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約2年半ぶりのiMacの実力はいかに。M1版から買い換える価値はあるのか?最新のM3版と比べる

Apple「iMac(24インチ, 2023)」19万8,800円から

 Appleは、「M3」チップを採用した「iMac(24インチ, 2023)」を11月7日に発売した。M1を搭載した「iMac(24インチ, M1, 2021)」が発売されたのは2021年の5月21日だが、M2搭載iMacはスキップされているので、約2年半ぶりの新型投入ということになる。今回本製品の実機を借用したので、主にパフォーマンス向上にスポットを当ててレビューしていこう。

【【M3搭載版“iMac”が来たぞ!完成された美しさと強力なパフォーマンスをお見せしましょう【実機動作あり】】】

「最大2倍高速」なM3を採用、メモリは24GB搭載可能に

 iMac(24インチ, 2023)は、OSにmacOS Sonoma バ-ジョン14.1.1、プロセッサにM3を採用。メモリは8GB/16GB/24GBユニファイドメモリ(LPDDR5)、ストレージは256GB/512GB/1TB/2TB SSDを搭載している。Appleは「M3を搭載したiMacは、M1搭載の前世代よりも最大2倍高速」と謳っており、のちほどベンチマークの章でもお伝えするが実際のアプリでも大幅なパフォーマンス向上を実現している。

 プロセッサのアップグレード以外のスペックについては大きな変更はない。変わったのは最大メモリ容量が24GBに増え、ワイヤレス通信がWi-Fi 6EとBluetooth 5.3に変わったこと。24型4,480×2,520ドット低反射ディスプレイのスペックや、インターフェイスの構成などは同一だ。詳しいスペックについては下記の表を参照してほしい。

【表1】新旧「24インチiMac」のスペック
製品名iMac(24インチ, 2023)iMac(24インチ, M1, 2021)
OSmacOS Sonoma バ-ジョン14.1.1macOS Big Sur バ-ジョン11.3
CPUApple M3
(8コアCPU、8コアまたは10コアGPU、16コアNeural Engine)
Apple M1
(8コアCPU、7コアまたは8コアGPU、16コアNeural Engine)
メモリ8GB/16GB/24GBユニファイドメモリ(LPDDR5)8GB/16GBユニファイドメモリ(LPDDR4)
ストレージ256GB/512GB/1TB/2TB SSD
ディスプレイ24型(4,480×2,520ドット、低反射、輝度500cd/平方m、色域P3)
通信Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0
インターフェイスThunderbolt 3×2(USB4にも対応)、USB 3.1 Type-C×2(10コアGPUモデルのみ)、Gigabit Ethernet(8コアGPUモデルではオプション)、3.5mmヘッドフォンジャックThunderbolt 3×2(USB4にも対応)、USB 3.1 Type-C×2(8コアGPUモデルのみ)、Gigabit Ethernet(8コアGPUモデルのみ)、3.5mmヘッドフォンジャック
カメラ1080p Webカメラ
本体サイズ547×147×461mm
重量4.43kg(2ポートモデル)
4.48kg(4ポートモデル)
4.46kg(2ポートモデル)
4.48kg(4ポートモデル)
セキュリティTouch IDによる指紋認証(搭載キーボード選択時)
同梱品Magic Keyboard、Magic Mouse、143W電源アダプタ、電源コード、USB-C - Lightningケーブル
カラーブルー、グリーン、ピンク、シルバー、イエロー、オレンジ、パープル

 円安の影響を受けて、標準構成モデルの価格、カスタマイズ時の価格が上昇している。しかしiMacは内蔵メモリ、ストレージを後から増設、換装できないので、購入する際には慎重にスペックを選択してほしい。

【表2】新旧「24インチiMac」標準構成時の価格一覧
標準構成価格
M1搭載(7コアGPU/8GB/256GB)

M3搭載(8コアGPU/8GB/256GB)
15万4,800円

19万8,800円
M1搭載(8コアGPU/8GB/256GB)

M3搭載(10コアGPU/8GB/256GB)
17万7,800円

23万4,800円
M1搭載(8コアGPU/8GB/512GB)

M3搭載(10コアGPU/8GB/512GB)
19万9,800円

26万2,800円
【表3】新旧「24インチiMac」カスタマイズ価格の例
カスタマイズパーツ旧型での価格新型での価格
メモリ8GB→16GB+2万2,000円+2万8,000円
メモリ8GB→24GB-+5万6,000円
ストレージ256GB→512GB+2万2,000円+2万8,000円
ストレージ256GB→1TB+4万4,000円+5万6,000円
ストレージ256GB→2TB+8万8,000円+11万2,000円
ストレージ512GB→1TB+2万2,000円+2万8,000円
ストレージ512GB→2TB+6万6,000円+8万4,000円
ディスプレイは24型(4,480×2,520ドット、218ppi、低反射、500cd/平方m、色域P3、タッチ非対応、スタイラス非対応)液晶を搭載
カラーはこのブルーのほかに、グリーン、ピンク、シルバー、イエロー、オレンジ、パープルを用意。新色は用意されなかった
右側面と左側面
本体底面左右には空間オーディオに対応した6スピーカーシステムを内蔵
底面には、認証情報、型番、シリアルナンバーなどが記載
スタンドは前後の傾きのみ調整できる
左2つがUSB 3.1 Type-C×2、右2つがThunderbolt 3×2(USB4対応)
本体背面の電源端子。電源ケーブルは磁石によって固定する
電源ボタン
製品パッケージ
左上から本体、143W電源アダプタ、電源コード、USB-C - Lightningケーブル、Touch ID搭載Magic Keyboard、Magic Trackpad、Magic Mouse
143W電源アダプタのケーブル長は実測200cm、電源コードの長さは実測107cm
143W電源アダプタ本体には1000BASE-T対応有線LANの端子を装備。1本のケーブルで電源供給とネットワーク接続をまかなえる。スマートに配線できるわけだ
143W電源アダプタの仕様は入力100-240V~2.0A、出力15.9V/9.0A、容量143W
143W電源アダプタと電源コードの合計重量は実測533.5g
これはオプションの「Touch ID搭載Magic Keyboard(テンキー付き) - 日本語(JIS)」。標準で同梱されるのはテンキーなしのキーボードだ。Magic Keyboardからは+1万円、Touch ID搭載Magic Keyboardからは+4,000円で変更できる
Magic MouseからMagic Trackpadには+6,000円で変更可能。Magic Trackpad単体の価格は1万6,800円(ホワイトの場合)
標準で同梱されるMagic Mouse。単体の価格は1万800円(ホワイトの場合)
USB-C - Lightningケーブル。編み込み式なので断線しにくい
上からMagic Mouse、Magic Trackpad、Magic Keyboard。充電用の端子はすべてLightning規格。USB Type-C版の早期リリースを期待したい
「iMac(24インチ, 2023)」のマニュアルは最低限。ただmacOSはチュートリアルが充実しているので、困ることはないはずだ

キーボードはMagic Keyboard一択、ポインティングデバイス選びは難しい

 iMacはカスタマイズ購入時にキーボード、トラックパッド、マウスを自分好みの構成に変更できる。Touch ID搭載Magic Keyboardはテンキーなしとテンキーありの2モデルを用意。またほかの言語用のキーボードも選択可能だ。

 キーボードのキーピッチは19mm、キーストロークは1.3mm。ストロークは浅めだが、ノートブックと併用するのであればショートストローク仕様のキーボードのほうがしっくりくる。もちろんサードパーティ製キーボードを選択してもよいが、Touch IDの利便性を考えるとMagic Keyboardが第一候補となるだろう。

キーピッチは19mm前後
キーストロークは1.3mm前後
ワイヤレスキーボードにTouch ID(指紋認証センサー)を装備。すべての文字キーが等幅に揃えられており、違和感なくタッチタイピングできる

 ポインティングデバイス選びは少々難しい。予算に余裕があればMagic MouseとMagic Trackpadの両方を購入してもいいが、テーブルの作業スペースが狭くなってしまう。また発売当初から指摘されているが、Magic Mouseは充電用のLightning端子が底面に配置されており、充電しながら使えないというデメリットがある。

 個人的にはMacBookも使っている方なら、操作感がまったく同じMagic Trackpadを強くお勧めする。とは言え、Magic MouseとMagic TrackpadにはTouch IDが搭載されているわけではないので、他社製ポインティングデバイスを選択してもよいだろう。

Magic Trackpadは感圧タッチ方式で、サイズは160×114.9×4.9~10.9mm。Windowsでも使いたくなる広々としたタッチパッドだ
Magic Mouseは上面がマルチタッチに対応。ただし筆者の指は太いので、正直Magic Mouseのジェスチャー操作は苦手だ

 24型液晶ディスプレイは、解像度が4,480×2,520ドット、輝度が500cd/平方m、色域がP3と謳われている。カラーキャリブレーション機器で色域を計測したところ、sRGBカバー率は100%、sRGB比は134.3%、AdobeRGBカバー率は87.2%、AdobeRGB比は99.6%、DCI-P3カバー率は98.3%、DCI-P3比は99%という広い色域を確認できた。

 輝度やコントラスト比など画質に関わるスペックはMacBook Proのほうが優れているが、24型の大画面による迫力はiMacのほうが上だ。

24型液晶ディスプレイは、解像度が4,480×2,520ドット、輝度が500cd/平方m、色域がP3。明るく、鮮やかに画像や映像を表示できる
24型ディスプレイの視野角は広く、ほぼ真横からでも画面になにが映っているのか確認可能だ
実測したsRGBカバー率は100%、sRGB比は134.3%
AdobeRGBカバー率は87.2%、AdobeRGB比は99.6%
DCI-P3カバー率は98.3%、DCI-P3比は99%

 サウンド面については、2組のフォースキャンセリングウーファーと、各組のウーファーごとに搭載されたツイーターで構成された、6スピーカーシステムが内蔵されている。

 スピーカー自体はディスプレイ下部に配置されているが、音楽を再生するとディスプレイ中央から再生されているかのように聞こえ、包まれるような音の広がりも感じられる。iMacは空間オーディオ対応の映像コンテンツを鑑賞するのにもってこいの一体型PCだ。

マグネットビューワーを使うと、スピーカーの位置を確認可能。広がりある音場を実現するため6スピーカーは左右ぎりぎりに配置されている
YouTubeで公開されている「前前前世(movie ver.) RADWIMPS MV」を最大ボリュームで再生した際の音圧レベルは最大81.1dB(50cmの距離で測定)
ディスプレイ上部には、1080p FaceTime HDカメラ、カメラインジケーター、環境光センサーが内蔵
プリインストールアプリ「Photo Booth」で撮影。24型ディスプレイが照明代わりになってくれることもあり、ノートブックよりも明るく撮影できる

ベンチマークで旧型・新型を比較

 最後にパフォーマンスをチェックしよう。今回は下記のベンチマークを実施した。

  • CPUベンチマーク「Cinebench R23.200」
  • CPU/GPUベンチマーク「Geekbench 5.3.1」
  • ストレージベンチマーク「Blackmagic Disk Speed Test」
  • ストレージベンチマーク「AmorphousDiskMark 4.0.1」
  • 「Adobe Lightroom Classic CC」で100枚のRAW画像を現像
  • 「Adobe Premiere Pro CC」で実時間5分の4K動画を書き出し

 なお比較対象機種としては、M1(8コアCPU+8コアGPU)、メモリ16GB、ストレージ512GB搭載の「iMac(24インチ, M1, 2021)」を採用している。

【表4】検証機の主な仕様
iMac(24インチ, 2023)iMac(24インチ, M1, 2021)
SoCM3M1
CPU高性能コア×4、高効率コア×4高性能コア×4、高効率コア×4
GPU10コア8コア
Neural Engine16コア16コア
メモリ24GB16GB
ストレ-ジ1TB512GB
OSmacOS Sonoma バージョン14.1.1macOS Big Sur バージョン11.3

 まずCPU性能だが、M3搭載モデルはM1搭載モデルに対して、Cinebench R23.200のCPU(Multi Core)で135%相当、CPU(Single Core)で126%相当、Geekbench 5.3.1のMulti-Core Score(Apple Sillicon)で141%相当、Single-Core Score(Apple Sillicon)で131%相当のスコアを記録している。AppleはM3のCPU性能はM1より最大35%高速と謳っており、マルチコアのパフォーマンスでそれが裏付けられている。

 一方グラフィックス性能についても、M3搭載モデルはM1搭載モデルに対して、Geekbench 5.3.1のCompute(Metal)で159%相当、Compute(OpenCL)で168%相当のスコアを記録している。グラフィックス性能について、AppleはM3のGPU性能はM1より65%高速と発表しており、こちらもほぼ公称通りの性能を確認できた。

Cinebench R23.200
Geekbench 5.3.1

 ストレージ速度についてはほぼ同等。しかしBlackmagic Disk Speed TestではM3搭載モデルのほうがWRITE、READともに上回っていたものの、AmorphousDiskMark 4.0.1ではシーケンシャルリードなどのいくつかの項目でスコアが逆転している。ただその差は大きくはないので、実際iMacを使っていて体感することはないはずだ。

Blackmagic Disk Speed Test
AmorphousDiskMark 4.0.1

 実際のアプリケーションでは、Adobe Premiere Pro CCでは誤差以上の違いはなかったものの、Adobe Lightroom Classic CCでは49%の所要時間で処理を終えた。筆者自身はM1搭載のMacを使用しているが、実アプリでこれだけパフォーマンス差があるのであればぜひ買い換えを検討してみたいと思う。

Adobe Lightroom Classic CCで100枚のRAW画像を現像
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し

 高負荷時の発熱については「Cinebench 2024」実行中にサーモグラフィーカメラで計測してみたが、前面の最大温度は43.3℃、背面の最大温度は44.3℃、電源ケーブル先端の最大温度は46.2℃、ACアダプタの最大温度は38.3℃となった(室温24.6℃で測定)。一般的なノートPCと比べても発熱は低めだ。

前面の最大温度は43.3℃
背面の最大温度は44.3℃
電源ケーブル先端の最大温度は46.2℃
ACアダプタの最大温度は38.3℃

パーソナルユーザー向けの一体型として魅力的なニューモデル

 「iMac(24インチ, 2023)」はM2をスキップして、M1からM3へプロセッサがアップグレードしたが、ベンチマークソフトだけでなく、実アプリの動作速度でも大幅にパフォーマンスが向上している。M3 Pro、M3 Max搭載モデルと比較すると処理能力自体は見劣りするが、これは両プロセッサ搭載機がプロ仕様のマシンというだけで、M3搭載iMacもクリエイティブワークを快適にこなせるパフォーマンスを備えている。

 Intelプロセッサ時代に用意されていた27インチモデルや、よりハイパフォーマンスなProモデルの登場にも期待したいところだが、今回の「iMac(24インチ, 2023)」も多彩な7色のカラーモデルが用意されており、パーソナルユーザー向けの一体型としては魅力的なニューモデルに仕上がっていると言えよう。