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GeForce vs. Radeon、2万円台を支配するのはどっちだ!?

 NVIDIAが11月末に投入した「GeForce GTX 1650 SUPER」に続き、12月にはAMDからも7nm世代の新GPU「Radeon RX 5500 XT」が登場。2019年末に2大GPUメーカーのエントリーゲーマー向けミドルレンジGPUが市場で顔を合わせることとなった。

 今回は、両GPUを搭載したビデオカードで各種ベンチマークテストを実行。エントリーゲーマー注目のミドルレンジGPUが、どれだけの性能を秘めているのかチェックしてみた。

2大メーカーのエントリーゲーマー向けミドルレンジGPUの基本仕様をチェック

 GeForce GTX 1650 SUPERとRadeon RX 5500 XTの比較を行なう前に、各GPUの基本的な仕様について紹介しよう。

TU116コアを採用したNVIDIAのミドルレンジGPU「GeForce GTX 1650 SUPER」

 まず、NVIDIAのミドルレンジGPUであるGeForce GTX 1650 SUPERは、12nm FFNプロセスで製造されたTuringベースのミドルレンジGPU。GPUコアには、下位モデルのGeForce GTX 1650が採用する「TU117」ではなく、GeForce GTX 1660系GPUと同じ「TU116」を採用している。

 GeForce GTX 1650 SUPERのTU116コアでは、20基のStreaming Multiprocessors(SMs)が有効化されており、1,408基のCUDAコアや88基のテクスチャユニットが利用できる。VRAMとして12Gtps動作のGDDR6メモリを4GB搭載。128bitのメモリインターフェイスでGPUと接続することで、192GB/sのメモリ帯域幅を実現した。バスインターフェイスはPCI Express 3.0 x16で、消費電力(Graphics Card Power)は100W。

【表1】GeForce GTX 1650 SUPERのおもな仕様
モデルナンバーGeForce GTX 1650 SUPERGeForce GTX 1650
アーキテクチャTuringTuring
製造プロセス12nm FFN12nm FFN
GPUコアTU116TU117
SMs20基14基
CUDAコア1,280基896基
Tensorコア--
RTコア--
テクスチャユニット80基56基
ROPユニット32基32基
ベースクロック1,530MHz1,485MHz
ブーストクロック1,725MHz1,665MHz
メモリ容量4GB(GDDR6)4GB(GDDR5)
メモリスピード12.0Gtps8.0Gtps
メモリインターフェース128bit128bit
メモリ帯域192GB/s128GB/s
PCI ExpressPCIe 3.0 x16PCIe 3.0 x16
消費電力(Graphics Card Power)100W75W

 今回、GeForce GTX 1650 SUPER搭載ビデオカードとして用意したのは「ZOTAC GAMING GeForce GTX 1650 SUPER Twin Fan」。2スロット占有のデュアルファンGPUクーラーを搭載したビデオカードで、GPUのブーストクロックを1,745MHzから1,800MHzに引き上げたオーバークロック仕様となっている。

 動作に必要な補助電源コネクタはPCI-E 6ピン×1系統。画面出力端子には、HDMI、DisplayPort、DVI-Dを各1系統ずつ備える。

GeForce GTX 1650 SUPER搭載ビデオカード「ZOTAC GAMING GeForce GTX 1650 SUPER Twin Fan」
基板裏面。バックプレートは非搭載
補助電源コネクタは6ピン×1系統
画面出力端子。HDMI、DisplayPort、DVI-D
ZOTAC GAMING GeForce GTX 1650 SUPER Twin FanのGPU-Z実行画面

RDNAと7nmプロセスを採用したAMD最新のミドルレンジGPU「Radeon RX 5500 XT」

 AMDのRadeon RX 5500 XTは、Radeon DNAアーキテクチャ(RDNA)を採用したNaviベースのミドルレンジGPUで、7nmプロセスで製造されている。Radeon RX 5500 XTは22基のコンピュートユニットを備えており、1,408基のストリーミングプロセッサが利用できる。

 VRAMには14.0Gtps動作のGDDR6メモリを4GBまたは8GB搭載。GPUコアとVRAMは128bitのメモリインターフェイスで接続されており、224GB/sのメモリ帯域幅を実現する。バスインターフェイスはPCI Express 4.0 x8で、消費電力(Total Board Power)は130W。

【表2】Radeon RX 5500 XTのおもな仕様
モデルナンバーRadeon RX 5500 XTRadeon RX 580
アーキテクチャNavi(RDNA)Polaris
製造プロセス7nm14nm
コンピュートユニット22基36基
ストリーミングプロセッサー1,408基2,304基
ROPユニット32基32基
ゲームクロック1,717MHz1,257MHz
ブーストクロック1,845MHz1,340MHz
メモリ容量4GB/8GB(GDDR6)8GB(GDDR5)
メモリスピード14.0Gtps8.0Gtps
メモリインターフェース128bit256bit
メモリ帯域224GB/s256GB/s
PCI ExpressPCIe 4.0 x8PCIe 3.0 x16
消費電力130W(Total Board Power)185W(Typical Board Power)

 Radeon RX 5500 XT搭載ビデオカードは、VRAM容量が4GBの「Sapphire PULSE RADEON RX 5500 XT 4G」と、8GBの「MSI Radeon RX 5500 XT GAMING X 8G」の2枚を用意した。なお、後者の国内販売は未定だ。

Radeon RX 5500 XT搭載ビデオカード。左が4GBモデルの「Sapphire PULSE RADEON RX 5500 XT 4G」で、右が8GBモデル「MSI Radeon RX 5500 XT GAMING X 8G」

 4GBモデルのSapphire PULSE RADEON RX 5500 XT 4Gは、2スロット仕様のデュアルファンGPUクーラーを搭載したビデオカード。GPUクロックはRadeon RX 5500 XTのリファレンス仕様に準拠している。

 補助電源コネクタはPCI-E 8ピン×1系統。画面出力端子はDisplayPort×3とHDMI×1の計4ポート。

Radeon RX 5500 XTのVRAM 8GBモデル「Sapphire PULSE RADEON RX 5500 XT 4G」
基板裏面。金属製バックプレートを装備している
補助電源コネクタは8ピン×1系統
画面出力端子。DisplayPort×3、HDMI×1
Sapphire PULSE RADEON RX 5500 XT 4GのGPU-Z実行画面

 8GBモデルのMSI Radeon RX 5500 XT GAMING X 8Gは、2.1スロット占有のデュアルファンGPUクーラーを搭載。GPUのRadeon RX 5500 XTはゲームクロックが1,717MHzから1,737MHzへオーバークロックされている。

 補助電源コネクタはPCI-E 8ピン×1系統。画面出力端子はDisplayPort×3とHDMI×1の計4ポートで、これらの点は4GBモデルと変わらない。

Radeon RX 5500 XTのVRAM 8GBモデル「MSI Radeon RX 5500 XT GAMING X 8G」
基板裏面。金属製バックプレートを装備
補助電源コネクタは8ピン×1系統
画面出力端子。DisplayPort×3、HDMI×1
MSI Radeon RX 5500 XT GAMING X 8GのGPU-Z実行画面

テスト機材

 NVIDIAとAMDの新世代エントリーゲーマー向けGPUを比較する今回、旧世代製品の代表としてRadeon RX 580を搭載したビデオカード「MSI Radeon RX 580 ARMOR 8G OC」を比較用GPUとして用意した。

 各ビデオカードのテストには、Ryzen 9 3950Xを搭載したAMD X570環境を用意した。各GPUのグラフィックスドライバについては、Radeon RX 5500 XTのみレビュアー向けの「Radeon Software 19.12.2」を利用し、GeForce GTX 1650 SUPERとRadeon RX 580には、テスト時点で公式に配布されていた最新版を使用した。

【表3】各ビデオカードのテスト時動作仕様
GPUGeForce GTX 1650 SUPERRadeon RX 5500 XT 4GBRadeon RX 5500 XT 8GBRadeon RX 580
ビデオカードベンダーZOTACSAPPHIREMSIMSI
製品名ZOTAC GAMING GeForce GTX 1650 SUPER Twin FanPULSE RADEON RX 5500 XT 4GRadeon RX 5500 XT GAMING X 8GRadeon RX 580 ARMOR 8G OC
ベースクロック1,530MHz1,607MHz1,685MHz-
ゲームクロック-1,717MHz1,737MHz-
ブーストクロック1,800MHz1,845MHz1,845MHz1,366MHz
メモリ容量4GB(GDDR6)4GB(GDDR6)8GB(GDDR6)8GB(GDDR5)
メモリスピード12.0Gtps14.0Gtps14.0Gtps8.0Gtps
メモリインターフェース128bit128bit128bit256bit
メモリ帯域192GB/s224GB/s224GB/s256GB/s
【表4】テスト機材一覧
GPUGeForce GTX 1660 SUPERRadeon RX 5500 XT 4GBRadeon RX 5500 XT 8GBRadeon RX 580
CPURyzen 9 3950X
CPUクーラーASUS ROG RYUJIN 240
マザーボードTUF GAMING X570-PLUS(WI-FI) [UEFI: 1405]
メモリDDR4-3200 16GB×2(2ch、22-22-22-52、1.2V)
システム用ストレージIntel SSD 760p(256GB SSD/M.2-PCIe 3.0 x4)
アプリケーション用ストレージSanDisk Ultra 3D SSD(1TB SSD/6Gbps SATA)
電源玄人志向 KRPW-GK750W/90+(750W/80PLUS GOLD)
グラフィックスドライバGeForce Game Ready Driver 441.41 DCH(26.21.14.4141)Radeon Software 19.12.2 DCH(26.20.15002.50)Radeon Software 19.12.1 DCH(26.20.13031.20012)
OSWindows 10 Pro 64bit(Ver 1909 / build 18363.476)
電源設定AMD Ryzen Balanced
室温約25℃
Radeon RX 580搭載ビデオカード「MSI Radeon RX 580 ARMOR 8G OC」
MSI Radeon RX 580 ARMOR 8G OCのGPU-Z実行画面

ベンチマーク結果

 今回実行したベンチマーテストは、「3DMark(グラフ1~7)」、「VRMark(グラフ8~9)」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク(グラフ10)」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(グラフ11)」、「Forza Horizon 4(グラフ12)」、「F1 2019(グラフ13)」、「フォートナイト(グラフ14~15)」、「レインボーシックス シージ(グラフ16)」、「オーバーウォッチ(グラフ17)」、「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE(グラフ18)」、「モンスターハンター:ワールド(グラフ19)」、「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー(グラフ20)」、「アサシン クリード オデッセイ(グラフ21)」、「ゴーストリコン ブレイクポイント(グラフ22)」。

 3DMarkでは、高負荷テストの「Time Spy」「FireStrike」と、中負荷テストの「Night Raid」「Sky Diver」を実行した。なお、DirectX Raytracing(DXR)を用いる「Port Royal」については、いずれのGPUも実行できなかった。

 DirectX 12の高負荷テストでは、Radeon RX 5500 XTがGeForce GTX 1650 SUPERをやや上回っており、Time Spyで約2~3%、Time Spy Extremeで約5%の差をつけた。DirectX 11の高負荷テストではRadeon RX 5500 XTがより大きなリードを築いており、Fire Strikeで約15~16%、Fire Strike Extremeで約25%、Fire Strike Ultraでは約50%と、負荷が高くなるほどGeForce GTX 1650 SUPERとの差を広げている。

 中負荷テストの結果でも高負荷テストと同様の傾向がみられ、DirectX 12のNight Raidで約1%、DirectX 11のSky Diverで約14%、それぞれRadeon RX 5500 XTがGeForce GTX 1650 SUPERを上回った。3DMarkに関してはRadeon RX 5500 XTの完勝と言える結果だ。

【グラフ01】3DMark v2.11.6846「Time Spy」
【グラフ02】3DMark v2.11.6846「Time Spy Extreme」
【グラフ03】3DMark v2.11.6846「Fire Strike」
【グラフ04】3DMark v2.11.6846「Fire Strike Extreme」
【グラフ05】3DMark v2.11.6846「Fire Strike Ultra」
【グラフ06】3DMark v2.11.6846「Night Raid」
【グラフ07】3DMark v2.11.6846「Sky Diver」

 VR性能を確認するベンチマークテストであるVRMarkでは、「Orange Room」「Cyan Room」「Blue Room」を実行した。

 Radeon RX 5500 XTは、Orange Roomで約2%、Cyan Roomで約7~8%、それぞれGeForce GTX 1650 SUPERを上回ったが、Blue Roomではトップスコアを獲得したGeForce GTX 1650 SUPERに約9%の差をつけられている。ただし、Blue RoomのスコアはいずれのGPUもVRを楽しめるレベルには達さないものであり、実用的な負荷の範囲ではRadeon RX 5500 XTが優勢という結果であると言える。

【グラフ08】VRMark v1.3.2020「スコア」
【グラフ09】VRMark v1.3.2020「平均フレームレート」

 ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークでは、描画設定「最高品質」に設定して、フルHDから4Kまでの画面解像度でテストを実行した。

 ここでは、フルHD~WQHD解像度でGeForce GTX 1650 SUPERがトップスコアを獲得しており、Radeon RX 5500 XTに2~4%の差をつけている。4K解像度ではRadeon RX 5500 XTが逆に約5%の差をつけてGeForce GTX 1650 SUPERを上回っているが、いずれのGPUも最高評価の「非常に快適」の評価を得られたのはWQHD解像度までとなっている。

【グラフ10】ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク

 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク v1.2では、描画設定を「高品質」に設定して、フルHDから4Kまでの画面解像度でテストを実行した。

 ここではGeForce GTX 1650 SUPERが強さをみせており、フルHDで約24%、WQHDで約15%、4Kでも約4~10%の差をつけて、Radeon RX 5500 XTを上回った。GeForce GTX 1650 SUPERの有利はゲームとの相性によるものだろうが、VRAM使用量が増加する4K解像度でRadeon RX 5500 XTの4GBモデルと8GBモデルで約6%の差がついている点は興味深い。

【グラフ11】FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク v1.2

 オープンワールドレースゲーム「Forza Horizon 4」では、描画設定を「ウルトラ」に設定して、フルHDから4Kまでの画面解像度でベンチマークモードを実行した。

 トップスコアを獲得したのはRadeon RX 5500 XTの8GBモデルで、2番手のGeForce GTX 1650 SUPERにフルHD~WQHDで約1%、4Kでは約7%の差をつけた。一方、Radeon RX 5500 XTの4GBモデルは、GeForce GTX 1650 SUPERに約2~12%の差をつけられており、同じRadeon RX 5500 XTの8GBモデルには約5~15%の差をつけられている。

 Radeon RX 5500 XTの4GBモデルと8GBモデルで差がついたのはVRAM容量の違いが理由だろう。描画設定をウルトラに設定したForza Horizon 4は、フルHD解像度でも4GBのVRAMを使い切ってしまうため、VRAM容量に余裕のあるRadeon RX 5500 XTの8GBモデルが有利というわけだ。

 VRAM容量が不足気味とは言え、GeForce GTX 1650 SUPERもRadeon RX 5500 XTの4GBモデルも、WQHD解像度までは60fpsを超えるフレームレートを出せていることを考えれば、4GBというメモリ容量はもはや、エントリーゲーマー向けミドルレンジGPUには少なすぎるということなのかもしれない。

【グラフ12】Forza Horizon 4(v1.367.746.2)

 「F1 2019」では、DirectX 12モードで描画設定を最高の「超高」に設定。フルHDから4Kまでの画面解像度でベンチマークモードを実行した。

 トップスコアはRadeon RX 5500 XT 8GBモデルで、同GPUの4GBモデルに約7~13%、GeForce GTX 1650 SUPERには約4~21%の差をつけた。ここでもRadeon RX 5500 XTの8GBモデルがVRAM容量の優位をみせつけた格好だ。なお、同じく8GBのVRAMを持つRadeon RX 580に対しては、フルHD解像度で同スコア、WQHD以上では2~18%の差をつけている。

【グラフ13】F1 2019(v1.18.1)

 バトルロイヤルTPSの「フォートナイト」では、従来のDirectX 11に加えてベータ版として追加されたDirectX 12で、フルHD解像度で4つの画質プリセットをテストした。なお、画質プリセットに関わらずレンダリング解像度である3D解像度は100%に設定している。

 DirectX 11では、描画設定「低」~「中」ではGeForce GTX 1650 SUPERがRadeon RX 5500 XTを約3~10%上回る一方、描画設定「高」ではほぼ同等となり、「最高」ではRadeon RX 5500 XTがGeForce GTX 1650 SUPERに約5~8%の差をつけて逆転している。

 DirectX 12では、Radeon RX 5500 XTが描画設定「最高」以外でGeForce GTX 1650 SUPERを上回っており、描画設定「低」と「高」では約8~9%の差をつけている。GeForce GTX 1650 SUPERは全ての条件でDirectX 11よりスコアが低下しており、今のところ、フォートナイトのベータ版DirectX 12との相性はよくないようだ。

【グラフ14】フォートナイト DirectX 11(v11.21)
【グラフ15】フォートナイト DirectX 12(v11.21)

 オンラインFPS「レインボーシックス シージ」では、4つの描画設定プリセットでベンチマークモードを実行した。画面解像度はフルHDで、レンダリングのスケールは描画設定に関わらず100%に設定している。また、本ゲームではVRAM使用量の目安が表示されるのでグラフ中に表記した。

 Radeon RX 5500 XTは、GeForce GTX 1650 SUPERに約4~15%の差をつけて上回った。GeForce GTX 1650 SUPERのパフォーマンスは、Radeon RX 5500 XTよりもRadeon RX 580に近いものとなっている。

 VRAM使用量の目安が4GBを超える描画設定「最高」において、Radeon RX 5500 XTの4GBモデルと8GBモデルの差は約1%に過ぎず、どちらも100fpsを超えるフレームレートを記録しているが、基本的にVRAMが不足した状態では画面がカクつくスタッターなどが発生するようになるため、実践ではVRAM使用量の目安がビデオカードのVRAMを超える設定は避けた方が良いだろう。

【グラフ16】レインボーシックス シージ(Build 4436783)

 「オーバーウォッチ」では、フルHD解像度で4つの描画設定プリセットをテストした。レンダー・スケールはつねに100%に設定している。

 ここでもRadeon RX 5500 XTはGeForce GTX 1650 SUPERを上回っており、その差は描画設定「高」以外では約3~6%、GeForce GTX 1650 SUPERが伸び悩んだ描画設定「高」では約22~23%の差がついている。

【グラフ17】オーバーウォッチ(v1.42.0.0.63869)

 「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」では、描画設定を「最高」に固定してフルHDから4Kまでの画面解像度でフレームレートを測定した。

 フルHD解像度は全GPUが上限の60fpsに達しており差がついていないが、WQHD以上ではRadeon RX 5500XTが、GeForce GTX 1650 SUPERに約12%の差をつけて上回った。

【グラフ18】SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE(v1.04)

 「モンスターハンター:ワールド」では、フルHD解像度で4つの描画設定プリセットをテストした。

 描画設定「低」では、フレームレートが100fps弱で頭打ちになっているRadeon勢に対して、約116fpsを記録したGeForce GTX 1650 SUPERが頭ひとつ抜けているものの、それ以上の設定ではRadeon RX 5500 XTに約1~5%の差をつけられている。

【グラフ19】モンスターハンター:ワールド(Revision 168030)

 「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」では、フルHD解像度かつDirectX 12にて、4つの描画設定プリセットでベンチマークモードを実行した。

 Radeon RX 5500 XTは、描画設定「最高」での4GBモデルを除いて、約1~5%差でGeForce GTX 1650 SUPERを上回った。

 いずれのGPUも描画設定「最高」で60fpsを上回っているが、Radeon RX 5500 XTの4GBモデルが同設定でGeForce GXT 1650 SUPERを下回っていることからも分かるように、この設定では4GBのVRAMを使い切ってしまう。エントリークラスのミドルレンジGPUにとっては、GPU性能はさておきVRAM容量が厳しいタイトルであると言えよう。

【グラフ20】シャドウ オブ ザ トゥームレイダー(v1.0/build 296.0_64)

 「アサシン クリード オデッセイ」では、フルHD解像度にて、4つの描画設定プリセットでベンチマークモードを実行した。

 ここでもRadeon RX 5500 XTがGeForce GTX 1650 SUPERを上回っており、描画設定「最高」を除いた場合のフレームレート差は約2~10%。描画設定「最高」では、Radeon RX 5500 XTの8GBモデルがGeForce GTX 1650 SUPERに約20%の大差をつける一方、4GBモデルは約3%のリードに留まっている。

 描画設定「最高」でのVRAM使用量の目安は4GBを下回っているが、VRAM容量の差が性能差に影響を及ぼしているのは明らかであり、フルHDでも画質を重視すれば4GBのVRAMでは足りなくなるケースは珍しくないようだ。

【グラフ21】アサシン クリード オデッセイ(v1.5.1)

 「ゴーストリコン ブレイクポイント」は、フルHD解像度にて、4つの描画設定プリセットでベンチマークモードを実行した。

 VRAM使用量が多いゲームであるため、とくにRadeon RX 5500 XT 8GBが優れた性能を示しており、Radeon RX 580以外が70fpsで横並びだった描画設定「非常に高い」を除けば、GeForce GTX 1650 SUPERに約5~11%、4GB版のRadeon RX 5500 XTに3~5%の差をつけて上回った。

【グラフ22】ゴーストリコン ブレイクポイント(v4615838)

消費電力とGPUモニタリングデータ

 ワットチェッカーを用いて測定した、アイドル時の消費電力とベンチマーク実行中のピーク消費電力を紹介する。

 アイドル時消費電力がもっとも低かったのは、42Wを記録したRadeon RX 5500 XTの8GBモデルで、次いで43WのRadeon RX 5500 XTの4GBモデルだった。GeForce GTX 1650 SUPERは45Wで、Radeon RX 5500 XTに比べ若干高いが、Radeon RX 580の56Wよりも10W以上低い。

 ベンチマーク中のピーク消費電力が最も低かったのは、182~226Wを記録したGeForce GTX 1650 SUPERで、211~249WのRadeon RX 5500 XT 4GBモデル、219~259WのRadeon RX 5500 XT 8GBモデルと続いている。

 Radeon RX 580の突出した消費電力からわかるように、ワットパフォーマンスの分野ではこれまでNVIDIA製GPUが圧倒的に有利だったが、7nmプロセスとRDNAアーキテクチャの採用で電力効率を改善したRadeon RX 5500 XTのワットパフォーマンスもなかなかのものだ。

 12nm世代のGPUでありながらそれに拮抗するGeForce GTX 1650 SUPERとTuringアーキテクチャの電力効率相当なものだが、新世代のRadeonは電力効率でもライバルとの競争力を獲得したようだ。

【グラフ23】システムの消費電力

 GPU-Zのモニタリング機能を利用して、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークをフル解像度かつ高品質設定で実行中のGPUデータを取得、その結果をそれぞれグラフにまとめた。

 GeForce GTX 1650 SUPERを搭載するZOTAC GAMING GeForce GTX 1650 SUPER Twin Fanは、ファンの回転数を検出できなかったため、ファンスピードは制御値をグラフ化している。

 ピーク温度は69℃で、ピークファンスピードは54%。GPUクロックは最大1,920MHzに達したが、じょじょに低下してテスト終盤では1,845MHzで動作していた。スペック上のブーストクロックである1,800MHzをつねに上回り、ファンスピード的にもまだまだ余力のある結果となっている。

【グラフ24】ZOTAC GAMING GeForce GTX 1650 SUPER Twin Fanのモニタリングデータ

 Radeon RX 5500 XTの4GBモデルであるSapphire PULSE RADEON RX 5500 XT 4Gでは、通常のGPU温度(GPU Temperature)に加えて、「GPU Temperature(Hot Spot)」が取得できたので、同温度を「GPUホットスポット温度」としてグラフ化した。

 ピークGPU温度は61℃で、ピークGPUホットスポット温度は74℃、ファンスピードは最大1,162rpmだった。GPUクロックは最大1,860MHzで、おおむね1,840MHz前後で動作していた。ゲーム実行時の典型的な動作クロックとされるゲームクロックの1,717MHzを大きく超えており、十全な冷却状況で動作していることが伺える。

 また、GPUクーラーはセミファンレス動作に対応しており、テスト開始前と終了後には冷却ファンが停止していることが確認できる。

【グラフ25】Sapphire PULSE RADEON RX 5500 XT 4Gのモニタリングデー

 Radeon RX 5500 XTの8GBモデルであるMSI Radeon RX 5500 XT GAMING X 8Gでも、「GPU Temperature(Hot Spot)」を「GPUホットスポット温度」としてグラフ化した。

 ピークGPU温度は68℃で、ピークGPUホットスポット温度は79℃、ファンスピードは最大1,204rpmだった。GPUクロックは最大1,865MHzで、テスト中は1,850MHz前後での動作を実現していた。

 GPU温度自体は4GBモデルより高くなっているが、こちらはテスト中にもセミファンレス動作によってファンが停止していることから、4GBモデルよりも高いGPU温度を許容するファン制御の特性によるものと考えて良いだろう。実際、GPUクロックの安定感は4GBモデル以上であり、冷却が不足しているという気配は全くない。

【グラフ26】MSI Radeon RX 5500 XT GAMING X 8Gのモニタリングデータ

エントリーゲーマー向けと侮れない性能を持つ新世代ミドルレンジGPU

 今回の比較に用いたゲームやベンチマークの結果では、Radeon RX 5500 XTがGeForce GTX 1650 SUPERに勝るとも劣らぬといった具合で優勢だったが、どちらのGPUもエントリーゲーマー向けのミドルレンジGPUとして申し分のないGPU性能を備えている。フルHD解像度であれば、さまざまゲームを高品質なグラフィックや高いフレームレートで楽しめるだろう。

 ただし、今回のテストでも見られたように、フルHD解像度であっても4GBのVRAMでは不十分なゲームが増えてきた。GPU性能的にはRadeon RX 5500 XTとGeForce GTX 1650 SUPERで十分であっても、VRAM不足で描画設定を落とさざるを得ないという場面は、もはやレアケースではない。

 その点、8GBモデルが存在するのはRadeon RX 5500 XTの強みだ。価格次第では今回比較したGeForce GTX 1650 SUPERではなく、6GBメモリを備えるGeForce GTX 1660が競合となる可能性もあるが、電力効率でも競争力を得たRadeon RX 5500 XTの8GBモデルが、このクラスのベストGPUとなる可能性も十分に秘めている。今年の末は2万円台のGPU市場の動向に注目をしたいところだ。