■本城網彦のネットブック生活研究所■
「レノボ IdeaPad S10-2」
IdeaPad S10-2 高解像度版 |
ここのところ、高解像度版ネットブックの発表が相次いでいるが、レノボも「IdeaPad S10-2」に高解像度版を追加した。早速実機が送られて来たので、その使い勝手をレポートしたい。
●IdeaPad S10-2の仕様
高解像度版の話に入る前に、まず、本体の仕様をおさらいしたい。10.1型のパネルを搭載したIdeaPadはこれまで2機種出ている。1つは去年12月3日に発表された「IdeaPad S10e」だ。CPUはAtom N270、メモリ1GB(最大1.5GB)、Intel 945GSE Expressチップセット/GMA950、160GB HDD、10.1型1,024×576ドット光沢液晶パネル、OSはWindows XP Home Edition(SP3)を搭載している。インタフェース関連は、SDカード(SDHC対応)/MMC/メモリースティック(PRO)対応カードリーダ、USB 2.0×2、ミニD-Sub15ピン、Ethernet、IEEE 802.11b/g対応無線LAN、Bluetooth 2.1+EDR、ExpressCard/34スロット、130万画素Webカメラなど。バッテリは6セルで駆動時間は約5.3時間。サイズは250×196×22~36mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.38kgだ。当時はまだ1,024×600ドットのWSVGAの10.1型が多かったこともあり、縦が576ドットと短いことで評価の分かれる製品だった。価格は54,800円。
そして7月1日に「IdeaPad S10-2」が発表された。変わった部分は、Bluetooth 2.1+EDRとExpressCard/34スロットが無くなり、その分、約1.2kgへと軽量化。バッテリ駆動時間も約6時間と少し長くなった。USB 2.0は3ポート。メモリは最大2GBへ。ただし、サイズは258×195×18~42mm(同)と、少し大きくなった。店頭予想価格は45,000円前後へ。お買い得感が高くなったモデルだ。液晶パネルは10.1型1,024×600ドット(光沢)に変更された。
【お詫びと訂正】初出時、S10-2の解像度を1,024×576ドットとしておりましたが、1,024×600ドットの誤りでした。お詫びして訂正いたします。
今回発表されたのは、この「IdeaPad S10-2」の高解像度版となる。ボディやパネルサイズ機能などは従来機と同じで、解像度が「1,280×720ドット」となった。店頭予想価格は5万円前後の見込み。つまり、+5,000円で解像度がアップするわけだ。
カラーバリエーションは、ランプブラック/パールホワイトの2色。従来機ではこれに加えてローズピンクとシルバーグレーもあったので、高解像度版は2色減った。なお、Office Personal 2007(2年間ライセンス版)を搭載したモデルも用意され、店頭予想価格は6万円前後となっている。
全体的な雰囲気はネットブックそのもの。もちろん特にチープな感じはしないが、とりたて高級感があるわけでもない。また天板の模様は筆者的にはあまり好きではない。他の機種でも書いたが、国内市場では無地の方がウケが良いと思われる。
キーボードは最近流行のアイソレーション・タイプではなく普通のタイプだ。クリック感はしっかりあり、ストロークもそこそこ。初期のEee PCと似たキータッチである。[Fn]キーと併用するキートップが小さくなっているものの、ファンクションキーやカーソルキーなので、特に問題になることは無いだろう。全体的なバランスは良く、若干たわむが許容範囲だ。ただIdeaPad S10eのキーボードは、もっと良かった印象を持っていた。
タッチパッドは小さめだ。表面が少しザラザラしており、滑り過ぎず丁度良い。ボタンは軽過ぎず、重過ぎず。パームレストは狭目だが、10.1型ネットブックとしては平均的な面積と言える。
ノイズは、ボディに耳を付けると「ブーン」と言う低い音がする。しかし通常使用では問題無い。振動も同様にパームレストへ手を置くと解るが、気になるほどではない。
スピーカーは下の手前に2つ入っている。机などに音を反射させるタイプだ。下にあるものによって音量や音質が変化する。音としてはこのサイズのネットブックの中では標準的だろう。
以上のように、IdeaPad S10-2は全体的にオーソドックスなネットブックであり、マイナス面が無い代わりにプラス面も特に見当たらない。万人向けに設計したところ、結果、平凡になってしまったのだろう。しかし、この印象は「1,280×720ドット」の画面を見た瞬間に一変する。
●魅力的な高解像度本題の「1,280×720ドット」画面解像度は、これまでのネットブックのイメージを随分変える。何をするにも十分広く、GPUはチップセット内蔵の「GMA950」なので3Dゲームは無理としても2D系の処理なら描画速度的に問題無い。光沢タイプのパネルなので映り込むが、明るさコントラスト共に十分。発色もなかなか良い。
また10.1型のパネルの場合、前回のVAIO W(1,366×768ドット)では少し文字が小さく感じたものの、ドットピッチ的に本機の解像度はちょうど良く、非常に収まりの良い画面だ。いずれにしても画面が狭いと二の足を踏んでいたユーザーもこれなら納得だろう。ぜひ店頭でWSVGAとの違いを見て欲しい。
ソフトウェアは、「ノートン・インターネットセキュリティ2009(60日間試用版)」、「i-Filter」、「OneKey Recovery」などがプリインストールされている。パスワード入力の替わりになる「Lenovo VeriFace顔認証」がONになっていると、ログイン時にWebカメラを使った認証が毎回起動する。この機能を使わない時はOFFにした方がいいだろう。
HDDのパーティションは3つ。内Cドライブが約103GB、約30GBのDドライブはドライバなどが入っているLenovo用のボリュームだ。HDDにはWD1600BEVT(5,400prm/8MB)を使用。このHDDはこれまでも他社も含め多くのネットブックに使われている。
ベンチマーク結果を見ると、Atom N270プロセッサ+Intel 945GSE Expressチップセット/GMA950としては一般的な数値だ。Atomプロセッサを使ったネットブックでは、CPUがN270又はN280か、Zシリーズかによって使用するチップセットが違うものの、それぞれのアーキテクチャにおいて数値はほぼ一定となる。違いが出るとすればHDDの種類、もしくはSSDなど、メインで使用するドライブのデータ転送速度程度だ。ただし、HDBenchのグラフィック/BitBltの値がGMA950/WSVGAの時より明らかに下がっている。前回のSONY VAIO Wも同じ傾向だったので、解像度の影響だと思われる。
1つ気になる点として、パワーマネージメントの設定パネル「Energy Management」があげられる。ご覧のように全て英語のままなのだ。パワーユーザー対象であればとりあえずこのままでも問題無いが、ネットブックの場合、初心者の1台目のPCとして購入するケースも多く、日本語化を望みたい。
インスタントOS「Lenovo クイックスタート」。キーボード右上にある[電源S]キーを押すとインスタントOSが起動する。WebブラウザやSkypeが使える |
[電源S]キーで電源ONにすると約10秒でインスタントOSの「Lenovo クイックスタート」が立ち上がる。Linuxをベースにしたものでウェブブラウザー、音楽プレーヤー、フォト・ビューアー、Skypeなどが入っている。ただ登録されたアプリケーションのみの起動で、shなどコマンド形式のものはは実行できない。他の機種でもこの手のOSを内蔵しているネットブックがあるが、あまり使い道が無く不要に思えるのは筆者だけだろうか。
このように、高解像度にも対応したのは嬉しいが、残念なのは、この時期の発表にも関わらず、CPUはAtom N280プロセッサ(1.66GHz/FSB667MHz)ではなく、従来機そのままのAtom N270プロセッサ(1.6GHz/FSB533MHz)ということだ。N280を搭載したネットブックを数台触ったところ、体感速度でわかるほど速度向上する。ここだけは惜しい部分と言えよう。
液晶の解像度は、前回のSONY VAIO WのWXGAと比較すると一回り狭いものの、それでも一般的なWSVGAと比較をするとその差は明らか。しかも約5万円と値段も安い。たった5,000円程度の差であれば、もはや標準解像度1,024×600ドットのIdeaPad S10-2を選ぶ理由は見当たらない。画面が広くホビーでも仕事でもより快適に使える高解像度版のIdeaPad S10-2。お勧めの一台だ。