■元麻布春男の週刊PCホットライン■
かねてから予想されていた通り、IntelはCES 2011を翌日に控えたプレスデイにプレスカンファレンスを開催し、Sandy Bridgeという開発コード名で呼ばれてきた第2世代Core iプロセッサの発表を行なった。
当初このプレスカンファレンスは、現在クライアントPC向けプロセッサ全般を統括するムーリー・エデン副社長が行なうものと発表されていた。が、当日はエデン副社長に先立ってポール・オッテリーニCEOが挨拶に登壇し、Intelがこの新製品にかける思いをうかがわせた。予定ではビデオ出演だったらしい。
Sandy Bridge発表のプレスカンファレンスに参加したポール・オッテリーニCEO | 製品紹介を行なうムーリー・エデン副社長 |
そうした力の入れようを裏付けるように、発表された第2世代Core iプロセッサの総数は29にも上る。その内訳はデスクトップPC向けが14種、モバイルPC向けが15種。デスクトップPC向けについては表1に、モバイルPC向けについては表2に、概要をまとめておいた。表には1,000個ロット時の米国価格を入れておいたが、ここが空欄になっているモデルは、OEM専用(リテールパッケージが存在しない)と考えられる。
表1:今回発表されたデスクトップPC向けプロセッサ | |||||||||||||
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SKU名 | 開発コード名 | ソケット | CPUコア | 定格クロック | TurboBoost | L3キャッシュ | Hyper-Threading | サポートメモリ(最大) | グラフィックス(コアクロック) | TDP | 発表時期 | 備考 | US 1000個ロット時価格 |
通常版 | |||||||||||||
Core i7-2600K | Sandy Bridge | LGA1155 | クアッド | 3.40GHz | Max 3.8GHz | 8MB | あり | DDR3-1333 | HD Graphics 3000(Max 1350MHz) | 95W | 2010Q1 | AES-NI/AVX | 317ドル |
Core i7-2600 | Sandy Bridge | LGA1155 | クアッド | 3.40GHz | Max 3.8GHz | 8MB | あり | DDR3-1333 | HD Graphics 2000(Max 1350MHz) | 95W | 2010Q1 | AES-NI/vPro/AVX | 294ドル |
Core i5-2500K | Sandy Bridge | LGA1155 | クアッド | 3.30GHz | Max 3.7GHz | 6MB | なし | DDR3-1333 | HD Graphics 3000(Max 1100MHz) | 95W | 2010Q1 | AES-NI/AVX | 216ドル |
Core i5-2500 | Sandy Bridge | LGA1155 | クアッド | 3.30GHz | Max 3.7GHz | 6MB | なし | DDR3-1333 | HD Graphics 2000(Max 1100MHz) | 95W | 2010Q1 | AES-NI/vPro/AVX | 205ドル |
Core i5-2400 | Sandy Bridge | LGA1155 | クアッド | 3.10GHz | Max 3.4GHz | 6MB | なし | DDR3-1333 | HD Graphics 2000(Max 1100MHz) | 95W | 2010Q1 | AES-NI/vPro/AVX | 184ドル |
Core i5-2300 | Sandy Bridge | LGA1155 | クアッド | 2.80GHz | Max 3.1GHz | 6MB | なし | DDR3-1333 | HD Graphics 2000(Max 1100MHz) | 95W | 2010Q1 | AES-NI/AVX | 177ドル |
Core i3-2120 | Sandy Bridge | LGA1155 | デュアル | 3.30GHz | なし | 3MB | あり | DDR3-1333 | HD Graphics 2000(Max 1100MHz) | 65W | 2010Q1 | AVX | 138ドル |
Core i3-2100 | Sandy Bridge | LGA1155 | デュアル | 2.93GHz | なし | 3MB | あり | DDR3-1333 | HD Graphics 2000(Max 1100MHz) | 65W | 2010Q1 | AVX | 117ドル |
低消費電力版 | |||||||||||||
Core i7-2600S | Sandy Bridge | LGA1155 | クアッド | 2.80GHz | Max 3.8GHz | 8MB | あり | DDR3-1333 | HD Graphics 2000(Max 1350MHz) | 65W | 2010Q1 | AES-NI/vPro/AVX | |
Core i5-2500S | Sandy Bridge | LGA1155 | クアッド | 2.70GHz | Max 3.7GHz | 6MB | なし | DDR3-1333 | HD Graphics 2000(Max 1100MHz) | 65W | 2010Q1 | AES-NI/vPro/AVX | |
Core i5-2500T | Sandy Bridge | LGA1155 | クアッド | 2.30GHz | Max 3.3GHz | 6MB | なし | DDR3-1333 | HD Graphics 2000(Max 1250MHz) | 45W | 2010Q1 | AES-NI/vPro/AVX | |
Core i5-2400S | Sandy Bridge | LGA1155 | クアッド | 2.50GHz | Max 3.3GHz | 6MB | なし | DDR3-1333 | HD Graphics 2000(Max 1100MHz) | 65W | 2010Q1 | AES-NI/vPro/AVX | |
Core i5-2390T | Sandy Bridge | LGA1155 | デュアル | 2.7GHz | Max 3.5GHz | 3MB | あり | DDR3-1333 | HD Graphics 2000(Max 1100MHz) | 35W | 2010Q1 | AES-NI/vPro/AVX | |
Core i3-2100T | Sandy Bridge | LGA1155 | デュアル | 2.5GHz | なし | 3MB | あり | DDR3-1333 | HD Graphics 2000(Max 1100MHz) | 35W | 2010Q1 | AVX |
表2:今回発表されたノートPC向けプロセッサ | |||||||||||||
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通常電圧版 | |||||||||||||
Core i7-2920XM | Sandy Bridge | rPGA | クアッド | 2.50GHz | 3.50/3.40/3.20 | 8MB | あり | DDR3-1600 | HD Graphics 3000(650MHz/1300MHz) | 55W | 2011Q1 | AES-NI/TXT/AVX/VT | 1,096ドル |
Core i7-2820QM | Sandy Bridge | rPGA/BGA-1224 | クアッド | 2.30GHz | 3.40/3.30/3.10 | 8MB | あり | DDR3-1600 | HD Graphics 3000(650MHz/1300MHz) | 45W | 2011Q1 | AES-NI/TXT/AVX/VT | 568ドル |
Core i7-2720QM | Sandy Bridge | rPGA/BGA-1224 | クアッド | 2.20GHz | 3.30/3.20/3.00 | 6MB | あり | DDR3-1600 | HD Graphics 3000(650MHz/1300MHz) | 45W | 2011Q1 | AES-NI/TXT/AVX/VT | 378ドル |
Core i7-2620M | Sandy Bridge | rPGA/BGA | デュアル | 2.70GHz | 3.40/3.20 | 4MB | あり | DDR3-1333 | HD Graphics 3000(650MHz/1300MHz) | 35W | 2011Q1 | AES-NI/TXT/AVX/VT | 346ドル |
Core i5-2540M | Sandy Bridge | rPGA/BGA | デュアル | 2.60GHz | 3.30/3.10 | 3MB | あり | DDR3-1333 | HD Graphics 3000(650MHz/1300MHz) | 35W | 2011Q1 | AES-NI/TXT/AVX/VT | 266ドル |
Core i5-2520M | Sandy Bridge | rPGA/BGA | デュアル | 2.50GHz | 3.20/3.00 | 3MB | あり | DDR3-1333 | HD Graphics 3000(650MHz/1300MHz) | 35W | 2011Q1 | AES-NI/TXT/AVX/VT | 225ドル |
Core i7-2635QM | Sandy Bridge | BGA | クアッド | 2.00GHz | 2.90/2.80/2.60 | 6MB | あり | DDR3-1333 | HD Graphics 3000(650MHz/1200MHz) | 45W | 2011Q1 | AES-NI/TXT/AVX/VT | |
Core i7-2630QM | Sandy Bridge | rPGA | クアッド | 2.00GHz | 2.90/2.80/2.60 | 6MB | あり | DDR3-1333 | HD Graphics 3000(650MHz/1100MHz) | 45W | 2011Q1 | AES-NI/TXT/AVX/VT | |
Core i5-2410M | Sandy Bridge | rPGA/BGA | デュアル | 2.30GHz | 2.90/2.60 | 3MB | あり | DDR3-1333 | HD Graphics 3000(650MHz/1200MHz) | 35W | 2011Q1 | AVX/VT | |
Core i3-2310M | Sandy Bridge | rPGA/BGA | デュアル | 2.10GHz | なし | 3MB | あり | DDR3-1333 | HD Graphics 3000(650MHz/1100MHz) | 35W | 2011Q1 | AVX/VT | |
低電圧版相当 | |||||||||||||
Core i7-2649M | Sandy Bridge | BGA-1023 | デュアル | 2.30GHz | 3.20/2.90 | 4MB | あり | DDR3-1333 | HD Graphics 3000(500MHz/1100MHz) | 25W | 2011Q1 | AES-NI/TXT/AVX/VT | 346ドル |
Core i7-2629M | Sandy Bridge | BGA-1023 | デュアル | 2.10GHz | 3.00/2.70 | 4MB | あり | DDR3-1333 | HD Graphics 3000(500MHz/1100MHz) | 25W | 2011Q1 | AES-NI/TXT/AVX/VT | 311ドル |
超低電圧版相当 | |||||||||||||
Core i7-2657M | Sandy Bridge | BGA-1023 | デュアル | 1.60GHz | 2.70/2.40 | 4MB | あり | DDR3-1333 | HD Graphics 3000(350MHz/1000MHz) | 17W | 2011Q1 | AES-NI/TXT/AVX/VT | 317ドル |
Core i7-2617M | Sandy Bridge | BGA-1023 | デュアル | 1.50GHz | 2.60/2.30 | 4MB | あり | DDR3-1333 | HD Graphics 3000(350MHz/950MHz) | 17W | 2011Q1 | AES-NI/TXT/AVX/VT | 289ドル |
Core i5-2537M | Sandy Bridge | BGA-1023 | デュアル | 1.40GHz | 2.30/2.00 | 3MB | あり | DDR3-1333 | HD Graphics 3000(350MHz/900MHz) | 17W | 2011Q1 | AES-NI/TXT/AVX/VT | 250ドル |
ブランド別ではCore i7が13種と最多で、次がCore i5の12種、そしてCore i3が4種となっている。これらのうち、Core i3と一部のCore i5プロセッサは出荷が2月になるとされており、当初はCore i7中心のラインナップとなる。昨年、最初のグラフィックス統合CPUとして、Clarkdale/Arrandaleを発表した際には含まれていたPentiumブランドのプロセッサが含まれていないことも合わせ、今回の発表が上位ブランドにシフトしているような印象を与える。だが、これまでの場合も、新しいプロセッサは上位にまず投入され、徐々に下に降りてくるのが常だった。それを考えれば、不思議な話ではない。
さて、今回発表されたSandy Bridgeの大きな特徴は、クアッドコアプロセッサにグラフィックスが統合されたことだろう。これによりクアッドコアのメインストリーム化が一層進むものと期待される。特に、これまではデュアルコアが主体だったノートPCでも、15型クラスを中心に量販店モデルでもクアッドコアプロセッサを搭載したものが登場してくるハズだ。
一方、デスクトップPCでも、LGA1366ソケットを用いたハイエンドを除き、すべてがグラフィックス機能を内蔵したプロセッサとなる。しかも内蔵グラフィックスは外付けグラフィックスと共存できるから、使い道も増えそうだ。悩ましいのは、オーバークロックをサポートしたP67チップセットが、内蔵グラフィックスの出力をサポートしないことだろう。
その内蔵グラフィックスだが、Sandy Bridgeには2種類、「Intel HD Graphics 3000」と「Intel HD Graphics 2000」が用意される。両者の違いは3Dグラフィックスの実行ユニットが12個のHD Graphics 3000に対し、HD Graphics 2000は6個しか持っていない点である。デスクトップではプロセッサーナンバー末尾がKの、オーバークロック対応品(いわゆる倍率アンロック版)のみが3000を採用しており、高性能版という扱いとなっている。
それに対してモバイルPC向けの第2世代Core iプロセッサでは、すべてIntel HD Graphics 3000を採用しており、Intel HD Graphics 2000を採用したものはない(将来、下位ブランドのプロセッサでは採用されることになるかもしれないが)。その理由について、Intelのモバイル・プラットフォーム事業部PCクライアント・グループで、コンシューマー・クライアント・マーケティングのディレクターを務めるカレンジ・レジス氏に訊ねてみた。
消費電力が問題になることの多いモバイルPCでは、デスクトップPC以上に内蔵グラフィックスが利用される機会が多く、しかもデスクトップPCと違って、ユーザーによるアップグレード(グラフィックスカードの追加)が難しいため、最初からプラットフォームに高性能なグラフィックスを与えておく必要があるから、という答えが返ってきた。さらに付け加えるなら、クロックを上げるより実行ユニットの数を増やした方が、消費電力の点で有利であるということも理由としてあるそうだ。
Sandy Bridgeの内部ブロック構成 | モバイル向けのHuron Riverプラットフォームを構成するパーツ群 |
ちなみに、ハードウェアによるMPEG-2/H.264エンコードエンジンを中核とする「Intel Quick Sync Video」だが、この3Dグラフィックスの実行ユニットからは独立している。従って、Core i3、Core i5、Core i7で基本的に性能は変わらない。もちろん動画のエンコードは、フィルタリング処理やフレームレート変換など、CPUでの処理性能によっても大きく処理時間は変わってくるが、少なくともQuick Sync Videoを用いたエンコード(対応ソフトが必要)については、プロセッサブランドのグレードによる性能の違いはほとんどないと考えられる。
以前行なったエンコードテストで、Quick Sync Videはかなり有望な性能を示したが、その性能はCore i3プロセッサのユーザーも享受することが可能だ。こうしたIntelによるグラフィックス性能や機能の強化により、きっとAMDやNVIDIAも対抗策を打ち出してくるに違いない。
Sandy Bridgeの持つ特徴のうち、どうも紹介しにくいのがTurbo Boost 2.0だ。Turbo Boost自体は、前世代のCore iプロセッサから導入された機能で、熱や消費電力、動作クロック等に余裕がある場合、プロセッサを定格以上のクロックで駆動することにより、処理性能を引き上げる機能だ。Core i5以上のプロセッサがこの機能を搭載する。
Turbo Boost 2.0はその改良版であり、すべてのコアが動作している場合でもクロックの引き上げが行なわれる。さらに、前世代ではモバイルPC向けのみがグラフィックスクロックの引き上げを行なっていたが、Sandy BridgeではデスクトップPC向けのプロセッサでもグラフィックスのクロックを引き上げることが可能になった。
Turbo Boostは、クロックの引き上げという、処理性能に直結するパラメータにかかわるだけに、その効果は疑う余地がない。しかし、いつどんな時に、どちらのクロックがどれだけ引き上げられる、という具体的なガイドラインがないため、何となく紹介しにくく思ってしまう。
●明快になったデスクトップ用CPUのラインナップそれに対し、とても分かりやすく、紹介しやすくなったのが、デスクトップPC向けCore iプロセッサのラインナップだ。4ケタのプロセッサーナンバーは、分かりにくいような気もするが、基本となるCore i3、i5、i7の位置づけは相当に明快だ。クアッドコアでHyper-Threadingあり(最大同時8スレッド)がCore i7、クアッドコアでHyper-Threadingなし(最大同時4スレッド)がCore i5、デュアルコアでHyper-Threadingあり(最大同時4スレッド)がCore i3ということになる。
実はこのルールには1つだけ例外(デュアルコア+Hyper-ThreadingのCore i5 2390T)があるのだが、いずれにしてもCore iブランドであれば、4スレッド以上の同時処理能力を持つことが間違いない。おそらくPentiumやCeleronでは、デュアルコアであってもHyper-Threadingはサポートされないだろう。
このだいぶ分かりやすくなったデスクトップPC向けに比べると、モバイルPC向けはまだかなり複雑だ。モバイル向けのCore i7プロセッサは、クアッドコアが5つで、デュアルコアが5つ。Core i7だからクアッドコアとはとても言えない。
こうした複雑な事情になってしまうのは、モバイル向けには消費電力を極端に抑えたモデルが存在するから。以前は低電圧版、あるいは超低電圧版と呼ばれていたが、この第2世代Core iプロセッサからは、プロセッサー・ナンバーの末尾の数字が9なら低電圧版相当(TDP 25W)、同じく7なら超低電圧版相当と(TDP 17W)ということになった。実際、最近のプロセッサは、超低電圧版であろうと通常版であろうと、現実の動作電圧に大きな違いはなくなっていたから、「超低電圧版」という呼称が実態にそぐわなくなっていたのは事実。慣れるまでなかなかピンとこないとは思うが、こればっかりは慣れるしかなさそうだ。
今年のCESでIntelは、通常はあまり明らかにしないOEM専用を含めて、計29種のプロセッサーを一気に発表した。発表された製品は、2月にかけて順次出荷されることになる。昨年のCESで発表されたClarkdaleおよびArrandaleは合計で19種類だったから、それに比べてもだいぶ多い。それは、Sandy BridgeがClarkdale/Arrandaleだけでなく、それより前に発表されていたLynnfieldとClarksfieldの置き換えも行なうからだ。今回は発表されなかったPentiumブランドのSandy Bridgeも、そう遠くない時期にラインナップに追加されることになるだろう。