山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

買って分かった「Google Pixel 10 Pro XL」、電子書籍ユースでの進化点と“まさかの弱点”

「Pixel 10 Pro XL」。今回筆者が購入したのはSIMフリーの256GBモデル、カラーはPorcelain

 Googleの「Google Pixel 10 Pro XL」は、Android 16を搭載した6.8型のスマートフォンだ。新たに発表された「Pixel 10」シリーズのフラグシップモデルに当たり、同社の生成AIサービス「Gemini」に最適化されているのが大きな目玉だ。

 この時期恒例となるモデルチェンジで登場した本製品は、外観やサイズにも大きな変化は見られず、一見するとマイナーチェンジのように感じられるが、実のところはどうなのだろうか。本稿では、筆者が購入した実機をもとに、電子書籍ユースを中心とした使い勝手を、従来モデルにあたる「Google Pixel 9 Pro XL」と比較しつつチェックする。

外観はほぼ変化なしもQi2対応でマグネット吸着機構が追加

 まずは従来モデルのPixel 9 Pro XLとスペックを比較してみよう。電子書籍ユースに直接関係しない項目は省いている場合もあるので注意してほしい。

Pixel 10 Pro XLPixel 9 Pro XL
発売年月2025年8月2024年8月
サイズ76.6×162.8×8.5mm76.6×162.8×8.5mm
重量232g221g
CPUGoogle Tensor G5
Titan M2 セキュリティ コプロセッサ
Google Tensor G4
Titan M2 セキュリティ コプロセッサ
RAM16GB16GB
ストレージ256/512GB128/256/512GB
画面サイズ/解像度6.8型/2,992×1,344ドット(486ppi)6.8型/2,992×1,344ドット(486ppi)
Wi-FiWi-Fi 7(802.11be)Wi-Fi 7(802.11be)
コネクタUSB Type-CUSB Type-C
防水防塵IP68IP68
生体認証指紋認証(画面内)、顔認証指紋認証(画面内)、顔認証
駆動時間/バッテリ容量最小5,079mAh
標準5,200mAh
最小4,942mAh
標準5,060mAh

 この表からも見る通り、基本スペックは驚くほど変化がない。CPUがTensor G4からG5へと進化するなど順当なスペックの向上はもちろんあるのだが、筐体サイズもまったく同一であるなど、どちらかというとマイナーチェンジに近い印象だ。

 ハードウェア面での大きな相違点が、マグネット吸着機構「Pixelsnap」を搭載し、Qi2準拠のワイヤレス充電に対応したことだ。規格自体はMagSafeがベースということもあり、今後は充電器はもちろん、アクセサリもバリエーションが増えていくだろう。こうした機構を新たに内蔵しながら、筐体の厚みが増していないのは秀逸だ。

 一方でそのせいか、重量は従来よりも増している。これまでPixelの大画面モデルは、その時点で販売されているiPhoneの競合モデルよりも軽量なことが売りだったが、本製品はその「iPhone 16 Pro Max」(227g)を超えてしまっている。前述のマグネットが追加されているとはいえ、これは少々いただけない。次期モデル以降の巻き返しに期待したいところだ。

 そのほかの違いとして挙げられるのが、バッテリの増量だ。今回は駆動時間の検証は行なっていないが、24時間以上から30時間以上へと伸びているとのことで、公称値の通りであれば歓迎だ。ただし前述の重量増にも影響していると考えられる上、生成AIなどデフォルトで動作するアプリも増えていると考えられるので、少々差し引いて考えるべきという気はする。

 ちなみに価格は19万2,900円からと、Pixel 9 Pro XL(17万7,900円から)より値上がりしたように見えるが、これは最小容量のモデルが異なるためで、同じ256GBで比較すると価格は維持されている。ただ128GBモデルが消滅する一方、大容量モデルが追加されることはなく、2ラインナップ(256GB/512GB)となったのは、選択肢が減ったという意味でマイナスだ。

左が本製品、右がPixel 9 Pro XL。サイズはまったく同一。ホーム画面のデザインは若干異なる(後述)
背面。デザインは同じだが、カメラバー部がひとまわり大きくなっている
右側面。上がPixel 9 Pro XL、下が本製品(以下同じ)。電源ボタン、音量ボタンの配置も同一だ
底面。スピーカーはUSB Type-Cポートの左右に並ぶ一般的なレイアウトに変更された
上面。SIMカードスロットは底面からこちらに移されている
重量は実測233g。従来が224g(SIMカード含む)なので10g程度増えたことになる

設定画面などはかなりの様変わり。気になるGPU性能

 セットアップのプロセスは、従来と大きくは変わらない。初期導入の時点でGeminiが利用できるのは今回が初だが、セットアップのフローには大きな違いは見られない。

 ホーム画面に関しては、Geminiのウィジェットが置かれていたり、また設定画面のアイコンがカラー化されたりと、Android 16アップデート済の従来モデルと比べても、かなり様変わりしている。これは「Material 3 Expressive」と呼ばれるUIの採用によるものだ。

 このほか、設定画面もアダプティブトーンなど従来なかった項目が追加されている。一般的に、外観の変化を伴わないモデルチェンジは、そのぶん中身が変化している場合があると言われるが、それを地で行っている印象だ。とはいえ操作性そのものは従来モデルと変わっておらず、いい意味でこなれている印象を受ける。

ホーム画面。左が本製品、右がPixel 9 Pro XL(以下同じ)。Geminiのウィジェットなど新しい要素が追加されている
設定画面。アイコンがカラー化されるなどデザインの変更が見られる
「表示サイズとテキスト」。項目は同じだがデザインが大きく変更されているほか、細かい文言も見直されている
「ディスプレイとタップ」。アダプティブトーンなど新しい項目が追加され、項目の順序が見直されている

 外観はどうだろうか。従来のPixel 9 Pro XLは、先代からデザインが変更されたこともあり、筐体サイズなどに差異が生じたのはもちろん、画面隅の丸みが異なるなどの変化もあったが、本製品はそうした点も違いはない。

 ただし背面カメラのハウジング部は一回り大きくなっている。従来モデルの横に並べて見比べなければまず分からない違いだが、そのせいで従来モデルの保護ケースは流用できなくなっている。保護ケースの購入および流用を考えている人は要注意だ。

エッジ部の比較。左が本製品、右がPixel 9 Pro XL。先代のPixel 8 Proとは角の丸みが異なるなど相違があったが、本製品は見分けがつかない
背面カメラのハウジング部は従来モデルよりも一回り大きくなっている。デザインが同一なので並べないと気づかない

 一方で従来モデルと大きく異なるのは、背面のワイヤレス充電がQi2認証対応品へと進化し、それに伴って吸着用マグネットが内蔵されたことだ。これにより、純正のPixelsnap充電器はもちろん、iPhone用に開発されたMagSafeアクセサリもぴったりと吸着できる。あまりにもフィットするので、純正品かと思ってしまうほどだ。

 本製品とiPhoneの2台持ちをしているユーザーは、共通の充電器が使えて便利だろうし、そうでないユーザーにとっても、充電時に置く位置をしっかり決めなくてはいけなかった従来モデルとは使い勝手に大きな差がある。長期的に見ると、これだけでも買い替える価値はあるだろう。

Qi2規格のワイヤレス充電器をマグネットで背面に吸着できる。使い勝手はiPhoneにおけるMagSafe充電器と同様だ。マグネットの吸着力も十分

 少々気になるのはGPU性能の低さだ。一般的なベンチマークでは従来モデルと比べて順当にスコアがアップしているのだが、GPU周りの数値だけはむしろ下がっており、アプリによってはスコアが3分の1近くに激減している場合もある。

 本製品のGPUのスコアの低さは海外でも早くから指摘されており、発売までにチューニングが施されるのか注目が集まっていたが、現状では特に対策は施されていないようだ。電子書籍ユースではまず関係してこないが、微減というレベルではないだけに、特に従来モデルからの買い替えを考えているユーザーにとっては気になるポイントだろう。

Google Octane 2.0での比較は「75558」。従来モデルの「68929」に対して9.6%増
3DMark Wild Lifeでの比較は「3444」。従来モデルの「2657」に対して29.6%増
Geekbench 6(CPU)の比較は、「1996/4836」。従来モデルの「1938/4289」に対してそれぞれ3%増、12.8%増
Geekbench 6(GPU)での比較は「3161」。従来モデルの「8379」に対して62.3%減。かなり極端な減少だ

表示性能は従来モデルから変わらず

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」、雑誌は「DOS/V POWER REPORT」の最終号を使用している。

 ここまで見てきたように、本製品は従来モデルと画面サイズは変わっておらず、解像度やコントラスト比も等しいため、表示性能に変化はない。画面の明るさは、最大輝度が2,000cd/平方m→2,200/平方m、ピーク輝度が3,000/平方m→ 3,300/平方mとそれぞれ向上しているが、目視での差はごくわずか。最大120Hzというスムーズディスプレイも同様なので、スクロールなどでの性能も変わらない。

コミックを表示した状態。天地に大きな余白が生じるが、これは従来モデルも含め、昨今のスマホに共通する傾向。オプションなどはここに表示されることが多い
左が本製品、右が従来のPixel 9 Pro XL。表示サイズも同等だ
画面幅はジャスト70mm。これは従来のPixel 9 Pro XLはもちろん、その先代のPixel 8 Proから変わっていない
画質の比較。左が本製品、右が従来のPixel 9 Pro XL。同じ解像度ということで、特に相違は見られない
見開き表示は、解像度的には不可能ではないが、サイズが小さいため実用性はいまいちだ
テキストを表示した状態。画面が上下に長いことから1行あたりの文字数はかなり多め。見にくい場合はオプションで上下を詰めるとよい
左が本製品、右が従来のPixel 9 Pro XL。設定は合わせているが、1行あたりの文字数はわずかに相違がある
画質の比較。左が本製品、右が従来のPixel 9 Pro XL。コミックと同様、こちらも相違は見られない

 一方、持ちやすさという観点においては、ユーザーの側で一工夫が必要だ。というのも本製品は背面から側面にかけて非常に滑りやすく、手でしっかりと握るのが難しいからだ。電子書籍ユースではゲームのような操作時の激しい動きは伴わないとはいえ、滑って落としそうになることはしばしばある。

 そのため利用にあたっては、保護ケースはもちろん、指を通すリングやバンドなど、保持力を向上させるための工夫があるとベターだ。音量ボタンを使ってページをめくるのであればなおさらだろう。あまりアクセサリにこだわると、ただでさえヘビーな重量がさらに増すので悩ましいところだが、落として破損させるよりははるかにマシだろう。

背面および側面はかなりツルツルとしており、保護ケースなしで使うのはかなり気を使う
保護ケースの追加はもちろん、MagSafe互換のスマホリングやベルトなどを使って保持力を向上させると使い勝手がアップする
音量ボタンは電源ボタンよりも下に配置されているため、ページめくりボタンとしても使いやすい。ただし触感はやや硬め

 ところでPixelシリーズは、外部モニターに映像を出力するにはかつてはChromecast経由でのワイヤレス出力に限られていたが、今春のソフトウェアアップデートで有線ケーブルでの出力が可能になった。本製品もこの仕様を踏襲しており、モバイルモニターなど外部モニターに映像をミラーリング表示させるという技が使える。

 そのため、たとえば雑誌のような判型が大きいコンテンツを表示したい場合、本製品の画面にではなく、ケーブルをつないだ先のモニターに出力し、そちらで読むことができる。ワイヤレスと違ってタップやスワイプなどでの遅延もほぼないので、操作も快適だ。可搬性を損なうので利用シーンは限られるが、そうした機能も知っておけば、より本製品を幅広く活用できるだろう。

アップデートで機能が追加された従来モデルと同じく、有線による外部モニターへの出力に対応している

標準サイズのスマホとしてはほぼ完成形か

 以上のように、電子書籍を読むための端末としては、従来と比べて大きな変化はない。標準サイズのスマホとしてはほぼ完成形にある上、これ以上の画面サイズを求める場合は、本製品と同時に発表されている折りたたみタイプの「Pixel 10 Pro Fold」こそが適役ということになるので、あまり進化らしい進化がないのは納得がいく。

 これがiPhoneだと、カメラコントロールという新機軸のハードウェアを追加したり、また今秋発売予定のラインナップでは超薄型モデルの投入が噂されるなど、ハードウェアでも何かしらの変化をつけてくる傾向があるが、このPixelシリーズでは、そうした変化の対象は生成AIを中心としたソフトウェア側に向けられており、今回はQi2対応がかろうじて目立つ程度だ。今後もこうした状況が続くのではないだろうか。

 なお上でも述べた折りたたみモデル「Pixel 10 Pro Fold」は、本製品よりも発売のタイミングが遅れる形で、10月上旬の発売が予定されている。こちらについてはまた別の機会に紹介したい。

SIMカードスロットは従来は底面にあったのが上部へと移動している