山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

手のひらサイズの超小型Androidスマホ「Jelly 2」で電子書籍は楽しめるのか

Unihertz「Jelly 2」

 「Jelly 2」は、Unihertzが販売する超小型のAndroidスマートフォンだ。3型というコンパクトな画面サイズで、手のひらにすっぽりと収まるボディサイズながら、フルスペックと呼べる仕様を搭載していることが特徴だ。

 ブラウザや地図アプリなど、画面の広さを必要とする用途には向かない本製品だが、手にすっぽり収まるホールド感のよさ、そして軽さは魅力的だ。電子書籍ユースでも、コミックは難しいにしても、テキストを読む用途であれば、他にない面白い使い方が可能になる。

 今回は、この3月から一般販売が開始された本製品の実機を入手したので、以前紹介した「Rakuten Mini」とも比べつつ、電子書籍ユースでの可能性をチェックしていく。一般的な用途ではすでにレビューが掲載済みなので、そちらをご覧いただきたい。

3型ながらフルスペック。厚みはあるがメリットも

 まずは同じ超小型スマホである「Rakuten Mini」とスペックを比較してみよう。

Jelly 2(日本向けモデル)Rakuten Mini
Unihertz楽天モバイル
発売年月2021年3月2020年4月
サイズ(幅×奥行き×高さ)95×49.4×16.5mm106.2×53.4×8.6mm
重量110g79g
OSAndroid 10Android 9
CPUHelio P60(オクタコア2.0GHz)Qualcomm Snapdragon 439(オクタコア 2GHz+1.45GHz)
RAM6GB3GB
ストレージ128GB32GB
画面サイズ3.0型3.6型
解像度480×854ドット(326ppi)720×1,280ドット(408ppi)
Wi-Fi802.11ac802.11ac
コネクタUSB Type-CUSB Type-C
防水防塵-IPX2 / IP5X
生体認証顔認証、指紋認証顔認証
メモリカード対応-
駆動時間/バッテリ容量2,000mAh1,250mAh

 Rakuten Miniは3.6型という画面サイズと、一般的なスマホと変わらない薄型筐体が特徴だったが、本製品はさらに一回り小さい3型の画面を備えつつ、厚みは16.5mmとおよそ倍もある。重量も、150~200gが当たり前の一般的なスマホよりは軽量だが、100gの大台は越えており、Rakuten Miniの79gには及ばない。

 もっとも本製品は、この厚みの多くを占めているとみられる2,000mAhのバッテリにより、Rakuten Miniとは比べ物にならない長時間駆動を実現している。「iPhone 7と同等」という公式サイトの謳い文句こそ眉唾ものだが、見た目のスマートさよりも実用性を重視したこの仕様は、プラスに捉える人も多いはずだ。

画面は3型。丸々とした筐体が特徴だ
Rakuten mini(右)との比較。本製品のほうがひとまわり小さい
iPhone 12 Pro Max(右)のような大型スマホと並べるとその小ささが際立つ
厚みの比較。右上がRakuten mini、右下がiPhone 12 Pro Max。どちらとの比較でもかなり厚みがあることが分かる

 さらに本製品は、SoCがHelio P60(オクタコア2.0GHz)、メモリが6GB、ストレージが128GBと、ミドルクラスのスマホと比べて遜色ないスペックを搭載している。筐体の小型化や薄型化など何らかの特徴付けに振った製品は、その代償としてスペックが犠牲になることが少なくないが、本製品ではそうした心配は無用だ。

 また顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴だ。マスクをしている時は顔認証ではなく指紋認証が望ましいし、手袋をしていて指紋認証が使えない冬場は顔認証が欠かせない。これら2通りの生体認証が使い分けられるのは、実際の使い勝手を考えると、大きなメリットだ、本製品は画面が小さくPINの入力は苦手なので、そうした意味でも合理的だ。

 これに加えて日本向けモデルはFeliCa認証バージョンということで、おサイフケータイが使えるのも利点だ。メインのスマホとしてiPhoneを利用している場合に、楽天EdyやWAONなど、iPhoneでは使えない電子マネーを本製品に入れて持ち歩くというのは、現実的な使い分けだろう。

 ちなみに価格は219.99ドルで、2月下旬の注文時点でPayPal経由で実際に支払ったのは24,313円だった。前述のようにミドルクラスのスペックで、抜けがあるとすればせいぜい防塵防水系の機能だけであることを考えると、かなりリーズナブルな印象だ。

右側面には電源ボタンと、赤いプログラマブルボタン(後述)を搭載する。その下にはカードスロットも備える
左側面には音量調整ボタンが付属する。電源ボタンとあまり形状・サイズが違わず見分けにくい
上部の前面カメラ。顔認証に対応する。ちなみに上面にはイヤフォンジャックもある
ホームボタンや戻るボタンは画面外に配置されている
背面。カメラと指紋認証のセンサーを備える。その下にはNFCマークも見える

中身は一般的なAndroid 10スマホ。ベンチマークも高スコア

 パッケージにはACアダプタ、USBケーブル一式に加えて、TPU製の保護カバーも付属する。マイナーなスマホはアクセサリの選択肢が少なく探すのに四苦八苦することも多いので、標準で付属しているのはありがたい。またこの保護カバーに取り付けるストラップ、さらに画面保護フィルムも同梱されるなど、至れり尽くせりだ。

 充電ポートは本体底面ではなく側面にあるなど、配置にはややクセがある。同じ側面にはSIMカードスロットがあり、こちらにはメモリカードを入れることもできる。容量を増やせないRakuten Miniと比較した場合の大きな利点だ。

USBケーブル、ACアダプタ、ストラップが付属。ほかに日本語の取説類も付属する
さらにTPU製の保護ケースが付属するのもプラスだ
給電ポートは右側面に搭載される。付属のUSB Type-CケーブルもL字型だ
SIMスロットはmicroSDとの共用。DSDSに対応する

 セットアップの手順は、一般的なAndroid 10スマホと同様で、特に気をてらったフローはない。プリインストールアプリについては、Google製のアプリを中心に、必要最小限のアプリが揃っている。

 ホーム画面は、アプリのアイコンがバルーン状に表示されるRakuten Miniとは異なり、一般的なAndroidそのもので、そうした意味でも馴染みやすい。ドロワー方式ではなくすべてのアプリがホーム画面に並ぶ仕様なので、iPhoneをメインに使っている人などは、サブスマホとして近い感覚で利用できるだろう。

プリインストールアプリはおおむねベーシックな顔ぶれ。アプリ名が表示しきれないのはご愛嬌といったところ
Google製アプリは多め。このほかユーティリティ系の独自アプリが「ツールボックス」にまとめられている
ホーム画面はサイズこそ小さいもののごく一般的で、親指でも難なく操作できる。アイコン配列は3×3
ストレージ128GBに対してセットアップ完了直後の使用量は10GB弱と余裕がある(左)ジェスチャナビゲーションは本体下部「戻る」ボタンと機能がかぶるのでオフにしておくとよい(右)

 ベンチマークについては、Sling Shot Extremeによる測定値は「1287」ということで、Rakuten miniの「447」や、先日レビューしたモトローラのエントリースマホ「Moto e7」の「417」を凌駕し、Pixel 3a XLの「1,629」に迫ろうとする勢いだ。明らかに入門機というレベルではなく、サブ機にしておくにはもったいないほどだ。

Sling Shot Extremeによるベンチマークの値は「1287」。Rakuten miniの「447」とは比較にならない高性能だ

高いホールド感で電子書籍の使い勝手は(テキストのみだが)良好

 さて、電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルに、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは太宰治著「グッド・バイ」を用いている。電子書籍ストアは主にKindleを使用している。

 前述のように、本製品は画面サイズは3型ということで、コミックなど固定レイアウトのコンテンツの表示には向かない。解像度自体は326ppiと大台を超えているためクオリティは十分なのだが、絶対的なサイズがここまで小さいと、さすがに実用性には乏しい。

 その点、テキストであれば、読みやすいようにある程度文字サイズを大きくしても、1画面の中に含まれるテキストの量が少なくなるだけなので、閲覧自体は問題なく行える。本製品はデフォルトのフォントサイズが「標準」ではなく「大」に設定されているが、電子書籍アプリ側で適切なサイズに変更してやれば問題ない。

コミックを表示した状態。さすがに3型ともなると吹き出し内のセリフを読み取るのは困難だ
画面幅は実測37mmと、一般的なスマホのおよそ半分。ちなみにRakuten Miniは45mmだった
テキストであれば、文字サイズを調節さえすれば、問題なく読むことができる

 本製品の利点はその軽さだ。一般的なスマホでは、長時間読書を行なっていると、目が疲れるよりも先に、端末を支える腕が疲れてしまうことがあるが、本製品はそうした意味ではかなり「長持ち」する。1画面あたりの文字数が少ないとページめくりの回数が増えるので、それだけ操作の頻度は増えるのだが、トータルではプラスという印象だ。

 従来のRakuten Miniもサイズ的には遜色ないのだが、薄すぎることでホールド感はあまりよくなかった。本製品は16.5mmもの厚みがあるため、手のひらの中での収まりはむしろよい。このあたり、いたずらに薄くすればよいわけではないのは面白い。腕が疲れて読書を止めてしまうことが多い人にとっては、思わぬ解決策になる可能性がある。

 Androidならではの、音量ボタンによるページめくりの実用性も高い。本製品は左手で保持した時に、音量ボタンがちょうど親指に来るようにレイアウトされており、非常に快適に利用できる。ボタン自体、固すぎて押し込みにくいこともないため、手のひらで本製品を保持し、この音量ボタンでページをめくるようにすれば、片手で快適な読書が行える。

本体の軽さを活かして、仰向けになったまま長時間閲覧しても腕が疲れないのは利点だ
左側面の音量ボタン。ちょうど左手親指の位置に来る
筐体を左手で握ることにより、音量ボタンでページをサクサクめくることができる

 さらに本製品ならではの機能として、本体の右側面にあるプログラマブルボタンが挙げられる。これは電源ボタンや音量ボタンとは別個に存在しており、デフォルトではカメラのシャッターボタン、長押しで懐中電灯の起動が割り当てられているが、設定画面から自由に機能およびアプリを割り当てられる。

 例えばここにKindleアプリを指定しておけば、どの画面にいてもワンプッシュでKindleアプリを表示できるので、読書をしたくなれば、ロック解除→拡張ボタンを押すだけですぐにKindleアプリが表示できる。Kindleアプリに限らず、YouTubeなどの動画アプリだったり、SNSだったりと、さまざまな用途に利用できる。

 また長押しおよび2度押しにも機能を割り当てられるので、スクリーンショットを割り当てておくなど、さまざまな使い方が考えられる。積極的に活用したいところだ。

右側面の赤いプログラマブルボタン。機能を自由に割り当てられる。視覚的には隣の電源ボタンが赤であるほうが適切なように思うが、機能的には何ら問題はない
設定画面の「Smart Assistant」を開き、「Shortcut settings」→「Short press」で任意のアプリ、例えばKindleを割り当てておけば、一発起動が可能になる

リーズナブルな価格でサブスマホに最適、納期は要注意

 本製品はミドルクラスのスマホと遜色ないスペックを備えているとはいえ、Webの閲覧や地図アプリなど、一定の画面サイズを必要とするアプリの利用には向いていない。そうしたことから、いざ購入してみると、思ったほど活用の範囲が広くないという可能性は少なくない。

 こうした場合も電子書籍は、実質テキストユースに限られるとはいえ、使い道としては有望だ。Rakuten Miniの場合、1日か2日しか持たないバッテリが大きなネックだったが、本製品はバッテリがみるみる減っていくこともない。電子書籍アプリをひとつ入れておけば、サブスマホとして、暇つぶしなどで重宝するシーンはありそうだ。

 実際に使ってみて若干気になったのは、顔認証にしても、指紋認証にしても、あまり精度が高くないことだ。調子がよい時は極めてスピーディーだが、失敗率はかなり高く、顔認証のエラーで仕方なく指紋認証を試したところ再びエラーが起こり、PIN入力を強いられるケースはかなりの確率で起こる。早期のアップデートを期待したいところだ。

顔認証と指紋認証に両対応しているのは本製品の利点の1つだが、認識率はあまり高くない。試した限り、同じ指を複数登録しておくと、指紋認証は通りやすくなるようだ

 実売2万円台ということでコスパ的にも十分にオススメできる本製品だが、購入にあたって気をつけたいのは、注文から到着まで恐ろしく時間がかかることだ。直販サイトに記載されているのはあくまでも本国からの「発送日」であり、そこから通関で待たされることによるものだ。

 筆者の場合、2月末に注文した品が4月に入ってようやく到着したのだが、その間は筆者と同じように納品待ちの声が、SNS上にあふれていた。本製品はグローバルモデルではなく日本専用モデルということもあり、国内でストックしてからの発送とまではいかないにしても、もう少し何らかの配慮は欲しいところだ。