Hothotレビュー
17型で約1.3kgの超軽量ノート「LG gram 17」はモバイルの常識を変えるのか
2019年2月13日 11:00
LGエレクトロニクス・ジャパンは、軽量モバイルノート「gram」シリーズの2019年モデルを発表した。
gramシリーズは、これまでに13.3型、14型、15.6型とディスプレイサイズの異なるラインナップを充実させてきているが、2019年モデルでは新たに17型の大型ディスプレイを搭載するモデルを追加した。しかも、17型液晶搭載ながら約1,340gという軽さを実現した、意欲的なモデルとなっている。
今回、そのgram2019年モデルのなかから、17型液晶でCore i7-8565U搭載の上位モデル「gram 17Z990-VA76J」を取り上げる。2月15日より発売を予定しており、価格は184,880円前後だ。
17型液晶搭載ながら1,340gの超軽量かつ堅牢性に優れる筐体を実現
「gram 17Z990-VA76J」(以下、gram 17)は、LGのgramシリーズとして新たに追加されたモデルだ。最大の特徴となるのが、17型の大型液晶を搭載しているにも関わらず、重量が約1,340gと、17型ノートとして常識を覆す軽さを実現している点だ。
この軽さの実現は、従来のgramシリーズと同じコンセプトで実現している。筐体素材には、天板にアルミマグネシウム合金、底面にマグネシウム合金、キーボード面にナノカーボンマグネシウム複合合金を採用しており、軽さと強度を両立。
ディスプレイベゼルも狭額縁化することでフットプリントも最小限に抑えている。また、内部基板や各種パーツ、液晶パネルなども軽量化を追求することで、圧倒的な軽さを実現している。
サイズは380.6×265.7×17.4mm(幅×奥行き×高さ)と、モバイルPCとして考えると、フットプリントはかなり大きいと感じる。また、今回は13.3型モデルや14型モデル、15.6型モデルとも比較できたが、それらと並べるとやはりかなり大きい。
とはいえ、ベゼル幅をせばめていない普及価格帯の15.6型ノートとほぼ同等のフットプリントで、17型液晶搭載と考えると十分にコンパクトと言える。また、高さは17.4mmとなかなかの薄さだ。鞄にもある程度の大きさが必要とはなるが、サイズが許すならそれほどかさばることなく収納できるはずだ。
そして、なんと言っても驚きなのが、公称で約1,340gという重量だ。13.3型液晶搭載モバイルノートでも1.3kg前後の製品が存在することを考えると、17型液晶搭載でこの重量はやはり驚異的。実際に本体を手にすると、サイズが大きいことも手伝って驚くほど軽いと感じる。
なお、実測では1,284gと公称を大きく下回り、1,300gをも切る軽さだった。この軽さなら、フットプリントの大きさを考慮したとしても、十分モバイルノートとして魅力があるはずだ。
しかも、従来のgramシリーズでも特徴となっている、米国国防総省が定める調達基準「MIL-STD-810G」に準拠する7種類の堅牢性試験(衝撃、低圧・高地、高音、低音、砂塵、振動、塩水噴霧)をクリアする優れた堅牢性も確保。軽さはもちろん、フットプリントが大きくなると、堅牢性の確保が難しくなってくるが、そういったなかでも従来同様の堅牢性を実現している点は、持ち運びを重視するユーザーにとっても心強いはずだ。
ちなみに、デザインはgramシリーズのほかのモデルとほぼ同じだ。筐体カラーはダークシルバーで、フラットかつシンプルなデザインは、ひとめでgramシリーズとわかるものとなっている。
カーボンナノチューブ採用の大容量バッテリ搭載で約22時間の連続駆動が可能
gramの2019年モデルでは、13.3型から今回取り上げた17型モデルまで、すべてに容量77Whの大容量リチウムイオンバッテリを搭載している。しかもこのバッテリはカーボンナノチューブを採用しており、従来のリチウムイオンバッテリと比べて大幅に電力効率が高められているという。
それによって、gram 2019年モデルでは、今回取り上げた17型モデルで約22時間、13.3型モデルではじつに約28時間と、圧倒的な長時間駆動を可能といている。
gramシリーズは、登場当初こそ搭載するバッテリ容量を減らしてでも軽さを追求していた。しかしここ数年は極限の軽さを追求せず、1kg前後の重量のなかで最大限の駆動時間を追求するようになっている。
確かにモバイルPCは軽いほどいいかもしれないが、それによって駆動時間が短くなると、利便性が失われる。そのため、必要十分な軽さのなかで長時間駆動を実現するという部分は、モバイルPCとして魅力を高めていると言えるだろう。
WQXGA表示対応の17型液晶を搭載
これまでgramシリーズでは、13.3型、14型、15.6型と3種類のサイズの液晶パネルを搭載するモデルが用意されていた。それらは、サイズこそ異なるものの、いずれもフルHD(1,920×1,080ドット)表示対応のIPS液晶を採用してきた。
それに対しgram 17に搭載される17型液晶パネルは、アスペクト比16:10、WQXGA(2,560×1,600ドット)と、フルHD超の表示解像度に対応。画面サイズの大型化だけでなく、情報量も増えることで、従来モデルに比べて利便性が高まっている。もちろんパネルの種類はIPSで、sRGBカバー率96%以上の広色域表示に対応する点も、ほかのモデル同様となっている。
パネル表面は光沢処理となっており、鮮やかな発色が実現されている反面、外光の映り込みはやや気になる印象。このあたりも従来モデル同様だ。また、タッチパネルも非搭載となる。
キーボードは15.6型モデルと同じ
gram 17に搭載されるキーボードは、15.6型モデルに搭載されているものと同じ、テンキー付きのアイソレーションキーボードだ。配列は従来モデル同様に日本語配列となっている。
主要キーのキーピッチは約19mmとフルピッチを確保。また、ストロークは約1.2mmとやや浅い。タッチはやや軽めという印象だが、クリック感はしっかりしており、打鍵感はまずまずといったところだ。また、キーボードバックライトもほかのシリーズ同様に搭載しているので、暗い場所でのタイピングも快適だ。
ただ、Enterキー付近の一部キーのピッチがせまくなっている点は残念だ。本体はかなり余裕があり、キーボード左右には大きなスペースが残っていることを考えても、すべてのキーでフルピッチを確保するのは難しくないはずだ。
おそらく、15.6型モデルと同じキーボードユニットを採用することでコストダウンを図っているものと思われるが、それにしてもやはりこの本体サイズですべてのキーがフルピッチではないキーボードの搭載はかなり残念に感じる。この点は、今後の改善を期待したい。
ポインティングデバイスは、クリックボタン一体型のタッチパッドを搭載する。キーボードのホームポジションを中心として配置しているのではなく、本体の中央に搭載しているため、操作時にはやや右に寄っているという印象もある。それでも、面積が広いのでかなり扱いやすい。もちろんジェスチャー操作にも対応しているので、操作性に大きな不満はない。
内部のシステムは最新モバイルPCと同等
gram 17の内部スペックは、最新モバイルPCとほぼ同等だ。CPUはCore i7-8565Uを採用しており、メモリは標準でDDR4-2400を8GB搭載。内蔵ストレージは標準で512GBのSATA SSDを搭載する。
これらスペックはどちらかというと標準的ではあるが、gramシリーズ向けとして用意されている「LG gramアップグレードサービス」を利用すれば、メモリを最大16GBに増設したり、2台目のSSDを追加で搭載(容量は最大512GB)できる。
公式にメモリやSSDの増設が可能という点は、購入後にスペックを強化したいというニーズに対応できるという意味で、うれしいサービスと言える。
無線機能は、最大1.73Gbpsの高速通信に対応するIEEE 802.11ac準拠無線LANとBluetooth 5.0を標準搭載。ディスプレイ上部中央には、720p対応のWebカメラも搭載している。
生体認証機能は、電源ボタン一体型の指紋認証センサーを採用。電源ボタンはテンキーの右上に用意されている。13.3型モデルや14型モデルでは、電源ボタンが[BackSpace]キーの真上に配置されており、間違って押してしまうこともあったがgram 17ならそういった心配はなさそうだ。とはいえ、できればキーボードとは異なる領域に配置してもらいたい。
外部ポートは、左側面に電源コネクタ、USB 3.0、HDMI、Thunderbolt 3(USB Type-C)を、右側面にはmicroSDカードスロット、オーディオジャック、USB 3.0×2の各ポートを備える。
また、Thunderbolt 3はUSB PDにも対応しており、付属ACアダプタだけでなく、汎用のUSB PD対応ACアダプタを接続することで本体への給電や内蔵バッテリの充電が行なえる。
ただ、本体サイズを考えると、microSDカードスロットではなく標準サイズのSDカードスロットを用意してもらいたかったように思う。
付属のACアダプタはやや大型だ。スペックは一般的なモバイルノート相当なので、できればもう少し小さいACアダプタでも良かったように思う。重量は付属電源ケーブル込みで実測244gとそれほど重くないので、本体同時携帯もそれほど苦にならないかもしれない。
それ以前に、先に紹介したように、バッテリ駆動時間が公称で約22時間と非常に長いため、実際に持ち出して利用する場合でも、ACアダプタを同時携帯しなければならない場面は少ないだろう。
標準仕様ではメモリがシングルチャネルのため、最大限の性能が発揮されず
では、ベンチマークテストの結果を紹介していこう。
今回利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 10 vv1.1.1739」、「PCMark 8 v2.8.704」、「3DMark Professional Edition v2.7.6296」、Maxonの「CINEBENCH R15.0」、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」の5種類。
比較用として、日本HPの「Spectre x360 13」の結果も加えてある。なお、PCMark 10では「Digital Content Creation」の「Rendering and Visualization」テストでエラーが発生し、トータルのスコアが得られていないため、測定できたテストの結果のみを紹介している。
LG gram 17Z990-VA76J | HP Spectre x360 13(2018)スタンダードモデル | |
---|---|---|
CPU | Core i7-8565U(1.80/4.60GHz) | Core i7-8565U(1.80/4.60GHz) |
ビデオチップ | Intel UHD Graphics 620 | Intel UHD Graphics 620 |
メモリ | DDR4-2400 SDRAM 8GB | DDR4-2400 SDRAM 16GB |
ストレージ | 512GB SSD(SATA) | 512GB SSD(PCIe) |
OS | Windows 10 Home 64bit | Windows 10 Home 64bit |
LG gram 17Z990-VA76J | HP Spectre x360 13(2018)スタンダードモデル | |
---|---|---|
PCMark 10 | v1.1.1739 | |
PCMark 10 Score | - | 4,267 |
Essentials | 7,549 | 9,263 |
App Start-up Score | 9,208 | 13,980 |
Video Conferencing Score | 6,571 | 7,182 |
Web Browsing Score | 7,111 | 7,918 |
Productivity | 6,348 | 7,368 |
Spreadsheets Score | 7,795 | 8,993 |
Writing Score | 5,171 | 6,037 |
Digital Content Creation | - | 3,090 |
Photo Editing Score | 3,982 | 3,894 |
Rendering and Visualization Score | - | 1,901 |
Video Editting Score | 3,522 | 3,989 |
PCMark 8 | v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 3,241 | 3,652 |
Creative accelarated 3.0 | 3,550 | 3,625 |
Work accelarated 2.0 | 4,530 | 5,136 |
Storage | 4,938 | 5,041 |
CINEBENCH R15.0 | ||
OpenGL (fps) | 45.31 | 60.38 |
CPU | 557 | 634 |
CPU (Single Core) | 174 | 190 |
3DMark Professional Edition | v2.8.6427 | v2.6.6238 |
Cloud Gate | 7,466 | 9,783 |
Graphics Score | 8,191 | 11,456 |
Physics Score | 5,702 | 6,475 |
Night Raid | 4,104 | 5,400 |
Graphics Score | 3,858 | 5,531 |
CPU Score | 6,518 | 4,764 |
Sky Diver | 3,816 | 4,867 |
Graphics Score | 4,648 | 4,527 |
Physics Score | 4,652 | 8,016 |
Combined score | 4,878 | 4,746 |
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク | ||
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) | 2,000 | 4,881 |
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC) | 1,293 | 2,713 |
結果を見ると、同じCPUを搭載するSpectre x360 13に比べて多くのスコアが低くなっている。ただ、今回試用したgram 17は標準仕様で、メモリが8GBのシングルチャネル動作となっている。それによってCPUやCPU内蔵グラフィックス機能の性能がフルに引き出せておらず、スコアがあまり伸びていないものと考えられる。
メモリを増設して16GBにすれば、動作もデュアルチャネルとなり、CPUの性能も最大限引き出せるようになると考えられるため、性能を重視するなら購入後にアップグレードサービスを利用してメモリを増設することをおすすめする。
続いてバッテリ駆動時間だ。gram 17の公称の駆動時間は約22時間(JEITAバッテリ動作時間測定法 Ver2.0での数字)とされている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、電源モードを「(バッテリ)より良いバッテリ」、バックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約18時間15分を記録した。
公称には届かなかったが、実測で18時間超の駆動時間があれば、1日の外出はもちろん、1泊2日の出張でもACアダプタ不要で乗りきれる可能性が高い。1,340gの軽さながら、これだけの長時間駆動が可能という点も、大きな魅力となるだろう。
大画面ノートPCを軽快に持ち歩きたい人におすすめ
ここまで見てきたように、gram 17は17型大型液晶搭載のノートPCを軽快に持ち歩けるというモバイルPCの新たな可能性を示す、意欲的な製品と言える。
キーボードや外部ポートの種類など一部に不満があるのも事実だが、視認性に優れる大型ディスプレイや、約22時間という長時間駆動を実現しつつ、1,340gの軽さを実現している点は、大きな魅力となるだろう。
少なくとも、軽快に持ち歩ける17型ノートは他に選択肢がなく、こういったノートPCの登場を待っていた人にとって、これ以上ない存在だ。