Hothotレビュー
一般ユーザーも満足させるエンジニア向け7型UMPC「A1」
2020年10月22日 11:00
ONE-NETBOOKは、エンジニア向け7型液晶搭載UMPC「A1」を10月22日に正式発表、12月4日に発売予定だ。同社はGPDのあとにUMPC市場に参入したが、7型、8.4型、ゲーミングUMPCと多くのラインナップを展開している。今回のA1は、RS-232規格のシリアルポート、有線LAN端子を搭載し、ONE-NETBOOKとして初めてのエンジニア向けUMPCに仕上げられている。
ターゲットがエンジニア向けなので処理性能は決して高くはないが、いつものHothotレビューと同様に、一般ユーザーにとって気になる使い勝手、AV品質、パフォーマンスなどについても細かくチェックしていこう。
ちなみに税別価格は256GB版が74,500円、512GB版が79,500円。10月22日~11月22日までは早期予約キャンペーンとして、約20%オフの59,800円、66,800円となっている。
Core i3-8100Y搭載の低価格機
「A1」は、CPUに第7世代(Amber Lake)の「Core i3-8100Y」(2コア/4スレッド、1.30~3.60GHz)を採用。メモリは8GB(DDR3L-1600)、ストレージは256GB SSD(PCIe NVMe)を搭載している。
ディスプレイは7型WUXGA IPS液晶(1,920×1,200ドット、323ppi、輝度非公表、色域非公表、非光沢、タッチ対応、筆圧検知4,096段階のスタイラス対応)を搭載。このディスプレイには2軸ロータリー機構が組み込まれており、ディスプレイを横方向に回転させてノートPC、スタンド、テント、タブレットスタイルで利用可能だ。
ワイヤレス通信機能はIEEE 802.11ac、Bluetoothに対応。また、前述のとおり有線LAN端子、RS-232規格のシリアルポートも備えている。このほかの細かなスペックについては、下記の表を参照してほしい。
製品名 | A1 |
---|---|
OS | Windows 10 Home 64bit バージョン1909 |
CPU | Core i3-8100Y |
GPU | Intel HD Graphics 615(300MHz~1.05GHz) |
メモリ | DDR3L-1600 SDRAM 8GB |
ストレージ | 256GB PCIe NVMe SSD |
ディスプレイ | 7型WUXGA IPS液晶 (1,920×1,200ドット、323ppi、輝度非公表、 色域非公表、非光沢、タッチ対応、 筆圧検知4,096段階のスタイラス対応) |
通信 | IEEE 802.11a/b/g/n/a/ac、Bluetooth |
インターフェイス | USB Type-C、USB 3.0 Type-A×2、Micro HDMI、 microSDメモリーカードリーダ、ヘッドセット端子、 有線LAN(RJ-45)端子、RS-232、M.2スロット(空き) |
バッテリ容量 | 6,000mAh |
バッテリ駆動時間 | 非公表 |
バッテリ充電時間 | 非公表 |
本体サイズ | 173×135×18mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 約537g |
同梱品 | ACアダプタ、USB Type-Cケーブル、Information Guide |
カラー | ブラック |
価格 | 256GB版:74,500円、512GB版:79,500円(数量限定) |
エンジニア向けUMPCなのでインターフェイスは盛りだくさん
「A1」の筐体はCNC削り出しによるアルミ合金製。本体サイズは173×135×18mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約537g。バッテリは6,000mAhを搭載しているが、記事執筆時点でバッテリ駆動時間は非公表だ。
エンジニア向けUMPCということでインターフェイスは豊富に用意されており、USB Type-C、USB 3.0 Type-A×2、Micro HDMI、microSDメモリーカードリーダ、ヘッドセット端子、有線LAN端子、シリアルポート、M.2スロットが備わっている。M.2スロットは底面パネルを開けてストレージを追加できる仕様だが、今回の貸出機にはネジ穴の1つに封印シールが貼られており、メーカーより分解の許可を得ていないので内部は確認していない。
筐体外観を見ると、筐体サイズ、キーボード構成、光学式ポインティングデバイス、電源ボタンの位置など、同社のゲーミングUMPC「OneGx1」と多くの共通点が見受けられるが、CPUが異なり、背面のLEDが省かれ、有線LAN端子とシリアルポートが追加されるなどエンジニア向けUMPCとしてさまざまな変更が施されている。共通点はあっても、まったく別コンセプトの製品と捉えるべきだ。
フルサイズの6~7割ぐらいの速度で入力できるキーボード
富士通のUMPC「LIFEBOOK U」を彷彿とさせる2軸ロータリー機構を備えた「A1」は、ノートブック、スタンド、テント、タブレットスタイルに変形可能。公共交通機関の狭いスペースで利用するさいに重宝するはずだ。
キーボードはキーピッチが実測14mm前後、キーストロークが1.5mm前後。アイソレーションキーボードではないが、手の長さが20cmと大きめの筆者でもギリギリタッチタイピングできるサイズだ。もちろんキーピッチ19mm前後のフルサイズキーボードと同等の入力スピードは望めない。しかし、6~7割ぐらいのスピードでならタイピングできる。
また7型筐体なら親指入力も容易。立ったままで快適に文字入力できる。なお文字キーの押圧力は実測0.61Nと少し重めだったが、キーが小さいぶん押し間違いを減らすための配慮なのかもしれない。なお、試作機は英語配列キーボードだが、国内で投入される製品に関しては独自の日本語配列となる。
【表】キーボードの押圧力の一例 | |||
---|---|---|---|
Fキー | Enterキー | Spaceキー | |
A1 | 0.61N | 0.55N | 0.56N |
MUGAストイックPC3 | 0.51N | 0.46N | 0.47N |
DAIV 4N | 0.55N | 0.55N | 0.58N |
LG gram 2-in-1 | 0.6N | 0.6N | 0.6N |
16インチMacBook Pro | 0.55N | 0.55N | 0.55N |
ZenBook Duo | 0.56N | 0.54N | 0.55N |
画面サイズが7型と狭いので快適とは言えないが、デジタルスタイラスペンを使えばメモやイラストを手軽に描ける。筆圧検知は4,096段階に対応している。なお、貸出機のディスプレイには光沢(グレア)の保護フィルムが貼られていたが、同梱のデジタルスタイラスペンには適度な摩擦感があり書き心地はよかった。
sRGBカバー率は92.3%で視野角も広い、サウンド性能は割り切りが必要
本製品の7型WUXGA IPS液晶(1,920×1,200ドット、323ppi)は、輝度、色域、視野角などは公表されていないが、ディスプレイキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で計測したところ、sRGBカバー率92.3%、sRGBカバー比95.8%、AdobeRGBカバー率70.0%、AdobeRGB比71.0%、DCI-P3カバー率70.2%、DCI-P3比70.6%という結果となった。またほぼ真横からでも色彩、階調が確認できるほど視野角が広い。7型と画面サイズは小さいが必要十分な画質を備えている。
一方サウンド性能については、筐体サイズのわりには健闘しているものの、最近のフラッグシップスマホと比べれば明らかにボリューム、音の広がり、解像感が物足りない。とは言っても本製品はエンジニア向けUMPC。サウンド性能は割り切って捉えるべきだ。
CPU、GPUは順当な結果、ストレージ速度は「OneGx1」超え
最後にパフォーマンスをチェックしてみよう。今回は下記のベンチマークを実施している。
- 総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.0.2165」
- バッテリベンチマーク「PCMark 10 Modern Office Battery Life」
- 3Dグラフィックベンチマーク「3DMark v2.11.6866」
- CPU/OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15.0」
- CPUベンチマーク「CINEBENCH R20.060」
- 3Dゲームベンチマーク「ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク」
- ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 7.0.0」
なお比較対象用に、「OneGx1」のレビュー記事のベンチマークスコアを転載している。下記が検証機の仕様とその結果だ。
【表】検証機の仕様 | ||
---|---|---|
A1 | OneGx1 | |
CPU | Core i7-7Y75(試作機の仕様2コア/4スレッド、1.3~3.6GHz) | Core i5-10210Y(4コア8スレッド、1~4GHz) |
GPU | Intel HD Graphics 615(300MHz~1.05GHz) | Intel UHD Graphics(300MHz~1.05GHz) |
メモリ | DDR3L-1600 SDRAM 8GB | LPDDR3-2133 SDRAM 16GB |
ストレ-ジ | 256GB PCIe NVMe SSD | 512GB PCIe NVMe SSD |
ディスプレイ | 7型、1,920×1,200ドット(323ppi) | 7型、1,920×1,200ドット(323ppi) |
TDP | 4.5W | 7W |
OS | Windows 10 Home 64bit バージョン1909 | Windows 10 |
サイズ | 173×135×18mm(幅×奥行き×高さ) | 173×136×21mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 約537g | 約645g |
【表】ベンチマ-ク結果 | ||
---|---|---|
PCMark 10 v2.0.2165 | ||
PCMark 10 Score | 2528 | 3073 |
Essentials | 5523 | 7284 |
App Start-up Score | 7468 | 8803 |
Video Conferencing Score | 4781 | 6370 |
Web Browsing Score | 4720 | 6892 |
Productivity | 4801 | 4481 |
Spreadsheets Score | 5347 | 6665 |
Writing Score | 4311 | 3013 |
Digital Content Creation | 1656 | 2413 |
Photo Editing Score | 2214 | 3063 |
Rendering and Visualization Score | 949 | 1507 |
Video Editting Score | 2164 | 3045 |
PCMark 10 Modern Office Battery Life | 4時間27分 | 5時間36分 |
3DMark v2.11.6866 | ||
Time Spy | 247 | - |
Fire Strike Ultra | 140 | - |
Fire Strike Extreme | 275 | - |
Fire Strike | 598 | 914 |
Night Raid | 2515 | 4168 |
Sky Diver | 2398 | 3653 |
CINEBENCH R15.0 | ||
OpenGL | 24.85 fps | - |
CPU | 217 cb | - |
CPU(Single Core) | 110 cb | - |
CINEBENCH R20.060 | ||
CPU | 512 pts | 982 pts |
CPU(Single Core) | 275 pts | - |
ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク | ||
1,280×720ドット 標準品質(ノ-トPC) | 1546(設定変更が必要) | 3248(やや快適) |
1,280×720ドット 高品質(ノ-トPC) | - | 3007(やや快適) |
1,920×1,080ドット 標準品質(ノ-トPC) | 855(動作困難) | - |
SSDをCrystalDiskMark 7.0.0で計測 | ||
1M Q8T1 シーケンシャルリード | 856.029 MB/s | 447.94 MB/s |
1M Q8T1 シーケンシャルライト | 767.160 MB/s | 435.78 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルリード | 712.288 MB/s | 355.49 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルライト | 678.077 MB/s | 356.72 MB/s |
4K Q32T16 ランダムリ-ド | 786.804 MB/s | 441.18 MB/s |
4K Q32T16 ランダムライト | 735.784 MB/s | 422.30 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリ-ド | 49.885 MB/s | 46.67 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 165.600 MB/s | 141.46 MB/s |
A1の製品版ではCore m3-8100Yを搭載するが、今回の試作機ではCore i7-7Y75が搭載されていた。とは言えいずれも2コアなので、性能に大差はないだろう。Comet Lake世代のCore i5-10210Yを搭載するOneGx1と比較して、CINEBENCH R20.060のCPUスコアは約52%、PCMark 10の総合スコアは約82%に留まっている。また、3DMarkのスコアも約60~65%相当と大差がつけられている。アプリやゲームの動作速度には明らかな差があるわけだ。
一方、ストレージ性能についてはA1が上回っており、シーケンシャルリードで約1.9倍、シーケンシャルライトで約1.8倍の速度を記録した。これは、OneGx1が電力効率のためあえて性能を落としたSSDを採用しているためだ。
バッテリ駆動時間は、A1が4時間27分、OneGx1が5時間36分と後者が1時間9分長く動作した。バッテリ容量は12,000mAhを搭載するOneGx1のほうが多いが、TDP 4.5WのCPUを搭載するA1のほうが消費電力が低いため、バッテリ容量の差を大きく詰めたようだ。
エンジニア向け装備を押さえつつ、7型UMPCとして手堅く作られたマシン
A1はエンジニア向けのインターフェイスや底面のネジ穴などの装備はしっかりと押さえつつ、7型のUMPCとしてデジタルスタイラスペン、タッチ操作への対応、タッチタイピングできるキーボードなどなど、手堅く作られているというのが率直な感想だ。普通のUMPCとしても使い勝手はよいと思う。
「GPD MicroPC」は小さすぎたというエンジニアには待ちに待っていた製品であり、また質実剛健で安価な7型UMPCを求めていた一般ユーザーも満足させる1台だ。