■平澤寿康の周辺機器レビュー■
ユニスターは、Indilinx製コントローラ「Barefoot ECO」を採用した、SATA接続の2.5インチSSD「SEKITOBA」(赤兎馬)シリーズを発売した。リード最大270MB/秒、ライト最大200MB/秒という高速アクセスを実現するだけでなく、QNAP製NASへの完全対応を謳う。今回、容量128GBの「TM110A-S25-M128G34」を試用する機会を得たので、製品仕様やアクセス速度などをチェックしていこう。
●Indilinx製コントローラ「Barefoot ECO」採用SEKITOBAシリーズでは、高速かつ低価格なSSDで採用が多いIndilinx製コントローラ「Barefoot ECO」を搭載している。Barefoot ECOはIndilinx製コントローラの中でも、製造プロセス34nmの MLC NANDフラッシュを採用した製品で利用されている、シリーズ最新モデルである。コントローラの型番は「IDX110M01-LC」だ。
このコントローラを搭載するSSDは、すでに昨年末より登場済みだが、SEKITOBAでは、データ転送速度がリード時最大270MB/秒、ライト時最大200MB/秒と、同じコントローラを搭載する他のSSDよりも高速となっている。これは、ファームウェアの改良による速度向上と考えられるが、SATA 3.0対応SSDを除けば、ほぼトップクラスの速度を実現している。
基板上には、コントローラの「IDX110M01-LC」に加え、キャッシュメモリとしてエルピーダ製の512Mbit(64MB) Mobile RAM「S51321DBH-5ATS-F」を搭載。また、MLC NANDフラッシュチップは、製造プロセス34nmのMicron Technology製「MT29F64G08CFABAWP」で、容量は64Gbit(8GB)、基板表裏に8チップずつ、計16チップが搭載されている。
●QNAP製NASに完全対応
SEKITOBAシリーズのもう1つの特徴となるのが、QNAP製NASでの動作を確認し、完全対応としている点だ。確認されている動作は、ホットスワップ機能やリビルド機能、運用時のRAID 0/1/5/6環境などで、基本的な運用における機能の全てをサポートするとしている。実際に、QNAP製NAS「TurboNAS TS-459 Pro」で試してみたが、SEKITOBAを4台搭載してのRAID 5/6環境での運用はもちろん、ホットスワップ、リビルドなどどれも全く問題なく動作した。
QNAP製のNASは、個人用途はもちろんのこと、プロ用途にも広く利用されている。当然、搭載するHDDやSSDの動作確認においても、それなりのハードルを課しているはずだ。その意味で、SEKITOBAの信頼性は十分に高いと考えていいはずだ。
製品ケースには、QNAPのロゴシールが貼られ、QNAP製NASで完全動作することが示されている | 実際にQNAP製NAS「TurboNAS TS-459 Pro」で利用してみたが、ホットスワップやリビルドも含め、全く問題なく動作した |
●見た目は、通常の2.5インチSSDとほぼ同じ
SEKITOBAシリーズの外見は、一般的な2.5インチSSDとほぼ同等だ。本体は、厚さ9.5mmの2.5インチHDDと同じサイズの金属ケースを採用しており、側面や底面のネジ穴の位置も2.5インチHDDのものと全く同じだ。2.5インチHDDと同等の感覚で利用でき、ノートPCのHDDを交換する場合でも、問題なく利用できそうだ。
接続インターフェイスはSATAで、もちろんコネクタ形状も通常と同じ。重量は、実測で78.5gで、2.5インチSSDとして比較的軽量な部類に入る。
本体正面。基板は金属ケースで覆われている | ケースサイズは、2.5インチHDDと全く同じで、2.5インチHDDと同等の感覚で利用できる | 厚さは9.5mm。厚さ9.5mmの2.5インチHDDと交換して利用可能だ |
接続インターフェイスはSATAだ | 側面のネジ穴は、2.5インチHDDと同じ位置にある | 底面のネジ穴も、もちろん2.5インチHDDの場所と同じ |
重量は実測値で78.5gと、SSDとして軽量な部類に入る |
●公称値には届かないが、十分に高速
では、速度をチェックしていこう。今回は、ベンチマークソフトとして、CrystalDiskMark 2.2.0と、HD Tune Pro 3.50、Iometer 2008.06.28の3種類を用意し、デスクトップPCに取り付けて速度を計測した。テスト環境は下に示す通りだ。比較用として、Crucial製SSD「RealSSD C300」(容量256GB)、Intel製SSD「X25-M Mainstream SATA SSD」の第2世代モデル「SSDSA2MH160G2GC」(容量160GB)の結果も加えてある。
CPU | Core i5-750 |
マザーボード | Intel DP55KG |
メモリ | PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2 |
グラフィックカード | Radeon HD 5770(MSI R5770 Hawk) |
HDD | Western Digital WD3200AAKS(OS導入用) |
OS | Windows 7 Ultimate |
まず、CrystalDiskMarkの結果を見ると、シーケンシャルリードは237.3~247.7MB/秒と、公称値よりはやや遅いものの、十分高速な部類に入る速度が発揮されている。また、512KBのランダムリードは172.5~188.4MB/秒と、こちらも十分に高速と言える。
シーケンシャルライトも173.6~176.3MB/秒と、公称値より遅くなっている。ただ、512KBランダムライトでは、164~197.1MB/秒と、公称値にかなり近い速度となっている。こちらも、2.5インチSSDとして十分に高速な部類だ。
ちなみに、過去に取り上げた、SEKITOBA同じIndilinx製コントローラ「IDX110M01-LC」を搭載するHANA Micronの「HMSM128G-10」の結果と比較すると、シーケンシャルリード/ライト、ランダムリード/ライトともにかなり高速となっている。ファームウェアのアップデートによって、現在ではHMSM128G-10もSEKITOBAとほぼ同等の速度が発揮される状態になっている可能性も十分に考えられるが、少なくとも同じコントローラでもファームウェアが改良されることで速度が大幅に向上することが、この結果からもはっきりとわかる。
次に、HD Tuneの結果だが、こちらはCrystalDiskMarkの結果とほぼ同じとなっている。また、ランダムアクセス時のパフォーマンス低下の割合も低く、使用中に速度が遅くなるといったこともまず起こらないだろう。
最後に、Iometerの結果だ。こちらは、RealSSD C300にはかなり負け、Intel X25-Mとの比較では一部勝っている部分もあるが、全体的には劣っている部分が多い。実際に利用する上では、Intel X25-Mに若干劣る程度のランダムアクセス性能と考えていいだろう。
Iometer 2008.06.28 Windows 7 Ultimate | SEKITOBA | RealSSD C300 256GB SATA 3.0接続 (玄人志向SATA3I2-PCIe利用) | Intel X25-M(34nm) 160GB | ||||
Queue Depth:1 | Queue Depth:32 | Queue Depth:1 | Queue Depth:32 | Queue Depth:1 | Queue Depth:32 | ||
File Server Access Pattern | Read IOPS | 2,009.90 | 2,100.64 | 1,945.06 | 2,610.68 | 736.99 | 939.81 |
Write IOPS | 501.50 | 525.04 | 484.92 | 652.12 | 183.65 | 236.02 | |
Read MB/s | 21.75 | 22.69 | 21.00 | 28.27 | 7.96 | 10.20 | |
Write MB/s | 5.43 | 5.68 | 5.26 | 7.09 | 2.00 | 2.59 | |
Average Read Response Time | 0.46 | 12.27 | 0.45 | 9.74 | 1.04 | 26.63 | |
Average Write Response Time | 0.13 | 11.85 | 0.25 | 10.03 | 1.27 | 29.52 | |
Maximum Read Response Time | 131.51 | 198.67 | 10.43 | 6,439.39 | 293.40 | 334.46 | |
Maximum Write Response Time | 5.10 | 194.17 | 4.03 | 6,437.75 | 267.48 | 332.58 | |
4KB Random (Read 50%,Write 50%) | Read IOPS | 5,593.28 | 16,425.30 | 4,512.43 | 41,125.60 | 3,410.63 | 37,621.71 |
Write IOPS | 776.99 | 668.38 | 10,031.63 | 2,025.14 | 361.65 | 335.02 | |
Read MB/s | 21.85 | 64.16 | 17.63 | 160.65 | 13.32 | 146.96 | |
Write MB/s | 3.04 | 2.61 | 39.19 | 7.91 | 1.41 | 1.31 | |
Average Read Response Time | 0.18 | 1.95 | 0.22 | 0.78 | 0.29 | 0.85 | |
Average Write Response Time | 1.29 | 47.87 | 0.10 | 15.77 | 2.76 | 95.49 | |
Maximum Read Response Time | 4.67 | 5.74 | 10.25 | 10,854.01 | 4.85 | 266.95 | |
Maximum Write Response Time | 138.23 | 182.45 | 843.84 | 2,262.59 | 294.66 | 841.19 | |
16KB Random (Read 50%,Write 50%) | Read IOPS | 3,281.73 | 7,042.93 | 3,959.51 | 15,931.33 | 2,783.98 | 14,560.60 |
Write IOPS | 321.39 | 345.97 | 453.51 | 544.22 | 269.91 | 273.89 | |
Read MB/s | 51.28 | 110.05 | 61.87 | 248.93 | 43.50 | 227.51 | |
Write MB/s | 5.02 | 5.41 | 7.09 | 8.50 | 4.22 | 4.28 | |
Average Read Response Time | 0.30 | 4.54 | 0.25 | 2.01 | 0.36 | 2.20 | |
Average Write Response Time | 3.11 | 92.49 | 2.20 | 58.72 | 3.70 | 116.81 | |
Maximum Read Response Time | 5.48 | 10.48 | 2.57 | 10,860.90 | 3.71 | 5.35 | |
Maximum Write Response Time | 137.76 | 239.26 | 1,439.73 | 2,265.11 | 293.28 | 596.07 | |
64KB Random (Read 50%,Write 50%) | Read IOPS | 1,914.49 | 2,881.87 | 2,163.54 | 4,719.94 | 1,638.26 | 4,024.14 |
Write IOPS | 162.97 | 165.36 | 140.39 | 141.42 | 104.49 | 112.25 | |
Read MB/s | 119.66 | 180.12 | 135.22 | 295.00 | 102.39 | 251.51 | |
Write MB/s | 10.19 | 10.34 | 8.77 | 8.84 | 6.53 | 7.02 | |
Average Read Response Time | 0.52 | 11.10 | 0.46 | 6.78 | 0.61 | 7.95 | |
Average Write Response Time | 6.13 | 193.49 | 7.12 | 225.68 | 9.57 | 284.79 | |
Maximum Read Response Time | 5.90 | 18.14 | 1,406.71 | 11.46 | 5.13 | 13.01 | |
Maximum Write Response Time | 847.69 | 374.11 | 1,440.69 | 2,264.52 | 290.34 | 677.96 |
今回の結果から、SEKITOBAは、同じIndilinx製コントローラを搭載する旧製品と比較して十分に高速なアクセス速度が発揮されていることがわかる。また、QNAP製NASでの完全動作を謳う高信頼性も大きな魅力。唯一の弱点は、128GBモデルで49,800円前後、256GBモデルで97,900円前後と、若干高価な価格だ。
QNAP製NASでの利用はもちろん、サーバーマシンでの利用やビジネスシーンで利用するノートPCに搭載するなど、信頼性が第一となる用途での利用に、特にお薦めしたい。
(2010年 10月 5日)