との同時携帯でもかさばらない
ACアダプタの重量は、電源ケーブル込みで実測262.5gだった

天板部の発熱がかなり気になる

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 7 v1.0.4」、「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Professional Edition v1.0」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」、セガの「ファンタシースターオンライン2キャラクタークリエイト体験版」の7種類。また今回は、ノートブックモードとタブレットモードの2形状で計測を行なった。比較用として、ASUSの「TransBook TX300CA-C4021HS」、ソニーの「VAIO T15」、NECの「LaVie X LX850/JS」の結果も加えてある。なお、PCMark7はバージョン変更により、一部機種では旧バージョンの結果を掲載、PCMark Vantageは一部テストが正常に計測できないため、計測できたスコアのみを掲載している。

 ThinkPad Helix ノートブックモードThinkPad Helix タブレットモードTransBook TX300CA-C4021HSVAIO T 15LaVie X LX850/JS
CPUCore i7-3667U (2.00/3.20GHz)Core i7-3537U (2.00/3.10GHz)Core i7-3537U (2.00/3.10GHz)Core i7-3537U (2.00/3.10GHz)Core i7-3517U (1.90/3.00GHz)
チップセットInte QS77 ExpressInte QS77 ExpressInte UM77 ExpressInte HM76 ExpressInte QS77 Express
ビデオチップIntel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4000
メモリPC3-10600 DDR3L SDRAM 8GBPC3-12800 DDR3L SDRAM 8GBPC3-12800 DDR3L SDRAM 4GBPC3-12800 DDR3L SDRAM 8GBPC3-10600 DDR3L SDRAM 4GB
ストレージ256GB SSD256GB SSD128GB SSD + 500MB HDD24GB SSD + 1TB HDD256GB SSD
OSWindows 8 ProWindows 8 ProWindows 8Windows 8Windows 8
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score48683972432836365241
Lightweight score34512987269621825397
Productivity score25902108215216044195
Creativity score33152618310969369902
Entertainment score84077992789530763741
Computation score1524611127154901828718209
System storage score53435027408225435382
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a
PCMark SuiteN/AN/AN/AN/AN/A
Memories Suite80386644557059398643
TV and Movies SuiteN/AN/AN/AN/AN/A
Gaming Suite979483648459870610663
Music Suite159821364111324842316720
Communications SuiteN/AN/AN/AN/AN/A
Productivity SuiteN/AN/AN/AN/AN/A
HDD Test Suite3592433721170401223143277
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark ScoreN/AN/AN/AN/AN/A
CPU Score98027866884394959125
Memory Score81847431839285267277
Graphics Score25631831263226942900
HDD Score407043375320592906851686
3DMark Professional Edition v1.0
Ice Storm320631943328035計測データなし計測データなし
Graphics Score342741866229392計測データなし計測データなし
Physics Score621592271824136計測データなし計測データなし
Cloud Gate364923803177計測データなし計測データなし
Graphics Score404924883577計測データなし計測データなし
Physics Score271220692285計測データなし計測データなし
Fire Strike478321412計測データなし計測データなし
Graphics Score525339463計測データなし計測データなし
Physics Score375929283083計測データなし計測データなし
3DMark06 Build 1.1.0 0906a
3DMark Score46832986424252695339
SM2.0 Score1491939137917151749
HDR/SM3.0 Score19581230175222052241
CPU Score36562817309336753548
Windows エクスペリエンスインデックス
プロセッサ7.16.67.07.17.2
メモリ7.47.75.97.55.9
グラフィックス5.34.45.45.65.6
ゲーム用グラフィックス6.35.96.36.46.4
プライマリハードディスク8.07.97.65.98.0
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】
1,280×720ドット22071302202925812496
ファンタシースターオンライン2キャラクタークリエイト体験版
横1,280ドットフルスクリーン225113191315304

 結果を見ると、スペック相応の好結果が得られている。3Dグラフィックスやゲームのベンチマークテストでは、やや結果が劣っている部分も見えるものの、パフォーマンス的にはUltrabookトップクラスと考えて差し支えないだろう。また、タブレットモードではTDPが抑えられることもあって、結果が大きく落ちこんでいることがわかる。とはいえ、大きな負荷のかかる作業をやらない限り、実際に利用している場合にタブレットモードで大きくパフォーマンスが落ちたと実感することはなかった。

試用機では、高負荷な作業を長時間行なうと天板のThinkPadロゴ付近が60度を超える高温になることがあった

 ところで、ベンチマークテストなどの高負荷な作業を長時間続けた場合、液晶天板のThinkPadロゴ付近の温度がかなり高くなる点は気になった。特に、3Dグラフィックスやゲームのベンチマークテストを長時間実行している場合に顕著となり、赤外線放射温度計を利用して計測してみたところ、60度を超える温度を記録することもあった。ベンチマークテストのスコアが低かったのは、この点も影響している可能性がある。

 今回試用した機材は、製品版とは異なる開発機だったこともあり、個体の問題で異常な高温になった可能性もある。レノボに問い合わせたところ、高負荷時にはある程度高温になるようなので、タブレットモードでの利用時には温度にも注意したい。

 ただ、天板部分が高温にはなるが、キーボードドック底面の温度が上がることはない。そのため、膝の上に置いて使う場合でも、温度を気にすることなく使えるのはもちろん、布やカーペットの上で利用しても、PC内部に熱がこもる危険性は少ない。

 次に、バッテリ駆動時間だ。Helixでは、液晶側に3,785mAh、キーボードドック側に1,895mAhのリチウムイオンバッテリが搭載されており、液晶部単体で約8時間、キーボードドック接続時で約12時間のバッテリ駆動が可能とされている。それに対し、Windowsの省電力設定を「省電力」に設定し、バックライト輝度を40%、キーボードドックのキーボードバックライトはオフ、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測してみたところ、液晶部単体で約6時間14分、キーボードドック接続時で約10時間15分であった。公称値には届いていないものの、条件を考えるとまずまずといった印象。これだけの駆動時間なら、1日外出して利用する場合でも、ACアダプタの同時携帯はほぼ不要だろう。

実測のバッテリ駆動時間
液晶部単体約6時間14分
キーボードドック接続時約10時間15分

ビジネス用途でノートとタブレットを併用したい人におすすめ

 Helixは、ThinkPadブランドの優れた品質や堅牢性、セキュリティ性を備えつつ、液晶着脱式でノートPCとしてもタブレットとしても利用できる点が大きな魅力だ。加えて、扱いやすいキーボードや、デジタイザペン対応のタッチパネルなど、操作性に優れる点も大きなポイントで、特にビジネス用途に最適な製品だ。外部接続ポートの少なさや、高負荷時に天板部が高温になるなど、気になる部分があるのも事実だが、優れた性能やキーボードなどの操作性の高さなど、他の製品にはない魅力も多くあり、全体としては非常に良くまとまった製品に仕上がっていると感じる。

 重量や薄さを追求したいなら、他の一般的なUltrabookの方が魅力があるかもしれない。ただ、使い勝手までも含めたトータルでの魅力は、Helixの方が高い場合もあるだろう。もちろん、使い勝手は用途によって変わってくるが、ビジネス用途でノートPCとタブレット双方を使う場面があるなら、Helixは非常に魅力のある製品と言えるだろう。そういった意味でも、特にビジネスユーザーにおすすめしたい製品だ。

(平澤 寿康)