Hothotレビュー
20cm四方サイズにXeon E/Quadroを詰め込んだ小型WS「HP Z2 Mini G4 Workstation」実機レビュー
2018年10月26日 11:00
株式会社日本HPは、容積2.7Lのコンパクト筐体にXeon EプロセッサとQuadroグラフィックスを搭載した小型ワークステーション「HP Z2 Mini G4 Workstation」を10月より販売開始した。工具なしに天板を開けられるなどメンテナンス性も考慮された小型筐体を採用。省スペースに設置可能だ。
今回日本HPより以下の構成のカスタマイズモデル(税別368,820円)を借用した。構成としてはミドルクラスに相当する借用機で、使い勝手、性能などについてレビューしていこう。
- Xeon E-2124G
- 32GBメモリ
- 256GB SSD
- 1TB HDD
- Quadro P600
- AC 9560+Bluetooth 5.0
- シリアルポートアダプタ
CPUはXeon E-2176G、GPUはQuadro P1000までアップグレード可能
「HP Z2 Mini G4 Workstation」は、Coffee Lake世代のXeon Eプロセッサを採用した小型ワークステーション。最小構成はOSなし、CPUはXeon E-2104G、メモリは8GB(DDR4-2666 SDRAM)、ストレージは1TB HDD(SATA 6Gbps)、ディスクリートGPU、キーボードなし、マウスなしで税別143,000円となる。
これだけ聞くとやや割高な印象を受けるが、ワークステーションとして位置づけられている本製品は「3年翌日オンサイト休日修理付き」と保証が手厚くなっている。
【表1】HP Z2 Mini G4 Workstationのスペック ※10月24日調べ | |
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OS | Windows 10 Pro for Workstations(64bit) |
CPU | XeonプロセッサE-2104G、2124G、2126G、2136、2144G、2174G、2176G |
チップセット | インテルC246チップセット |
GPU | Intel HD Graphics P630/NVIDIA Quadro P600、NVIDIA Quadro P1000 |
メモリ | DDR4-2666 SDRAM 8GB(8GB×1)、16GB(16GB×1)、32GB(16GB×2) |
ストレージ | 1TB HDD(SATA 6Gbps、7,200rpm)、256GB SSD(SATA 6Gbps)、256GB SSD(M.2 PCIe)、512GB SSD(M.2 PCIe)、1TB SSD(M.2 PCIe)、Intel 16GB Optane メモリー(M.2 PCIe) |
通信 | Intel I219LM Gigabit Ethernet(オンボード、Alert On LAN対応)×1、Intel 9560 Wireless LAN(IEEE 802.11ac) + Bluetooth 5モジュール(内部M.2 2230スロットを使用) ×1 |
インターフェイス | USB 3.1 Type-C×2、USB 3.0 Type-A×4、Thunderbolt 3×1(フレックスIOオプション)、DisplayPort 1.2×3、HDMI×1(フレックスIOオプション)、RJ-45×1、シリアルポート×1(オプション)、ヘッドセット/マイクコンボジャック×1 |
拡張ベイ | 2.5インチシャドー×1、80mm M.2スロット(PCI Express 3.0 x4)×1 |
拡張スロット | PCI Express 3.0 x16×1(MXMスロット) |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 216×216×58mm |
重量 | 2.18kg |
ダイレクトモデルは、「おすすめ構成モデル」、「おすすめ構成モデル(OSなし)」、「フルカスタマイズモデル」、「フルカスタマイズモデル(OSなし)」が用意されているが、CPU、メモリ、GPU、ストレージは同一で、全モデルともOSありは税別200,500円、なしのほうは171,500円で変わらない。
異なるのはカスタマイズの自由度。フルカスタマイズモデルはOS、CPU、ストレージ、フレックスI/Oポート、シリアルポートで選択できる項目が多くなっている。ただしフルカスタマイズモデルは記事執筆時点で納期が5~6週間と長くなっている点に留意しよう。
HP Z2 Mini G4 Workstation おすすめ構成モデル | HP Z2 Mini G4 Workstation おすすめ構成モデル(OSなし) | HP Z2 Mini G4 Workstation フルカスタマイズモデル | HP Z2 Mini G4 Workstation フルカスタマイズモデル(OSなし) | |
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OS | Windows 10 Pro for Workstations(64bit) | FreeDOS(HP Linuxインストーラキットは付属しない) | Windows 10 Pro for Workstations(64bit) | FreeDOS(HP Linuxインストーラキットは付属しない) |
CPU | Xeon プロセッサー E-2104G | |||
メモリ | DDR4-2666 SDRAM 8GB(8GB×1) | |||
GPU | Intel HD Graphics P630/NVIDIA Quadro P600 | |||
ストレージ | 1TB HDD | |||
保証 | 本体標準保証(3年翌日オンサイト休日修理付き、日本語版向け) | |||
価格 | 200,500円 | 171,500円 | 200,500円 | 171,500円 |
主要パーツのカスタマイズ項目(※印はフルカスタマイズモデルのみ)
OS
Windows 10 Pro for Workstations(64bit、日本語版) /標準
Windows 10 Pro for Workstations(64bit、英語版) /プラス0円
Windows 10 Pro for Workstations Plus(64bit、日本語版) /プラス16,000円※
Windows 10 Pro for Workstations Plus(64bit、英語版) /プラス16,000円※
CPU
・Xeon E-2104G(3.2GHz、4コア)/標準
・Xeon E-2124G(3.4GHz、4コア) /プラス15,000円
・Xeon E-2126G(3.3GHz、6コア) /プラス23,000円※
・Xeon E-2136(3.3GHz、6コア) /プラス30,000円※
・Xeon E-2144G(3.6GHz、4コア) /プラス30,000円
・Xeon E-2174G(3.8GHz、4コア) /プラス43,000円
・Xeon E-2176G(3.7GHz、6コア) /プラス50,000円※
メモリ
・DDR4-2666 SDRAM 8GB(8GB×1)/標準
・DDR4-2666 SDRAM 16GB(16GB×1)/プラス30,000円
・DDR4-2666 SDRAM 32GB(16GB×2)/プラス90,000円
M.2ストレージ
・なし/標準
・256GB SSD(M.2 PCIe)/プラス25,000円
・512GB SSD(M.2 PCIe)/プラス50,000円
・1TB SSD(M.2 PCIe)/プラス100,000円※
SATAストレージ
・なし/マイナス12,000円※※M.2ストレージを選択した場合のみ
・1TB HDD/標準
・256GB SSD/プラス13,000円
グラフィックス
・Intel HD Graphics P630/マイナス25,000円※
・NVIDIA Quadro P600 2GB+Intel HD Graphics P630/標準
・NVIDIA Quadro P1000 4GB+Intel HD Graphics P630/プラス25,000円
フレックスI/Oポート
・フレックスI/Oポートなし/標準
・HDMIポート/プラス3,000円※
・ThunderBolt3ポート/プラス3,000円※
四隅を落とした八角形筐体は独特なフォルム
本製品のサイズは216×216×58mm(幅×奥行き×高さ)、重量は2.18kg。ディスクリートGPUを搭載するワークステーションとしては非常にコンパクトだ。従来モデル「HP Z2 Mini G3 Workstation」と外観は変わらないが、四隅を落とした八角形筐体は独特なフォルムで、クリエイターのデスクにふさわしいデザインに仕上がっている。
縦置き、横置きのどちらにも対応するが、別売りの「スリーブキット」を用意すれば机の下に、「マウントブラケット」を用意すればディスプレイの裏に取りつけられる。HP製ディスプレイ向けには、「ダイレクトマウントブラケット(2DW53AA)」、「HP B500 モニターマウントキット(2DW52AA)」、「EliteDisplay用ダイレクトマウントブラケット(N6N00AA)」の3製品がアクセサリとして用意されている。
標準搭載されるインターフェイスは、USB 3.1 Type-C×2、USB 3.0 Type-A×4、DisplayPort 1.2×3、RJ-45×1、ヘッドセット/マイクコンボジャック×1。またフルカスタマイズモデルの場合は、Thunderbolt 3×1(フレックスIOオプション)、HDMI×1(フレックスIOオプション)、シリアルポート×1(オプション)も搭載できる。ただし「フレックスIOオプション」として装着できる端子は1つだけだ。
システムBIOSは自社開発されており、貸出機には「Q50 VER.01.00.04 05/31/2018」がインストールされていた。BIOSのカテゴリは「Main」、「Security」、「Advanced」、「UEFI Drivers」と分けられており、コンシューマ向けのBIOSと構成が異なるが、日本語を含む14言語に対応しているので、基本的な設定項目はすぐに見つけられるはずだ。
OSは前述のとおり「Windows 10 Pro for Workstations」がプリインストールされている。これは大型アップデート「Fall Creators Update」で追加されたワークステーション向けのエディションだが、コンシューマ向けのWindows 10用アプリケーションも動作する。「Windows 10 Pro for Workstations」の詳細については過去記事(4基の物理CPUやNVDIMMに対応する「Windows 10 Pro for Workstationsが今秋登場)を参照してほしい。
密集しているがメンテナンス性は良好、メモリ換装なら工具不要
「HP Z2 Mini G4 Workstation」はアクセスパネル(天板)を工具なしに開けられ、また「プロセッサファン」を持ち上げればメモリにすぐアクセスできる。ここまではいっさい工具は不要だ。カスタマイズ時に上限の32GBを搭載すると税別90,000円とかなり割高なので、最低容量の8GBを購入しておいて、あとから自分で増設してもよいだろう。ちなみに貸出機にはSK Hynix製「HMA82GS7CJR8N-VK」が2枚装着されていた。
SATAストレージのドライブケージは中央のネジで取り外せ、その後側面のネジを抜けば、ストレージを取り外せる。ドライブケージの下にはビデオカード用ヒートシンク/ファンがあり、M.2ストレージはさらにその下にある。なお貸出機にはM.2ストレージとしてNVMe接続の256GB SSD「MZVLW256HEHP」が、SATAストレージとして1TB HDD「HTS721010A9E630」が搭載されていた。
以上、搭載されていたパーツは2018年10月時点の貸出機のもの。出荷時期によって部品が異なる可能性がある点には注意してほしい。
コンパクトなワークステーションだけにパーツ自体は入り組んでいるが、メモリ、ストレージの換装は比較的容易。また今回はメーカーから許可を得ていないので試していないが、CPUも交換できる構造となっているようだ。
キーボード、マウスの操作感は良好だが……
ダイレクトモデルには、本体以外にACアダプタ、電源コード、「USBスリムスタンダードキーボード(日本語版109Aキーボード)」、「USBプレミアムレーザースクロールマウス」が付属している。キーボード、マウスともに操作感は良好だが、比較的高価格帯の「HP Z2 Mini G4 Workstation」と質感は決して釣り合っていない。
カスタマイズ時に省略すればキーボードは1,500円、マウスは2,000円割り引かれるので、特段の理由がないかぎりは納得のいく品質の使い慣れた入力デバイスを選んだほうがよいと思う。
Xeon EプロセッサとQuadroを動かすだけにACアダプタは230Wと大容量で、サイズは200×100×25.4mm(同)、重量は約820g(電源コード含まず)と大きく、そして重い。ACアダプタと本体をつなぐケーブルは実測約180cmと長めなので、床に直置きするとよいだろう。
絶対的な性能は決して高くない
最後にベンチマークスコアを見てみよう。今回は総合ベンチマーク「PCMark 10 v1.1.1739」、3Dグラフィックスベンチマーク「3DMark v2.5.5029」、CPU/OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15.0」、ゲーミングPC向けベンチマーク「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」、「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」、ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 6.0.1」を実施した。
下記が検証機の仕様とその結果だ。
【表3】検証機の仕様 | |
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CPU | Xeon E-2124G(3.4~4.5GHz、4コア4スレッド) |
GPU | Intel UHD Graphics P630(350MHz~1.15GHz)、NVIDIA Quadro P600 |
メモリ | DDR4-2666 SDRAM 32GB(16GB×2) |
ストレージ | 256GB SSD「MZVLW256HEHP」(PCIe NVMe M.2)、1TB HDD「HTS721010A9E630」(SATA 6Gbps、7,200rpm) |
OS | Windows 10 Pro for Workstations |
【表4】ベンチマーク結果 | |
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PCMark 10 v1.1.1739 | |
PCMark 10 Score | 4,446 |
Essentials | 7,841 |
App Start-up Score | 9,607 |
Video Conferencing Score | 5,721 |
Web Browsing Score | 8,772 |
Productivity | 6,950 |
Spreadsheets Score | 7,346 |
Writing Score | 6,576 |
Digital Content Creation | 4,378 |
Photo Editing Score | 4,242 |
Rendering and Visualization Score | 4,037 |
Video Editting Score | 4,903 |
3DMark v2.5.5029 | |
Time Spy | 665 |
Fire Strike Ultra | 990 |
Fire Strike Extreme | 1,932 |
Fire Strike | 3,791 |
Sky Diver | 12,332 |
Night Raid | 8,204 |
Cloud Gate | 16,260 |
Ice Storm Extreme | 111,574 |
Ice Storm | 142,193 |
CINEBENCH R15.0 | |
OpenGL | 142.78 fps |
CPU | 674 cb |
CPU(Single Core) | 193 cb |
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】 | |
1,280×720ドット | 6,307 |
1,920×1,080ドット | 3,300 |
FINAL FANTASY XV BENCHMARK | |
1,280×720ドット、標準品質、フルスクリーン | 1,761(動作困難) |
SSDをCrystalDiskMark 6.0.1で計測 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 3,411.541 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 1,220.817 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 1,061.174 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 732.250 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 396.220 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 310.955 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 41.549 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 121.650 MB/s |
HDDをCrystalDiskMark 6.0.1で計測 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 143.793 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 124.976 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 0.994 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 1.074 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 1.043 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 0.710 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 0.500 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 0.596 MB/s |
Adobe Lightroom Classic CCで100枚のRAW画像を現像 | |
7,952☓5,304ドット、カラー - 自然 | 5分29秒16 |
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し | |
3,840×2,160ドット、30fps | 11分25秒36 |
率直に言って、Core系CPUやGeForce系GPUを搭載しているデスクトップPCと比較するとベンチマークスコアは決して高くない。今回の借用機はXeon E-2124G/32GBメモリ/256GB SSD/1TB HDD/Quadro P600/AC 9560+Bluetooth 5.0/シリアルポートアダプタという構成で税別368,820円だ。価格を考えると処理能力的には満足度が低い。
ただし、3.7GHz/6コアのXeon E-2176Gにアップグレードしてもプラス50,000円、Quadro P1000にアップグレードしてもプラス25,000円だ。実際にはさらに6コア以上のXeonを搭載するために「Windows 10 Pro for Workstations Plus」(プラス16,000円)を選ぶ必要があるが、それを含めても合計プラス91,000円で処理能力的には最高スペックとなる。ワークステーションの安定性に加えて、さらなる性能が必要なのであれば、CPU、GPUは最上位を選択するべきだ。
性能以上に安定性を重視するユーザー向きのワークステーション
HPはより高性能を必要とするユーザー向けには最大10コアのXeonプロセッサ、256GBのメモリ、外部グラフィックス「NVIDIA Quadro P6000」を搭載可能なタワー型ワークステーション「HP Z4 G4 Workstation」をラインナップしている。つまり「HP Z2 Mini G4 Workstation」は性能よりも省スペース性を優先するユーザー向けのワークステーションという位置づけなのだ。
ハイエンドゲームには不向きとは言え、軸足はコンシューマユーザーの筆者にも「HP Z2 Mini G4 Workstation」のパッケージングは非常に魅力的。この筐体にCore系プロセッサ、GeForce系グラフィックスを搭載したコンシューマ向け製品の登場にもおおいに期待したい。