MSI「X-Slim X340 Super」
~厚さ20mmを切る超薄型モバイルノートPC



MSI「X-Slim X340 Super」

5月16日 発売

店頭予想価格:99,800円前後



 エムエスアイコンピュータージャパン(MSI)から登場した「X-Slim X340」シリーズは、最薄部6mm、最厚部でも19.8mmというスリムなボディと、上位モデルでも10万円を切る(99,800円前後)コストパフォーマンスの高さが魅力の1スピンドルノートPCだ。MSIは、自作派にはマザーボードやビデオカードなどのベンダーとして古くから有名であるが、最近ではネットブックの「Wind Netbook」シリーズも販売しており、PCベンダーとしての知名度も上がりつつある。同社は、日本PC市場に本格的に参入することを表明しており、本製品がその第一弾となる製品だ。

 「X-Slim X340」シリーズは、CPUとHDDの違いによってX-Slim X340 SuperとX-Slim X340の2モデルが用意されているが、上位モデルのX-Slim X340 Super(以下X340 Super)を試用する機会を得たので、早速レビューしたい。なお、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部が異なる可能性がある。

●薄型軽量ボディにCore 2 Soloを搭載

 X-340 Superのボディは、四辺がエッジに向かって薄くなっており、スリムさをより強調するデザインとなっている。ボディカラーは、エンジェルホワイトとエンパイアブラックの2色が用意されており、好みに応じて選べる。試用機のボディカラーはエンジェルホワイトであった。本体サイズは330×224×6~19.8mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.3kgである。最厚部19.8mmというのは、アップルのMacBook Airの19.4mmとほぼ同じで、非常に薄い。13型ワイド液晶搭載モデルとしては重量も軽い部類であり、携帯性も良好だ。本体は薄いが、剛性は十分あり、強度的な不安は感じない。

 X340 Superは、CPUとしてCore 2 Solo SU3500(1.40GHz)を搭載。Core 2 Soloは、シングルコアだが、一般的なネットブックに搭載されているAtom N270/N280に比べて、CPU性能はこちらのほうが高い。チップセットとしては、最新のグラフィックス統合型チップセットIntel GS45を搭載しており、ネットブックに搭載されているIntel 945GSEよりも、グラフィックスコアの世代が新しく、描画性能が高い。また、HD動画の再生支援機能も搭載する。メモリは標準で2GB搭載しており、ユーザーによる増設はできない。HDDは2.5インチで、容量は320GBと余裕がある。なお、下位モデルのX340では、CPUがCeleron 723(1.20GHz)になり、HDD容量が250GBとなる。OSは、Windows Vista Home Premium SP1がプリインストールされている。

 X340 Superは薄型化を実現するために、ボディの固定に爪のはめ込みが使われており、分解は困難だが、今回は別途分解用のモデルも用意していただいたので、内部の写真を撮ることができた。マザーボードはかなり実装密度が高く、コンパクトにまとまっている。また、ボディを薄くするために、極力部品の上に部品を重ねないように設計されている。

X-340 Superの上面。シンプルなデザインだ「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。奥行きはDOS/V POWER REPORTとほぼ同じだが、横幅は大きいX-340 Superの底面。メモリスロットのカバーなどはなく、すっきりしたデザインだ
X-340 SuperとDVDトールケースとの厚さ比較。X-340 Superの薄さがよくわかるキーボード側のボディパーツとキーボードを外したところ。右側にHDDが、左側にマザーボードが実装されている。手前の左右コーナー部分にはスピーカーが取り付けられているマザーボード部分のアップ。右側にはメモリスロットが用意されている。CPUとノースブリッジの上には、ヒートシンクが装着されており、ヒートパイプで熱を逃がすようになっている
ヒートシンクとSO-DIMMを外したところ。上のチップがノースブリッジのIntel GS45で、下のチップがCPUのCore 2 Solo SU3500だ液晶パネル上部を分解したところ。中央にWebカメラが、その左にアレイマイクが実装されている分解用モデルには、Western Digital製2.5インチ320GB HDDが搭載されていた

●1,366×768ドット表示液晶を搭載しており、実用性が高い

 X340 Superは、ディスプレイとして13型ワイド液晶を搭載する。バックライトは白色LEDを採用しており、高輝度かつ薄型化、低消費電力化を実現している。解像度は1,366×768ドットで、アスペクト比は16:9となり、DVDやBlu-rayなどの16:9で記録されたコンテンツを画面全体に表示できる。ネットブックの場合、液晶解像度は1,024×600ドットまたは1,024×576ドットが主流であり、縦方向の解像度が不足気味だが、X340 Superならそうした不満はなく、快適に利用できる。

 一度に画面に表示できる情報量は、1,024×600ドットの約1.7倍、1,024×576ドットの約1.78倍になる。サイズが13型ワイドなので、ドットピッチもそれほど狭くなく、文字も見やすい。ただし、光沢タイプなので、発色は鮮やかでコントラストは高いが、外光は映り込みやすい。液晶上部には、130万画素Webカメラを搭載。ビデオチャットなどに利用できる。Webカメラの左側には、アレイマイクが搭載されており、ビームフォーミングやエコーキャンセルといった機能をサポートする。

 キーボードは全91キーで、PgUpキーやPgDnキーなどが独立しているため、キーの数は多い。キーピッチは約19mmと余裕があるが、右側の「む」や「ろ」などのキーピッチはやや狭くなっている。キー配列もほぼ標準的であるが、Enterキーが小さく(縦1段分しかない)、Enterキーの右側にもPgUpキーやPgDnキーなどが配置されているので、違和感を感じる人もいるだろう。また、薄型化のためか、キーボードの剛性がやや低く、中央部を強めに打鍵するとたわむのが気になる。ポインティングデバイスとしては、タッチパッドを搭載。左右のクリックボタンはパッドの手前に配置されているが、左右ボタンが独立しておらず、一体となっている。

液晶は13型ワイドで、解像度は1,366×768ドット。アスペクト比は16:9だ。光沢タイプなので発色は鮮やかだが、外光の映り込みが気になることがある液晶上部に130万画素Webカメラを搭載。カメラの左側にはアレイマイクを備えており、ビームフォーミングやエコーキャンセルといった機能を利用できる
キーボードは全91キーで、PgUpキーやPgDnキーなどが独立している。キーピッチは約19mmと余裕があるが、右側の「む」や「ろ」などのキーピッチはやや狭くなっている。剛性がやや低く、中央部を強めに打鍵するとたわむのが気になるポインティングデバイスとしてタッチパッドを搭載。左右のクリックボタンは一体になっている

●拡張性はネットブックと同程度だが、HDMI出力をサポート

 インターフェイスとしては、USB 2.0ポート×2とLAN、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、HDMI出力などを備えている。拡張性は一般的なネットブックと同程度だが、アナログRGBだけでなく、HDMI出力も搭載していることは評価できる。HDMI入力を備えた大画面テレビなどにも気軽に接続が可能だ。メモリカードスロットとしては、SDHCカードスロットを搭載。もちろん、SDメモリーカードやMMCにも対応する。ワイヤレス機能も充実しており、IEEE 802.11b/g/n対応無線LANとBluetooth 2.1+EDRをサポートする。

 バッテリには、薄型のリチウムポリマー電池が採用されており、非常にスリムだ。14.8V/2,150mAの4セル仕様で、公称約3.5時間の連続動作が可能だ。バッテリ駆動時間も多くのネットブックと同程度であり、ACコンセントのないところで長時間使いたいという用途には向かない。ACアダプタも比較的コンパクトで、携帯性は良好だ。

左側面には、アナログRGB(ミニD-Sub15ピン)とLAN、HDMI出力、SDHCカードスロットが用意されている右側面には、USB 2.0ポート×2が用意されている
X340 Superのバッテリ。薄型のリチウムポリマー電池を採用しているバッテリは、14.8V/2,150mAhの4セル仕様で、公称約3.5時間の連続動作が可能CDケース(左)とバッテリのサイズ比較
ACアダプタも比較的コンパクトだただし、ACケーブルのコネクタがメガネプラグではなく、3ピンのミッキープラグになっているCDケース(左)とACアダプタのサイズ比較

 本体と同色の光学式マウスとプロテクションカバーが付属していることも嬉しい。マウスは、ケーブルとUSBコネクタが本体に収納できるようになっており、持ち運びに便利だ。プロテクションカバーは合皮製で、X340 Super本体がすっぽり入るようになっている。また、オプションとして本体色と揃えた外付けBlu-ray Discドライブも用意されている。

本体と同色の光学式マウスが付属する。マウスのケーブルとUSBコネクタは完全に収納できるようになっており、一見ワイヤレスマウスにも見える付属の光学式マウスの底面。向かって左上にケーブルとUSBコネクタが収納されている
カバーを開けると、USBコネクタが出てくる。USBコネクタは磁石でカバーに付くようになっており、取り外しが簡単だマウスのケーブルを引き出したところ。ケーブルは掃除機のコードのように引っ張ると自動的に内部に巻き取られる
本体と同色のプロテクションカバーも付属するプロテクションカバーにX340 Superを入れたところプロテクションカバーにX340 Superを入れてもそれほど厚くならないので、鞄に気軽に入れられる

●Atom搭載ネットブックに比べて高いパフォーマンスを実現

 参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」で、比較対照用として、デル「Inspiron Mini 10」、デル「Inspiron MIni 9」、GIGA-BYTE「M912X」のスコアも掲載する。

 結果は表にまとめた通りで、Atom N270やAtom Z530を搭載したネットブックに比べて、Core 2 Solo SU3500を搭載したX340 Superは、PCMark05のCPU Scoreが約1.65倍になっているほか、Graphics Scoreも2倍以上となっている。また、3DMark03やFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3のスコアも、1.5~2倍以上である。もちろん、デュアルコアのCore 2 Duoなどを搭載したA4ノートPCに比べればパフォーマンスは劣るが、重さ1.5kg未満のモバイルノートPCとしては十分な性能であり、メモリも2GB装備しているので、Vistaも実用的な速度で動作する。


X-Slim X340 SuperInspiron Mini 10Inspiron Mini 9M912X
CPUCore 2 Solo SU3500(1.4GHz)Atom Z530(1.6GHz)Atom N270(1.6GHz)Atom N270(1.6GHz)
ビデオチップIntel GS45内蔵コアUS15W内蔵コアIntel 945GSE内蔵コアIntel 945GSE内蔵コア
PCMark05
PCMarks2101N/AN/A1483
CPU Score2435146914841472
Memory Score3338223323582339
Graphics Score1108N/AN/A536
HDD Score5086381928434639
3DMark03
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks)1552計測不可N/A(1,024×600ドットでは628)684
CPU Score492N/A(1,024×576ドットでは121)N/A(1,024×600ドットでは232)236
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH1427N/AN/A998
LOW2094N/A14261438
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP68.16.2337.9未計測
HP99.9710.494.47未計測
SP/LP10099.5399.97未計測
LLP10099.9399.97未計測
DP(CPU負荷)1005065未計測
HP(CPU負荷)614764未計測
SP/LP(CPU負荷)353733未計測
LLP(CPU負荷)282621未計測

●一台目としても使えるコストパフォーマンスの高い製品

 X340 Superは、スリムで軽い1スピンドルノートPCであり、5万円前後のネットブックと10円台後半のモバイルノートPCのちょうど間に位置する製品だ。スペック的には、10万円台後半のモバイルノートPCに近いが、価格は10万円未満であり、コストパフォーマンスの点でも優秀だ。キーボードの剛性がやや低いことが気になるが(製品版では改善される可能性もある)、1,366×768ドット表示可能な液晶や320GB HDDを搭載しているので、ネットブックとは異なり、メインマシンとしても実用的だ。バッテリ駆動時間が短いので、バリバリのモバイラー向けではないが、重量も約1.3kgと軽いので、学校などに持って行く携帯性の高いモバイルノートPCが欲しいという人や、居間などで気軽に使えるノートPCが欲しいという人にお勧めだ。

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(2009年 5月 12日)

[Text by 石井 英男]