本城網彦のネットブック生活研究所

12.1型WXGAのネットブック
レノボ「IdeaPad S12」



IdeaPad S12

 少し前に、10.1型のパネルで1,280×720ドットになった同社の「IdeaPad S10-2」をご紹介したが、今回はさらに解像度及びパネルサイズがアップした「IdeaPad S12」のレポートをお届けする。ネットブックで12.1型のパネルはなかなか珍しく、その使用感など非常に興味のあるところだ。


●IdeaPad S12の仕様

 IdeaPad S12の基本的な仕様は、IdeaPad S10-2とほぼ同じだ。CPUはAtom N270(1.60GHz)、メモリ1GB(最大2GB)、Intel 945GSE Expressチップセット(GMA950ビデオ機能内蔵)、160GB HDD、OSはWindows XP Home Edition(SP3)を搭載している。インターフェイス関連は、4-in-1カードリーダ、USB 2.0×3、ミニD-Sub15ピン、Ethernet、IEEE 802.11b/g対応無線LAN、130万画素Webカメラ、音声入出力となる。

 相違点はUSB 2.0ポートが2つから3つへ、初期モデルのIdeaPad S10eではあったものの、S10-2で削除されたBluetooth 2.1+EDRとExpressCard/34スロットが復活したこと。そして最大の目玉となるのが、12.1型1,280×800ドット(WXGA)の液晶パネルを搭載していることだ。パネルが大きい分、当然ボディサイズも大きくなり、292×216×22~23.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.55kg。6セルのバッテリを使い駆動時間は約5.5時間となっている。ボディカラーはパールホワイトのみ。

 イメージとしては若干サイズは違うものの、B5ノートのThinkPad X200(295×210×20.7~32.6mm/約1.42kg/12.1型WXGA)と良く似たスケール感となるだろうか。いずれにしてもこれからもわかるように、もはやネットブックと言うよりはAtomを搭載した普通のノートPCと表現しても過言ではなく、ますますネットブックとノートPCのボーダーラインが曖昧になりだした。筆者的に残念なのはCPUがAtom N280でないこと、そして有線LANがGigabit Ethernetでないこと程度だろうか。

 12.1型WXGAのパネルを搭載しているネットブックで他社のモデルとしてはデルの「Inspiron Mini 12」が挙げられる。ただこちらは同じAtomでもZ520(1.33GHz/512KB L2キャッシュ/533MHz FSB)もしくは、Z530(1.6GHz/512KB L2キャッシュ/533MHz FSB)で、チップセット(US15W)やグラフィックス(GMA500)も異なり、メモリは1GBで増設不可、スピーカーもモノラルと随分違う。価格も若干高めだ。

 S12の価格はオープンプライス。店頭予想価格は55,000円前後の見込みとなっている。10.1型1,280×720ドットのS10-2と比較して約5,000円高。12.1型WXGAの液晶パネルやBluetooth 2.1+EDRを搭載していることを考慮するとお買い得感は高い。

本体正面。両サイドにステレオスピーカー、左側にパワー、バッテリ、無線LANのLED天板。ホワイトなので指紋跡が目立たないのは嬉しい。薄く模様が描かれている底面。メモリはパネルを外すと空きスロットが1つ見えるが、HDDを簡単に交換できるようなパネルは無かった
左側面。電源入力、無線LAN ON/OFF、USB 2.0×2、4-in-1カードリーダ。液晶パネルはこれ以上倒れない右側面。ロックポート、Ethernet、ミニD-Sub15ピン、USB 2.0×1、音声入出力、ExpressCard/34スロットキーボードは平均的なレイアウトで特に破綻している部分などは無い。上にはインスタントOS起動用の[電源S]キーなどが見える
バッテリはボディに付けると若干傾くようになっており、机に置いた時などは、キーボードを打ち易い。ACアダプタのコネクタはミッキータイプキーピッチは約19mm。普通のノートPCと同じだ。多少たわむものの割りとしっかりしたキーボードだ重量は実測で1.546kg

 重量が約1.55kgなので片手で持ち上げるとそれなりに重いが、12.1型パネルを搭載していることもあり、ルックス的には普通のノートPCに見え、とりたたて重いと言う感じではない。また金属的な部分は無く、ほぼすべてプラスチックなのだが、安っぽさはなく、質感も普通だ。

 ボディが大きい分、キーボードやパームレスト、タッチパッドなどに十分余裕があり、なかなか快適に操作できる。タッチパッドとパームレストは(多分)同じ素材で、少しザラザラしている。また左右のボタンはストロークが程よく浅く、またクリック感もあり、フィーリングは良い。熱やノイズに関してもスペース的な余裕からか特に気になることはなかった。

 裏にはスピーカーとネジ1本で簡単に開けられるパネルが2つある。その内、バッテリに近いほうのパネルでメモリの増設ができ、本体の1GBに加え+1GBで計2GBとなる。ただし、HDDはどちらのパネルの下にも無く、交換するのは本体を分解する必要がありそうだ。

 音質に関しては以前評価したS10-2と同じイメージ。最大音量は若干不足気味であるものの、ネットブックとしては音質も含め平均的だ。

 このように、IdeaPad S12はパネルサイズと解像度以外は、平均的なネットブック。しかし、このサイズは何も知らない人が見ると、普通のノートPCにしか見えないだろう。そしてこの点が本機最大の魅力となる。

●魅力的な解像度と12.1型パネル

 電源ONにしてWindowsが起動すると、その画面の広さ、解像度の高さに驚く。もちろん上記のように、例えばB5ノートPCのThinkPad X200と同じなので、ノートPCとしては今時当たり前なのだが、それが画面が狭い狭いと言われ続けていたネットブックと呼ばれるマシンで再現しているのだから感動もの。グラフィックスがGMA950なので3Dなどは期待できないにしても、ネットや写真、など2D系のアプリケーションを操作するには何の不満もない描画速度だ。

 しかもWindows XPなので、動きは軽く、1GBもあれば十分機能する。逆に一昔(二昔)前のPentium Mで同程度のクロック数のCPUを搭載したノートPCと比較すると、Hyper-Threadingが使え、メモリも多く、画面が綺麗、HDDも速いと、全体的なパフォーマンスは既にネットブックの方が上となる。唯一ネックだった解像度とパネルサイズまで克服してしまうとかなり印象が違ってくるのは言うまでもないだろう。それほど12.1型WXGAの液晶パネルはインパクトがあり、このサイズに合わせて作られたボディはネットブックならではの窮屈な部分が全く無くなってしまう。

起動時のデスクトップ。解像度は1,280×800ドット。もはやこれだけ見ているとネットブックの画面には見えないEee PC 901-Xとの画面比較。情報量はもちろんだが、Atom N270+Intel 945GSE Expressと全く同じアーキテクチャなのにパネルのサイズだけでこんなに印象が違うデバイスマネージャ/主要デバイス。HDDはWD1600BEVT(5,400prm/8MB)が使われていた。S10-2と同じである
HDDは3パーテーション。CドライブがFAT32になっている。DドライブはNTFSでドライバなどが入っているEnergy Management。パワーマネージメント関連の設定パネルLenovo VeriFace 認識 III。パスワードの替わりに使える顔認識

 ソフトウェアは、「ノートン・インターネットセキュリティ2009(60日間試用版)」、「i-Filter」、「OneKey Recovery」、「Lenovo VeriFace 認証 III」などがプリインストールされている。これらのアプリケーションに関しては、IdeaPad Sシリーズとして共通だ。なお、 [電源S]キーで電源ONにすると約10秒でインスタントOSの「Lenovo クイックスタート」も同様に搭載している。興味のある方は以前掲載した「10.1型1,280×720ドットの液晶搭載/レノボ IdeaPad S10-2」の記事を参考にして頂きたい。

HDBench。GMA 950ドライバの特性だろうか。解像度が上がるとグラフィックス系のスコアが下がる傾向にあるCrystalMark。S10-2と比較してほぼ同じ値だ

 HDBenchとCrystalMarkを使ったベンチマークテストの結果を見る限り、Atom N270プロセッサを搭載した多くのネットブックと同じである。内蔵グラフィックスGMA950の特性なのか、解像度が上がるとスコアが落ちる傾向にある。従って、一般的な1,024×600ドット、そしてS10-2の1,280×720ドットと比較して数値が下がっている。他のCPUやメモリ、HDDに関しては、少なくともIdeaPad Sシリーズとして同じとなる

 いずれにしてもネットブックは同じプロセッサの場合、ベンチマークテストに関してはほぼ横並びの金太郎飴状態と何時も書いている筆者であるが、パネルが12.1型WXGAになると、速度や他の部分が同じでも、こんなにも印象が違うものかと自ら驚いてしまった次第だ。

 以上のようにIdeaPad S12は、ネットブックと言うより、Atom N270を搭載し、12.1型WXGAの液晶パネルを持つ普通のノートPCだ。高解像度でも10.1型では見辛い、ゆったり操作できる環境が欲しい、予算は5万円程度なのだがノートPCと比較してあまり差が無いネットブックが欲しい……など、よりノートPCに近いネットブックを望むユーザーにピッタリの1台と言えよう。