Hothotレビュー
小型PCでCPU/メモリの換装を実現する「Intel NUC Compute Element」
2021年4月12日 06:55
「Intel NUC Compute Element」は、ミニPCや統合システムを構築するためのモジュラー式システムボードだ。CPU、メモリ、インターフェイス、Wi-Fi、Bluetoothを搭載しており、システムボード「Intel NUC Board Element」またはシャーシ「Intel NUC Chassis Element」と組み合わせることで、超小型デスクトップPC「NUC(Next Unit of Computing)」や統合システムなどを手軽に作成できる。
またCPUが古くなったり、メモリが不足したさいには、Intel NUC Compute Elementだけを入れ替えることで、マシンをアップグレードできるという利点がある。
今回、インテルより第11世代Core(Tiger Lake)の「Core i7-1185G7」を搭載した「Intel NUC 11 Compute Element CM11EBv716W」、対応シャーシ「Intel NUC Pro Chassis Element CMCM2FBAV」、SSD「CT500MX500SSD4」を組み合わせた完成済みのNUCを借用したので、実機レビューをお届けしよう。
Intel NUC 11 Compute Elementには6モデルがラインナップ
今回の貸出機には、OSに「Windows 10 Pro 64bit バージョン20H2」、CPUにCore i7-1185G7(4コア8スレッド、4.80GHz)を採用。メモリは16GB (LPDDR4x-4266 SDRAM)、ストレージは500GB M.2 SATA SSD(CT500MX500SSD4)を搭載している。
通信機能は、Wi-Fi 6、Bluetooth、Gigabit Ethernet×2をサポート。有線LANは片方がIntel i219-LM経由、もう片方がIntel i211-AT経由という仕様だ。
今回のシャーシ「Intel NUC Pro Chassis Element CMCM2FBAV」はビデオ・オーディオキャプチャカードが組み込まれており、インターフェイスはUSB 3.1 Type-A Gen2×3、USB 2.0×3、HDMI出力×2、Gigabit Ethernet×2に加え、3.5mmオーディオ出力/入力、HDMIパススルー、HDMI入力と豊富に用意されている。
本体サイズは約200×150×35mm(幅×奥行き×高さ)、重量は実測879g。本体以外の同梱品としては、ACアダプタ、電源ケーブル、説明書、VESAマウント、ネジ×6が用意されている。
なお、Intel NUC 11 Compute Elementには下記の6モデルがラインナップされている。Compute Elementはメモリを増設できないだけに、32GB搭載モデルの登場にも期待したいところだ。
Intel NUC 11 Compute Elementのラインナップ
・「CM11EBC4W」Celeron 6305/4GB
・「CM11EBi38W」Core i3-1115G4/8GB
・「CM11EBi58W」Core i5-1135G7/8GB
・「CM11EBv58W」Core i5-1145G7/8GB
・「CM11EBi716W」Core i7-1165G7/8GB
・「CM11EBv716W」Core i7-1185G7/16GB
Compute Element | CM11EBv716W |
---|---|
Chassis Element | CMCM2FBAV |
OS | Windows 10 Pro 64bit バージョン20H2 |
CPU | Core i7-1185G7(4コア8スレッド、4.80GHz) |
GPU | Intel Iris Xe Graphics(1.35GHz) |
メモリ | LPDDR4x-4266 SDRAM 16GB |
ストレージ | 500GB M.2 SATA SSD(CT500MX500SSD4) |
通信 | Wi-Fi 6(11ax)、Bluetooth |
インターフェイス | USB 3.1 Type-A Gen2×3、USB 2.0×3、HDMI出力×2、Gigabit Ethernet×2、3.5mmオーディオ出力、3.5mmオーディオ入力、HDMIパススルー、HDMI入力 |
本体サイズ | 約200×150×35mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 実測879g |
同梱品 | ACアダプタ、電源ケーブル、説明書、VESAマウント、ネジ×6 |
※4月7日時点 |
システムボードにアンテナケーブルが直結されている点に注意
この章では使い勝手についてチェックする。まずはメンテナンス性。今回のシャーシ「Intel NUC Pro Chassis Element CMCM2FBAV」は底面4本のネジをはずせば、パネルを開けられる。パネルを開けば、Intel NUC 11 Compute ElementとM.2スロットが2基あらわれる。
今回はこれ以上分解しなかったが、少なくともストレージの増設、換装は容易といえる。また、Intel NUC 11 Compute Elementも、テープを2枚剥がし、アンテナケーブルを抜いて、説明書によれば2本のネジを取り外せば交換できるようだ。
机の上やディスプレイの背面に設置するNUCにとって静音性は重要な要素。そこで動作音について簡易騒音計で計測してみたが、アイドル時最小34.4dB、高負荷時最大40.1dBとなった(室温22.7℃で測定)。感覚的には薄型ノートPCと同程度だと思う。
ディスプレイの背面などに取り付けるためのVESAマウントはNUCでよくあるタイプ。VESAマウントを4本のネジでディスプレイに固定し、2本のネジを本体底面に装着し、あとは上からスライドさせてはめ込めば完成だ。
ちょっと迷ったのは本体の前面と背面のどちらを上に向けるかという点。電源ボタンの押しやすさやケーブルの取り回しを考えると、前面を上にしたほうがよいが、ビデオ/オーディオキャプチャーカードのHDMIパススルーやHDMI入力端子にケーブルをひんぱんに抜き差しするなら背面を上にしたほうが使いやすいはずだ。
同CPUを搭載するノートPCよりピークパワーが低い可能性がある
最後にパフォーマンスをチェックしよう。今回は下記のベンチマークを実施した。
・総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.1.2506」
・3Dベンチマーク「3DMark v2.16.7117」
・CPUベンチマーク「CINEBENCH R23.200」
・CPUベンチマーク「CINEBENCH R20.060」
・CPUベンチマーク「CINEBENCH R15.0」
・3Dゲームベンチマーク「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒の反逆者 ベンチマーク」
・ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 8.0.1」
下記が検証機の仕様とその結果だ。
【表2】検証機の仕様 | |
---|---|
Intel NUC 11 Compute Element CM11EBv716W、Intel NUC Pro Chassis Element CMCM2FBAV | |
CPU | Core i7-1185G7(4コア8スレッド、4.80GHz) |
GPU | Intel Iris Xe Graphics(1.35GHz) |
メモリ | LPDDR4x-4266 SDRAM 16GB |
ストレ-ジ | 500GB M.2 SATA SSD(CT500MX500SSD4) |
OS | Windows 10 Pro 64bit バージョン20H2 |
サイズ | 約200×150×35mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 実測879g |
【表3】ベンチマ-ク結果 | |
---|---|
PCMark 10 v2.1.2506 | |
PCMark 10 Score | 5,175 |
Essentials | 10,251 |
App Start-up Score | 13,398 |
Video Conferencing Score | 8,341 |
Web Browsing Score | 9,640 |
Productivity | 7,090 |
Spreadsheets Score | 6,372 |
Writing Score | 7,889 |
Digital Content Creation | 5,176 |
Photo Editing Score | 8,187 |
Rendering and Visualization Score | 3,146 |
Video Editting Score | 5,386 |
3DMark v2.16.7117 | |
Time Spy Extreme | 863 |
Time Spy | 1,882 |
Fire Strike Ultra | 1,368 |
Fire Strike Extreme | 2,592 |
Fire Strike | 5,347 |
Wild Life | 13,742 |
Night Raid | 18,403 |
CINEBENCH R23.200 | |
CPU(Multi Core) | 5,467 pts |
CPU(Single Core) | 1,496 pts |
CINEBENCH R20.060 | |
CPU | 2,130 pts |
CPU(Single Core) | 567 pts |
CINEBENCH R15.0 | |
OpenGL | 104.16 fps |
CPU | 931 cb |
CPU(Single Core) | 226 cb |
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒の反逆者 ベンチマーク | |
1,280×720ドット 標準品質(ノ-トPC) | 11,647(非常に快適) |
1,920×1,080ドット 標準品質(ノ-トPC) | 8,017(非常に快適) |
SSDをCrystalDiskMark 8.0.1で計測 | |
1M Q8T1 シーケンシャルリード | 557.860 MB/s |
1M Q8T1 シーケンシャルライト | 513.477 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルリード | 510.328 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルライト | 454.678 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリ-ド | 326.654 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 336.618 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリ-ド | 38.313 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 82.227 MB/s |
笠原一輝氏の記事「Xe GPUの性能初見! 第11世代Core搭載ノートをベンチマーク」で、Core i7-1185G7を搭載したリファレンスデザインのノートPCのベンチマークが実施されているが、CINEBENCH R20.060のCPU(Multi Core)は2126 pts、CPU(Single Core)は573ptsだ。つまり今回の貸出機は、CPU(Multi Core)で約89%、CPU(Single Core)で約96%のスコアということになる。
ちなみにCINEBENCH R23.200実行中のCPU温度とクロック周波数の推移を計測してみたが、最大クロック周波数は3,932.8MHzに達したものの、30秒後に3,150.2MHzまで低下し、以降ベンチマークが終了する2分28秒後まで平均3,186MHzに留まっていた。
95×65×6mmというコンパクトサイズに収められたIntel NUC 11 Compute Elementは、少なくとも28WのCPUのTDPをフルに引き出せるリファレンスデザインのノートPCよりも発熱のためにピークパワーが低い可能性がある。
サステナブル志向のユーザーが選ぶPCとして一般化してほしい
Intel NUC Compute Element最大のメリットはCPU、メモリを搭載したシステムボードをアップグレードできること。ストレージなどはそのまま使えるのだから、PCリプレースにつきもののOSのセットアップ、アプリインストールの手間が不要だ。
また、ノートPCに採用されれば、パーツの廃棄を最低限に抑えられる。ディスプレイやバッテリがヘタったときに、システムボード以外を交換できるのも便利そうだ。
Intel NUC Compute Elementはパフォーマンスや小型/軽量という点では不利だ。しかし、もう少し脱着の機構を簡単にして、サステナブル志向のユーザーが選ぶPCとして一般化してほしいと思う。