山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
Onyx International「BOOX NOTE」(前編)
~Google Playに対応、E Ink搭載の10.3型Android端末
2018年5月19日 11:00
「BOOX NOTE」は、10.3型のE Ink電子ペーパーを搭載したAndroidタブレットだ。KindleやKoboなど、特定の電子書籍ストアと紐づいたE Ink端末と異なり、Google Playストアからさまざまなアプリをインストールして使えることが特徴だ。
Onyx InternationalのBOOXシリーズは、E Ink電子ペーパーを用いたAndroidベースの汎用端末を多数ラインナップしており、継続的に新製品を発表している。今回紹介する「BOOX NOTE」は1月に発表された新モデルで、NOTEという名前からもわかるように、電磁誘導方式のスタイラスによる手書きに対応することを売りとしている。
もっとも、電子書籍のユーザーにとって気になるのは、むしろAndroidアプリを自由にインストールできるという自由度の高さだろう。KindleやKoboのような専用端末を持たない電子書籍ストアでもE Inkによる読書が可能になるのはもちろんのこと、10.3型という大画面はコミックの見開き表示に最適なことから、実質単ページ表示しかできないKindleやKoboなど専用端末を超える製品として期待がかかる。
今回は、国内代理店であるSKTが発売したモデル(技適取得済み)を用いたレビューをお届けする。前編では、製品の特徴および初期設定手順と基本的な使い方の紹介、後編では実際に電子書籍アプリをインストールしての使い勝手のチェックを行なっていく。
大画面かつ軽量。スタイラスによる手書き入力にも対応
まずは同じE Ink端末として、本製品とサイズが近い、7型のKindle Oasis(第9世代、以下Kindle)、7.8型のKobo Aura ONE(以下Kobo)と比較してみよう。
BOOX NOTE | Kindle Oasis(第9世代) | Kobo Aura ONE | |
---|---|---|---|
発売元 | Onyx International | Amazon | 楽天Kobo |
発売月 | 2018年5月 | 2017年10月 | 2016年9月 |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 250×178×6.8mm | 159×141×8.3 mm | 195.1×138.5×6.9mm |
重量 | 325g以下 | 約194g | 約230g |
画面サイズ/解像度 | 10.3型/1,404×1,872ドット(227ppi) | 7型/1,264×1,680ドット(300ppi) | 7.8型/1,404×1,872ドット(300ppi) |
ディスプレイ | モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta) | モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta) | モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta) |
通信方式 | Wi-Fi(詳細非公開) | IEEE 802.11b/g/n | IEEE 802.11b/g/n |
OS | Android 6.0 | 独自 | 独自 |
CPU | クアッドコアCPU 1.6GHz | 非公開 | 非公開 |
メモリ | 2GB | 非公開 | 非公開 |
内蔵ストレージ | 約32GB | 約8GB(ユーザー使用可能領域:約6GB) 約32GB(ユーザー使用可能領域:約27GB) | 約8GB |
端子 | USB Type-C | microB | microB |
スピーカー | あり(2基) | - | - |
フロントライト | - | 内蔵(自動調整) | 内蔵(自動調整) |
ページめくり | タップ、スワイプ | タップ、スワイプ、ボタン | タップ、スワイプ |
バッテリ持続時間の目安 | 非公開(4,100mAh) | 数週間(明るさ設定10、ワイヤレス接続オフ、1日30分使用時) | 約1カ月(ライトおよびWi-Fiオフ、約1分/1ページで1日30 ページ読書時) |
発売時価格(税込) | 69,800円 | 33,980円(8GB、キャンペーン情報つき) 35,980円(8GB、キャンペーン情報なし) 36,980円(32GB、キャンペーン情報つき) 38,980円(32GB、キャンペーン情報なし) | 24,624円 |
その他 | スタイラス対応 ワコム(4,096段階筆圧感知) | 防水対応(IPX8規格準拠) | 防水対応(IPX8規格準拠) |
備考 | Google Playに対応 海外での発売は2018年1月 | 3Gモデルも存在 | - |
本製品の特徴はなんといってもGoogle Playに対応し、Androidアプリを自由にインストールできることだが、ハードウェアにも魅力的なポイントが多い。1つは画面サイズ。10.3型というサイズは、現行の電子書籍端末としては最大級だ。解像度は227ppiで、電子書籍ユースではもう一声ほしいところだが、十分に及第点だろう。
本体はB5サイズで、フットプリントは10.5インチiPad Proとほぼ同一。特筆すべきなのは重量で、325gというのは、10.5インチiPad ProのWi-Fiモデル(469g)よりも約144gも軽い。つまりスマホ約1台分も軽いわけで、片手で長時間持っても負担が少ない。
本体の厚みは6.8mmで、現行のE Ink電子書籍端末と比較しても薄い部類だ。これでいて画面とベゼルの間には若干の段差があるので、さらに薄くできる余地もありそうだ。ただし剛性はそれほどあるようには見えず、バッグなどに入れて持ち歩くさいには、保護ケースは欠かせないだろう。
操作は基本的にタッチで行なうが、画面下部に唯一、細長い物理ボタンがひとつ搭載されている。配置からするとホームボタンのように思えるが、実際にはこれはバックボタンで、アプリの操作中に1つ前に戻るさいに使用する。実際に使っていても出番はそこそこ多い。
メモリは2GBと、E Ink端末としては十分な量だ。従来のBOOXシリーズは、メモリの容量が1GB、少ない製品だと512MBとしかないことがネックだったが、本製品はクアッドコアのCPUと合わせて、後述するように(あくまでE Inkデバイスとしてはだが)レスポンスの速い動作を実現している。
ストレージは32GBということで、E Ink採用の電子書籍端末としては多い部類に入るが、本製品はいかんせんAndroidアプリを自由にインストールできるので、使い込んでいくと容量が足りなくなる可能性はある。メモリカードによる容量拡張にも対応していないので、運用で工夫するしかない。
通信方式は「Wi-Fi」とだけ明記されており詳細が不明なのだが、試したかぎりでは5GHz帯のアクセスポイントが表示されなかったので、おそらくKindleやKoboと同じく11b/g/nである可能性が高い。
またバッテリについても、容量(4,100mAh)という記述はあるが、日数やページ数は明確になっていない。同じBOOXシリーズの「C67」(バッテリ容量1,600mAh)の場合、約7~10日または8,000ページが目安とされているが、画面サイズが異なるためあまり参考にならない。
このほか、KindleやKoboにない強みとしては、電磁誘導式スタイラスによる手書き入力への対応、スピーカー搭載による音声読み上げの対応などが挙げられる。一方で不足している機能は、フロントライトやページめくりボタン、防水機能などだ。なかでもフロントライトがないことは、就寝前にベッドで読むなどの利用スタイルにかなりの影響を与える。このあたりは次回詳しくチェックしていく。
初期設定はAndroidとは異なる独自のフロー
電源ボタンを長押しすると、初期設定がはじまる。Android端末の標準的なセットアップ手順とは異なり、最初に言語を選択したあと「スリープモードになるまでの時間」「電源オフになるまでの時間」「Wi-Fiがオフになるまでの時間」を設定し、続けてタイムゾーンを選択するだけのシンプルな作りだ。
上記項目の値はデフォルトのままだとやや扱いにくいのだが、あとからでも変更は可能なので(後述)、ひとまず設定を変えることなく、タイムゾーンのみ適切なものを選んで終了させる。また言語に関しては、この時点では英語を選択しておく。
以上が完了するとホーム画面が表示される。このあと行なうべき設定は2つで、いずれも画面下部の「Setting」と書かれたアイコンをタップして行なう。1つは言語設定で、初期設定が完了した時点では英語なのを、設定画面からあらためて日本語に切り替えるという、2段構えのフローとなっている。
もう1つはWi-Fiの設定で、この2つが設定できれば、あらためて初期設定は完了となる。ちなみに日本語への切り替えが完了してもホーム画面などは英語のままだが、設定画面の各項目は多くが日本語に置き換わるので、日本語化する意義は十分にある。
電子書籍端末ライクなホーム画面
本製品のホーム画面は、上半分が現在読みかけのコンテンツを表示する「Now Reading」、下半分が最近追加したコンテンツを表示する「Recent Add」(または最近読んだコンテンツを表示する「Recently Read」)が並ぶなど、レイアウトは電子書籍端末に近い。
ただしここに表示されるのは標準のPDFアプリで開いたコンテンツだけで、自前でインストールした電子書籍アプリで購読中のコンテンツが表示されるわけではないので、電子書籍ビューアとして使う場合はあまり役に立たない。むしろ普通にアプリを並べられたほうが便利だろう。実際には試していないが、別のホームアプリを入れる方法もありそうだ。
画面最上段のステータスバーには、左側に「ホーム」、「戻る」、「バッテリ残量」、「Wi-Fi」のアイコンが並び、Wi-Fiはここからオンとオフを切り替えられる。また起動中のAndroidアプリがあれば、これらの横にアイコンが表示され、呼び出せるようになっている。
同じく画面最上段の右側には、「時刻」「ページめくり/音量切替」「A2モードの有効/無効」「アプリ切替」「メニュー」のアイコンが並ぶ。「ページめくり/音量切替」については、本製品はほかのBOOXシリーズにはある物理ボタンを搭載しないため、利用できないものとみられる。
ところで上記アイコンにもあるA2モードというのは、白黒2値化によりページめくりなどを高速化させるモードだ。ただし試したかぎりそれほど劇的に高速化されるわけでもなく、またグレースケールが点描で描写したようになるため、コミックなどにも向かない。電子書籍端末として使う場合、基本的にオフのままでよいと思われる。
その隣、アプリ切替アイコンをタップすると、起動中のアプリがタイル状に表示され、不要なアプリをそこから終了させられる。使用中のメモリの量も表示されるので、本製品の動作が遅くなった場合は、ここからアプリを終了して空きメモリを確保するのがよい。右下には一括終了のためのアイコンも用意されている。
また、ステータスバー中央の何も表示されてないエリアをタップすると、Androidで言うところの通知領域が表示される。ここでは、バッテリの残量がパーセンテージで表示されるほか、接続中のWi-FiのSSID、Bluetoothのステータス、設定画面へのリンクや、アプリからの各種通知が表示される。
またその下には、音量をコントロールするためのスライダーが用意されている。本製品は内蔵のスピーカーで音声読み上げなどが可能だが、物理的な音量ボタンは搭載されていないので、音量のコントロールはここから行なうことになる。
画面最下段にはファンクションエリアがあり、主要な機能へのショートカットや、利用頻度の高い機能が表示されている。自前でインストールしたアプリのアイコンをこのエリアの右端に表示することもできるが、最大1つまでしか置けず、新しく追加すると上書きされてしまう。もう少し置ける数を増やしてほしいところだ。
自動電源オフは使わずスリープだけでの運用が効果的
さて、本製品をしばらく使った第一印象は、メニュー画面などの動きが非常にきびきびしていることだ。液晶を採用したAndroidタブレットと比較するのはさすがに酷だが、E Ink電子ペーパー端末としてはレスポンスも速く、ストレスなく操作できる。2GBのメモリとクアッドコアCPUが大きく貢献しているのだろう。
一方で、電源オン/オフ時の挙動はやや難があり、設定の変更が望ましい。というのも、本製品はデフォルト状態では5分経過でスリープ、15分経過で電源が自動オフになるのだが、いったん電源がオフになると、起動が完了するまで30秒ほどかかってしまう。いざ使おうと思って取り出してから30秒も待機を強いられるのは、とくにメモを取る用途ではかなり致命的だ。
そのため、自動電源オフは無効(Never)にし、Kindleなどと同じく、常時スリープで運用することをおすすめする。これによってバッテリが一晩に10%や20%も減るのなら考えものだが、試しにその設定で8時間放置してみたところ、バッテリの減りは2%(40%→38%)だった。これなら許容範囲だろう。
ただしいずれの設定にした場合も、いったんネットワークが切断されると、手動で復旧させないかぎりそのままの状態が維持される。そのため長時間使っていると、必ずと言っていいほどネットワークエラーが発生し、ホーム画面に戻ってステータスバーから再度有効化する操作を強いられる。リンクをクリックした時点でWi-Fiを自動復旧するのは難しいとしても、何らかのうまい解決策がほしいところだ。
スタイラスの使い勝手にも触れておこう。充電不要で使える電磁誘導式のスタイラスは軽量で持ちやすく、これがE Inkかと思わせるほどの軽快さで手書きが行なえる。4,096段階の筆圧感知が使えるのは今のところ純正のNOTEアプリおよびPDFアプリなど一部にかぎられるが、打ち合わせなどでメモを取るには十分に実用的だ。パームリジェクションにきちんと対応しているのもうれしい。
動作はきびきびしており印象は良好。次回は電子書籍アプリの挙動をチェック
以上、ざっとファーストインプレッションをお届けした。なにせE Inkということで挙動にはかなりクセがあるものの、動作はきびきびしているほか、操作中にハングアップするなどの不具合も見られず、印象は良好だ。次回は実際に電子書籍アプリをインストールし、その使い勝手をチェックしていく。