多和田新也のニューアイテム診断室

Intelの普及価格帯CPUを一新するSandy Bridgeこと「Core i7-2600K/i5-2500K」



 Intelは、これまでSandy Bridgeの開発コードネームで呼ばれていたCPU製品群を近く発表する。普及価格帯のCore i7/i5/i3の新シリーズとして登場する本製品群は、デスクトップにおいてはLGA1156プラットフォームから、LGA1155プラットフォームへの変革も伴う。正式発表に先立って、検証する機会を得たので、その結果を紹介していきたい。

●LGA1155ソケットを採用するプラットフォームへ移行

 今回テストに用いるのは、Core i7-2600K(以下i7-2600K)とCore i5-2500K(以下i5-2500K)である(写真1、2)。両製品の違いは、表1にまとめた通り。

【写真1】デスクトップ向けSandy Bridge「Core i7-2600K」【写真2】同「Core i5-2500K」

【表1】Core i7-2600K/i5-2500Kの主な仕様
 Core i7-2600KCore i5-2500K
コア数(スレッド数)4コア(8スレッド)4コア(4スレッド)
動作クロック(TB最大)3.4GHz(3.8GHz)3.3GHz(3.7GHz)
L1/L2データキャッシュ(コア当たり)32KB/256KB
L3キャッシュ8MB6MB
内蔵グラフィクスHD Graphics 3000HD Graphics 3000
内蔵グラフィックス最大クロック1,350MHz1,100MHz
TDP95W95W

 いずれもクアッドコアCPUであるが、Core i7-2600KはHyper-Threadingを有効化し8スレッドの同時実行が可能。ラストレベル(L3)キャッシュは8MB、内蔵GPUのクロックは最大で1,350MHzとなる。

 Core i5-2500KはHyper-Threadingが無効化された4コア/4スレッドの製品。ちょうど、従来のCore i5-700シリーズに似た仕組みを採用している。i7-2600Kとの仕様差は大きく、実行スレッド数、内蔵グラフィックスの動作クロック、L3キャッシュ容量がそれぞれ制限されており、Core i7とCore i5の位置付けの違いを感じさせる。

 ちなみに、“K”の文字が付与されることから分かる通り、両製品ともクロック倍率が解除されている。

 CPU-Zの表示からは、これらがD2ステッピングである点や、AVXのサポート、キャッシュ容量の違いなどを確認することができる(画面1、2)。また、後述のIntel P67 Expressチップセット搭載マザーボードで利用した際のBIOS画面からは、Turbo Boost時の倍率なども確認できる(画面3~6)。

【画面1】Core i7-2600KにおけるCPU-Zの結果【画面2】Core i5-2500KにおけるCPU-Zの結果【画面3】Core i7-2600K使用時のBIOSトップ画面
【画面4】Core i7-2600Kのオーバークロック設定画面。最大で100MHz×38まで上昇する【画面5】Core i5-2500K使用時のBIOSトップ画面【画面6】Core i5-2500Kのオーバークロック設定画面。最大で100MHz×37まで上昇する

 いずれもGPU内蔵CPUとなったことで、同じパッケージになっており、裏面も両製品とも同じ(写真3)。CPUの大きさはNehalem世代のCore iシリーズと変わりないが、ソケットはLGA1156からLGA1155へと変化。位置合わせに用いる切り欠きの位置は異なり、両ソケットに互換性はない(写真4、5)。

 ただしCPUクーラーは互換性がある。従来Extreme Editionに付属したサイドフロータイプのクーラーも対応可能だが、Core i7-2600K/Core i5-2500Kともに見慣れたトップフロータイプのクーラーが付属する(写真6、7)。サイドフロー型クーラーのバックパネルに、LGA1156のCPUに付属したクーラーを載せてみたものが写真8になるが、ご覧の通り穴の位置はぴったり収まっている。

 これはリテールクーラーよりも、サードパーティ製クーラーのサポートにおいて大きな意義を持つ。Sandy Bridgeは発表の時点で、CPUクーラーについて多くの選択肢があるわけだ。

【写真3】Core i7-2600K(左)とCore i5-2500K(右)の裏面。パッケージは同じと判断してよさそうだ【写真4】Nehalem世代CPUと裏面を比較したもの。左からCore i7-2600K、Core i7-875K、Core i5-661。切り欠きの位置の違いにも注目【写真5】LGA1155とLGA1156のソケット側の比較。CPUの切り欠きと位置を合わせる突起の位置が異なることが分かる
【写真6】従来のExtreme Editionなどに付属したサイドフロータイプのクーラー。Sandy Bridgeにも対応【写真7】Core i5-2500Kに付属のCPUクーラーは、おなじみの形状をしたトップフロータイプ【写真8】写真6で示したクーラーのバックパネルに、LGA1156用のクーラーを載せてみたところ。穴の位置がぴったり同じであることが分かる

【お詫びと訂正】初出時、Core i7-2600Kにサイドフロータイプのクーラーが付属すると記載しておりましたが、正しくはトップフロータイプが付属します。訂正してお詫びいたします。

 ちなみに、先のCPU-Zの表示でBus Speedが100MHzになっていることが分かると思う。Nehalem世代のCore iシリーズでは、CPUとメモリには133MHz、PCI ExpressやDMI、FDIには100MHzのベースクロックを供給し、そこから各種クロックを生成していた。Sandy Bridgeでは、これらのクロックソースは1つになり、いずれも100MHzのベースクロックから生成されることになる(図1)。これは特にオーバークロックを検討しているユーザーには重要なポイントになるだろう。

【図1】Sandy Bridgeのデータシートより。BCLKは100MHzのみで、ここからすべてのクロックを生成していることが分かる

●チップセットはIntel 6シリーズへ

 Sandy Bridge世代では、チップセットもNehalem世代のIntel 5シリーズから、Intel 6シリーズへと変更される。デスクトップ向けのコンシューマ用チップセットは、Intel P67 ExpressとIntel H67 Expressの2モデル。ブロックダイヤグラムを図2と図3に示す。

【図2】Intel P67のブロックダイヤグラム
【図3】Intel H67のブロックダイヤグラム

 「Cougar Point」の開発コードネームを持つIntel 6シリーズは、Intel 5シリーズと同様に、過去のサウスブリッジで提供されたI/O機能が中心となる。Intel 5シリーズとの違いは、6ポートのSATAの内2ポートが6Gbps転送に対応した点。

 また、SATAの高速化に適応させる必要もあってCPU-チップセットを結ぶDMIが倍速化。レーン当たり上下5Gbit/sec(500MB/sec)、4レーンで、20Gbit/secの帯域幅を持つものとなった。

 Intel P67とIntel H67の違いはIntel 5シリーズのときと同様。前者はパフォーマンス向けモデルという位置付けで、PCI Express x8×2スロットによるCrossFireやNVIDIA SLIをサポートできるのが特徴。後者はCPU内蔵グラフィックスの映像出力端子を提供するため、CPUとチップセット間を結ぶFDI(Flexible Display Interface)を持つ製品となる。

 今回使用したマザーボードは、Intel P67搭載の「DP67BG」(写真9~13)と、Intel H67搭載の「DH67BL」(写真14~16)である。

 DP67BGは、基板上に頭蓋骨が描かれたエクストリームユーザー向けの製品だ。チップセット内蔵のSATA×6基のほかに、I/OリアパネルのeSATA用にMervellのコントローラを備える。また各種オンボードLEDやCMOSクリアスイッチ、電源/リセットスイッチ、POSTコード表示LEDなど、ギミックを凝らした製品となっている。

 Intel DH67BLはmicroATXのシンプルな製品だ。こちらもI/OリアパネルにeSATAを1基備えるが、これはチップセット内蔵の6基のうち、3Gbps対応の1基を利用している。

 両製品共通の特徴としては、ルネサスエレクトロニクスのコントローラによるUSB 3.0ポートと、PCIスロットを備える点が挙げられる。特に後者は気になるポイントだ。Intel 6シリーズではチップセットにPCIを内蔵していない。そのため、DP67BGではIDTの「89HPEB383」、DH67BLではITE「IT8892E」という、PCI Express-PCIブリッジを用いている。Intel純正マザーですらブリッジチップを追加してPCIの提供を行なう状況というわけで、少しいびつな状況という印象は受ける。Intelでもマザーボード製品としてはPCIは必要と考えて提供しているのだろう。PCIサポートの取りやめは、時期尚早なのかも知れない。

【写真9】DP67BG。Intel P67を搭載するエクストリームユーザー向けの製品で、ボード上の頭蓋骨のデザインが特徴。PCI Express x16スロットは2基備えており、AMD CrossFireおよびNVIDIA SLIをサポートしている【写真10】DP67BGのI/Oリアパネル。USBはここに8基、ヘッダピンで6基分用意される。CMOSクリアスイッチを備えるのもハイエンドユーザー向けらしい点だ【写真11】SATAは黒いコネクタが3Gbps対応、青いコネクタが6Gbps対応。すべてチップセット側コントローラによるものだが、I/OリアパネルのeSATAは別途Mervellのコントローラにより提供されている
【写真12】ボード最下部にはパーツごとの状態表示LEDを装備。各パーツが正常に初期化を完了した際に緑色に光る【写真13】POSTコード表示LEDや電源/リセットスイッチもオンボード搭載している【写真14】DH67BLは、Intel H67を搭載するmicroATXマザーボード。標準的なデザインの製品になっている
【写真15】I/Oリアパネル部。ディスプレイ出力はDVI-IとHDMI。DVI-Iなので変換コネクタを介してのアナログ出力は可能。DisplayPortは備えていない【写真16】オンボード上のSATAコネクタは5基。うち1基はパネルへの出力を考慮して赤色になっている。チップセットの残り1基はI/OリアパネルのeSATAに使われている

●Intel P67上でのシステム性能ベンチマーク

 それでは、ベンチマーク結果の紹介に移りたい。テスト環境は表2に示した通りで、まずはIntel P67とビデオカードを用いた環境で、CPUやメモリ、各種アプリケーション性能をチェックしていきたい。

 比較対象はLynnfieldコアの4コア/8スレッド製品であるCore i7-875K、4コア/4コア製品であるCore i5-750。AMDからは同価格帯の製品となる6コア製品のPhenom II X6 1100Tを用意した。

【表2】テスト環境
CPUCore i7-2600K
Core i5-2500K
Core i7-875K
Core i5-750
Phenom II X6 1100T
チップセットIntel P67 ExpressIntel P55 ExpressAMD 785G+SB710
マザーボードIntel DP67BGASUSTeK P7P55D-E EVOASUSTeK M4A785TD-V EVO
メモリDDR3-1333(2GB×2/9-9-9-24)
グラフィックス(ドライバ)GeForce GTX 580(GeForce Driver 263.09)
ストレージSeagete Barracuda 7200.12 (ST3500418AS×2台,RAID0)
電源KEIAN KT-1200GTS
OSWindows 7 Ultimate x64

 では、まずはCPU性能のチェックから行なっていく。テストは、「Sandra 2011b」のProcessor Benchmark(グラフ1)、「PassMark Performance Test 7」のCPU Test(グラフ2)、「PCMark05」のCPUテスト(グラフ3、4)、Sandra 2011bの「Cryptography」(グラフ5)。グラフ5中で※印を付けたデータは、Sandraにおいて他環境と異なるGB/secで結果出力がされたため、便宜的に1,000倍した数値を示している。

 SandraやPassMarkでは8スレッドがフルに回るテストが多いこともあって、i7-2600Kやi7-875Kの結果が良好である点が目立つ。浮動小数点のテストにおいてはPhenom II X6 1100Tも健闘を見せるものの、i7-2600Kが一歩上回る格好になっている。

 一方、PCMark05の4タスク同時実行テストにおいては、i5-2500Kがi7-2600Kを上回っており、Hyper-Threadingのオーバーヘッドによって逆転した格好になった。このあたり、使い方や利用アプリによってはHyper-Threadingがないモデルでも上位モデルを脅かす性能を見せる可能性があることを示唆している。

 Cryptgraphyの結果においてはAES暗号化処理でSandy Bridge製品が飛び抜けたスコアとなった。この理由は単純で、AES-NIが実装されたことによる。AES-NIはClarkdaleなどで採用されているWestmereコアでは実装されているものの、Core i7-800シリーズやCore i5-700シリーズのLynnfieldコアには実装されていない。言い換えると、この機能が4コアの普及価格帯製品にも初めての実装されるわけである。

【グラフ1】Sandra 2011b (Processor Arithmetic/Multi-Media Benchmark)
【グラフ2】PassMark Performance Test 7 (CPU Test)
【グラフ3】PCMark05 Build 1.2.0 (CPU Test - シングルタスク)
【グラフ4】PCMark05 Build 1.2.0 (CPU Test - マルチタスク)
【グラフ5】Sandra 2011b (Cryptography)

 さて、Sandy Bridgeの特徴の1つに、256bitベクトル演算を可能にするAVXの搭載が挙げられる。AVXはWindows 7 Service Pack 1から利用可能になるため、先述のグラフ1~5の結果には反映されていない。そこで、Windows 7 SP1 RCを適用した環境で、AVXをサポートするSandra 2011bを実行した結果をグラフ6、7に示す(グラフ7中の※印は先と同じく単位を揃えるために1,000倍した数値である)。あくまでRC版上での結果であるため、製品版では異なる結果になる可能性がある点はご了承いただきたい。

 はっきりとした効果が見られたのはMulti-Media Benchmarkの浮動小数点演算である。倍とまではいかないが、それに近い数値を出している。それに比べると整数演算では効果が薄いことが見てとれる。またSHA256のハッシュ生成においても多少の効果がでている。このあたり、AVXを活用するアプリケーションがどの程度現れるか次第ではあるが、可能性を感じさせる興味深い結果となっている。

【グラフ6】Sandra 2011b (Multi-Media Benchmark)
【グラフ7】Sandra 2011b (Cryptography - SHA256 Hashing Bandwidth)

 続いては、メモリ周りの性能チェックである。テストは、Sandra 2011bのMemory Bandwidth Benchmark(グラフ8)、Cache & Memory Benchmark(グラフ9)、Memory Latency Benchmark(表3)、PCMark05のMemory Test(グラフ10、11)だ。

 PCMark05のMemory Test(16MBブロック転送)の結果はHyper-Threadingの悪影響が色濃い結果になっているが、全般にはSandy Bridge両製品の実効メモリアクセス速度は良好と見ていいだろう。SandraのMemory Bandwidthに対するCache & Memory Benchmarkの実効速度はLynnfieldに比べて良化しているほか、メモリレイテンシも下がっている。Lynnfieldのメモリコントローラも元々良好な素行であったが、より良くなっている。

 一方、キャッシュに関しては、L1/L2キャッシュが伸び悩んでいる印象を受ける。クロック上昇分があるので、i7-875Kやi5-750に比べて絶対性能は向上しているが、レイテンシはむしろサイクル数が増したことが表3から分かる。

 対して、ラストレベル(L3)キャッシュはレイテンシが改善されており、実効速度でもi7-2600Kがi7-875Kに対して3倍という数値になっている。こちらは大幅な性能向上といって差し支えないだろう。

【グラフ8】Sandra 2011b (Memory Bandwidth)
【グラフ9】Sandra 2011b (Cache & Memory Benchmark)
【グラフ10】PCMark05 Build 1.2.0 (Memory Test)
【グラフ11】PCMark05 Build 1.2.0 (Memory Test - Memory latency)

【表3】Sandra 2011b Memory Latency Benchmarkの結果詳細
Random Accessi7-2600Ki5-2500Ki7-875Ki5-750X6 1100T
1kB1.1ns/3.8clocks1.1ns/3.7clocks1.2ns/3.6clocks1.4ns/3.6clocks0.8ns/2.8clocks
4kB1.1ns/3.7clocks1.1ns/3.7clocks1.2ns/3.6clocks1.3ns/3.5clocks0.8ns/2.8clocks
16kB1.1ns/3.8clocks1.1ns/3.7clocks1.2ns/3.6clocks1.3ns/3.6clocks0.8ns/2.8clocks
64kB3.3ns/11.3clocks3.4ns/11.2clocks3.0ns/8.9clocks3.3ns/8.9clocks0.8ns/2.8clocks
256kB3.3ns/11.3clocks3.9ns/12.9clocks3.1ns/9.2clocks3.4ns/9.1clocks4.3ns/14.3clocks
1MB9.6ns/32.6clocks9.8ns/32.3clocks15.6ns/46.0clocks17.3ns/46.3clocks17.1ns/56.7clocks
4MB11.5ns/39.0clocks15.0ns/49.6clocks17.7ns/52.1clocks19.5ns/52.2clocks22.5ns/74.7clocks
16MB68.9ns/234.3clocks69.7ns/229.9clocks72.2ns/212.3clocks75.4ns/201.8clocks74.0ns/245.4clocks
64MB72.3ns/245.8clocks72.3ns/238.7clocks76.4ns/224.8clocks80.2ns/214.6clocks79.6ns/263.9clocks
Linear Accessi7-2600Ki5-2500Ki7-875Ki5-750X6 1100T
1kB1.1ns/3.7clocks1.1ns/3.7clocks1.2ns/3.6clocks1.3ns/3.6clocks0.8ns/2.8clocks
4kB1.1ns/3.8clocks1.1ns/3.7clocks1.2ns/3.6clocks1.3ns/3.6clocks0.8ns/2.8clocks
16kB1.1ns/3.8clocks1.1ns/3.7clocks1.2ns/3.6clocks1.3ns/3.5clocks0.8ns/2.8clocks
64kB3.4ns/11.7clocks3.5ns/11.6clocks3.0ns/8.9clocks3.4ns/9.0clocks0.8ns/2.8clocks
256kB3.5ns/11.8clocks3.5ns/11.6clocks3.1ns/9.1clocks3.4ns/9.1clocks2.6ns/8.5clocks
1MB3.7ns/12.6clocks3.8ns/12.5clocks3.7ns/10.9clocks4.0ns/10.8clocks7.9ns/26.1clocks
4MB3.8ns/12.9clocks4.3ns/14.0clocks3.8ns/11.0clocks4.1ns/11.0clocks8.0ns/26.6clocks
16MB6.3ns/21.3clocks6.3ns/20.9clocks8.9ns/26.0clocks9.4ns/25.2clocks13.0ns/43.2clocks
64MB6.3ns/21.3clocks6.3ns/20.9clocks8.8ns/26.0clocks9.4ns/25.1clocks13.1ns/43.4clocks

 ここからは実際のアプリケーションを用いたベンチマークテストである。テストは「SYSmark 2007 Preview」(グラフ12)、「PCMark Vantage」(グラフ13)、「CineBench R11.5」(グラフ14)、「ProShow Gold」(グラフ15)、「TMPGEnc 4.0 XPressによる動画エンコード」(グラフ16)である。

 ざっくり見て、i7-2600Kのスコアの高さが目立つ。一方で、i5-2500Kも健闘しており、4コア/8スレッドのi7-875Kと同等以上のスコアを出しているシーンが多い。4コア/4スレッドというi5-2500Kではあるが、このクラスでも前世代のメインストリーム最上位に匹敵できる性能をもってきたことになる。

 また、6コア製品のPhenom II X6 1100Tと比較してもi7-2600Kの良さは発揮されているし、i5-2500Kも多くのテストで上回れている。リアル6コアに対する優位性が見てとれるのもポイントといえる。

【グラフ12】SYSmark 2007 Preview 1.06
【グラフ13】PCMark Vantage Build 1.0.2
【グラフ14】CineBench R11.5
【グラフ15】ProShow Gold 4.51 (写真50枚のスライドショーを作成)
【グラフ16】TMPGEnc 4.0 XPress (Ver.4.7.8.309) による動画エンコード

 次に3D関連のベンチマークテストである。テストは、「3DMark11」(グラフ17、18)、「3DMark Vantage」(グラフ19、20)、「Crysis Warhead」(グラフ21)、「Far Cry 2」(グラフ22)、「Lost Planet 2 Benchmark」(グラフ23)、「Tom Clancy's H.A.W.X.2 Benchmark」(グラフ24)だ。描画クオリティはいずれも設定可能な最高クオリティに指定している。

 相対的にCPU依存度が増す低解像度の結果が特に参考になるかと思う。もともとLynnfield世代においてもCoreシリーズのゲーム性能は、Phenomを上回っていたが、Sandy Bridgeではそれが強まった印象を受ける。

 3DMarkシリーズのCPUテストのように、スレッド数がものをいうテストにおいては、i7-875Kの良さも見られるが、実際のゲームタイトルを用いたテストにおいてはi5-2500Kがi7-875Kを上回る傾向にある。ゲームをメインユースとする層にとっても魅力あるCPUといえるだろう。

【グラフ17】3DMark 11 Version 1.0.1 (Physics Score)
【グラフ18】3DMark 11 Version 1.0.1 (Graphics Score)
【グラフ19】3DMark Vantage Build 1.0.2 (CPU Score)
【グラフ20】3DMark Vantage Build 1.0.2 (Graphics Score - Extremeプリセット)
【グラフ21】Crysis Warhead Patch 1.1
【グラフ22】Far Cry 2 Patch 1.03
【グラフ23】Lost Planet 2 Benchmark
【グラフ24】Tom Clancy's H.A.W.X.2 Benchmark

 システム性能ベンチマークの最後は、消費電力の測定である(グラフ25)。ここもSandy Bridgeの良さが出ている。アイドル時、ロード時ともにLynnfield世代のCore i7/i5より抑制されている。Phenom II X6 1100TはLynnfieldに近い消費電力だ。

 i7-2600Kとi5-2500Kでは前者がロード時に20W程度高い結果。その差は8%程度と、クロック差を上回る違いが出ており、L3キャッシュ容量差やHyper-Theadingの有効化の影響もあることが分かる。

【グラフ25】各システムの消費電力

●Intel H67上での内蔵グラフィックス性能ベンチマーク

 続いて、Intel H67と組み合わせた際の内蔵グラフィックスの性能をチェックしてみたい。テスト環境は表4の通りで、先の環境とは大きく異なるので注意されたい。

 比較対象にはClarkdaleコアの製品でGPUクロックが高く設定されているCore i5-661、NVIDIAのFermiアーキテクチャ現行最廉価モデルのGeForce GT 430を据えている。GeForce GT 430はi7-2600K環境と組み合わせてテストしている。

 なお、Sandy Bridgeの内蔵グラフィックスはDirectX10.1サポートとなるため、ここで扱うベンチマークソフトもDirectX 10.1以前のタイトルとなる。また、描画クオリティをやや下げている。

 冒頭でも述べた通り、i7-2600K、i5-2500KともにIntel HD Graphics 3000を搭載するが、前者は最大クロックが1,350MHz、後者は1,100MHzとなる。Core i5-661の内蔵グラフィックスであるIntel HD Graphicsは、EU(Execution Units)数は12とHD Ggraphics 3000と同数だが、GPUクロックは900MHzとなる。

【表4】テスト環境
CPUCore i7-2600K
Core i5-2500K
Core i5-661
チップセットIntel H67 ExpressIntel Q57 Express
マザーボードIntel DH67BLIntel DQ57TM
メモリDDR3-1333(1GB×4/9-9-9-24)
グラフィックス機能
(ドライバ)
Intel HD Graphics 3000(Ver. 8.15.10.2266)
GeForce GT 430(GeForce Driver 260.99)
Intel HD Graphics
(Ver. 15.17.10.64.2189)
ストレージSeagete Barracuda 7200.12 (ST3500418AS)
電源CoolerMaster RealPowerPro 1000W
OSWindows 7 Ultimate x64

 では3D関連のベンチマーク結果から紹介したい。テストは、「3DMark Vantage」(グラフ26)、「3DMark06」(グラフ27)、「BIOHAZZARD 5 Benchmark」(グラフ28)、「FINAL FANTASY XI for Windowsオフィシャルベンチマークソフト3」(グラフ29)、「Left 4 Dead 2」(グラフ30)、「モンスターハンターフロンティア(MHF)オンラインベンチマークソフト絆」(グラフ31)、「Unreal Tournament 3」(グラフ32)である。MHFオンラインベンチマークはGeForce GT 430において1,680×1,050ドットの指定ができなかったためテストを省略している。

 i7-2600Kはi5-661に対して4倍以上のスコアを出しているテストもあるほどで、かなりの性能向上を見てとれる。GPUクロックが低いi5-2500Kもi5-661に対して倍近くのスコアを出しているテストが多い。クロック差だけで生まれている差ではないのは明らかで、GPUコアの改善が功を奏していることがわかる。

 一方、GeForce GT 430に比べるとまだまだ差は大きい。GTのモデル名を持つビデオカードであり、最廉価モデルとはいってもローエンド製品としては高い性能を持つGeForce GT 430が相手では、少々分が悪いようだ。

 総合的な評価として、1,024×768ドットぐらいで負荷の軽いオンラインゲームなどは楽しめるレベルにありそうだが、現在の液晶ディスプレイの主流である1,680×1,050ドット以上の解像度ではちょっと厳しそうな印象は受ける。

 それでも、Clarkdaleからの性能の伸びが非常に大きいことは好印象で、これまで性能の低さが目立っていたIntel製の統合型グラフィックスが壁を破ったことは確かだろう。

【グラフ26】3DMark Vantage Build 1.0.2 (Graphics Score - Performanceプリセット)
【グラフ27】3DMark06 Build 1.2.0 (Game test)
【グラフ28】BIOHAZZARD 5 Benchmark (DX10モード / Medium設定 / モーションブラー無効)
【グラフ29】FINAL FANTASY XI for Windowsオフィシャルベンチマークソフト 3 (Highモード)
【グラフ30】Left 4 Dead 2 (Medium設定)
【グラフ31】モンスターハンター フロンティア オンライン ベンチマークソフト「絆」
【グラフ32】Unreal Tournament 3 Patch 2.1 (Low設定)

 また、この内蔵グラフィックスはGPGPUへの対応と、エンコードアクセラレーションを含むメディアエンジンの実装も大きな特徴だ。Intel HD Graphics 3000/2000を用いた動画エンコードは、Intelが提供するMedia SDKを用いることで実装できるとアピールしている。実際、サイバーリンク、アークソフト、コーレル、ペガシスといった動画関連アプリケーションを販売す るメーカーが対応を表明しており、早期に対応されることが見込まれている。

 ここでは、MediaShow Espresso 6(グラフ33)と、TMPGEnc Video Mastering Works 5 体験版(グラフ34)を用いて、その性能をチェックしてみたい。テスト環境はGPGPU処理が可能なi7-2600K/i5-2500K、GeForce GT 430のみを対象とした。

 MediaShow Espresso 6はデコード、エンコードそれぞれでハードウェアアクセラレーションを用いるか指定することができる(画面7)。それぞれの設定でどのような変化があるかも見てみたい。テストでは1,920×1,080ドットのMPEG-2ファイルを、13Mbpsの1,920×1,080ドットのMP4ファイルへエンコードしている。

 TMPGEnc Video Mastering Works 5 体験版は、MP4ファイル出力設定に内蔵のソフトウェア処理エンジンであるx264エンコーダを用いるか、Intel Media SDKやCUDAを用いるかを指定することができる(画面8)。ここではx264エンコーダと、各ハードウェア処理時の性能を比較する。テストでは1,920×1,080ドットのMPEG-2ファイルを、10Mbpsの1,920×1,080ドットのMP4ファイルへエンコードしている。

【画面7】MediaShow Espresso 6では、エンコード/デコードそれぞれでGPUアクセラレーションの設定を行なえる。ハードウェアを自動的に認識して有効にできる項目が決められるので、ユーザーが意識しなければならないことは少ない【画面8】TMPGEnc Video Mastering Works 5 体験版はエンコーダを指定することでGPUアクセラレーションを有効にできる。Intel Media SDKについては他の設定は不要。CUDAは、環境設定でCUDAを有効化しておくと、このメニューからCUDAのエンコーダを指定できるようになる

 結果は、Intel HD Graphics 3000のハードウェアアクセラレーションがかなり有効に作用していることが分かる。MediaShow Espresso 6ではデコードのみをGPU処理とした場合は、ソフトウェア処理時と大した差ない一方で、エンコード/デコードともGPU処理させた時は、エンコードのみをGPU処理した時以上の差が生まれる。GPU内のメディアエンジンとEUを効率良く使えているということであろう。また、MediaShow Espressoにおいてはi5-2500KでもCUDA使用のGeForce GT 430を上回る速度でエンコードを終えることができるのもポイントだ。

 TMPGEnc Video Mastering Works 5 体験版は、MediaShow Espressoに比べて速度は遅いが、GPU使用によって倍以上の速度を発揮している。ただ、Intel HD Gprahics 3000使用時とGeForce GT 430使用時の差は小さい。こちらのアプリケーションにおいては、ローエンドクラスのGPU環境において、GPUによるエンコード速度向上の恩恵はあるが、GPUの違いによる差は小さいという結論になる。

【グラフ33】MediaShow Espresso 6 (Ver.6.0.1102_32247a) による動画エンコード
【グラフ34】TMPGEnc Video Mastering Works 5 体験版 (Ver.5.0.1.19) による動画エンコード

 最後に各システムの消費電力測定の結果である(グラフ35)。追加ビデオカードとなるGeForce GT 430環境は当然のように頭ひとつ抜け出している。一方、シェーダ負荷の大きい3DMark Vantageにおいてi7-2600Kがやや大きめの消費電力になっているが、Core i7/i5間の差は小さい。

 これは、同等に近い消費電力で、倍以上の3D性能を発揮しているということを意味する。グラフィックス処理における電力効率の良化も、Nehalem世代からSandy Bridge世代への移行によって得られる恩恵の1つといえるだろう。

【グラフ35】各システムの消費電力

●弱点が極めて少ないCPU、マザーボードが悩みの種か

 以上の通り、Sandy Bridge製品のベンチマークテストを実施してきた。結論として、性能、消費電力の両面で既存製品を上回るポテンシャルを持っている。

 ただ、今回のテスト対象としたKモデルの価格を考えると、少なくとも自作ユーザーについては無印モデルは眼中になくなるかも知れない。i7-875K同様に、最上位とはいっても、最上位モデルのプレミアはわずかで、普及価格帯に収まるレンジで登場する見込みだからだ。登場時のCore i7-860やPhenom II X6は高い価格性能比に驚いたが、今回はそれ以上の価格性能比を持っているといっても差し支えないレベルだ。

 むしろ、悩ましいというか、不安を覚えるのはマザーボードのラインナップだ。CrossFireやSLIを導入するユーザーならIntel P67のみが選択肢になるので、こちらについては問題はない。一方、なかなかの性能を持ち、GPGPUにも対応した内蔵グラフィックスを利用する場合にはIntel H67が選択肢となるわけだが、ここに問題があると考える。

 これまで以上に多くのユーザーが内蔵グラフィックスで十分と考えるであろう新CPUに組み合わせるマザーボード選びにおいて、従来の統合型グラフィックス向け製品の枠に収まる製品の仕様では満足できない人も増えると思われるからだ。具体的には、microATXでは拡張性が不足だったり、VRM周りの仕様が充実した製品がIntel P67でしかリリースされない、といったことが考えるられる。

 Sandy Bridge内蔵グラフィックスの性能について、事あるごとに自信を見せてきたIntelは、率先してDP67BGに近い仕様のIntel H67搭載マザーをリリースすべきだと思うし、他のマザーボードベンダーからもIntel H67を搭載したハイエンド寄りの製品のラインナップを充実させてほしいと思う。

 ハイエンドユーザも統合グラフィックスを使うのではないか、という見解は少々飛躍した考え方に感じられるかも知れないが、そうした選択肢もあり得ると思うほど、内蔵グラフィックスは良い仕上がりになっている。

 Core i7-2600K/i5-2500Kは、高いレベルでバランスが取れており、多くのユーザーに高い満足をもたらす製品となるだろう。