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14型でRTX 4060搭載のコンパクトゲーミングノート「G-Tune E4」を試す

G-Tune E4

 株式会社マウスコンピューターのゲーミングPCブランド「G-Tune」より、14型ゲーミングノートPC「G-Tune E4」が発売された。ゲーミングノートPCとしては比較的小型・軽量な製品だ。価格は19万9,800円。

 ゲーミングノートPCの小型・軽量化は冷却機構の難度が上がり、十分な性能を発揮できなくなることもある。だがGeForce RTX 40シリーズが登場してからは各社の製品で一段と軽量化が進んでおり、携帯性と性能を両立させたい人にとっては狙い目のタイミングとなっている。

 本機もGeForce RTX 4060を搭載した、そういう製品の1つ。実際に性能を発揮できているか、また発熱や騒音の問題はないのか、実機をチェックしていく。

GeForce RTX 4060搭載で約1.8kgと軽量ながら20万円切り

 「G-Tune E4」のスペックは下記の通り。

【表1】G-Tune E4のスペック
G-Tune E4
CPUCore i7-12650H(Pコア×6+Eコア×4/16スレッド、Pコア4.7GHz+Eコア3.5GHz)
GPUGeForce RTX 4060(GDDR6 8GB)
メモリ16GB DDR4-3200(8GB×2)
SSD500GB(M.2 NVMe PCIe 4.0 x4)
光学ドライブなし
ディスプレイ14型非光沢液晶(1,920×1,080ドット、144Hz)
OSWindows 11 Home
汎用ポートThunderbolt 4、USB 3.1 Type-C、USB 3.0×2
カードスロットmicroSD
映像出力HDMI、Thunderbolt 4
無線機能Wi-Fi 6E、Blunetooth 5
有線LANGigabit Ethernet
その他前面100万画素カメラ、デュアルアレイマイク、ヘッドセット端子など
本体サイズ約323.9×225×22mm
重量約1.8kg
価格19万9,800円

 CPUは10コア/16スレッドのCore i7-12650H。現時点では1世代前のものになるが、6基のPコアを備えたパワフルなCPUだ。GPUは最新のGeForce RTX 4060を搭載する。

 ディスプレイは14型のフルHD(1,920×1,080ドット)で、144Hzのハイリフレッシュレートに対応。メインメモリは16GB、ストレージはNVMe PCIe 4.0 x4の500GB SSDと、ゲーミング環境としては最低ラインを確保した形だ。

 ネットワーク周りは有線のGigabit Ethernetを搭載するほか、Wi-Fi 6Eにも対応。Thunderbolt 4を含む2基のUSB Type-Cや、Windows Hello対応のWebカメラなど、モダンな機能を備えている。

 充電には付属の180W出力のACアダプタのほか、Thunderbolt 4ポートからのUSB PDによる入力にも対応している。製品説明には、100W以上を出力可能なUSB PD対応機器からの入力に対応するとされているが、3Dゲームプレイ時には100Wの給電では足りない可能性もあるので、補助的なものと考えておく方がいいだろう。またThunderbolt 4ポートは15WのUSB PD出力にも対応する。

 本体重量は約1.8kgとゲーミングノートPCとしては軽量な部類。フットプリントもA4ファイルサイズより僅かに大きい程度でコンパクトだ。それでいて価格も送料込みで20万円を切っている。ゲーミングノートPCは小型化にともなって高価になりがちなので、こういった製品を探している人には注目に値する。

 カスタマイズにも対応しており、メインメモリは最大64GB、SSDは最大4TBに変更できる。特にSSDの容量はやや物足りなさもあるので、必要な容量に変更しておくといいだろう。

最新GPUの高性能を小型筐体で発揮

 次に実機のパフォーマンスをチェックする。ベンチマークテストに利用したのは、「PCMark 10 v2.1.2600」、「3DMark v2.26.8098」、「Cinebench R23」、「CrystalDiskMark 8.0.4」。

 本機にはカスタマイズツール「Control Center 3.0」がプリインストールされており、動作モードの切り替えができる。設定は標準の「バランスモード」のほか、「パフォーマンスモード」、「静音モード」の計3つが選べる。試用機の初期設定は「バランスモード」となっていたが、ベンチマークは3つの設定を切り替えて実施した。

「Control Center 3.0」で動作モードを選べる
【表2】PCMark 10 v2.1.2600のベンチマーク結果
動作モードバランスモードパフォーマンスモード静音モード
PCMark 106,0226,1455,057
Essentials9,6879,6458,864
Apps Start-up score14,26014,02412,831
Video Conferencing Score6,7796,8466,365
Web Browsing Score9,4069,3488,530
Productivity9,65310,1099,608
Spreadsheets Score12,31013,11912,403
Writing Score7,5707,7437,443
Digital Content Creation6,3406,4584,122
Photo Editing Score4,3284,4043,193
Rendering and Visualization Score13,68114,2117,075
Video Editing Score4,3044,3053,101
Idle Battery Life12時間43分--
Modern Office Battery Life7時間41分--
Gaming Battery Life1時間55分--
【表3】3DMark v2.26.8098のベンチマーク結果
動作モードバランスモードパフォーマンスモード静音モード
Speed Way
Score2,3382,5591,951
Port Royal
Score5,4065,8674,109
Time Spy
Score9,77510,6296,590
Graphics score9,55710,4517,345
CPU score11,23411,7654,167
Fire Strike
Score21,35419,38411,528
Graphics score25,48626,85919,035
Physics score25,62426,81110,320
Combined score8,6615,5343,048
Wild Life
Score55,59358,58939,117
Night Raid
Score45,45649,19225,571
Graphics score84,21285,57867,764
CPU score12,59914,4295,647
CPU Profile
Max threads6,7487,1382,305
16-threads6,4367,1002,335
8-threads5,0065,6802,142
4-threads3,5193,6081,748
2-threads1,9691,9681,226
1-thread997995778
【表4】VRMark v1.3.2020のベンチマーク結果
動作モードバランスモードパフォーマンスモード静音モード
Orange Room
Score10,51810,7495,686
Average frame rate229.29fps234.33fps123.95fps
Cyan Room
Score6,6026,6056,590
Average frame rate143.92fps143.98fps143.67fps
Blue Room
Score2,5682,7641,964
Average frame rate55.98fps60.25fps42.82fps
【表5】ゲームのベンチマーク結果
動作モードバランスモードパフォーマンスモード静音モード
PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator(簡易設定6)
1,920×1,080ドット19,67020,1948,561
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク(最高品質)
1,920×1,080ドット18,38618,96212,553
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(高品質)
3,840×2,160ドット3,9114,1363,148
1,920×1,080ドット9,3409,7456,249
【表6】Cinebench R23のベンチマーク結果
動作モードバランスモードパフォーマンスモード静音モード
CPU(Multi Core)11,030pts12,929pts5,084pts
CPU(Single Core)1,818pts1,820pts1,503pts

 CPUのパフォーマンスは、マルチスレッドではEコアが増加した最新のCPUには及ばない。それでも14型と比較的コンパクトなノートPCとしてはかなり高性能な部類ではある。

 グラフィックス系では、前世代の格上であるGeForce RTX 3070と比較しても遜色ない結果で、最新GPUであるGeForce RTX 4060の強さがうかがえる。さらにAIによるフレーム生成機能を持つDLSS 3に対応したゲームなら、よりフレームレートを上げられるという期待もある。

 動作モードに関しては、「パフォーマンスモード」にすると性能向上がはっきりと見え、特にCPUのマルチスレッド処理では差が大きくなる。ただ騒音もやや大きくなる。

 「静音モード」ではCPU・GPUともに性能が低下する。ただGPUの性能低下は比較的小さく、軽めのゲームならば十分動作できる程度で収まっている。ファンノイズはアイドル時からほぼ変化がなく、静音効果は抜群だ。

 バッテリ駆動時間は、ディスプレイの輝度50%、NVIDIA Battery Boostはオフで実行。アイドル時では12時間を超えるが、オフィスユースで8時間弱、ゲーミングで2時間弱。ゲーミングでは途中でグラフィックスの性能が大きく落ちている(おそらく内蔵GPUに切り替わっている)ので、ACアダプタは必須と思った方がいい。軽めの作業であれば持ち出して使うのにも十分で、軽量な割には長持ちしてくれる。

 SSDはADATA製のLEGEND 850シリーズ「ALEG-850-512GCS」が使われていた。シーケンシャルリードで約5.3GB/s、シーケンシャルライトも約4GB/sと高速。ゲーム用途としても不満は出ないであろう。

CrystalDiskMark 8.0.4

 また実際のゲームプレイのテストとして、「フォートナイト」のバトルロイヤル1戦と、「Apex Legends」のチュートリアル1周のフレームレートを、NVIDIA FrameViewで計測した。解像度はディスプレイと同じフルHDで実施。画質はいずれも最高設定、動作モードは標準の「バランスモード」とした。

【表7】ゲームのフレームレート
フォートナイトApex Legends
平均60.268fps188.94fps
下位10%49.95fps150.17fps
下位1%42.954fps124.758fps

 フォートナイトでは、DirectX 12でクオリティプリセットを最高、レイトレーシングは不使用とした。フレームレートは平均で約60fpsとなっており、実際にプレイしていても違和感はない。ただ144Hzのディスプレイを活かしきれていない状態なので、少し画質を下げる方がプレイ感覚はよくなるだろう。

 Apex Legendsでは、144Hzのリミッター上限を解除し、画質設定を全て最高に設定。ただしスポットシャドウディテールを「極」にするとVRAM不足とされたので、1段階下の「最高」にしている。この状態でも平均フレームレートは約189fpsと高く、下位1%でも約125fpsと十分。これなら画質優先でも144Hzのディスプレイを存分に活用できる。

落ち着いた外見で持ち運びも良好。排熱周りがやや弱いか

僅かに青みがかって見える色味。「G-Tune」ロゴも同系色で目立たない

 続いて実機を見ていく。筐体は僅かに青みがかって見えるダークグレーで、メタリックな質感は高級感がある。天面はフラット、角は軽く丸めた程度で、全体に凹凸が少ないシンプルな形状だ。

 天面のロゴは筐体色と似たダークブルーで目立たない。ゲーミングPCと言えば、一昔前まではLEDで派手に装飾されたものが多かったし、同社のデスクトップPCも甲冑をモチーフにしたケースが伝統だった。本機は一般向けのノートPCとしてもむしろ地味な部類で、ゲーミングPCだと言われなければ気付かれないだろう。

 ディスプレイ部を畳んで手に持つと、薄さ22mmということもあって、かなり持ちやすい。1.8kgの重さも男性なら片手で軽々持てる程度なので、特別に軽いノートPCが欲しいというわけでないなら、携帯性も悪くはない。ただ天面を押すとややへこみやすく、鞄の中で圧迫されるような状況はなるべく避ける方がいいだろう。

 ディスプレイはどの角度から見ても色相変化はなく、視野角も十分に広い。144HzのリフレッシュレートのおかげでWebブラウザのスクロールの動きも滑らかだ。応答速度は特別に高速ではないものの、残像感は抑えられている方だ。

 色味は派手さはないものの、コントラストは高くしっかりした画が出ている。HDRには対応しておらず、輝度を100%にしてもまぶしいほどの明るさにはならない。逆に輝度を0%にすると相当暗くできるため、暗めの設定で使いたい人には微調整が効いて便利だ。

ディスプレイはコントラストが高く見やすい
視野角も十分な広さを確保

 キーボードはテンキーレスのアイソレーションタイプ。キーピッチは約19mmで、ほとんどのキーは正方形を確保している。キー配置もオーソドックスで、注意が要るのは縦に潰れた形のカーソルキーくらいだろう。

 キーストロークはノートPCなりの浅さだが、キータッチはほどよくクリック感がある。キーボードバックライトは白単色で、明るさを5段階に調整可能。消灯も可能だ。

キーボードはテンキーレス。十分なキーピッチを確保している
タッチパッドはボタン一体型の形状。筐体サイズの割にはかなり大きめ

 インターフェイス類は、左側面にGigabit Ethernet、USB 3.0、Thunderbolt 4。右側面にヘッドセット端子、USB 3.1 Type-C、USB 3.0、HDMI、microSDカードスロット、電源ボタン、電源端子を装備。

 左側面は奥の方が冷却用に取られている。そのためスペースのある右側面に端子類が集まっており、電源も右奥にある。本体右側はマウス操作のために極力空けておきたいのだが、HDMIやヘッドセット端子が右側にあるのが少々残念。Gigabit Ethernetを搭載した分、スペース的に厳しいのだろうか。

左側面はGigabit Ethernet、USB 3.0、Thunderbolt 4
右側面はヘッドセット端子、USB 3.1 Type-C、USB 3.0、HDMI、microSDカードスロット、電源ボタン、電源端子
背面は排気口のみで端子類はない
前面は右側にインジケータがある
底面は吸気用に広くスリットがある。手前の小さなスリットはスピーカー部分

 スピーカーは底面の手間側、左右に配置されている。音質は低音がほとんど出ておらず、中高音も伸びやかさに欠ける。いかにも小型ノートPCっぽい音なのだが、音の定位感はとてもよく、音楽を流すと空間の音の広がりが感じられる。ゲームにおいて音を情報として取る時にはかなり優れていると感じた。

 エアフローは、底面から吸気、背面と左側面から排気。アイドル時はファンの回転が辛うじて分かる程度で静かだ。高負荷になるとCPUとGPUの両方のファンが回り、かなり高めで大きな風切り音が出る。スピーカーからゲームの音を出していてもきちんと拾いきれないほどの騒音で、ヘビーな3Dゲームをプレイする際はヘッドフォンがあった方がいい。

 高負荷な状態が続くと、キーボードの全体が温かくなってくる。W/A/S/Dキー付近で体温と同じか少し温かい程度で、熱くはないものの不快に感じる人はいるだろう。アイドル時にはキーボードへの熱伝導は感じられない。

 ACアダプタは180W出力。本体を畳んだ時の厚さとほぼ同じ厚さで、サイズも比較的コンパクト。ただコンセントからのケーブルはデスクトップPC並みに太いので、持ち運びに適するとは言いがたい。

 なお本機は左側面にあるThunderbolt 4端子でUSB PDによる充電にも対応しており、出力100W以上のUSB PD機器が必要とされている(100W対応USB PD充電器はオプションでも追加できる)。右側面のUSB Type-C端子は非対応だ。試しに筆者所有の27W出力のUSB PDアダプタを接続してみたが、充電状態にはならなかった。

ACアダプタは180W出力。比較的小型だがケーブルは太い

小型・高性能・低価格で仕事にもゲームにも使える

 本機はコンパクトな筐体で、最新のゲーミングノートPCのパフォーマンスを引き出せているという点では評価できる。CPUが前世代ではあるが、その分だけ価格も下げられるだろうし、3Dゲームのパフォーマンスへの影響はほぼないと思われる。スペックから考えれば安価なのも魅力だ。

 ただ小型で安価なしわ寄せと言うべきか、ファンの騒音とキーボードへの熱伝導は気になる。騒音はヘッドフォンで、キーボードは別にUSB接続のキーボードを用意するか、ゲームパッドで遊ぶなどして対応はできるが、いずれもそのまま使うのはやや悩ましい状況だ。また端子類が右側面に偏っているのも気になる。

 筐体デザインはゲーミングPCと思えないほど落ち着いており、仕事で使って何ら問題ない。仕事にもゲームにも使えて、サイズとバッテリ的に持ち出しも可能、というところに価値を見いだせるなら、お買い得な製品と言える。

「Control Center 3.0」によるファンコントロール機能も搭載。これでファンの回転数を我慢できる範囲に設定してやるのも手だ