Hothotレビュー
約2年半ぶりのiMacの実力はいかに。M1版から買い換える価値はあるのか?最新のM3版と比べる
2023年11月30日 06:24
Appleは、「M3」チップを採用した「iMac(24インチ, 2023)」を11月7日に発売した。M1を搭載した「iMac(24インチ, M1, 2021)」が発売されたのは2021年の5月21日だが、M2搭載iMacはスキップされているので、約2年半ぶりの新型投入ということになる。今回本製品の実機を借用したので、主にパフォーマンス向上にスポットを当ててレビューしていこう。
「最大2倍高速」なM3を採用、メモリは24GB搭載可能に
iMac(24インチ, 2023)は、OSにmacOS Sonoma バ-ジョン14.1.1、プロセッサにM3を採用。メモリは8GB/16GB/24GBユニファイドメモリ(LPDDR5)、ストレージは256GB/512GB/1TB/2TB SSDを搭載している。Appleは「M3を搭載したiMacは、M1搭載の前世代よりも最大2倍高速」と謳っており、のちほどベンチマークの章でもお伝えするが実際のアプリでも大幅なパフォーマンス向上を実現している。
プロセッサのアップグレード以外のスペックについては大きな変更はない。変わったのは最大メモリ容量が24GBに増え、ワイヤレス通信がWi-Fi 6EとBluetooth 5.3に変わったこと。24型4,480×2,520ドット低反射ディスプレイのスペックや、インターフェイスの構成などは同一だ。詳しいスペックについては下記の表を参照してほしい。
製品名 | iMac(24インチ, 2023) | iMac(24インチ, M1, 2021) |
---|---|---|
OS | macOS Sonoma バ-ジョン14.1.1 | macOS Big Sur バ-ジョン11.3 |
CPU | Apple M3 (8コアCPU、8コアまたは10コアGPU、16コアNeural Engine) | Apple M1 (8コアCPU、7コアまたは8コアGPU、16コアNeural Engine) |
メモリ | 8GB/16GB/24GBユニファイドメモリ(LPDDR5) | 8GB/16GBユニファイドメモリ(LPDDR4) |
ストレージ | 256GB/512GB/1TB/2TB SSD | |
ディスプレイ | 24型(4,480×2,520ドット、低反射、輝度500cd/平方m、色域P3) | |
通信 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0 |
インターフェイス | Thunderbolt 3×2(USB4にも対応)、USB 3.1 Type-C×2(10コアGPUモデルのみ)、Gigabit Ethernet(8コアGPUモデルではオプション)、3.5mmヘッドフォンジャック | Thunderbolt 3×2(USB4にも対応)、USB 3.1 Type-C×2(8コアGPUモデルのみ)、Gigabit Ethernet(8コアGPUモデルのみ)、3.5mmヘッドフォンジャック |
カメラ | 1080p Webカメラ | |
本体サイズ | 547×147×461mm | |
重量 | 4.43kg(2ポートモデル) 4.48kg(4ポートモデル) | 4.46kg(2ポートモデル) 4.48kg(4ポートモデル) |
セキュリティ | Touch IDによる指紋認証(搭載キーボード選択時) | |
同梱品 | Magic Keyboard、Magic Mouse、143W電源アダプタ、電源コード、USB-C - Lightningケーブル | |
カラー | ブルー、グリーン、ピンク、シルバー、イエロー、オレンジ、パープル |
円安の影響を受けて、標準構成モデルの価格、カスタマイズ時の価格が上昇している。しかしiMacは内蔵メモリ、ストレージを後から増設、換装できないので、購入する際には慎重にスペックを選択してほしい。
標準構成 | 価格 |
---|---|
M1搭載(7コアGPU/8GB/256GB) ↓ M3搭載(8コアGPU/8GB/256GB) | 15万4,800円 ↓ 19万8,800円 |
M1搭載(8コアGPU/8GB/256GB) ↓ M3搭載(10コアGPU/8GB/256GB) | 17万7,800円 ↓ 23万4,800円 |
M1搭載(8コアGPU/8GB/512GB) ↓ M3搭載(10コアGPU/8GB/512GB) | 19万9,800円 ↓ 26万2,800円 |
カスタマイズパーツ | 旧型での価格 | 新型での価格 |
---|---|---|
メモリ8GB→16GB | +2万2,000円 | +2万8,000円 |
メモリ8GB→24GB | - | +5万6,000円 |
ストレージ256GB→512GB | +2万2,000円 | +2万8,000円 |
ストレージ256GB→1TB | +4万4,000円 | +5万6,000円 |
ストレージ256GB→2TB | +8万8,000円 | +11万2,000円 |
ストレージ512GB→1TB | +2万2,000円 | +2万8,000円 |
ストレージ512GB→2TB | +6万6,000円 | +8万4,000円 |
キーボードはMagic Keyboard一択、ポインティングデバイス選びは難しい
iMacはカスタマイズ購入時にキーボード、トラックパッド、マウスを自分好みの構成に変更できる。Touch ID搭載Magic Keyboardはテンキーなしとテンキーありの2モデルを用意。またほかの言語用のキーボードも選択可能だ。
キーボードのキーピッチは19mm、キーストロークは1.3mm。ストロークは浅めだが、ノートブックと併用するのであればショートストローク仕様のキーボードのほうがしっくりくる。もちろんサードパーティ製キーボードを選択してもよいが、Touch IDの利便性を考えるとMagic Keyboardが第一候補となるだろう。
ポインティングデバイス選びは少々難しい。予算に余裕があればMagic MouseとMagic Trackpadの両方を購入してもいいが、テーブルの作業スペースが狭くなってしまう。また発売当初から指摘されているが、Magic Mouseは充電用のLightning端子が底面に配置されており、充電しながら使えないというデメリットがある。
個人的にはMacBookも使っている方なら、操作感がまったく同じMagic Trackpadを強くお勧めする。とは言え、Magic MouseとMagic TrackpadにはTouch IDが搭載されているわけではないので、他社製ポインティングデバイスを選択してもよいだろう。
24型液晶ディスプレイは、解像度が4,480×2,520ドット、輝度が500cd/平方m、色域がP3と謳われている。カラーキャリブレーション機器で色域を計測したところ、sRGBカバー率は100%、sRGB比は134.3%、AdobeRGBカバー率は87.2%、AdobeRGB比は99.6%、DCI-P3カバー率は98.3%、DCI-P3比は99%という広い色域を確認できた。
輝度やコントラスト比など画質に関わるスペックはMacBook Proのほうが優れているが、24型の大画面による迫力はiMacのほうが上だ。
サウンド面については、2組のフォースキャンセリングウーファーと、各組のウーファーごとに搭載されたツイーターで構成された、6スピーカーシステムが内蔵されている。
スピーカー自体はディスプレイ下部に配置されているが、音楽を再生するとディスプレイ中央から再生されているかのように聞こえ、包まれるような音の広がりも感じられる。iMacは空間オーディオ対応の映像コンテンツを鑑賞するのにもってこいの一体型PCだ。
ベンチマークで旧型・新型を比較
最後にパフォーマンスをチェックしよう。今回は下記のベンチマークを実施した。
- CPUベンチマーク「Cinebench R23.200」
- CPU/GPUベンチマーク「Geekbench 5.3.1」
- ストレージベンチマーク「Blackmagic Disk Speed Test」
- ストレージベンチマーク「AmorphousDiskMark 4.0.1」
- 「Adobe Lightroom Classic CC」で100枚のRAW画像を現像
- 「Adobe Premiere Pro CC」で実時間5分の4K動画を書き出し
なお比較対象機種としては、M1(8コアCPU+8コアGPU)、メモリ16GB、ストレージ512GB搭載の「iMac(24インチ, M1, 2021)」を採用している。
iMac(24インチ, 2023) | iMac(24インチ, M1, 2021) | |
---|---|---|
SoC | M3 | M1 |
CPU | 高性能コア×4、高効率コア×4 | 高性能コア×4、高効率コア×4 |
GPU | 10コア | 8コア |
Neural Engine | 16コア | 16コア |
メモリ | 24GB | 16GB |
ストレ-ジ | 1TB | 512GB |
OS | macOS Sonoma バージョン14.1.1 | macOS Big Sur バージョン11.3 |
まずCPU性能だが、M3搭載モデルはM1搭載モデルに対して、Cinebench R23.200のCPU(Multi Core)で135%相当、CPU(Single Core)で126%相当、Geekbench 5.3.1のMulti-Core Score(Apple Sillicon)で141%相当、Single-Core Score(Apple Sillicon)で131%相当のスコアを記録している。AppleはM3のCPU性能はM1より最大35%高速と謳っており、マルチコアのパフォーマンスでそれが裏付けられている。
一方グラフィックス性能についても、M3搭載モデルはM1搭載モデルに対して、Geekbench 5.3.1のCompute(Metal)で159%相当、Compute(OpenCL)で168%相当のスコアを記録している。グラフィックス性能について、AppleはM3のGPU性能はM1より65%高速と発表しており、こちらもほぼ公称通りの性能を確認できた。
ストレージ速度についてはほぼ同等。しかしBlackmagic Disk Speed TestではM3搭載モデルのほうがWRITE、READともに上回っていたものの、AmorphousDiskMark 4.0.1ではシーケンシャルリードなどのいくつかの項目でスコアが逆転している。ただその差は大きくはないので、実際iMacを使っていて体感することはないはずだ。
実際のアプリケーションでは、Adobe Premiere Pro CCでは誤差以上の違いはなかったものの、Adobe Lightroom Classic CCでは49%の所要時間で処理を終えた。筆者自身はM1搭載のMacを使用しているが、実アプリでこれだけパフォーマンス差があるのであればぜひ買い換えを検討してみたいと思う。
高負荷時の発熱については「Cinebench 2024」実行中にサーモグラフィーカメラで計測してみたが、前面の最大温度は43.3℃、背面の最大温度は44.3℃、電源ケーブル先端の最大温度は46.2℃、ACアダプタの最大温度は38.3℃となった(室温24.6℃で測定)。一般的なノートPCと比べても発熱は低めだ。
パーソナルユーザー向けの一体型として魅力的なニューモデル
「iMac(24インチ, 2023)」はM2をスキップして、M1からM3へプロセッサがアップグレードしたが、ベンチマークソフトだけでなく、実アプリの動作速度でも大幅にパフォーマンスが向上している。M3 Pro、M3 Max搭載モデルと比較すると処理能力自体は見劣りするが、これは両プロセッサ搭載機がプロ仕様のマシンというだけで、M3搭載iMacもクリエイティブワークを快適にこなせるパフォーマンスを備えている。
Intelプロセッサ時代に用意されていた27インチモデルや、よりハイパフォーマンスなProモデルの登場にも期待したいところだが、今回の「iMac(24インチ, 2023)」も多彩な7色のカラーモデルが用意されており、パーソナルユーザー向けの一体型としては魅力的なニューモデルに仕上がっていると言えよう。