Hothotレビュー

小型PCでCPU/メモリの換装を実現する「Intel NUC Compute Element」

「Intel NUC Compute Element」は95×65×6mmとコンパクトなシステムボードだ

 「Intel NUC Compute Element」は、ミニPCや統合システムを構築するためのモジュラー式システムボードだ。CPU、メモリ、インターフェイス、Wi-Fi、Bluetoothを搭載しており、システムボード「Intel NUC Board Element」またはシャーシ「Intel NUC Chassis Element」と組み合わせることで、超小型デスクトップPC「NUC(Next Unit of Computing)」や統合システムなどを手軽に作成できる。

 またCPUが古くなったり、メモリが不足したさいには、Intel NUC Compute Elementだけを入れ替えることで、マシンをアップグレードできるという利点がある。

 今回、インテルより第11世代Core(Tiger Lake)の「Core i7-1185G7」を搭載した「Intel NUC 11 Compute Element CM11EBv716W」、対応シャーシ「Intel NUC Pro Chassis Element CMCM2FBAV」、SSD「CT500MX500SSD4」を組み合わせた完成済みのNUCを借用したので、実機レビューをお届けしよう。

今回はシステムボード、対応シャーシ、SSDを組み立てた完成済みのNUCを借用した

Intel NUC 11 Compute Elementには6モデルがラインナップ

 今回の貸出機には、OSに「Windows 10 Pro 64bit バージョン20H2」、CPUにCore i7-1185G7(4コア8スレッド、4.80GHz)を採用。メモリは16GB (LPDDR4x-4266 SDRAM)、ストレージは500GB M.2 SATA SSD(CT500MX500SSD4)を搭載している。

 通信機能は、Wi-Fi 6、Bluetooth、Gigabit Ethernet×2をサポート。有線LANは片方がIntel i219-LM経由、もう片方がIntel i211-AT経由という仕様だ。

 今回のシャーシ「Intel NUC Pro Chassis Element CMCM2FBAV」はビデオ・オーディオキャプチャカードが組み込まれており、インターフェイスはUSB 3.1 Type-A Gen2×3、USB 2.0×3、HDMI出力×2、Gigabit Ethernet×2に加え、3.5mmオーディオ出力/入力、HDMIパススルー、HDMI入力と豊富に用意されている。

 本体サイズは約200×150×35mm(幅×奥行き×高さ)、重量は実測879g。本体以外の同梱品としては、ACアダプタ、電源ケーブル、説明書、VESAマウント、ネジ×6が用意されている。

 なお、Intel NUC 11 Compute Elementには下記の6モデルがラインナップされている。Compute Elementはメモリを増設できないだけに、32GB搭載モデルの登場にも期待したいところだ。

Intel NUC 11 Compute Elementのラインナップ

・「CM11EBC4W」Celeron 6305/4GB
・「CM11EBi38W」Core i3-1115G4/8GB
・「CM11EBi58W」Core i5-1135G7/8GB
・「CM11EBv58W」Core i5-1145G7/8GB
・「CM11EBi716W」Core i7-1165G7/8GB
・「CM11EBv716W」Core i7-1185G7/16GB

【表1】「Intel NUC 11 Compute Element CM11EBv716W」&「Intel NUC Pro Chassis Element CMCM2FBAV」のスペック
Compute ElementCM11EBv716W
Chassis ElementCMCM2FBAV
OSWindows 10 Pro 64bit バージョン20H2
CPUCore i7-1185G7(4コア8スレッド、4.80GHz)
GPUIntel Iris Xe Graphics(1.35GHz)
メモリLPDDR4x-4266 SDRAM 16GB
ストレージ500GB M.2 SATA SSD(CT500MX500SSD4)
通信Wi-Fi 6(11ax)、Bluetooth
インターフェイスUSB 3.1 Type-A Gen2×3、USB 2.0×3、HDMI出力×2、Gigabit Ethernet×2、3.5mmオーディオ出力、3.5mmオーディオ入力、HDMIパススルー、HDMI入力
本体サイズ約200×150×35mm(幅×奥行き×高さ)
重量実測879g
同梱品ACアダプタ、電源ケーブル、説明書、VESAマウント、ネジ×6
※4月7日時点
本体天面
本体底面
本体前面には電源ボタン、USB 3.1 Type-A Gen2×1、USB 2.0×1、本体背面には電源端子、HDMI出力×2、Gigabit Ethernet×2、USB 3.1 Type-A Gen2×2、USB 2.0×2、HDMIパススルー、HDMI入力、3.5mmオーディオ出力、3.5mmオーディオ入力を用意
本体左側面にはケンジントンロックスロットを配置
今回のシャーシ「Intel NUC Pro Chassis Element CMCM2FBAV」のパッケージ
パッケージには、本体、VESAマウント、ACアダプタ、電源ケーブル、ネジ×6、説明書が同梱されていた
ACアダプタのコード長は実測180cm、電源ケーブルの長さは実測57cm
ACアタプタの型番は「HKA09019047-6U」。仕様は入力100-240V~1.5A、出力19V 4.74A、容量90.06W
VESAマウント
4本はVESAマウントを固定するため、2本は本体に取り付けるためのネジ
本体の実測重量は879g
ACアダプタと電源ケーブルの合計重量は実測376g
システム情報
主要なデバイス
初回起動時のCドライブの空き容量は432.91GB

システムボードにアンテナケーブルが直結されている点に注意

 この章では使い勝手についてチェックする。まずはメンテナンス性。今回のシャーシ「Intel NUC Pro Chassis Element CMCM2FBAV」は底面4本のネジをはずせば、パネルを開けられる。パネルを開けば、Intel NUC 11 Compute ElementとM.2スロットが2基あらわれる。

 今回はこれ以上分解しなかったが、少なくともストレージの増設、換装は容易といえる。また、Intel NUC 11 Compute Elementも、テープを2枚剥がし、アンテナケーブルを抜いて、説明書によれば2本のネジを取り外せば交換できるようだ。

 机の上やディスプレイの背面に設置するNUCにとって静音性は重要な要素。そこで動作音について簡易騒音計で計測してみたが、アイドル時最小34.4dB、高負荷時最大40.1dBとなった(室温22.7℃で測定)。感覚的には薄型ノートPCと同程度だと思う。

 ディスプレイの背面などに取り付けるためのVESAマウントはNUCでよくあるタイプ。VESAマウントを4本のネジでディスプレイに固定し、2本のネジを本体底面に装着し、あとは上からスライドさせてはめ込めば完成だ。

 ちょっと迷ったのは本体の前面と背面のどちらを上に向けるかという点。電源ボタンの押しやすさやケーブルの取り回しを考えると、前面を上にしたほうがよいが、ビデオ/オーディオキャプチャーカードのHDMIパススルーやHDMI入力端子にケーブルをひんぱんに抜き差しするなら背面を上にしたほうが使いやすいはずだ。

底面パネルの内部。右上にあるのがシステムボードのIntel NUC 11 Compute Element CM11EBv716W。なおこのシステムボードはエンジニアリングサンプルのため実際の製品と外観が異なる可能性がある
底面パネルの裏にはM.2ストレージを冷却するために熱伝導シートが貼られている
Intel NUC Board Elementの表面。これはインテルの公式画像で、貸出機はシートで基板が保護されていた
アイドル時の最小音量は34.4dB。「CINEBENCH R23.200」実行中の最大音量は40.1dB
VESAマウントで背面に固定すれば、ディスプレイ一体型PC感覚で利用できる

同CPUを搭載するノートPCよりピークパワーが低い可能性がある

 最後にパフォーマンスをチェックしよう。今回は下記のベンチマークを実施した。

・総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.1.2506」
・3Dベンチマーク「3DMark v2.16.7117」
・CPUベンチマーク「CINEBENCH R23.200」
・CPUベンチマーク「CINEBENCH R20.060」
・CPUベンチマーク「CINEBENCH R15.0」
・3Dゲームベンチマーク「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒の反逆者 ベンチマーク」
・ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 8.0.1」

 下記が検証機の仕様とその結果だ。

【表2】検証機の仕様
Intel NUC 11 Compute Element CM11EBv716W、Intel NUC Pro Chassis Element CMCM2FBAV
CPUCore i7-1185G7(4コア8スレッド、4.80GHz)
GPUIntel Iris Xe Graphics(1.35GHz)
メモリLPDDR4x-4266 SDRAM 16GB
ストレ-ジ500GB M.2 SATA SSD(CT500MX500SSD4)
OSWindows 10 Pro 64bit バージョン20H2
サイズ約200×150×35mm(幅×奥行き×高さ)
重量実測879g
【表3】ベンチマ-ク結果
PCMark 10 v2.1.2506
PCMark 10 Score5,175
Essentials10,251
App Start-up Score13,398
Video Conferencing Score8,341
Web Browsing Score9,640
Productivity7,090
Spreadsheets Score6,372
Writing Score7,889
Digital Content Creation5,176
Photo Editing Score8,187
Rendering and Visualization Score3,146
Video Editting Score5,386
3DMark v2.16.7117
Time Spy Extreme863
Time Spy1,882
Fire Strike Ultra1,368
Fire Strike Extreme2,592
Fire Strike5,347
Wild Life13,742
Night Raid18,403
CINEBENCH R23.200
CPU(Multi Core)5,467 pts
CPU(Single Core)1,496 pts
CINEBENCH R20.060
CPU2,130 pts
CPU(Single Core)567 pts
CINEBENCH R15.0
OpenGL104.16 fps
CPU931 cb
CPU(Single Core)226 cb
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒の反逆者 ベンチマーク
1,280×720ドット 標準品質(ノ-トPC)11,647(非常に快適)
1,920×1,080ドット 標準品質(ノ-トPC)8,017(非常に快適)
SSDをCrystalDiskMark 8.0.1で計測
1M Q8T1 シーケンシャルリード557.860 MB/s
1M Q8T1 シーケンシャルライト513.477 MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルリード510.328 MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルライト454.678 MB/s
4K Q32T1 ランダムリ-ド326.654 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト336.618 MB/s
4K Q1T1 ランダムリ-ド38.313 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト82.227 MB/s

 笠原一輝氏の記事「Xe GPUの性能初見! 第11世代Core搭載ノートをベンチマーク」で、Core i7-1185G7を搭載したリファレンスデザインのノートPCのベンチマークが実施されているが、CINEBENCH R20.060のCPU(Multi Core)は2126 pts、CPU(Single Core)は573ptsだ。つまり今回の貸出機は、CPU(Multi Core)で約89%、CPU(Single Core)で約96%のスコアということになる。

 ちなみにCINEBENCH R23.200実行中のCPU温度とクロック周波数の推移を計測してみたが、最大クロック周波数は3,932.8MHzに達したものの、30秒後に3,150.2MHzまで低下し、以降ベンチマークが終了する2分28秒後まで平均3,186MHzに留まっていた。

 95×65×6mmというコンパクトサイズに収められたIntel NUC 11 Compute Elementは、少なくとも28WのCPUのTDPをフルに引き出せるリファレンスデザインのノートPCよりも発熱のためにピークパワーが低い可能性がある。

「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒の反逆者 ベンチマーク」実行中の天面の最大温度は37.6℃(室温22.3℃で測定、HDMIケーブル部を除く)
底面の最大温度は36.2℃
ACアダプタの最大温度は53.7℃
CINEBENCH R23.200実行中、最大クロック周波数は3,932.8MHzに達したものの、30秒後に3,150.2MHzまで低下し、以降ベンチマークが終了する2分28秒後まで平均3,186MHzで推移した(室温22.9℃で測定)

サステナブル志向のユーザーが選ぶPCとして一般化してほしい

 Intel NUC Compute Element最大のメリットはCPU、メモリを搭載したシステムボードをアップグレードできること。ストレージなどはそのまま使えるのだから、PCリプレースにつきもののOSのセットアップ、アプリインストールの手間が不要だ。

 また、ノートPCに採用されれば、パーツの廃棄を最低限に抑えられる。ディスプレイやバッテリがヘタったときに、システムボード以外を交換できるのも便利そうだ。

 Intel NUC Compute Elementはパフォーマンスや小型/軽量という点では不利だ。しかし、もう少し脱着の機構を簡単にして、サステナブル志向のユーザーが選ぶPCとして一般化してほしいと思う。