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M2 Pro搭載「Mac mini」は爆速過ぎた!M2&M1 MacBook Proと性能比較

Apple「Mac mini(2023)」8万4,800円~

 Appleは自社製SoC「M2」と「M2 Pro」を採用した小型デスクトップ機「Mac mini(2023)」を2月3日より販売開始した。従来のMac miniには「M1」が搭載されており、低価格なエントリー向けのコンパクト機という位置づけだったが、今回は上位SoCのM2 Pro搭載モデルをラインナップに追加。8万4,800円からというエントリーモデルは引き続き用意しつつも、より高い性能を求めるユーザーに向けたパフォーマンスモデルもラインナップした。

 今回Appleより最もCPU、GPUコアの多いM2 Proを搭載した上位モデルを借用したので、どれくらいのパフォーマンスを発揮するのか検証していこう。

M2 Pro搭載Mac mini(2023)の爆速っぷりをライブで見せます!
【2月13日(月)21時開始】

コンパクトボディから強烈なパワーを放つM2 Pro搭載のMac mini(2023)。その外観、特徴、仕様からベンチマーク結果の解説、実機を用いた動作デモまでライブでお届けします! 解説は本稿を執筆したジャイアン鈴木氏、MCはPADプロデューサーの佐々木修司。

SoCは3種類。メモリ・ストレージ・インターフェイスが変わる点にも注意

 Mac mini(2023)はOSに「macOS Ventura バ-ジョン13」、SoCにM2またはM2 Proが採用されている。SoC選びでまず注意してほしいのが、メモリ帯域幅がM2は100GB/s、M2 Proは200GB/sであること。

 また、M2 Proには10コアCPU/16コアGPU版と、12コアCPU/19コアGPU版の2種類がある。両者の価格差は42,000円なのでなかなか悩ましい選択だ。

 さらにややこしいのが、M2はメモリ(LPDDR5)を8GB/16GB/24GB、ストレージ(SSD)を256GB/512GB/1TB/2TB、M2 Proはメモリを16GB/32GB、ストレージを512GB/1TB/2TB/4TB/8TBから選択可能。

 そしてThunderbolt 4端子の数も、M2が2基、M2 Proが4基と異なっており、モニターの接続台数はM2が最大2台、M2 Proが最大3台だ。性能だけでなく、拡張性にも違いがある点には留意してほしい。

本体天面。サイズは197×197×35.8mm
本体底面。黒い部分は樹脂製。下部には認証情報とシリアルナンバーが記載されている
本体前面(上)と本体背面(下)。背面には右から電源ボタン、電源端子、有線LAN、Thunderbolt 4×4、HDMI、USB 3.0×2、3.5mmヘッドフォン端子を用意。M2搭載機はThunderbolt 4が2基となる
右側面(上)と左側面(下)
本体の実測重量は1,274.5g(M2 Pro搭載機の場合)

有線LANはカスタマイズ購入時に10GbEにアップグレード可能

 改めてインターフェイスを解説すると、Thunderbolt 4×2または4、USB 3.0×2、HDMI、Gigabit Ethernet、3.5mmヘッドフォン端子を用意。ワイヤレス通信はWi-Fi 6E、Bluetooth 5.3をサポートしている。なお有線LANについてはカスタマイズ購入時に10Gigabit Ethernetにアップグレード可能だ。

 本体サイズは197×197×35.8mm、重量はM2版が1.18kg、M2 Pro版が1.28kg。本体にはスピーカーが内蔵されている。マイクは非搭載だ。これら以外の細かなスペックについては下記の表を参照してほしい。

【表1】「Mac mini (2023)」のスペック
OSmacOS Ventura バ-ジョン13
SoCApple M2(8コアCPU[高性能コア×4、高効率コア×4]、10コアGPU、16コアNeural Engine、100GB/sのメモリ帯域幅)、Apple M2 Pro(10コアCPU[高性能コア×6、高効率コア×4]、16コアGPU、16コアNeural Engine、200GB/sのメモリ帯域幅)
Apple M2 Pro(12コアCPU[高性能コア×8、高効率コア×4]、19コアGPU、16コアNeural Engine、200GB/sのメモリ帯域幅)
メモリ8GB/16GB/24GBユニファイドメモリ(LPDDR5)16GB/32GBユニファイドメモリ(LPDDR5)
ストレージ256GB/512GB/1TB/2TB SSD512GB/1TB/2TB/4TB/8TB SSD
オーディオスピーカー内蔵
通信Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3
インターフェイスThunderbolt 4×2、USB 3.0×2、HDMI、Gigabit Ethernet、3.5mmヘッドフォン端子Thunderbolt 4×4、USB 3.0×2、HDMI、Gigabit Ethernet、3.5mmヘッドフォン端子
本体サイズ197×197×35.8mm
重量1.18kg1.28kg
輸送用の茶箱
製品パッケージ。サイズは実測210×210×82mm。このサイズなら押し入れなどに入れても邪魔にはならない
パッケージ裏にはシリアルナンバー、システム構成などが記載されている。上下のテープを剥がせば開封可能。カッターなどは必要ない
パッケージには本体、電源ケーブル、説明書類、ロゴシールが同梱
電源ケーブルの長さは実測180cm。ケーブル断面は楕円形で曲げやすく、配線が容易だ
説明書は非常にシンプル。しかし起動後のセットアップ案内がよくできているので、初Macでも設定で迷うことはないはずだ

最上位構成を選択した場合の価格は63万2,800円

 8万4,800円からと低価格なエントリー機を用意しているMac mini(2023)だが、M2 Pro搭載機はメモリ、ストレージの容量が増えることもあり、価格が一気に上昇する。

 ちなみに12コアCPU、19コアGPUのM2 Pro、32GBのメモリ、8TBのストレージ、10GbEの有線LANという最上位構成を選択した場合の価格は63万2,800円となる。ここまでのスペックが必要な方は少数派だとは思うが、Mac mini(2023)はメモリとストレージを換装・増設できない。慎重にシステム構成を選んでほしい。

【表2】「Mac mini (2023)」の構成別価格の抜粋
SoCM2M2M2 ProM2 Pro
CPU8コア10コア12コア
GPU10コア16コア19コア
メモリ8GB16GB
ストレージ256GB512GB512GB
価格8万4,800円11万2,800円18万4,800円22万6,800円
今回借用した12コアCPU、19コアGPUのM2 Pro、16GBのメモリ、1TBのストレージのMac mini(2023)の価格は25万4,800円
12コアCPU、19コアGPUのM2 Pro、32GBのメモリ、8TBのストレージ、10GbEの有線LANという最上位構成を選択した場合の価格は63万2,800円
初回起動時の「このMacについて」。セットアップ時にOSのアップデートが実施される。記事執筆時のバージョンは「macOS Ventura 13.2」
今回の借用機はCPUは12コアで、高性能コア×8、高効率コア×4で構成されている
GPUのコア数は19コア。LGエレクトロニクス製27型4Kモニター「27UD68-W」にHDMIケーブルで接続して試用した
メモリはHynix製の16GB(LPDDR5)を搭載
1TBモデルのストレージは「APPLE SSD AP1024Z」が搭載
初回起動時のプリインストールアプリ一覧

M2 ProはCinebench R23.200で14,677ptsを記録

 Mac mini(2023)に採用されているM2 ProはM2の約2倍に相当する400億個のトランジスタで構成されており、メモリ帯域幅も2倍の200GB/sとなっている。

 そして、12コアCPUと19コアGPUを搭載するM2 Proは、M1に対して最大1.9倍のCPU性能、最大2.6倍のGPU性能を備えていると謳われている。そこで今回、実際にMac mini(2023)がどのぐらいのパフォーマンスを発揮するのか、M2とM1を搭載するMacBook Proとベンチマークスコアを比較してみた。

【表3】検証機のスペック
Mac mini (2023)MacBook Pro
(13-inch, M2, 2022)
MacBook Pro
(13-inch, M1, 2020)
SoCApple M2 ProApple M2Apple M1
CPU高性能コア×8
高効率コア×4
高性能コア×4
高効率コア×4
高性能コア×4
高効率コア×4
GPU19コア10コア8コア
Neural Engine16コア16コア16コア
メモリ16GB16GB16GB
ストレ-ジ1TB1TB1TB
OSmacOS Venture
バージョン13.2
macOS Monterey
バージョン12.4
macOS Monterey
バージョン12.0.1

 まずCPU性能だが、M2 Pro搭載Mac miniはCinebench R23のCPU(Multi Core)でM2搭載MacBook Proの168%、M1搭載MacBook Proの188%、Geekbench 5.4.6のMulti-Core ScoreでM2搭載MacBook Proの168%、M1搭載MacBook Proの195%相当のスコアを記録している。M2 Pro搭載Mac mini はCPU性能でAppleの公表値どおりのパフォーマンスを発揮していると言える。

 またCinebench R23のCPU(Multi Core)を連続10分間実行し続けるというテストも実施したが、計測誤差の範囲とは言え1回実行したときよりも高いスコアを記録した(室温28.8℃の部屋で計測)。冷却システムによほど余裕があるようで、高負荷をかけ続けても処理性能が低下しないわけだ。

Cinebench R23.200
「Cinebench R23.200」実行中の消費電力は最大58.615W、平均49.02W、アイドル時の消費電力は平均5.25W
Geekbench 5.4.6

 GPU性能についてはGFXBench Metalで計測を実施したが、M2 Pro搭載Mac miniはM2搭載MacBook Proの105~208%、M1搭載MacBook Proの112~303%のスコアを記録している。Appleの公表値ではGPU性能はM1の最大2.6倍とされているので、ベンチマークではそれ以上のスコアも叩き出したわけだ。

 Appleシリコン対応のクリエイティブ系アプリ、「No Man’s Sky」や「バイオハザード ヴィレッジ」などのゲームで、CPU以上に性能アップが図られたGPUの恩恵を受けられることになる。

GFXBench Metal
「バイオハザード ヴィレッジ」はAppleシリコンに対応しており、最大パフォーマンスを発揮できる

 今回ストレージでも大きな性能向上が確認できた。M2 Pro搭載Mac miniはBlackmagic Disk Speed TestのシーケンシャルリードでM2搭載MacBook Proの200%、M1搭載MacBook Proの205%、AmorphousDiskMark 4.0のシーケンシャルリードで M2搭載MacBook Proの194%、M1搭載MacBook Proの192%のスコアを記録している。

 ただしこれはあくまでも1TBのストレージを内蔵するM2 Pro搭載Mac miniのスコアだ。256GB、512GBのベースモデルでのパフォーマンスについては筆者自身で確認できていない。テスト機と同じか、それ以上のシステム構成でなければ、今回と同様のストレージ速度は得られない可能性がある点には留意してほしい。

Blackmagic Disk Speed Test
AmorphousDiskMark 4.0

 最後に実際のアプリでも処理速度を計測してみたが、M2 Pro搭載Mac miniはLightroomでM2搭載MacBook Proの66%、M1搭載MacBook Proの36%、Premiere ProでM2搭載MacBook Proの90%、M1搭載MacBook Proの91%、iMovieでM2搭載MacBook Proの57%の所要時間で処理を終えた(M1搭載MacBook Pro のiMovieは未計測のため省略)。

 アプリによって差はあるが、実際のアプリの処理速度でもM2 Pro搭載Mac miniは大幅なパフォーマンス向上を実現していることは間違いない。

Adobe Lightroom Classic CCで100枚のRAW画像を現像
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し
iMovieで実時間5分の4K動画を書き出し

小型軽量、低消費電力なハイパフォーマンスマシンを求めるのなら最有力候補

 Mac mini(2023)は、M2とM2 Proを採用することで、一般ユーザーからクリエイターまで幅広い層をカバーできるマシンとなった。iMovieで5分の4K動画を大きく1分を下回る41秒で書き出せるのだから、8K動画も実用的な速度で編集、書き出せる性能を備えているはずだ。

 そしてこれだけのハイパフォーマンスを平均49.02W(Cinebench R23実行時)という低消費電力で発揮できるのだから驚きである。メモリやストレージを増設、換装できない、OS、アプリが限定される弱点はあるが、小型軽量、低消費電力なハイパフォーマンスマシンを求めるのなら、Mac mini(2023)が最有力候補となることは間違いない。