■平澤寿康の周辺機器レビュー■
HMSM128G-10 |
韓国HANA Micronから、製造プロセス34nmのMLC NANDフラッシュメモリを採用した、INDILINX製コントローラ搭載SSDが登場した。34nm MLC NANDフラッシュを採用することにより価格が安価に抑えられているとともに、INDILINX製コントローラも新モデルとなり、パフォーマンスが向上している。
今回、容量128GBの「HMSM128G-10」を入手したので、パフォーマンスを中心にチェックしていこう。
●34nm MLC NANDフラッシュにINDILINX製新型コントローラを搭載
製造プロセス34nmのNANDフラッシュを採用するSSDは、すでにIntelから登場しているが、それから遅れること約3カ月、Intel以外のメーカーからも34nm NANDフラッシュを採用するSSDが登場した。それが、HANA Micronの「HMSM128G-10」だ。
従来のSSDでは、製造プロセス50nmのNANDフラッシュが広く採用されているが、製造プロセス34nmのNANDフラッシュを採用することにより、コストが大きく抑えられるというメリットがある。実際に、今回取り上げているHMSM128G-10は、登場当初の販売価格が29,800円と、すでにINDILINX製コントローラを搭載する容量128GBのSSDとして最安値に近い金額だ。これは、ユーザーにとって非常に嬉しい利点と言えるだろう。
それに対し、一部で34nm NANDフラッシュは50nm NANDフラッシュに対して信頼性が低いという指摘がある。ただ、NANDフラッシュ単体でそういう傾向があるとしても、SSDではコントローラを含めたシステム全体の構成によって信頼性が大きく変化するため、採用されているNANDフラッシュだけを取り上げて信頼性を語るのはあまり意味が無いように思う。どちらにしても、SSDは発展途上のデバイスであり、現時点では信頼性を考えるよりも、先進デバイスをいち早く利用するという点に魅力を感じるべきだろう。
34nm NANDフラッシュを採用していることに加え、Trimコマンドをサポートしている点も、HMSM128G-10の特徴の1つだ。CrystalDiskInfo 3.2.0を利用してチェックしたところ、Trimコマンドに対応していることを確認した。これなら、Windows 7搭載PCでの利用も心強い。
HMSM128G-10に搭載されているNANDフラッシュチップは、Micron Technology製の「MT29F64G08CFAAA」。容量64GbitのMLC NANDフラッシュメモリチップだ。これが、基板表に8個、基板裏に8個の計16チップ搭載されている。
コントローラは、INDILINX製の「IDX110M01-LC」。今回、従来モデルと直接比較はできなかったが、OCZ Technology製SSD「Vertex」に搭載されているのINDILINX製コントローラの型番は「IDX110M00-LC」だったため、コントローラも仕様変更されていると考えて良さそうだ。キャッシュメモリはHynix Semiconductor製の「HY5S7B2AL」を採用。容量512MbitのSDRAM(動作クロック166MHz)だ。
基板裏面。こちらにもMicron Technology製64Gbit MLC NANDフラッシュチップ「MT29F64G08CFAAA」が8個搭載されている | CrystalDiskInfo 3.2.0でチェックしたところ、Trimコマンドへの対応が確認できた |
●形状は厚さ9.5mmの2.5インチHDD相当
製品の形状は、一般的なSSDと同じ、厚さ9.5mmの2.5インチHDD相当となっている。ボディは金属製だが、重量は実測値で80.5gと、それほど重くはない。接続インターフェイスは3Gbps転送対応のSATAで、もちろん2.5インチのSATA HDDと置き換えて利用可能だ。
厚さ9.5mmの2.5インチHDDと同じサイズだ | 厚さは9.5mm。デスクトップはもちろん、一般的なノートPCでも簡単に利用できる | 側面には、HDDと同じ位置に固定用のネジ穴が用意されている |
底面にも固定用のネジ穴が用意されている | 接続インターフェイスはSATAだ | 重量は実測で80.5gだった |
●リード247.9MB/秒、ライト138.5MB/秒を記録
では、速度をチェックしていこう。今回は、ベンチマークソフトとして、CrystalDiskMark 2.2.0と、HD Tune Pro 3.50、Iometer 2008.06.28の3種類を用意し、デスクトップPCに取り付けて速度を計測した。また、比較用として、OCZ製のSSD「Vertex」(容量120GB)を用意し、同じテストを行なった。テスト環境は下に示す通りで、OSはWindows 7 Ultimateを利用した。
・テスト環境
CPU:Core i5-750
マザーボード:Intel DP55KG
メモリ:PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2
ビデオカード:Radeon HD 4670
HDD:Western Digital WD3200AAKS(OS導入用)
OS:Windows 7 Ultimate
まず、CrystalDiskMark 2.2.0の結果を見ると、シーケンシャルリード247.9MB/sec、シーケンシャルライト138.5MB/secと、なかなかの速度が確認された。Vertexとの比較では、シーケンシャルライトは誤差の範囲内の違いでほぼ同等の速度であるのに対し、シーケンシャルリードは20MB/secほど高速となっている。また、ランダムライトについても同様の傾向で、ライトはほぼ同等だが、リードは大きく速度が向上している。製造メーカーが異なるとはいえ、リード速度が大きく向上している要因は、コントローラが改良されているからと考えていいだろう。
HMSM128G-10の100MB結果 | Vertexの100MB結果 |
HMSM128G-10の1,000MB結果 | Vertexの1,000MB結果 |
HD Tune Pro 3.50の結果も、CrystalDiskMark 2.2.0の結果とほぼ同じ傾向だ。HMSM128G-10では、Vertexに比べてシーケンシャルリード・ライト時の速度の乱れが少なくなっているが、これはやはりコントローラの改良による進化と考えられる。ちなみに、ランダムアクセスのテストのうち、transfer size「Random」の結果が極端に落ち込んでいるが、これはおそらくキャッシュメモリがあふれたことによるものと思われる。
最後に、Iometerの結果だ。こちらは、基本的にランダムアクセステストのみを行なっているが、こちらではリード・ライトともにHMSM128G-10の方が明らかに高速であった。この差も、やはりコントローラの違いによるものと考えていいだろう。
Iometer 2008.06.28 | HMSM128G-10 | OCZ Vertex 120GB | |||
Queue Depth:1 | Queue Depth:32 | Queue Depth:1 | Queue Depth:32 | ||
File Server Access Pattern | Read IOPS | 1697.970097 | 1898.666145 | 1540.271215 | 708.462083 |
Write IOPS | 422.938364 | 473.428155 | 384.639464 | 177.361421 | |
Read MB/s | 18.379415 | 20.548176 | 16.752725 | 7.657597 | |
Write MB/s | 4.570267 | 5.136732 | 4.147496 | 1.896457 | |
Average Read Response Time | 0.556207 | 13.583556 | 0.616548 | 36.35432 | |
Average Write Response Time | 0.126254 | 13.104103 | 0.125806 | 35.202377 | |
Maximum Read Response Time | 146.598045 | 207.136039 | 144.549281 | 254.727428 | |
Maximum Write Response Time | 25.717877 | 202.109572 | 5.389171 | 249.132073 | |
4KB Random (Read 50%,Write 50%) | Read IOPS | 5939.423983 | 17423.352038 | 5689.042687 | 9048.509111 |
Write IOPS | 847.065857 | 517.858854 | 585.201658 | 394.003789 | |
Read MB/s | 23.200875 | 68.059969 | 22.222823 | 35.345739 | |
Write MB/s | 3.308851 | 2.022886 | 2.285944 | 1.539077 | |
Average Read Response Time | 0.166956 | 1.835862 | 0.174467 | 3.535538 | |
Average Write Response Time | 1.179488 | 61.790315 | 1.707788 | 81.212092 | |
Maximum Read Response Time | 9.689704 | 22.970618 | 7.19836 | 9.778144 | |
Maximum Write Response Time | 169.190459 | 250.483218 | 145.38438 | 266.123552 | |
16KB Random (Read 50%,Write 50%) | Read IOPS | 3176.174479 | 6883.761221 | 2961.525733 | 3656.814624 |
Write IOPS | 592.899278 | 641.090172 | 414.914262 | 455.345792 | |
Read MB/s | 49.627726 | 107.558769 | 46.27384 | 57.137728 | |
Write MB/s | 9.264051 | 10.017034 | 6.483035 | 7.114778 | |
Average Read Response Time | 0.313847 | 4.647686 | 0.336671 | 8.749753 | |
Average Write Response Time | 1.68557 | 49.916366 | 2.409081 | 70.270587 | |
Maximum Read Response Time | 10.621583 | 14.410919 | 7.326601 | 15.718289 | |
Maximum Write Response Time | 168.621425 | 263.711914 | 169.371875 | 282.325622 | |
64KB Random (Read 50%,Write 50%) | Read IOPS | 1907.955185 | 3226.648309 | 1780.423797 | 1958.739906 |
Write IOPS | 159.77389 | 164.227212 | 112.066838 | 115.905117 | |
Read MB/s | 119.247199 | 201.665519 | 111.276487 | 122.421244 | |
Write MB/s | 9.985868 | 10.264201 | 7.004177 | 7.24407 | |
Average Read Response Time | 0.5231 | 9.91642 | 0.560666 | 16.335987 | |
Average Write Response Time | 6.257564 | 194.875503 | 8.921899 | 275.915801 | |
Maximum Read Response Time | 10.760194 | 19.968407 | 7.409919 | 25.18543 | |
Maximum Write Response Time | 169.639312 | 411.075582 | 179.455646 | 522.34571 |
今回の結果から、HMSM128G-10は従来のINDILINX製コントローラ搭載SSDよりもパフォーマンスが向上していると結論づけて良さそうだ。その上で、34nm NANDフラッシュ採用による低価格化や、標準でTrimをサポートしている点など、速度以外の魅力も多い。そういった意味では、これからSSDを購入しようと考えている人にとって、かなり有力な選択肢になるはずだ。
ちなみに、他のメーカーからも、今後INDILINX製の新コントローラおよび34nm NANDフラッシュを採用するSSDが登場してくると思うが、メーカーによっては見た目で判断が付かない場合も出てくるかもしれない。そのため、INDILINX製コントローラ搭載SSDを購入しようと思っている場合には、今後しばらくの間はコントローラの仕様もチェックするよう心がけたい。
(2009年 12月 4日)