山田祥平のWindows 7カウントダウン

Windows 7のタスクバーをOffice 2010はどう使うか



 Office 2010のテクニカルプレビュー版が発表され、一部のユーザーに対して先行公開が始まった。春に米国で開催されたTech・Edの参加者もその対象だ。Windows 7以降、初めて公になるMicrosoft製のアプリケーションだけに、新OSへの対応がどのようになっているのかが興味深い。今回は、Windows 7の新しいタスクバーがOffice 2010でどんな使われ方をしているのかを見ていくことにしよう。

●ジャンプリストは標準的

 今回のOffice 2010は、テクニカルプレビューという位置づけで、とりあえず、ダウンロードサイトからMicrosoft Office Professional 2010の32bit版を入手した。このイメージをインストールすると、まずは、英語版のOfficeが稼働するようになる。その上で、Microsoft Office Language Pack 2010 - Japanese(32bit)というモジュールをインストールすることで、環境が日本語版となる。このモジュールは、English版も用意されているので、英語版のように見える最初のイメージは、実は、何語版でもないオリジナルのOfficeで、その上に各言語版のモジュールがかぶさってリソースが追加される構成になっているのかもしれない。だとすれば、開発の手法としては、Windows 7と同じということになる。

 テクニカルプレビューということで、実際に、製品が出荷されるまでには、仕様等が変更になることは十分に考えられるが、現時点で考えられる、タスクバーをアプリケーションがどう使えばいいのかのヒント、いいお手本になっていることを期待したい。

Office 2010をインストールしても自動的にツールバーボタンがピン留めされるようなことはない。常に表示するには、自分で操作する必要がある

 新規にソフトウェアをインストールすると、Windows 7では、スタートメニュー直下に、そのソフトウェアを表示してハイライトすることで、今、何が新たに加わったのかをわかりやすくする。ただし、Officeは、スウィートなので、同時に複数のアプリケーションがインストールされるため、スタートメニュー直下には、最後に追加されたアプリケーションとして、Microsoft Clip Organizerが表示される。これは、Officeに付属するユーティリティだ。この振る舞いを見ても、セットアッププログラムに勝手は許さないというWindows 7のポリシーがわかる。

 そして、スタートメニューから「すべてのプログラム」を開くと、Microsoft Officeのフォルダがハイライトされている。インストールしたプログラムが勝手にタスクバー上にピン留めされることもない。このあたりは、ルールとして守らなければならないことになっているようだ。

 さて、Officeに含まれるプログラムには、Word、Excel、PowerPoint、Outlook、OneNoteなどがあるが、これらを起動して、タスクバーボタンを右クリックしてみたところ、期待とは異なり、新しいタスクバーの機能を使っているようには見えない。単に、ジャンプリストとして履歴を表示するだけだ。

いつも表示するようにピン留めしたり、履歴に表示されるファイルを右クリックすると、ショートカットメニューが表示される。これは、エクスプローラ上のファイルを右クリックしたときとほぼ同じものだ

 各プログラムをピン留めし、少し、使ってみたところで、履歴に表示されているファイルを、さらに右クリックしてみると、さらにショートカットメニューが表示され、次のような項目がジャンプリストとして並んでいる。

・Open
・Edit
・New
・Open as Read Only
・Print

 このジャンプリストでは、Openがデフォルトで、他はオプションとなり、ファイルを開く際の挙動を指定することができる。OpenとEditの違いが定かではないのだが、おそらくテンプレートファイルをピン留めしている場合に、そのテンプレートそのものを編集するためのものだろう。

 Newは、そのファイルの内容を読み込み別のファイル名、たとえば、Wordなら「文書1」などとして開く。ファイルの内容を暫定的なテンプレートとして使うことができるわけだ。また、Open as Read Onlyは文字通り読み取り専用、Printは印刷だ。なお、これらの項目は、エクスプローラ上でファイルを見つけて右クリックしたときに表示されるショートカットメニューと同様だ。

 ちなみに、6月10日掲載分で言及したShiftキーを押しながらタスクバーボタンにドロップすることで「~で開く」がツールチップ表示する機能だが、Word 2010等でも、この機能は働かなかった。あくまでもファイルはドロップするなということなのだろうか。

●Outlookはもう少し積極的に活用
Outlookのツールバーボタンを右クリックすると、それなりに意味のあるジャンプリストが表示される。本当はもうちょっと工夫がほしいところ

 WordやExcelのタスクバーボタンに対して、Outlookのタスクバーボタンは、もう少し積極的であるように見える。タスクとして

・新しい電子メールメッセージ
・新しい予定
・新しい連絡先
・新しいタスク

というリストが表示され、さらに、

・受信トレイへ移動
・予定表へ移動
・連絡先へ移動
・タスクへ移動

というリストが表示される。ちなみに、「タスク」は以前のOutlook日本語版では「仕事」と呼ばれていた。リスト内の項目をクリックすることで、それぞれのタスク、あるいは、移動が行なわれる。今回のテクニカルプレビューでは、それ以上でもそれ以下でもないようだ。Outlookのようなアプリケーションでは、ウィンドウを複数開き、メールを予定表にドロップするなどの操作を頻繁に行なう。このような操作で、新しいタスクバーをどのように活用するかは、もうちょっと工夫を期待したいところだ。

 一方、アプリケーションからファイルを開く際に使われるオープンダイアログはどのようになっているのかを確認してみると、Word、Excel、PowerPointともに、ドキュメントライブラリがコンテンツビューで開いて、そこにある関連ファイルの一覧を表示した。このライブラリはスタートメニュー直下にある「ドキュメント」と同じだ。Windows 7のドキュメントライブラリは、デフォルトで、自分自身の「マイドキュメント」と「パブリックのドキュメント」という2個のフォルダが含まれている。そのどちらのフォルダ下にファイルがあっても、一元的にそれを探して開くことができるわけだ。「名前をつけて保存」のダイアログも同様に、デフォルトでドキュメントライブラリが開く。

 一般的なWindowsユーザーは、マイドキュメントにファイルを保存することに慣れていると思うが、ここで開く複数のフォルダを含んだライブラリの概念に、慣れるまでにはちょっと時間がかかるかもしれない。キモは、デフォルトの保存先+見えている他のフォルダで構成されているという点で、それを直感的に理解できるかというと、なかなか難しいかもしれない。とはいうものの、今までのマイドキュメントと同様の感覚でライブラリを使っていても、特に困ることはないはずだ。

●Windows 7 RTM以降の改善に期待

 VistaとOfficeの前バージョンであるOffice 2007は、ほぼ同時の出荷であったのに対して、Office 2010の出荷は2010年前半が予定され、Windows 7よりも完成は、ずっと先になる。そういう進捗状況なので、この新しいオフィススウィートが、新しいOSの機能を駆使したGUIを持つものに変貌していくのか、それとも、このまま手堅く大きな変更が加えられずに完成までの道を歩むのか、今の時点ではわからない。

 また、Outlookが新規にメールを受信するなどして最小化されているウィンドウの内容が変わっていたとしても、Aeroプレビューの内容は、以前、アクティブだったときのままで、内容が更新されないといった不便は以前のままで、特に、Windows 7に対してOfficeの各アプリケーションが特別な対応をしているようには見えない。これは、Officeチームにとっても、Windows 7のRTM待ちで、すべてはこれからということを意味しているのかもしれない。

 今朝、入手したばかりなので、個々のソフトの使い勝手等についてはまだ言及できないが、ちょっとさわってみる限りは、特に重くなっているようなこともなく、Windows 7と同様に、処理能力の低めのハードウェアでも、それなりに快適に使えそうだ。特に、WordやExcelに加え、Outlookにもズームバーが用意され、表示コンテンツを拡大縮小できるようになっているのにはちょっと驚いた。これは、初期のネットブックのような低解像度のハードウェアで使うときに、きわめて便利な機能になりそうだ。

 Windows BlogでのBrandon LeBlanc氏の投稿によれば、Windows 7は予定された各国語版がすべて揃って、初めてRTMになるということだ。そして、RTMの数週間後にはMSDNとTechNetのサブスクライバーがダウンロードできるようになり、ボリュームライセンスの顧客は9/1に入手可能となる。なお、ベータテスターを含む一般ユーザーは、すでにアナウンスされている通り、10/22の発売を待たなければならないが、そのままRCを使い続けることはできる。また、MicrosoftからWindows 7の供給を受けるOEMベンダーは10/22前後にプリインストールPCを出荷し、一般のユーザーが量販店などで購入できるようになる。

バックナンバー

(2009年 7月 15日)

[Text by 山田 祥平]