■元麻布春男の週刊PCホットライン■
MacBook |
何かと変更点の多かったiMacに比べると、他の2機種、MacBookとMac miniに関しては、ハードウェアそのものに対する驚きは少ないかもしれない。しかし、ポリカーボネートを用いた白いMacBookはもちろん、Mac miniの一部も筐体に手が入っており、単なるマイナーチェンジではない。
まずMacBookだが、筐体が白いポリカーボネイト樹脂製であることは同じ。違うのは、筐体の端の丸みを強めたデザイン変更と、底面に切り欠きのない、ユニボディ構造になっていることだ。ユニボディ構造にすることでおそらく軽量化が図られたほか、Appleは筐体強度の増加とバッテリの大容量化のメリットを挙げている。
新MacBookはカタログスペック上、重量が140gほど軽くなり、バッテリ駆動時間も、旧モデルの5時間から7時間(いずれもワイヤレス環境)に伸びた。一方で、ユーザーによるバッテリの交換ができなくなったのは残念だが、このところのApple製ノートPCのトレンドを見ると、予期されたことと言えるかもしれない。
CPUは、従来通りIntel製のCore 2 Duo。クロックがちょっぴり向上したほかは同じだ。チップセットも引き続きNVIDIAのGeForce 9400Mだが、組み合わせるメモリがDDR2からDDR3に変更されている。ストレージ回りも若干の容量アップを除くと、大きく変わっていない。ネットワーク関係も無線LANがドラフトn対応から、正規のn対応になったくらいだ。これはドラフトが正規規格となったので呼称が変わっただけだろう。細かいところを見ると、入力と出力が分離していたオーディオジャックが、新MacBookでは現行MacBook Proと同じ入出力ジャックになったことに気づく。
ユニボディ化により底面も一体となった | インターフェイス部分が見える側面 |
逆に変更があったのはFireWire 400(IEEE 1394a)がなくなったことで、もはや古いMacからの引っ越しに高速なFireWireを使うことはできない。MacBook Proに採用されたSDカードスロットが、MacBookでは省略されているのも、クビをかしげるところかもしれない。
もう1つ変わったのはディスプレイ出力で、これまでのMini DVIがMini DisplayPortに変更された。Mini DisplayPortは、純正の24型Apple LED Cinema Displayを接続するには都合が良いが、世間一般にはあまり普及していないため、注意が必要になる。普及したアナログRGB(VGA)やDVI-Dに対応したディスプレイやプロジェクターに接続する場合は、それぞれの規格に対応したアダプタ(別売)が欠かせない。
筆者的に今回のモデルチェンジが意外だったのは、MacBookのラインが相変わらず1系統だったことだ。Mac miniもそうだが、たいていのモデルでは筐体は同じで、多少スペックの違う複数モデルが設定されていることが多い。CTOでも実質的にメモリ容量とHDD容量程度しか選択肢は用意されていない。にもかかわらず複数モデル展開をしないということは、やはり教育市場等を睨んだ決め打ちモデルである、ということなのだろうか。
今回発表されたMacBook、1世代前のMacBook、そして6月に発表された13型のMacBook Proを比べてみると、MacBook Proとの差が非常に小さくなったことに気づく。違いはFW800の有無と、筐体の素材(ポリカーボネイト対アルミニウム)、そして2万円の価格差だ。重量差もあるにはあるが、100gとは違わない。これだけスペックが近くなると、逆にそろそろMacBook Proのモデルチェンジが気になってくる。ただ、この価格帯ではコスト的に外付けグラフィックスは難しい。やはりCPUにグラフィックス機能を統合したArrandaleのタイミング(2010年1月)、ということになりそうだ。
表1:新旧MacBookの比較 | |||
型番 | 新MacBook (MC207J/A) | 旧MacBook (MC240J/A) | MacBook Pro(MB990J/A) |
発表日 | 2009年10月21日 | 2009年5月28日 | 2009年6月9日 |
希望小売価格 | 98,800円 | 108,800円 | 118,800円 (発表時134,800円) |
CPU | Core 2 Duo 2.26GHz | Core 2 Duo 2.13GHz | Core 2 Duo 2.26GHz |
L2/FSB | 3MB/1066MHz | ← | ← |
メモリ(最大) | 2GB PC3-8500(4GB) | 2GB PC2-6400(4GB) | 2GB PC3-8500(8GB) |
ディスプレイ | 13.3インチ(1280×800ドット) | ← | ← |
GPU | GeForce 9400M | ← | ← |
HDD | 250GB/5400rpm | 160GB/5400rpm | 160GB/5400rpm |
光学ドライブ | 8倍速スーパーマルチ | ← | ← |
USB 2.0 | ×2 | ← | ← |
FireWire | なし | FW400(1394a) | FW800(1394b) |
GbE | 対応 | ← | ← |
無線LAN | 802.11 a/b/g/n | 802.11 a/b/g/ n(ドラフト) | ← |
Bluetooth | 2.1+EDR | ← | ← |
ディスプレイ出力 | Mini DisplayPort | Mini DVI | Mini DisplayPort |
バッテリ駆動時間 | 最大7時間(60Wh) | 最大5時間(55Wh) | 最大7時間(60Wh) |
バッテリ交換 | 不可 | 可能 | 不可 |
重量 | 2.13kg | 2.27kg | 2.04kg |
●サーバーモデルがお買い得なMac mini
Mac mini |
残るMac miniだが、どうやら日本ではあまり売れていないようだ。というのも、iMacとMacBookについては、米国での販売価格に対し、おおむね99円で換算されていたのに対し、Mac miniだけが105円ほどになっている。通常、売れているものを割高な設定にはしないことを考えると、日本はMac miniよりMac Bookと考えて間違いないだろう。ちなみに99円というiMacやMacBookの換算レートだが、消費税が内税か外税かの違いを踏まえれば、ほぼ妥当なものと思う。
今回発表されたMac miniのうち、従来製品の後継となる2モデルは、ハードウェア的にはCPUのクロックをちょっとずつ引き上げ、メモリを倍増、HDDの容量を増やした、というところ。基本的な構成は変わっていないハズだ。
最近、iPhoneとAppStoreの隆盛を期に、iPhone向けアプリ開発に興味を持つ開発者も増えていると聞く。が、iPhone SDKはMacでしか利用することはできない。これまでWindows PCしか利用したことのないユーザーも、iPhoneアプリを開発するために、パワーアップしたMac miniでMacに入門するのも悪くないと思う。
新しく登場したのは、サーバーOSであるSnow Leopard Serverをプリインストールした、ミニサーバーモデルだ。通常のクライアント版Mac miniの上位版にSnow Leopard Serverをプリインストールしただけでなく、光学ドライブを撤去、標準の320GBHDDに代えて、500GBのHDD2台を搭載している。Appleらしいのは、このために光学ドライブのスリットのない筐体をちゃんと用意していることだ。
このサーバーモデルの価格はサーバーOS込みで104,900円。ストレージを除いてハードウェアスペックがほぼ同等の、クライアント版Mac miniの上位モデルとの差額は2万円に過ぎない。Snow Leopard Serverの通常ライセンスが53,800円であることを考えると、このパッケージがいかにお得か分かる。
冒頭で日本ではMac miniは売れないと書いたが、実は米国では意外な用途向けに売れているらしい。それがこのサーバー用途だ。実際、Mac miniをサーバーとして設置するための専用のデータセンター(colocation center、共同設置を手がける会社)さえ存在する。
このMacminicolo.netという会社は、ラスベガスにある別のデータセンター(Switch Communications)の一部を間借りして、そこに500台あまりのMac miniをホスティングしているという。サーバーの用途は特に限定されないようだが、ラスベガスという土地柄、カジノの監視カメラのデータをずっと記録しているサーバーが多いという。薄暗いラックに500台のMac miniが並ぶ様は壮観だ。
こうしたデータセンターに預けっぱなしにする用途に、今回発表された500GBのHDDを2台内蔵したMac miniでRAID 1を構成する使い方は最適だろう。保守的な傾向の強いわが国のデータセンターに、Mac miniがズラリと並ぶ様子は想像しにくいが、こうした用途にも使えることは間違いない。