山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

Kindle Oasis以上に爆速?7型へと大型化した「Kindle Paperwhite(第12世代)」を試す

「Kindle Paperwhite(第12世代)」。価格は2万7,980円。大容量かつワイヤレス充電にも対応した「シグニチャーエディション」もラインナップする

 「Kindle Paperwhite(第12世代)」は、E Ink電子ペーパーを搭載したAmazonの電子書籍端末だ。画面が6.8型から7型へと大型化したほか、パフォーマンスが向上したことが大きな特徴だ。

 2012年のKindle上陸時からおなじみの「Kindle Paperwhite」は、2021年に発売された第11世代で画面サイズが6型から6.8型へと大型化。そして今回さらにひとまわり大きい7型へと進化し、かつての上位モデル「Kindle Oasis」と同じサイズへと到達した。その一方で価格が大幅に上昇しているのは、ユーザーにとって気になるところだ。

 今回は筆者が購入した実機をもとに、電子書籍ユースを中心とした使い勝手を、従来モデルおよびかつての上位モデル「Kindle Oasis」、および同時発売となった無印の6型「Kindle」と比較しつつチェックする。

画面サイズが7型へと大型化。価格は大幅アップ

 まずは従来モデルとの比較から。

Kindle Paperwhite
(第12世代)
Kindle Paperwhite
(第11世代)
Kindle Paperwhite
(第10世代)
発売月2024年10月2021年10月2018年11月
サイズ176.7×127.6×7.8mm174×125×8.1mm167×116×8.18mm
重量211g205g約182g
画面サイズ/解像度7型/1,272×1,696ドット(300ppi)6.8型/1,236×1,648ドット(300ppi)6型/1,072×1,448×ドット(300ppi)
ディスプレイAmazon Paperwhiteディスプレイ
16階調グレースケール
Amazon Paperwhiteディスプレイ
16階調グレースケール
Carta電子ペーパー技術採用Amazon Paperwhiteディスプレイ
16階調グレースケール
通信方式2.4GHz/5GHzをサポートWi-Fi 4Wi-Fi 4
内蔵ストレージ約16GB約8GB約8GB/約32GB
フロントライト内蔵(暖色対応)内蔵(暖色対応)内蔵
ページめくりタップ、スワイプタップ、スワイプタップ、スワイプ
防水/防塵機能あり(IPX8規格準拠)あり(IPX8規格準拠)あり(IPX8規格準拠)
端子USB Type-CUSB Type-CmicroB
バッテリ持続時間の目安最大12週間
(明るさ設定13、ワイヤレス接続オフ、1日30分使用時)
最大10週間
(明るさ設定13、ワイヤレス接続オフ、1日30分使用時)
数週間
(明るさ設定10、ワイヤレス接続オフ、1日30分使用時)
発売時価格27,980円14,980円(広告あり)
16,980円(広告なし)
13,980円(8GB、広告つき)
15,980円(8GB、広告なし)
15,980円(32GB、広告つき)
17,980円(32GB、広告なし)
備考ストレージ32GB、ワイヤレス充電に対応したシグニチャーエディションも存在4Gモデルも存在

 本製品と同時発売の無印の6型「Kindle」が、画面回りは従来モデルとまったく変わっていないのに対して、本製品は画面サイズが6.8型から7型と、従来より一回り大きくなっている。

 7型というサイズにこだわったのは、後継のないまま終息した上位モデル「Kindle Oasis」の画面サイズをカバーする必要があったためだと考えられる。手書き対応の10.2型「Kindle Scribe」は例外として、これまで6.8型だった「Kindle Paperwhite」を大型化すれば、6型から7型というこれまでと変わらない範囲をカバーできるというわけだ。

 そのほかの相違点としては、最大10週間だったバッテリ持続時間が最大12週間に伸びていること、さらにストレージが8GBから16GBへと増量されていることが挙げられる。ストレージは無印Kindleも16GBを確保していることから、8GBのままにするわけにはいかなかったという事情もあるだろう。ちなみに本製品にワイヤレス充電機能を追加した上位モデル「シグニチャーエディション」はストレージが32GBなので、バランス的にもちょうどよい。

 また細かい違いとしては、Wi-Fiが2.4GHz帯に加えて5GHz帯にも対応したことが挙げられる。速度面のメリットよりも、自宅内のWi-Fiを5GHz帯で統一しているユーザーにとって恩恵があるものと考えられる。このほかバッテリ持続時間は最大12週間ということで、これは同時発売の無印Kindleの2倍だ。

縦向きでの利用を想定したデザイン。ベゼルと画面に段差はなく、防水機能を搭載するなどの仕様は従来モデルと同じ
背面は滑り止め加工が施されている。中央にはAmazonのアイコンがモールドされている
底面にはUSB Type-Cポートのほか、電源ボタンを備える。上面および側面にはボタンやポート類はない
重量は実測210g。ボディサイズが大型化したにもかかわらず数gしか増えていないのは秀逸だ
フロントライトは24段階で切り替えられる。LEDは17個で、6型の無印Kindle(LED 4個)に比べて明るさのムラもない
暖色にも対応する。実際に使う場合は寒色とミックスさせて割合を調整する

 そして従来モデルと最大の違いが価格だ。今回のモデルでは従来あった広告ありモデルが廃止になり、広告なしモデルに一本化されているが、1万6,980円だった価格が2万7,980円へと大幅にアップしている。むしろ従来の価格はKindleというプラットフォームを普及させるための利益度外視の値付けであり、2万円台後半という本製品の価格こそが、ハードの原価からして妥当なプライスなのかもしれない。

 とはいえ、これまでKindleと言えば1万円台半ばで、セール時には1万円を切るか切らないかという価格に慣れてしまっていたユーザーからすると、この値上げはかなり衝撃的だ。現時点では日本未発売のカラーE Inkモデルとの価格差を小さく見せるための施策の可能性もあるが、真相は定かではない。

ひとまわり大型化したことで片手持ちが困難に?

 セットアップの手順は、従来モデルと同じく、本製品上で行なうか、あるいはスマホのKindleアプリを使うかの2択となる。後者であればアカウントやパスワードなどを本製品のキーボードから入力しなくて済むので、スマホにKindleアプリをインストール済みであれば利用することをおすすめする。こちらについては別途、無印の6型Kindleのレビューで紹介する。

製品パッケージ。以前はほぼ全面が青くコートされていたのが今回は上部のみに改められている
同梱品一覧。白と青の小冊子に加えてUSB Type-C to USB Type-A仕様のUSBケーブルが添付される。Fireタブレットと違いAC変換アダプタは同梱されない
まずは言語を選択。下段にあるスクリーンリーダによる読み上げ機能は従来モデルで追加されたものだ
従来と同じくKindle上で設定するか、あるいはスマートフォンを使って設定するかを選ぶ。今回は前者を選択
Wi-Fi設定を行なう。今回のモデルからは新たに5GHz帯に対応した
続いてAmazonアカウントへのサインインを行なう
基本設定はこれで完了。問題なければ「次へ」をタップして進む
子ども用のプロフィールを作るか否かを尋ねられる。「次へ」をタップして進む
ホーム画面。従来とは特に違いはない。下段からライブラリへと切り替えられる
画面を上から下へとスワイプすると明るさ調整などを行なうための設定画面が表示される

 従来モデルとの比較ではどうだろうか。画面サイズが大きくなっているのは、横に並べるとはっきり分かるのだが、ボディのデザインが変わっていないこともあって、単体で見るとほとんど区別がつかない。感覚的には、iPadがモデルチェンジによって9.7型、10.2型、10.9型と大型化していったのと似た印象だ。

従来モデル(右)との比較。画面サイズは6.8型から7型へと拡大したが、ボディサイズはほぼ同等。またデザイン自体も変わっていない
ベゼル幅の違い。左が本製品、右が従来モデル。それほど変わっていないというのが率直なところ
背面の比較。デザインはまったく同一で、滑り止め加工が施されているのも同じ
底面の比較。上が本製品、下が従来モデル。ボディ横幅がわずかに大きいほか、電源ボタンも若干大型化している。ちなみに厚みは本製品のほうが0.3mm薄いが、目視では逆に厚くなっているように見える

 同時発売の6型の無印Kindleとの違いは、フロントライトが暖色に対応することや、防水に対応すること、バッテリ持続時間に2倍もの開きがあることが挙げられる。また、無印Kindleのようなプラスチック感が強いボディではなくマットな加工が施されていることもあるが、やはり最大の違いはボディサイズだ。具体的には、片手持ちにはかなり厳しいサイズであることが少々気になる。

 筆者は手のサイズが大きいほうだが、6型であれば寝転がった状態でもある程度保持できるのに対し、7型ではこうした姿勢での保持はまず無理だ。かつてのKindle Oasisならば、グリップ部の段差に指を引っ掛けて安定させることも可能だったが、本製品もそれはできない。寝転がって利用するユーザーは、あまり本製品にこだわらず、6型のKindleも含めて検討したほうがよいだろう。

6型の無印Kindle(右)との比較。画面サイズはかなりの差がある。また防水仕様ということもあり、本製品は無印のKindleと違って画面とベゼルの間に段差がないのも特徴
フロントライトが暖色に対応するのは本製品のみで、無印のKindle(右)は非対応

画面の切り替えが高速化。Kindle Oasisをも凌駕

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を使用している。

 解像度は300ppiということで、電子書籍端末としては十分な解像度だ。もっともかつてと異なり、現行のKindleのラインナップは無印のKindleも含めてすべて300ppiなので、差別化要因にはならない。

 一方で、無印のKindleと比べた場合にメリットとなるのは画面サイズだ。前述のように本製品は7型ということで、従来のKindle Oasisのように横倒しにしての見開き表示にも対応する。見た目は小さく見えるが、実はスマホで単ページ表示をする場合のページサイズと変わらないので、見開きにこだわる場合はこうした使い方も視野に入ってくるだろう。少なくとも6型のKindleでは不可能な使い方だ。

コミックを表示したところ。7型ということでサイズにも余裕がある
6.8型の従来モデル(右)との比較。ほんのわずかだが確かに大きくなっている
横向きにして見開き表示したところ。元の解像度が高いので細部が潰れることもない
1ページあたりのサイズは、iPhone 16 Pro Max(右)で単ページ表示を行なった場合とほぼ同じなので、見開き表示にこだわりたい人には選択肢の1つになるだろう
解像度の比較。左は単ページ表示時、右は見開き表示時。ディテールは多少粗くなるが致命的というほどではない
テキストを表示したところ。従来よりも余裕をもって表示できる。老眼などにも対応しやすいだろう
6.8型の従来モデル(右)との比較。行数こそ同じだが、1行に表示できる文字数は従来よりも2文字ほど増えている

 さて本製品はページめくりの速度が従来モデル比で25%向上したとされている。もともと十分に高速なこともあってか、実際にページをめくっても従来モデルとの差は感じないが、ホーム画面やライブラリ、ストアを行き来するにあたって、タップしてから反応するまでのレスポンスは、本製品のほうが明らかに高速だ。

 すでに極限まで高速化されているページめくりとは異なり、ホーム画面など大量のサムネイルを読み込む場合の画面遷移にはまだ速度向上の余地があり、今回のモデルではそれを意識したチューニングが行なわれているのだろう。これまで画面の切り替えにもっさり感を感じていたユーザーにとっては、このことは画面のサイズが大きくなったこと以上に価値がありそうだ。

ページめくりの速度を従来モデル(右)と比較したところ。タップとスワイプ、両方で試しているが、もともと高速ということもあり、ほとんど違いは感じない
こちらはホーム画面を基点に、ライブラリやストアに移動したり、本を開いたり閉じたりしている様子。こちらは本製品のほうが圧倒的にレスポンスが向上していることが一目瞭然だ

 また、かつての最上位モデル「Kindle Oasis」と比べた場合も、本製品のほうが明らかに速い。正確に言うと、従来の第11世代モデルの時点で、Kindle Oasisよりも高速なページ巡りが行なえていたので、本製品はそれらのレスポンスがさらに向上したことになる。Kindle Oasisも登場時点では爆速に感じられたものだが、それを凌ぐ速度ということで、本製品の性能の高さがよく分かる。

かつての最上位モデル「Kindle Oasis」(右)との比較。同じ7型だがデザインはまったく異なる
厚みの比較。本製品(左)はKindle Oasis(右)のグリップ部よりは薄く、画面部よりは厚みがある
【動画】ページめくりの速度をKindle Oasis(右)と比較したところ。ページめくりそのものの速度はもちろん、タップしてから反応するまでの速さについても、本製品の圧勝だ

カラーモデルは待つべきか否か

 以上のように、画面サイズが一回り大きくなったのが目立つが、真の価値は画面切り替えの高速化にあるというのが実際に使い比べてみての感想だ。6型では物足りない、防水機能が必要、フロントライトに暖色も選択できてほしいなどの要素以外に、より高速なレスポンスを求めるユーザーにもおすすめできる。ページめくりボタンがないのは惜しいところだが、これは致し方ないだろう。

 一方で、本製品に興味を持っているのであれば視野に入れておくべきなのは、現時点では日本での発売がアナウンスされていない本製品のカラー版「Kindle Colorsoft」だ。電子書籍では、本文ページはモノクロでも表紙や口絵はカラーという本は多いし、技術書などでは説明やグラフが色分けされている場合も多い。こうした場合に、カラー表示ができることが有利なのは明らかだ。

本製品と同時発表のカラーE Ink搭載モデル「Kindle Colorsoft」(Amazon.comのサイトより)。Koboのカラーモデルと同じKaleido 3を採用し、シグニチャーエディションのみの1モデル展開。日本での展開は現時点で公表されていない

 現時点でのカラーE Inkは彩度が低いといった問題もあるので、今回のカラーモデルがおすすめに値するかは今は分からないが、もし購入を急いでいなければ、こちらのリリースを待って判断する手もあるだろう。現時点で日本未発売となっているのは、技術的な問題というよりも、生産数に限界があるだけで、遅かれ早かれ日本市場でも投入されると考えられるからだ(次期モデルまで見送られる可能性ももちろんある)。

 また本製品には、ワイヤレス充電に対応し、なおかつストレージ容量が倍になった上位モデル「シグニチャーエディション」も用意されているので、購入にあたってはこちらも併せて検討したいところだ。