山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
5万円台半ば、見開き読書に絶妙なサイズ感の10.4型タブレット「Galaxy Tab S6 Lite」
2023年7月5日 06:17
サムスン電子の「Galaxy Tab S6 Lite」は、10.4型のAndroidタブレットだ。iPadと同じミドルクラスを狙った製品でありながら、スタイラスのSペンが付属しつつ実売価格は5万6,799円と、リーズナブルな価格が特徴だ。
ここのところ、Googleの「Pixel Tablet」、さらにAmazonのFireタブレットの最上位モデル「Fire Max 11」と、10型クラスのタブレット市場が活況を呈している。ローエンドではない一定の性能を備え、さらに価格も10万円は超えないミドルクラスの製品は、以前はiPadくらいしか選択肢がなかったところ、にわかに選択肢が増えつつある状況だ。
本製品もその1つで、同社の「Galaxy Tab S8」シリーズのエントリー向けという位置づけであり、実売価格は64GBで5万台後半とリーズナブルに設定されている。同じ容量のiPadと比べると1万円安く、さらにスタイラスのSペンが付属するぶんお買い得というわけだ。
今回はメーカーから借用した機材を用い、電子書籍ユースを中心とした使い勝手をiPadやPixel Tabletと比較しつつチェックする。
ひとまわり小さいサイズ。レイアウトは縦向き前提
まずは競合製品との比較から。
Galaxy Tab S6 Lite | Pixel Tablet | iPad(第10世代) | Fire Max 11(第13世代) | |
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発売日 | 2023年6月 | 2023年6月 | 2022年10月 | 2023年6月 |
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部) | 244.5×154.3×7.0mm | 258×169×8.1mm | 248.6×179.5×7mm | 259.1×163.7×7.50mm |
重量 | 465g | 493g | 477g | 490g |
OS | Android | Android | iOS | Fire OS |
CPU | Snapdragon 720G 2.3GHz, 1.8GHz オクタコア | Google Tensor G2 Titan M2 セキュリティ コプロセッサ | A14 Bionicチップ 6コアCPU 4コアのグラフィックス 16コアNeural Engine | 8コアプロセッサ - 2x Arm Cortex-A78 (最大2.2GHz)、6x Arm Cortex A55 (最大2GHz) |
メモリ | 4GB | 8GB | 4GB | 4GB |
画面サイズ/解像度 | 10.4型/2,000×1,200ドット(224ppi) | 10.95型/2,560×1,600ドット(276ppi) | 10.9型/2,360×1,640ドット(264ppi) | 11型/2,000×1,200ドット(213ppi) |
通信方式 | Wi-Fi 5(802.11ac) | Wi-Fi 6(802.11ax) | Wi-Fi 6(802.11ax) | Wi-Fi 6(802.11ax) |
生体認証 | 顔認証 | 指紋認証 | 指紋認証 | 指紋認証 |
バッテリー持続時間(メーカー公称値) | 最大15時間(ビデオ再生時間)/7,040mAh | 最大12時間の動画ストリーミング | 最大10時間 | 最大14時間/7,500mAh |
コネクタ | USB Type-C | USB Type-C | USB Type-C | USB Type-C |
スピーカー | デュアル | 4基 ※本体のみ | 2基(上下) | 2基 |
メモリカード | ○(最大1TB) | - | - | ○(最大1TB) |
ワイヤレス充電 | - | ○ | - | - |
価格(本稿執筆時点) | 5万6,799円(64GB) | 7万9,800円(128GB) 9万2,800円(256GB) | 6万8,800円(64GB) 9万2,800円(256GB) | 3万4,980円(64GB) 3万9,980円(128GB) |
備考 | イヤフォンジャック搭載 Sペンが付属 | 充電スピーカー ホルダーが付属 | - | - |
本製品のライバルとなるのは、iPad、および先日発表されたGoogleの「Pixel Tablet」が挙げられる。またAmazonのFire Max 11も、解像度が本製品ということもあり、電子書籍ユースではライバルとなるだろう。
本製品はそれらの製品と比べた場合、画面サイズがわずかに小さいものの、そのぶん薄く軽いのが特徴だ。このひとまわり小さいサイズは本製品を見ていく上でかなり大きなポイントとなるので、念頭に置いてこのあとの話を進めていく。
CPUはSnapdragon 720Gで、過去にAQUOS sense4 plusに採用されていたことからも分かるように、それほど新しいSoCではない。またメモリも4GBとそれほど潤沢ではないほか、Wi-Fiも11acまでの対応(Wi-Fi 5)だ。目標となる販売価格に合わせてハードウェアを取捨選択していった結果だろう。ベンチマークについては後述する。
Pixel TabletやiPadにない特徴として、メモリカードによる容量拡張が行なえることが挙げられる。本製品は64GBモデルのみで容量違いのバリエーションはないが、メモリカードをデータの保存先として利用できるのは利点だ。ちなみに最大1TBまで対応しているのは、同じくメモリカードに対応するFire Max 11と同じだ。
競合製品と異なる点として興味深いのは、前面カメラの配置が縦向きでの利用を前提にしていることだ。前述の3製品は、Web会議やビデオチャットでの利用を想定して横向き前提でのレイアウトが採用されているのに対して、本製品は前面カメラは短辺側に配置されるほか、背面ロゴなども縦向きを前提としたレイアウトなのが珍しい。
ローエンドではないがハイエンドでもない
アプリについては、サムスンの自社アプリを中心に、Googleやマイクロソフトのアプリを加えた構成になっている。そのほかのサードパーティ製アプリはNetflixやSpotifyを除けばほぼ皆無で、全体的にはシンプルにまとまっている。素のAndroid 13と比べると、標準的なアイコンのデザインはやや独特だ。
実機を見てまず感じるのは、そのコンパクトさだ。筆者がここ数週間、10.95型のPixel Tabletや11型のFire Max 11など、10型クラスと言いつつ実質11型の製品を使っていたせいもあるだろうが、iPadと並べた時も、高さはほぼ同じで幅だけがスリムであったりと、コンパクトさを感じる要因はあちこちにある。
動作速度は決してもっさりしているわけではないが、本製品を使い始めるまでしばらくPixel Tabletを使っていた筆者の感覚からすると、画面の切り替わりなどの操作で、ワンテンポ待たされると感じることがしばしばある。
実際にベンチマークを取ってみると、スコアはPixel TabletやiPadの半分~3分の1といったところで、その前にレビューしたAmazonのFire Max 11とはほぼ同等のスコアだ。これらは実際に使った感覚ともおおむね一致する。ローエンドではないものの、決してハイエンドではない点は、肝に銘じておいたほうがよさそうだ。
10型クラスとしては表示サイズは小さめ
では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、雑誌は「DOS/V POWER REPORT」の最新号を使用している。
解像度は224ppiということで、Pixel Tablet(266ppi)やiPad(264ppi)に比べるとやや低め。ただし実際に画像を比較した限りでは、一目瞭然かというとそうではない。十分に実用レベルといえる表現力だ。
それよりも本製品の場合、大きなポイントになるのはやはり画面サイズだ。Pixel TabletやiPadよりも一回り小さく、またアスペクト比が細長いことから、画面に表示されるページのサイズは一回り小さくなる。
もちろんコンパクトと言っても、8型クラスのタブレットと比べれば差は歴然なのだが、10型クラスということである程度の大きさで表示できることを期待して購入すると、意外な小ささに戸惑う可能性はある。8.3型のiPad miniも含め、同じページを表示した場合のサイズの比較を以下に掲載するので、参考にしてほしい。
なお電子書籍の利用にあたって、できれば設定を変更しておきたいのが、ナビゲーションバーの方式だ。本製品は、最近のAndroidとしては珍しく、ジェスチャーナビゲーションではなく3ボタンナビゲーションが有効になっており、下段のボタンによって天地が圧迫されてしまっている。
特に電子書籍ストアのライブラリ表示ではかなり露骨に影響が出るので、なるべくであればジェスチャーナビゲーション(本製品での呼び名は「スワイプジェスチャー」)に切り替えたほうがよいというのが筆者の意見だ。
ところで本製品はAndroidということで、音量調節ボタンを使ったページめくりにも対応しているが、実際に試した限りでは、画面が横向きでの利用はあまり実用的ではない。
というのも、横向きの場合は音量調整ボタンは左上に配置されるのだが、隣に電源ボタンがあるぶん本体端からの距離があり、左手で操作するには指をかなり伸ばさなくてはいけないからだ。指紋認証センサーが誤反応するため押しづらかった前回のPixel Tabletとはまた違った意味で、実用性はいまいちだ。
一方で、本体を縦向きに使う場合は、この音量調整ボタンが右手人差し指で極めて操作しやすい場所に配置されるので、逆に実用性は高い。ボタンは表面が平たいタイプではなく突起があるタイプで、繰り返し押すと指先が痛くなってくることにさえ気にしなければ、十分に役に立つだろう。
このサイズ感が気に入るかどうか
以上のように、最近相次いで登場している実質11型クラスのタブレットの中ではやや小ぶりだが、8.3型のiPad miniでは見開き表示をするのに小さすぎるというユーザーには、逆に絶妙のサイズ感だろう。
実際に使ってみた限り、本製品に合うかどうかは、このサイズ感が気に入るかどうかでほぼ決まってしまうように感じる。可能ならば店頭などで現物を手に取ってサイズ感をチェックしたほうが、より納得のいく製品選びができるだろう。
かつてタブレットを購入するにあたっては、iPadの5万円前後というのが1つの基準だったが、今やそのiPadは実質6万円台半ばからと、相場自体がかつてより上がった状況にある。
そんな中で本製品は、価格とスペックのバランスが、なかなかいい線をついている。イヤフォンジャックやメモリカードスロットなど、古いタブレットからの買い替えを考える人の背中を押しやすい端子類が健在であることもポイントだろう。
最後に、これは本製品とデザインがよく似たFire Max 11にも言えるのだが、背面はやや滑りやすく、うっかり落下させてしまう危険は相応にある。同時発売のブックカバーをはじめとして、筐体側を保護カバーはなるべく早いタイミングで追加しておいたほうが、長期にわたって安全に使えるはずだ。