平澤寿康の周辺機器レビュー

ユニスター「SEKITOBA TM110A-S25-M128G34」
~QNAP製NASに完全対応した高信頼性SSD



「SEKITOBA TM110A-S25-M128G34」

発売中



 ユニスターは、Indilinx製コントローラ「Barefoot ECO」を採用した、SATA接続の2.5インチSSD「SEKITOBA」(赤兎馬)シリーズを発売した。リード最大270MB/秒、ライト最大200MB/秒という高速アクセスを実現するだけでなく、QNAP製NASへの完全対応を謳う。今回、容量128GBの「TM110A-S25-M128G34」を試用する機会を得たので、製品仕様やアクセス速度などをチェックしていこう。

●Indilinx製コントローラ「Barefoot ECO」採用

 SEKITOBAシリーズでは、高速かつ低価格なSSDで採用が多いIndilinx製コントローラ「Barefoot ECO」を搭載している。Barefoot ECOはIndilinx製コントローラの中でも、製造プロセス34nmの MLC NANDフラッシュを採用した製品で利用されている、シリーズ最新モデルである。コントローラの型番は「IDX110M01-LC」だ。

 このコントローラを搭載するSSDは、すでに昨年末より登場済みだが、SEKITOBAでは、データ転送速度がリード時最大270MB/秒、ライト時最大200MB/秒と、同じコントローラを搭載する他のSSDよりも高速となっている。これは、ファームウェアの改良による速度向上と考えられるが、SATA 3.0対応SSDを除けば、ほぼトップクラスの速度を実現している。

 基板上には、コントローラの「IDX110M01-LC」に加え、キャッシュメモリとしてエルピーダ製の512Mbit(64MB) Mobile RAM「S51321DBH-5ATS-F」を搭載。また、MLC NANDフラッシュチップは、製造プロセス34nmのMicron Technology製「MT29F64G08CFABAWP」で、容量は64Gbit(8GB)、基板表裏に8チップずつ、計16チップが搭載されている。

基板表。Indilinx製コントローラ「IDX110M01-LC」の下には、キャッシュメモリとしてエルピーダ製の64MB Mobile RAMを搭載。MLC NANDフラッシュメモリチップは、Micron Technology製「MT29F64G08CFABAWP」が8チップ搭載されている基板裏面。こちらにも、MLC NANDフラッシュメモリチップ「MT29F64G08CFABAWP」が8チップ搭載されている本体ケースはネジの部分がシールで封印されており、このシールを剥がすと保証が受けられなくなるので要注意

●QNAP製NASに完全対応

 SEKITOBAシリーズのもう1つの特徴となるのが、QNAP製NASでの動作を確認し、完全対応としている点だ。確認されている動作は、ホットスワップ機能やリビルド機能、運用時のRAID 0/1/5/6環境などで、基本的な運用における機能の全てをサポートするとしている。実際に、QNAP製NAS「TurboNAS TS-459 Pro」で試してみたが、SEKITOBAを4台搭載してのRAID 5/6環境での運用はもちろん、ホットスワップ、リビルドなどどれも全く問題なく動作した。

 QNAP製のNASは、個人用途はもちろんのこと、プロ用途にも広く利用されている。当然、搭載するHDDやSSDの動作確認においても、それなりのハードルを課しているはずだ。その意味で、SEKITOBAの信頼性は十分に高いと考えていいはずだ。

製品ケースには、QNAPのロゴシールが貼られ、QNAP製NASで完全動作することが示されている実際にQNAP製NAS「TurboNAS TS-459 Pro」で利用してみたが、ホットスワップやリビルドも含め、全く問題なく動作した

●見た目は、通常の2.5インチSSDとほぼ同じ

 SEKITOBAシリーズの外見は、一般的な2.5インチSSDとほぼ同等だ。本体は、厚さ9.5mmの2.5インチHDDと同じサイズの金属ケースを採用しており、側面や底面のネジ穴の位置も2.5インチHDDのものと全く同じだ。2.5インチHDDと同等の感覚で利用でき、ノートPCのHDDを交換する場合でも、問題なく利用できそうだ。

 接続インターフェイスはSATAで、もちろんコネクタ形状も通常と同じ。重量は、実測で78.5gで、2.5インチSSDとして比較的軽量な部類に入る。

本体正面。基板は金属ケースで覆われているケースサイズは、2.5インチHDDと全く同じで、2.5インチHDDと同等の感覚で利用できる厚さは9.5mm。厚さ9.5mmの2.5インチHDDと交換して利用可能だ
接続インターフェイスはSATAだ側面のネジ穴は、2.5インチHDDと同じ位置にある底面のネジ穴も、もちろん2.5インチHDDの場所と同じ
重量は実測値で78.5gと、SSDとして軽量な部類に入る

●公称値には届かないが、十分に高速

 では、速度をチェックしていこう。今回は、ベンチマークソフトとして、CrystalDiskMark 2.2.0と、HD Tune Pro 3.50、Iometer 2008.06.28の3種類を用意し、デスクトップPCに取り付けて速度を計測した。テスト環境は下に示す通りだ。比較用として、Crucial製SSD「RealSSD C300」(容量256GB)、Intel製SSD「X25-M Mainstream SATA SSD」の第2世代モデル「SSDSA2MH160G2GC」(容量160GB)の結果も加えてある。

【表1】テスト環境
CPUCore i5-750
マザーボードIntel DP55KG
メモリPC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2
グラフィックカードRadeon HD 5770(MSI R5770 Hawk)
HDDWestern Digital WD3200AAKS(OS導入用)
OSWindows 7 Ultimate

 まず、CrystalDiskMarkの結果を見ると、シーケンシャルリードは237.3~247.7MB/秒と、公称値よりはやや遅いものの、十分高速な部類に入る速度が発揮されている。また、512KBのランダムリードは172.5~188.4MB/秒と、こちらも十分に高速と言える。

 シーケンシャルライトも173.6~176.3MB/秒と、公称値より遅くなっている。ただ、512KBランダムライトでは、164~197.1MB/秒と、公称値にかなり近い速度となっている。こちらも、2.5インチSSDとして十分に高速な部類だ。

 ちなみに、過去に取り上げた、SEKITOBA同じIndilinx製コントローラ「IDX110M01-LC」を搭載するHANA Micronの「HMSM128G-10」の結果と比較すると、シーケンシャルリード/ライト、ランダムリード/ライトともにかなり高速となっている。ファームウェアのアップデートによって、現在ではHMSM128G-10もSEKITOBAとほぼ同等の速度が発揮される状態になっている可能性も十分に考えられるが、少なくとも同じコントローラでもファームウェアが改良されることで速度が大幅に向上することが、この結果からもはっきりとわかる。

CrystalDiskMark SEKITOBA 100MBCrystalDiskMark X25-M 100MBCrystalDiskMark RealSSD C300 100MB
CrystalDiskMark SEKITOBA 1,000MBCrystalDiskMark X25-M 1,000MBCrystalDiskMark RealSSD C300 1,000MB
CrystalDiskMark SEKITOBA 4,000MBCrystalDiskMark X25-M 4,000MBCrystalDiskMark RealSSD C300 4,000MB

 次に、HD Tuneの結果だが、こちらはCrystalDiskMarkの結果とほぼ同じとなっている。また、ランダムアクセス時のパフォーマンス低下の割合も低く、使用中に速度が遅くなるといったこともまず起こらないだろう。

HD Tune SEKITOBA 64KB ReadHD Tune X25-M 64KB ReadHD Tune RealSSD C300 64KB Read
HD Tune SEKITOBA 64KB WriteHD Tune X25-M 64KB WriteHD Tune RealSSD C300 64KB Write
HD Tune SEKITOBA 512KB ReadHD Tune X25-M 512KB ReadHD Tune RealSSD C300 512KB Read
HD Tune SEKITOBA 512KB WriteHD Tune X25-M 512KB WriteHD Tune RealSSD C300 512KB Write
HD Tune SEKITOBA 8MB ReadHD Tune X25-M 8MB ReadHD Tune RealSSD C300 8MB Read
HD Tune SEKITOBA 8MB WriteHD Tune X25-M 8MB WriteHD Tune RealSSD C300 8MB Write
HD Tune SEKITOBA Random ReadHD Tune X25-M Random ReadHD Tune RealSSD C300 Random Read
HD Tune SEKITOBA Random WriteHD Tune X25-M Random WriteHD Tune RealSSD C300 Random Write

 最後に、Iometerの結果だ。こちらは、RealSSD C300にはかなり負け、Intel X25-Mとの比較では一部勝っている部分もあるが、全体的には劣っている部分が多い。実際に利用する上では、Intel X25-Mに若干劣る程度のランダムアクセス性能と考えていいだろう。

【表2】Iometer結果
Iometer 2008.06.28 Windows 7 UltimateSEKITOBARealSSD C300 256GB SATA 3.0接続
(玄人志向SATA3I2-PCIe利用)
Intel X25-M(34nm) 160GB
Queue Depth:1Queue Depth:32Queue Depth:1Queue Depth:32Queue Depth:1Queue Depth:32
File Server Access PatternRead IOPS2,009.902,100.641,945.062,610.68736.99939.81
Write IOPS501.50525.04484.92652.12183.65236.02
Read MB/s21.7522.6921.0028.277.9610.20
Write MB/s5.435.685.267.092.002.59
Average Read Response Time0.4612.270.459.741.0426.63
Average Write Response Time0.1311.850.2510.031.2729.52
Maximum Read Response Time131.51198.6710.436,439.39293.40334.46
Maximum Write Response Time5.10194.174.036,437.75267.48332.58
4KB Random
(Read 50%,Write 50%)
Read IOPS5,593.2816,425.304,512.4341,125.603,410.6337,621.71
Write IOPS776.99668.3810,031.632,025.14361.65335.02
Read MB/s21.8564.1617.63160.6513.32146.96
Write MB/s3.042.6139.197.911.411.31
Average Read Response Time0.181.950.220.780.290.85
Average Write Response Time1.2947.870.1015.772.7695.49
Maximum Read Response Time4.675.7410.2510,854.014.85266.95
Maximum Write Response Time138.23182.45843.842,262.59294.66841.19
16KB Random
(Read 50%,Write 50%)
Read IOPS3,281.737,042.933,959.5115,931.332,783.9814,560.60
Write IOPS321.39345.97453.51544.22269.91273.89
Read MB/s51.28110.0561.87248.9343.50227.51
Write MB/s5.025.417.098.504.224.28
Average Read Response Time0.304.540.252.010.362.20
Average Write Response Time3.1192.492.2058.723.70116.81
Maximum Read Response Time5.4810.482.5710,860.903.715.35
Maximum Write Response Time137.76239.261,439.732,265.11293.28596.07
64KB Random
(Read 50%,Write 50%)
Read IOPS1,914.492,881.872,163.544,719.941,638.264,024.14
Write IOPS162.97165.36140.39141.42104.49112.25
Read MB/s119.66180.12135.22295.00102.39251.51
Write MB/s10.1910.348.778.846.537.02
Average Read Response Time0.5211.100.466.780.617.95
Average Write Response Time6.13193.497.12225.689.57284.79
Maximum Read Response Time5.9018.141,406.7111.465.1313.01
Maximum Write Response Time847.69374.111,440.692,264.52290.34677.96

 今回の結果から、SEKITOBAは、同じIndilinx製コントローラを搭載する旧製品と比較して十分に高速なアクセス速度が発揮されていることがわかる。また、QNAP製NASでの完全動作を謳う高信頼性も大きな魅力。唯一の弱点は、128GBモデルで49,800円前後、256GBモデルで97,900円前後と、若干高価な価格だ。

 QNAP製NASでの利用はもちろん、サーバーマシンでの利用やビジネスシーンで利用するノートPCに搭載するなど、信頼性が第一となる用途での利用に、特にお薦めしたい。

バックナンバー

(2010年 10月 5日)

[Text by 平澤 寿康]