Hothotレビュー
小型タブレット復権の兆しか!?高性能でゲームも楽しく遊べる8.8型「LAVIE Tab T9」
2024年3月18日 06:16
だいたい12年くらい前に、7、8型の液晶を搭載した小型Androidタブレットが流行ったことがあった。10型以上の一般的なタブレットと比べると小さくて持ち運びに適しているほか、当時は4、5型が主流だったスマートフォンよりも大きくて閲覧しやすいというメリットがあり、筆者も含め多くのユーザーから支持を集めていた(はずだ!)。
しかしここ7年くらいは性能の低いモデルばかりで、最新スペックの新製品が大手PCメーカーから発売されることもほぼなくなっていた。そんな中で投入されたのが、今回紹介するNECパーソナルコンピュータ(NEC PC)の「LAVIE Tab T9 T0995/HAS」だ。8.8型ワイド液晶を搭載した小型タブレットで、高性能な最新SoCを搭載するほか、ゲームを楽しくプレイできるさまざまな機能を装備する。
高性能なSoCならではの快適な操作感、ディスプレイも非常に美しい
最大の特徴は、SoCに「Snapdragon 8+ Gen 1」を搭載すること。クアルコムのSoCだとSnapdragon 8シリーズはハイエンドの位置付けにある。現行の最新世代より1つ古いものの、高性能なスマートフォンで今も搭載されることが多いSoCである。
ディスプレイは最大500cd/平方mの明るさ、リフレッシュレートは最大で144Hz対応、色域もDCI-P3 98%カバーなど、とにかく強いスペックをかき集めており、ゲームや美しいコンテンツを快適に楽しむことに注力して設計されている。こんな「全部盛り」の小型Androidタブレットが発売されるのは、本当に久しぶりだ。
【表】LAVIE Tab T9 T0995/HASの主な仕様 | |
---|---|
SoC | Qualcomm Snapdragon 8+ Gen 1 |
メモリ | 8GB(LPDDR5X) |
内蔵ストレージ | 128GB |
外部ストレージ | 最大1TB(microSDメモリカード) |
OS | Android 13 |
ディスプレイ | 8.8型ワイド液晶(2,560×1,600ドット) |
背面カメラ | 約1,300万画素、約200万画素(マクロ対応) |
前面カメラ | 約800万画素 |
主なインターフェイス | USB 3.1 Type-C(USB OTG/充電/映像出力対応)、USB 2.0 Type-C(USB OTG/充電対応)、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.3 |
バッテリ容量 | 6,550mAh |
サイズ | 129.5×208.5×7.6mm |
重量 | 約365g |
まずは外観を見ていこう。縦持ち状態の幅は129.5mmで奥行きは208.5mm、厚みは7.6mm。8.8型ディスプレイのフチは狭く、男性なら縦持ち状態の本機を片手でグッと挟み込むようにして持てるなど、小型タブレットらしいサイズ感だ。iPad mini 6と比べると幅はやや狭く、奥行きは長めになっている。重さも約365gと軽いため、小さなバッグに入れて気軽に持ち運べる。
長辺側と短辺側に、USB Type-Cコネクタを1基ずつ備えることも特徴の1つだ。タブレットやスマホでプレイするゲームには、表示画面が縦方向や横方向で固定されているものがある。こうしたゲームをプレイする際、コネクタの位置によっては充電しながらプレイする場合にケーブルがジャマになることがある。
しかしLAVIE Tab T9 T0995/HASでは、どちらかジャマにならないほうのUSB Type-Cコネクタを使い、充電しながらゲームを継続できる。また長辺側のType-Cコネクタは、映像出力にも対応する。液晶ディスプレイと接続し、3Dゲームを迫力の大画面で楽しむことも可能だ。筐体は金属製で、充電時や重い負荷をかけているとき以外は手に熱が伝わってくることを感じることはなかった。
前述した通り、液晶ディスプレイの表示品質は非常に高い。バックライトはコントラストの高いミニLEDタイプではないのだが、コントラストや表示性能は、それに近いレベルだと感じた。暗い場所はしっかりと黒く、明るい場所はくっきり明るく表現する。緑や赤の発色も素晴らしく、最新ゲームの画像や動画配信サイトの高精細な風景動画も、美しく表現された。
ゲームをプレイしたり、音楽を楽しむにはスピーカーの音質も重要だが、本機はタブレットとしてはかなり音質がよい。さすがにスピーカーのサイズ的に低音域は弱いが、すっきりとした透明感のある高音域が印象的だった。先ほど比較にも出したiPad mini 6に近い音質で、音楽配信サイトの音楽をBGMにして流す程度なら本機のみでも十分だと感じる。
ゲームをより楽しくプレイするために、「ゲームアシスタント」という機能も用意している。これは、ゲームをプレイしている際に、ディスプレイの左端から指をスワイプすることで表示されるウィジェットのようなもので、輝度や音量の変更、スクリーンショットや動画の撮影のほか、本体の動作モードを変更できる。
動作モードは標準の「バランス」のほか、性能重視の「パフォーマンス」、バッテリ駆動時間優先の「省電力」の3つから選択できる。また充電ケーブルからの電力をバッテリ充電に回さず、SoCのみに供給してバッテリの発熱を抑える「バイパス充電」機能も、このゲームアシスタントから有効にできる。
バイパス充電機能は、一般的なタブレットではあまり聞いたことのない機能だろう。しかし一部の高性能なゲーミングスマホだとちらほら実装が進んでいる。LAVIE Tab T9 T0995/HASもゲーミング体験を重視するタブレットである以上、搭載は必然とも言える。
CPU性能やGPU性能はiPad mini 6とほぼ同じレベル
次に、LAVIE Tab T9 T0995/HASの性能をいくつかのベンチマークテストで検証してみよう。比較対象はAppleのiPad mini 6、このクラスの液晶を搭載するタブレットとしては唯一のライバルと言ってよい。
SoCに関する総合性能の検証では、Antutu Benchmarkを利用した。タブレットやスマホの性能検証ではよく使われるテストで、日常的によく利用するさまざまな作業における性能を、数値で示すテストである。検証時のバージョンは、LAVIE Tab T9 T0995/HASのAndroid向けがV10.2.1、iPad mini 6のiOS向けがV10.0.3となる。
総合値や各項目を整理したのが下のグラフだ。総合値で比較してみると、LAVIE Tab T9 T0995/HASとiPad mini 6でほぼ同じスコアとなっている。細かい項目を見ると、CPUコアの性能ではiPad mini 6、GPU性能ではLAVIE Tab T9 T0995/HASがわずかに有利といったところだろうか。
もう1つ、AndroidとiOSで同じテストが行なえる「3DMark」も試してみた。これは3Dグラフィックスの描画性能を検証するもので、主にGPU性能を反映するベンチマークテストとなる。下記のグラフでは、「Wild Life Extreme」の結果を比較している。このほかにもいくつかテストを行なったのだが、両者ともにScoreが高くなり過ぎて正しく評価ができないという「Mixed Out!」という表示になってしまったため、このテストのみの比較となる。
Scoreはほぼ同じで、先ほどのAntutu Benchmarkと同じ傾向を示した。こうした結果を踏まえると、両者の性能はほぼ同じレベルと言ってよいのではないだろうか。Androidタブレットで、iPadに匹敵する性能を示すモデルは非常に少ないことを考えると、かなり健闘していると言ってよいだろう。
ただiPad mini 6も2021年9月発売なので、最新鋭モデルというわけではない。Appleはすでに最新のiPhoneやiPadで、iPad mini 6が搭載するSoC「A15 Bionic」からさらに2世代進んだ「A17 Pro」や、Mac向けの「M2」シリーズを搭載しており、CPU性能やGPU性能を大きく向上させている。そのため必ずしも「AndroidタブレットがiPadに追い付いた」とは言えない状況ではある。
しかしごく一部の高性能なモデルを除き、特に7、8型の小型Androidタブレットが搭載するSoCが、6、7年前のミドルレンジに相当するような性能の低いものばかりであることを考えれば、飛躍的な進歩と言ってよいのではないだろうか。
画面のスクロールも非常になめらかで、各アプリの起動も素早い。ちょっと負荷がかかると微妙にカクつくような場面は、LAVIE Tab T9 T0995/HASでは見当たらない。また各種動画配信サイトの動画再生もスムーズで、U-NEXTやAmazonプライムビデオではフルHD解像度の再生に対応していたことを考えると、スペックには記載されていないがWidevine L1にも対応しているのだろう。
ビジネスでの利用もOKの万能タブレット、問題は価格……
そのほかにも別売オプションとしてタッチペンの「デジタルペン3」を用意しており、手書きメモを入力したり、手書きメモをテキストデータとして変換して保存できるメモアプリも標準で用意している。高性能なSoCを搭載していることもあり、手書き入力と画面表示のタイムラグはなく、スムーズに手書き文字を入力できた。PDFファイルや各種ビジネス用の書類ファイルへの手描き入力にも対応する。
性能と機能性の両面でゲーミングタブレットとしての適性も高めた本機は、少なくとも現行の小型Androidタブレットの中では文字通り突出した存在と言ってよい。またグレーを基調とする飾りのないシンプルなデザインや、タッチペンを利用した書類添削機能などビジネス向けの機能も充実しており、ユーザーや場面を選ばず利用できる強力な小型タブレットと言ってよい。
ただ、価格は高い。内蔵ストレージが128GBモデルは10万前後、直販サイト限定で販売される256GBモデルは10万9,780円と、小型タブレットの中ではかなり高めの設定だ。正直、使い勝手のよい256GBモデルが10万円前後ならなんとか納得もできたのだが、この辺りは新しめのSoCや高性能なスピーカー、液晶ディスプレイを搭載することを考えるとやむなしといったところだろうか。