Hothotレビュー
スタイリッシュさイチオシのASUS製15.6型ゲーミングノートを検証
~Core i7-8750HとGeForce GTX 1070のハイエンド構成
2018年10月29日 11:00
ASUSTeKのゲーミングノートPCは、マザーボードにおけるゲーミングモデルそのままに「ROG」、「STRIX」といった同じブランドで展開している。今回試すのは「ROG STRIX SCARII GL504GS」で、ハイエンドモデルにあたる15.6型ゲーミングノートPCだ。実売価格は27万円前後となっている。
カーボン+カモフラージュ柄のデザイン性の高い筐体
まず最初にデザインについて言及しておきたい。ASUSTeK自身デザインにこだわるメーカーであり、それはモバイルノートのZenBook、ゲーミングノートのROGどちらにも現われている。今回のGL504GSも同様だ。デザイン性が高ければ、それだけ所有する満足感、ゲームにおける高揚感を高めてくれる。本製品で注目したいのは、天板、キーボード面のデザインだ。まずはそこを見ていこう。
天板は斜めに大きく領域を分けており、それぞれ異なる角度でヘアライン加工が施されている。右上の領域にはROGのマークを埋め込み、電源オンでLEDが光るギミックも備えている。また、液晶天板のヒンジ寄りの部分を大胆にカットし、キーボード面のデザインがチラ見えするところもユニークだ。
キーボード面は全面カーボン柄をベースに、やはりここでも斜めに領域を分けて右上はカモフラージュ柄を重ねている。カーボンプリントの上に1層のクリアを吹き、その上にカモフラージュパターンがやや半透明にプリントされているように見えた。カモフラージュパターンが少し浮いているような、あるいはやけに立体的に見えるような、とにかく不思議な印象を受けるデザインである。
ゲーミングノートPCらしく独特のデザインを採用しているが、写真を見ていただければわかるように、形状そのものは少しスタンダードノートPC寄りの印象だ。天板はフラットで、キーボード側の筐体もスッキリ四角形をしている。ゴテゴテとした無骨な外観のゲーミングノートPCとは一線を画する。
とくに、LEDを灯していない状態では、すぐにはカモフラージュパターンも判別しにくいこともあり、落ち着きもあってちょっとスタイリッシュな普通のノートPCのようにも見える。デザインノートPCとでも言うべきカテゴリだろうか。新しい世代のゲーミングノートPCを感じさせる雰囲気である。
製品型番 | GL504GS-I7G1070 |
---|---|
OS | Windows 10 Home 64bit |
CPU | Core i7-8750H(2.2~4.1GHz、6コア/12スレッド) |
GPU | GeForce GTX 1070(8GB) |
メモリ | PC4-21300 DDR SDRAM(DDR4-2666) 16GB(8GB×2 デュアルチャネル) |
ディスプレイ | 15.6型フルHD(1,920×1,080ドット)、IPS、144Hz、タッチ非対応 |
マザーボード(チップセット) | Intel HM370チップセット搭載 |
ストレージ | Cドライブ:256GB NVMe SSD(PCI Express 3.0 x2)+Dドライブ:1TB SSHD(Serial ATA 3.0) |
光学ドライブ | なし |
インターフェイス | USB 3.1 Gen2×2(Type-A×1、Type-C×1)、USB 3.0×2(Type-A×2)、SD/SDHC/SDXC対応カードリーダ、オーディオ入出力 |
本体サイズ | 361×262×26.1mm/2.5kg |
税別価格 | 249,500円(執筆時点) |
ゲーミングノートPCではめずらしい狭額縁ベゼルを採用。15.6型だがひとまわりコンパクト
サイズについては15.6型液晶搭載クラスで361×262×26.1mm(幅×奥行き×高さ)となっている。奥行きはともかく、幅が361mmというのは15.6型としては小さい。これは、狭額縁ベゼルを採用しているためだ。ゲーミングノートPCで狭額縁ベゼルを採用するのはめずらしく、おもにモバイルノートで採用される技術である。これをあえてハイエンドゲーミングノートPCで採用したところも好印象だ。
液晶パネルの解像度は1,920×1,080ドット。ここは内部パーツの性能からしてムリのない選択だ。また、リフレッシュレートは144Hz、応答速度は中間色で3ms、表面は非光沢パネルを採用しており、ゲーミングノートPCとしてはさまざまタイトルで十分に闘えるスペックとなっている。
先述のとおり、本製品は天板側の左右ヒンジ間をくり抜いたデザインをしている。加えてWebカメラやROGマークなどを液晶パネルの下側のベゼル部分に置いていることもあり、開いたさいの液晶パネルはやや高い位置にある。個人的な印象としては、あまり視線を下げずに作業ができて首への負担が少ないように感じられた。
本体を前面から見ると、パームレストから下は斜めにカットされており、実際の厚みの26.1mmという数値よりはスリムに感じられる。冷却は底面後部の左右にファンを設け、左右の斜めにカットされた部分から吸気し、後部から排気を行なうようだ。カットされている分、左右に障害物があっても吸気効率を大きく落とすことはなさそうだ。
排気口は地味ながらよく考えられた仕組みを採用している。後部の左右にある排気口は、よく見ると一番内側の部分だけヒートシンクがない。これは同社が「アンチダストトンネル」と呼ぶ領域で、内部のファンにより質量の大きなホコリの類をアンチダストトンネルから排出し、それよりも軽い空気をヒートシンクのある外寄りの排気口に導いているとのことだ。
デスクトップPCのように頻繁にフィルタ掃除のできないノートPCだからこそ、こうしたホコリ対策が施されていることは末永く利用していく上で心強い。なお、FnキーとF5キー同時押しでファンの回転数プリセットの切り替えが可能で、標準のほか「Silent」、「OverBoost」と変更できる。
RGB LEDのイルミネーションに対応したキーボード
先にデザイン部分でふれているので、キーボード面は配列や機能を中心に紹介しよう。
まず配列については104英語キー配列を採用している。これはゲーミング寄りのスペックと言えるだろう。全角/半角キーなどプレイ中に押してしまうとフォーカスを取られたりコマンド入力ができなくなってしまうものを排除し、プレイに集中できるよう配慮されている。
普段日本語キーボードを利用されている方には少々戸惑いがあるかもしれないが、ゲーム中で大きな問題になることはないだろう。もしゲーム以外の用途でどうしても日本語キーボードが使いたいという方は、別途USBキーボードを併用したい。
ゲーミング向けということで、RGB LEDバックライトは当然搭載しており、同社AURA Syncから制御ができる。明かりを灯すゾーンは4つに分けることができ、ゲーム中で移動に用いる「W」、「A」、「S」、「D」キーは半透明キーキャップを採用していて判別が容易になっている。
ほか、スペースキーの下、左寄りを少し拡大していたり、ファンクションキーを4キーごと間にスペースを設けたりと、入力しやすい工夫がある。とくに、写真ではほぼフラットに見えてしまうキートップも、0.25mmほどのくぼみを設け入力しやすくしているとのことだ。
ゲーミングという点ではもういくつか、Nキーロールオーバーや、キーストロークを浅めに設定し、入力をすばやく確実に行なうための仕様となっている。
キーレイアウトで1つ気になったのは、HomeやEnd、Page Up/DownなどがFnキーと同時押しのテンキー部分に割り当てられているので、ここは少し慣れが必要かもしれない。もっとも、Fnキーを左右に用意しているので、右手だけでこれらのキーを操作することも可能だった。
USB 3.1 Type-Cなど充実のインターフェイス
インターフェイスは、左側面に電源、Gigabit Ethernet、Mini DisplayPort、HDMI、USB 3.1×2、USB 3.1 Type-C、オーディオを、右側面にカードリーダ、USB 3.1を設けている。USB 3.1に関しては、Type-Aのうちの1ポートとType-CがGen2対応で、残るType-Aの2ポートはGen1となる。
無線LAN機能はIEEE 802.11acに対応しており、アンテナは2×2構成。Bluetoothについては4.1対応、5.0対応と、仕様上の表記が分かれているが、これはOSのアップグレードによって5.0に対応するということのようだ。デバイスマネージャー上から確認すると、無線LANはIntel Wireless-AC 965Cとあり、おそらく「Wireless-AC 9650」と思われる。Wireless-AC 9650はIEEE 802.11acのWave 2に対応する無線LANカードであり、GL504GSのWebサイト上のスペックでもGigabit Wi-Fiの表記が確認できる。
重量は2.5kg。3kgを超えることもめずらしくないハイエンドゲーミングノートPCとしては軽く、部屋から部屋への移動はずいぶんラクだが、普段から持ち歩くモバイル用途には少し重いだろう。デスクトップ代替用途がマッチしている。
ただ、今回ASUSTeKは本製品のリリースにあわせ、ROGデザインのバックパックなども発表している。今回は「ROG Ranger BP1500 Gaming Backpack」がサンプルとして借りることができた。もちろんROG STRIX SCARII GL504GSも問題なく入る15.6型対応モデルだ。斜めに2分割されたデザインは、ROGノートPCと同じでヘアライン風の素材もマッチしている。下側左右には硬質素材のプロテクターがあり、ROGの雰囲気はバッチリだ。
6コアCPU&アッパーミドルGPUを採用。ストレージにもこだわりが……
ここまで内部スペックにふれてこなかったが、そこはハイエンドゲーミングノートPCである。CPUはCore i7-8750H。6コア12スレッドに対応した第8世代Coreプロセッサ。GPUはGeForce GTX 1070を搭載している。
GeForce GTX 1070はモバイル向けのもので、CUDAコアが2,048基とデスクトップ版よりも多く、クロックはデスクトップ版よりも引き下げられている。こうした仕様によりデスクトップ版よりも低い消費電力と発熱でに抑えつつ、同等クラスの性能を実現しているという。
いちおう、NVIDIAのモバイル向けGPUにはGeForce GTX 1080もあるので最上位ではない。性能が高いにこしたことはないが、本製品は3,840×2,160ドットパネルではなく1,920×1,080ドットパネルであり、GeForce GTX 1070であっても多くのタイトルを中~高画質設定で楽しむことが可能だ。
ここまで紹介したとおり、各所にこだわりのある製品なので、より上のGPUを採用して高価になりすぎることを嫌ったのかもしれない。
メモリは16GB。サポートされる上限であるDDR4-2666のDDR4 SDRAMを採用している。チップセットはIntel HM370だ。
ストレージ構成は少しユニークだ。CドライブにNVMe SSD(Kingston製)を採用している点はこのクラスの製品では一般的だが、DドライブはSeagateのFireCudaの2.5インチモデルを採用している。いわゆるSSHDで、メインはHDDだが、キャッシュとしてNANDフラッシュメモリを搭載し、低コスト大容量のHDDのまま転送速度の高速化を狙っている。
なお、今回紹介するGL504GS-I7G1070は上位モデルの扱いで、兄弟モデルにGeForce GTX 1060を搭載するGL504GM-I7G1060、GL504GM-I7H1S1ROが存在する。兄弟モデルでは合わせてストレージ容量なども変更があるので、予算や求める性能に合わせて検討していただきたい。
ほとんどのタイトルでもっとも高画質のプリセットを選んでも60fpsを超えている
それでは、今回の評価機によるベンチマークスコアを見ていこう。まずは「PCMark 10」、「3DMark」、「VRMark」、「CINEBENCH R15」といったソフトで基本性能をチェックした。
【表2】ベンチマーク結果1 | |
---|---|
PCMark 10 v1.1.1739 | |
Extended Score | 6,722 |
Essentials | 8,279 |
App Start-up Score | 8,589 |
Video Conferencing Score | 7,675 |
Web Browsing Score | 8,628 |
Productivity | 7,939 |
Spreadsheets Score | 9,932 |
Writing Score | 6,355 |
Digital Content Creation | 7,372 |
Photo Editing Score | 8,306 |
Rendering and Visualization Score | 9,201 |
Video Editing Score | 5,245 |
Gaming | 11,404 |
Fire Strike Graphics Score | 15,348 |
Fire Strike Physics Score | 16,548 |
Fire Strike Combined Score | 6,584 |
3DMark v2.5.5029 | |
TimeSpy Extreme | 2,464 |
TimeSpy Performance | 5,415 |
FireStrike Ultra | 3,870 |
FireStrike Extreme | 7,221 |
FireStrike Performance | 13,870 |
SkyDiver Performance | 35,622 |
CloudGate Performance | 36,895 |
IceStorm Unlimited | 176,450 |
IceStorm Extreme | 165,531 |
IceStorm Performance | 172,191 |
VRMark | |
Blue Room | 1,610 |
Cyan Room | 4,365 |
Orange Room | 8,420 |
CINEBENCH R15 | |
Rendering (Multiple CPU) | 1,223.42cb |
Rendering (Single CPU) | 172.93cb |
PCMark 10のスコアは、Extended Scoreで6,000ポイント台後半だ。Essentials、Productivity、Digital Content Creationといったシナリオのスコアを見ても、万能型のなんでもこなせるPCであることがわかる。
3DMarkはGeForce GTX 1070搭載なりのスコアだ。しかも6コアCPUを搭載しているためにCPU系テストの値がよく、Overallも引き上げられている。実際、CINEBENCH R15では4コアだった第7世代Coreと比べてマルチコア側が大幅に、シングルコア側も本製品の冷却性能が高いためか若干スコアが上がっている。
続いて、実際のゲームタイトルのビルトインベンチマークを試し、フレームレートを見ていこう。
利用したのは「Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands」、「Shadow of the Tomb Raider」、「Far Cry Primal」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「World of Tanks enCore」。World of Tanksを除き、解像度は1,920×1,080ドットで統一している。
【表4】ベンチマーク結果2 | |
---|---|
Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands | |
1,920×1,080ドット、「ウルトラ」画質 | 47.07fps |
1,920×1,080ドット、「非常に高い」画質 | 70.41fps |
1,920×1,080ドット、「高」画質 | 80.12fps |
1,920×1,080ドット、「中」画質 | 88.06fps |
1,920×1,080ドット、「低」画質 | 122.93fps |
Shadow of the Tomb Raider | |
1,920×1,080ドット、「最高」画質 | 69fps |
1,920×1,080ドット、「高」画質 | 78fps |
1,920×1,080ドット、「中」画質 | 79fps |
1,920×1,080ドット、「最低」画質 | 114fps |
Far Cry Primal | |
1,920×1,080ドット、「とても高い」画質 | 85fps |
1,920×1,080ドット、「高い」画質 | 100fps |
1,920×1,080ドット、「ノーマル」画質 | 118fps |
1,920×1,080ドット、「低い」画質 | 132fps |
World of Tanks enCore | |
超高品質(1,920×1,080ドット、TSSAA HQ) | 21,506 |
中品質(1,920×1,080ドット、AAなし) | 46,441 |
最低品質(1366×768ドット、AAなし) | 95,625 |
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク | |
1,920×1,080ドット、高品質 | 6,029(快適) |
1,920×1,080ドット、標準品質 | 7,817(快適) |
1,920×1,080ドット、軽量品質 | 10,186(とても快適) |
重量級のTom Clancy's Ghost Recon Wildlandsは、「ウルトラ」画質では60fpsを割り込んだが1つ下の「非常に高い」画質ならば超えている。Shadow of the Tomb Raiderは「「最高」画質、Far Cry Primalも「とても高い」画質と、それぞれのもっとも高い画質プリセットで60fpsを超えていた。そしてFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは、「高品質」で6,000ポイント台、快適評価を得られていた。
このように、最高画質を逃したものもあるが、多くのタイトルで最高~その1つ下の画質プリセットで十分なフレームレートが得られていた。中~低画質では100fpsを超えるため、144Hzの液晶パネルのスペックを活かすこともできる。滑らかな映像で敵をすばやく見つけることができれば優位に立ってゲームを進めることができるだろう。
いちおう、ゲームプレイ中はファンの回転をOverBoostに引き上げたほうがフレームレートが安定する印象だ。ファンノイズは大きくなるが、熱の心配が減るためおすすめする。
高価な点は否めないがゲーム体験では1つ上のグレードの製品だ
このように、本製品は高いデザイン性とともに、性能面では多くのタイトルが高画質で快適にプレイできるベンチマークスコアを示していた。
GeForce GTX 1070にとどまるため、より上位のGPUを搭載するモデルがある以上トップグレードではない。ただし、ここまで紹介したようにゲーミングPCとしての液晶スペック、キーボード、冷却、そしてSSHDなどの先進的スペックを備えている。その点で、ゲーム体験としてのハイエンド・ゲーミングノートPCであることは間違いない。
ゲーミングノートPCでは15~20万円ほどが人気のようだが、本製品は20万円台後半だ。ここまでこだわり抜いた製品であるため、同程度の製品と比べて高価であることは否めない。スペックがほぼ同等となれば、まず予算、そしてデザイン、機能にその価格分の価値があると納得できるかどうかだ。コストパフォーマンスや安さを条件に選ぶ方には難しいかもしれないが、よりよいゲーミング体験を求める方には魅力的なモデルと言えるだろう。