平澤寿康の周辺機器レビュー

ウィザージャパン「USB/DVIワイヤレスドック EZR601WD」
~ワイヤレスUSB接続のフルHDディスプレイアダプタ+ドック機能



ウィザージャパン「USB/DVIワイヤレスドック EZR601WD」

月日 発売
価格:円



 ウィザージャパンが発売する「USB/DVIワイヤレスドック EZR601WD」は、USB Hub機能とUSBサウンド機能を併せ持つ、フルHD対応のディスプレイアダプタ。加えて、ワイヤレスUSBを利用した無線接続も大きな特徴となっている。

●ワイヤレスUSBで無線接続

 「USB/DVIワイヤレスドック EZR601WD」(以下、EZR601WD)は、USB Hub機能とUSBサウンド機能を併せ持ってはいるものの、USBディスプレイアダプタとしての機能面だけを見ると、特に珍しいものではない。しかし、ワイヤレスUSBを利用し、PCと無線で接続するという点は、他の製品にはない大きな特徴となっている。

 製品パッケージには、HDMI出力やUSB Hub、オーディオ出力を持つ「ドッキングベース」と呼ばれる本体と、ワイヤレスUSBアダプタが2個入っている。付属のワイヤレスUSBアダプタはワイヤレスUSB 1.0準拠で、4.224~4.752GHzの周波数帯域を利用し、最大480Mbpsの速度とされている。2つのアダプタは、PCとドッキングベース側にそれぞれ取り付けるが、ペアリングは完了しているので、取り付けるだけですぐに利用可能となる。

 PC側のワイヤレスUSBアダプタは、USBコネクタが本体に対して垂直(L字型)に取り付けられ、270度の範囲で本体の向きを回転できるようになっている。ドッキングベース側のアダプタは、コネクタの回転機構などは用意されていないが、ドッキングベースのコネクタが、ドッキングベースに対し垂直になる向きと水平になる向きの2カ所用意されている。これによってドッキングベースを机の上だけでなく、ディスプレイ裏などに垂直に固定して利用することも可能だ。

 ドッキングベースの背面には、映像出力用のDVI-Iコネクタと、USB 2.0×2、音声出力用のステレオミニジャックが用意されている。映像出力は、DVI接続時には1,920×1,080ドットのフルHD出力をサポート。DVI-ミニD-Sub15ピン変換コネクタも付属しており、アナログRGB出力も可能。

 USB 2.0ポートは、キーボードとマウスのみに対応するとされている。実際に、USBメモリなどを接続してみると、デスクトップに「USB機器はサポートされていません」という警告メッセージが表示された。とはいえ、全く認識しないわけではなく、USBメモリは問題なく認識され、保存データへのアクセスも可能だった。ただ、ディスプレイアダプタ機能とUSBサウンド機能を同時に利用していることを考えると、USBメモリやUSB HDDなどのUSB機器を併用した場合には帯域不足となり、不具合が生じる可能性が高くなる。実際、USBメモリを取り付けてデータ転送を行なった場合には、画面描画が極端に重くなった。そのため、キーボードとマウス以外のUSB機器は、利用するべきではないだろう。

 利用シーンは、USBポートやディスプレイ出力などの外部インターフェイスが乏しい、あるいはドッキングステーションなどが存在しないネットブックやCULVノートでの利用がメインとなるだろう。通常なら、あれこれとケーブルを繋げないとできないことが、本製品ならUSBアダプタを1つ繋げるだけで済んでしまう。

EZR601WDに付属するドッキングベース。背面ポートにディスプレイやキーボード/マウス、スピーカーを接続すると共に、付属のワイヤレスUSBアダプタを取り付けて利用する背面には、映像出力用のDVI-Iコネクタに加え、キーボードとマウスを接続する2個のUSBポート、内蔵USBサウンド機能の音声出力用ステレオミニジャックが用意されているドッキングベースに取り付けるワイヤレスUSBアダプタ。出荷時点で、PC側に取り付けるワイヤレスUSBアダプタとのペアリングが完了している
ワイヤレスUSBアダプタは、ドッキングベース上部の専用USBコネクタに取り付けて利用するカバーをスライドさせることで現れる、ドッキングベース前方に用意されているUSBコネクタに取り付けて利用することも可能だPC側に取り付けるワイヤレスUSBアダプタ。USBコネクタはL字型に取り付けられている
PC側のワイヤレスUSBアダプタをPCのUSBポートに取り付ければ、ドッキングベース側のワイヤレスUSBアダプタと無線で接続されるコネクタ部は最大270度回転させることが可能だドッキングベースのUSBコネクタに、キーボード、マウス以外のUSB機器を接続すると、このような警告メッセージが表示される

●近距離での利用が基本

 ワイヤレスUSBは、もともと近距離での利用を想定した無線技術だ。EZR601WDも、PCとドッキングベースを近距離で利用することが基本となる。実際に試した限りでは、6畳程度の同一室内であれば、PCをどこに置いてもほぼ問題なく利用可能できた。壁を隔てた隣室にPCを置いた状態でも、接続が途切れることなく利用できた。とはいえ、その場合には描画速度が極端に低下し、快適な利用は不可能に近かった。やはり、利用時には同一室内での利用が基本と考えた方がいいだろう。

 ただし、PCとドッキングベースのワイヤレスUSBアダプタを密着するほどに近づけた場合でも、ウィンドウ表示のアニメーションがスムーズに表示されないなど、画面描画に重さを感じる。また、動画ファイルを再生させた場合にも、再生映像に若干の引っかかりを感じる。加えて、HD BenchやPCMark05など、各種ベンチマークソフトも正常に実行できなかった。

 これは、通信するワイヤレスUSBアダプタの性能が低いためだろう。EZR601WDでは、ワイヤレスUSBアダプタの正確な実効速度が測定できないので、どの程度の速度が発揮されているのかは不明だ。しかし、USBケーブルで接続するUSBディスプレイアダプタよりも明らかに描画が重いため、ワイヤレスUSBのデータ転送速度の遅さが原因と考えるのが自然だろう。そういった意味では、パフォーマンスを優先するためにUSBケーブルを利用した接続にも対応してもよかっと思う。

 ただし、EZR601WDのUSBサウンド機能で音声を再生させた場合、映像をPC側の描画機能を利用して表示しても、EZR601WD側で表示しても、音声と映像の同期が崩れることはない。また、USBポートに接続したキーボードとマウスの動作にも問題を感じることはなかった。帯域が足りないのは映像だけのようだ。

 ちなみに、EZR601WDのDVI出力はHDCPには非対応となっている。そのため、BDソフトや地デジなど、著作権保護されている映像は表示できない。

ドッキングベースにディスプレイとキーボード、マウス、スピーカを接続しておけば、PCにワイヤレスUSBアダプタを接続するだけで全てが利用可能となるワイヤレスUSBマネージャーで、接続状況を確認できる。同一デスク上や同一室内では、ほぼ問題なく接続可能だが、壁を隔てた隣室との接続では接続状況が悪くなり、極端に描画速度が遅くなる

●デジタル映像出力やドッキングステーションを持たないノートPCでの利用がおすすめ

 EZR601WDは、一般的なUSBディスプレイアダプタと比べ、ワイヤレスUSBを利用してワイヤレスで利用できる点や、USB HubやUSBサウンド機能などを併せ持っている点などが優位点となっている。特に、ワイヤレスで利用できるという点は、利用するPCの設置場所の制約が大幅に軽減されるだけでなく、ケーブルの取り回しでも大きな利点となる。加えて、ドッキングベース側にディスプレイやキーボード、マウス、スピーカを接続しておけば、PC側にワイヤレスUSBアダプタを取り付けるだけで、全てを即座に利用できるため、EZR601WDをドッキングステーション代わりに利用できるという意味でも魅力がある。

 もちろん、ワイヤレスUSBの実効速度が遅いため、描画がやや重いという欠点はある。それでも、キーボードやマウス、USBサウンド機能を同時にワイヤレスで利用できる利便性の高さは、他のUSBディスプレイアダプタにはない優位点だ。また、今回は試せなかったが、PC側に1個のワイヤレスUSBアダプタのみを取り付けるだけで、2個のEZR601WDを同時に利用可能となっており、簡単に2画面の同時出力を実現できるという点も面白い。

 映像表示やゲームプレイなどの用途には少々厳しいが、ビジネス系アプリケーションの利用やテキスト入力、Webアクセスといった用途であれば、描画の重さもそれほど気にならない。そのため、DVIやHDMIなどのデジタル映像出力端子がなく、ドッキングステーションも用意されていないノートPCでの利用を特におすすめしたい。

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(2010年 10月 13日)

[Text by 平澤 寿康]