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イロモノじゃなかったWebカメラ内蔵デスクトップ「MINISFORUM MC560」、小型でWeb会議性能が高い!

Webカメラ内蔵デスクトップPCのMINISFORUM「MC560」を試してみた

 デスクトップPCの場合、Webカメラは外付けを使うのが普通。しかし、それを筐体に最初から内蔵してしまったPCが現れた。特徴的で高性能な小型PCを多数リリースしているMINISFORUMの「MC560」というモデルだ。

 「Mars」という新シリーズのラインアップの1つとなるようだが、従来製品のように本体は超小型。にもかかわらず2.5Kという高解像度のWebカメラを備え、ノイズキャンセリング機能をもつマイクも内蔵するという。これまたユニークな製品が出てきたもんだ、という感じだが、その実機をメーカーからお借りできたので、どんな使い勝手なのかチェックしていきたい。

 なお、2023年1月時点で製品としては未発売、発売日・価格も未定となっており、詳細なスペックも明かされていない。

MINISFORUM MC560の主なスペック
CPUAMD Ryzen 5 5600U(6コア12スレッド、最大4.2GHz、TDP 15W)
ビデオチップAMD Radeon Graphics
メモリDDR4-3200 16GB
ストレージ512GB SSD(NVMe/M.2)
インターフェイスUSB 3.2 Gen.2 Type-A×2
USB 3.2 Gen.2 Type-C×1
HDMI、ヘッドセット端子
通信機能Wi-Fi 6、有線LAN(1GbE)
Webカメラ500万画素
OSWindows 11 Pro 64ビット
本体サイズ約105×68×154mm(実測)
重量約558g(実測)

意外と近くの手元に置けるワイドな視野

パッケージと本体

 筐体の大半がシルバーカラーのメッシュで覆われた外観は、パッと見、コンパクトなプロジェクタか空気清浄機か、あるいはBluetoothスピーカーか、と思ってしまうようなデザイン。サイズは実測したところ約105×68×154mmで、重量は558g。写真から受ける印象よりもずっと小型で、軽い。

メッシュで覆われた外観は空気清浄機やBluetoothスピーカーのようにも見える
片手で握れる大きさ
スマートフォン(Google Pixel 7 Pro)との比較
重量は実測558g
付属品はACアダプタとHDMIケーブル
ACアダプタの出力は約65W
付属のHDMIケーブルは60cmと短め。モニターのすぐ近くに置いて使うことを想定しているからか

 で、とりあえず細かいPCスペックは後回しにして、さっそくWebカメラ周りの性能や使い勝手を見ていこう。

 最初に気になるのは、PC本体にWebカメラを内蔵して、本当に実用的なの? という部分ではないだろうか。特に問題になりそうなのは視野だ。写真を見ると分かる通り、Webカメラは筐体前面の上部に埋め込まれている。なので、自分の姿がカメラで捉えられるように、モニターの前や脇あたりに置くことになるはず。

最大2.5K解像度のWebカメラが筐体に埋め込まれている

 つまり、この時点でまず本体の置き方に制約が出てくる。モニターの前に置くと、モニターの上下ポジションによっては画面が一部遮られるし、かといって脇に置けば自分を真正面から映せない。ただ、最初に説明したように筐体はコンパクトで高さは154mmほど。視界に入っても目障りにならないサイズで、モニターをやや高めに調整している人であれば問題なく正面に置けるだろう。脇に置いたときも、アングルが斜めになるというだけだ。カメラ目線になりにくいのが問題と思う人もいるかもしれないが。

正面から捉えたい場合はモニターを高めに調整。といってもMC560がコンパクトなため無理のあるスタイルでもない
モニターの横に置いて斜めのアングルから狙うのも、目線を気にしなければ問題ない

 もう1つ心配なのは、カメラレンズの向きが水平で縦方向の調整が難しそうなところだろうか。デスク上に置く場合、よほど距離をとらないと自分の顔がフレームに収まらないのでは、と思ってしまう。が、それについては筐体底面に角度をつけるための収納式スタンドを設け、上向きに調節できるようにすることで解決している。キーボードとモニターの間に置くくらいの距離感でも、十分に画角に収まるだろう。

底面に収納式スタンドが設けられている
起こして角度を付けられる。調整は無段階
スタンドを使わないと顔が見切れる(Microsoft Teams上の映像)
スタンドを起こせばしっかり顔を捉えられる(Microsoft Teams上の映像)

 カメラ解像度は最大2.5K(2,592×1,944ドット、30fps)で、アスペクト比は4:3。フルHD(1,920×1,080ドット)など16:9の解像度にすることもでき、その場合は4:3の画角の上下がカットされるイメージ。左右の視野角は、一般的にノートPCに搭載されるものよりもかなり広い。広角レンズらしいワイド感のある見栄えになり、全体的な映像の歪みは目立たないとはいえ、左右端付近の映り方にはやや違和感があるかもしれない。

解像度は2,592×1,944ドットのほかフルHDやHDなども選べる。アプリケーションによってはより細かい指定が可能
2,592×1,944ドットのキャプチャ画像
フルHDにすると4:3の映像の上下がカットされる

 最大2.5Kの精細感は確かに高く感じられる。デフォルトの映りは少し暗めではあるものの、OS側の設定で明るさ、コントラスト、鮮明度、彩度の各パラメーターを調整可能で、さほど明るくない部屋でも見栄え良く映せるはずだ。

 ちなみに本誌のリリースベースの記事内にある画像では「HDR Webcam」となっていたが、筆者が確認した範囲では、他のHDR非対応Webカメラと比較して明暗の表現に差は感じられなかった。HDRのオンオフを切り替えるような設定も特に用意されていない。

Windowsのカメラ設定で詳細な画質調整が行なえる
画質調整すれば、室内照明を変えていなくてもこのような明るいくっきりした映像が得られる(Microsoft Teams上の映像)

ノイズ低減効果の大きいマイクも内蔵

 Web会議用途においてはカメラと並んでマイク性能も重要。その意味でMC560は、ヘッドセット端子やBluetoothも使えるが、本体内蔵マイクがなかなかに優秀だ。

 最も感度良く音を拾えるのは、本体正面側。奥行き60cmのデスクのギリギリ奥に本体を置き、椅子に座った状態でぼそぼそ口先でつぶやく程度でも、しっかり声を拾ってくれる。しかもそこまで高感度でありながら、本体側面や後方からの声については大幅に感度が低下するため、周囲の余計な音を拾いにくい。さらに独自のノイズキャンセリング機能により、正面側からのノイズもほぼ相手に伝わらないレベルに低減される。

 最近はWeb会議ツール自体のノイズキャンセリング機能も進化しているし、明示的にそれを設定しなくても勝手にノイズが低減されてしまったりする。なので、あえてライブ配信ツールのOBS Studio上でマイク入力をモニタリングして聞いてみたのだが、冷暖房などの環境ノイズはもちろんのこと、本体のすぐ近くでキーボードをタイプする音も、筐体を叩いたときの音も、ほとんど見事に消えてくれた。ノイズ低減機能が働くWeb会議ツールを介してやり取りする段階では、もはや人の声以外の余計な音は聞こえないだろう。

本体はキーボードの間近に置くことになる可能性が高いが、ノイズキャンセリング機能のおかげでWeb会議中にタイプしたとしても相手には聞こえにくい

 しかもこのノイズキャンセリング機能は本体内蔵マイクだけでなく、ヘッドセット端子に接続した有線マイクにも適用されるようだ(Bluetoothマイクについては、内蔵マイクや有線ヘッドセットのときのような大きなノイズ低減効果は感じられなかった)。舌打ちした音さえもキャンセルされるので、つまらないWeb会議でつい不満が表に出てしまうようなことも防げる、かも?

内蔵マイクだけでなく有線ヘッドセットのマイクにもノイズキャンセリング機能が適用されるようだ

ミドルクラスノート風の装備で、静音性高し

CPUにモバイル向けのRyzen 5 5600Uを搭載するMC560

 PCのスペックもチェックしておこう。試用機のCPUはRyzen 5 5600U(6コア12スレッド、最大4.2GHz、TDP 15W)で、GPUはCPU統合のAMD Radeon Graphics、メモリ容量はDDR4-3200の16GB(8GB×2)となっており、いわばミドルクラスノートPCに近い装備と言える。ストレージは512GB容量のNVMe M.2 SSD(PCIe 3.0 x4接続)だが、これらメモリ、ストレージは製品版購入時にはカスタマイズできる可能性もありそうだ。

「CrystalDiskInfo」による内蔵ストレージの情報

 インターフェイスは多くなく、USBポートは3つ。本体側面と背面の2箇所にUSB 3.2 Gen.2 Type-Aポートが1つずつあり、同Type-Cポートが側面に1つある。Type-CポートはDisplayPort Alternate Mode対応で、背面にあるHDMIポートと合わせることで2画面同時出力も可能だ。ネットワークは有線LAN(1GbE)とWi-Fi 6に対応(チップはMediaTek RZ608のためWi-Fi 6Eにも対応するものと思われる)。また、先述の通りヘッドセット端子も利用できる。

背面にはDC入力、USB 3.2 Gen.2 Type-A、HDMI、1GbEポート
向かって右側面にヘッドセット端子、USB 3.2 Gen.2 Type-AとType-Cポート

 筐体の冷却機構は、背面側から吸気して、天面から排気する形になっているようだ。この後紹介するベンチマークテストのような高負荷時でも、内部の冷却ファンの稼働音は抑えられており、耳障りになるような周波数帯でもないので、仕事の集中力が途切れることはなさそう。熱も正面と天面に手をかざすと生ぬるさを感じる程度で、不安なく使い続けられる。静かで発熱の心配なく使い続けられるところも、ある意味Web会議向きと言えるだろう。

背面から吸気し、天面から排気する構造

満足いくビジネスアプリ性能、でも本格ゲームは厳しいか

 最後にベンチマークテストでPCパフォーマンスも確かめてみた。ミドルクラスノートPCのようなハードウェアスペック、ということを踏まえて見てみると、「PCMark 10 Extended」や「PCMark 10 Applications」の実務アプリケーションにおける結果は良好と言える。中でもスプレッドシート(Excel)のスコアが伸びているようだ。

「Cinebench R23」の結果グラフ
「PCMark 10 Extended」の結果グラフ
「PCMark 10 Applications」の結果グラフ
「3DMark」の結果グラフ
「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」の結果グラフ

 「Video Editing Score」や「Gaming」の一部スコアについては得意とは言えない結果になっているが、ゲームが全くの苦手領域というわけでもなく、「3DMark」と「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」の結果から推し量る限り、ヘビーすぎない3Dゲームならそこそこ快適にプレーできる性能を有している。とはいえ、さすがにゲーミングPCとして使うような性能ではなく、やはりどちらかというとビジネス寄りだろう。

「CrystalDiskMark」の結果
「CrystalDiskMark」の結果グラフ

 内蔵のNVMe SSDはPCIe 3.0 x4接続で、今となってはエントリークラスの性能と言えるレベルかもしれない。ただそれでも、シーケンシャルで2,500MB/s近くまで引き出していることから、ビジネスアプリケーションの使用において不満を感じることはないはずだ。

個人用PCにも、オフィスの会議室にもマッチ

 MC560の強みは、なんといっても、デスク上で邪魔になりにくいコンパクトサイズながら、使い勝手まできちんと考慮された高品質なWebカメラとノイズキャンセリング対応マイクを備えていること。決して「とりあえずデスクトップPCにWebカメラを内蔵してみた」みたいな思いつきのイロモノ枠に収まるようなものではない。ビジネスからある程度のエンタメ用途までカバーできる性能をもつことから、PCとして「使える」し、「使いたい」と思わせる製品になっている。

 あちこちでPCを使うことがないデスクワークオンリーなのであれば、普通のデスクトップPCにWebカメラを追加する代わりに、MC560単体でまかなうという選択肢も大いにアリ。広視野角カメラや高感度マイクといったWeb会議性能の高さを考えれば、オフィスの会議室に置く多人数のWeb会議システム用デバイスとしても活躍してくれるに違いない。