山田祥平のRe:config.sys

待てばスマホの日和あり~手に入れてから高みを目指すPixel 9

 例年通り、Googleのスマホが刷新され、Pixel 9シリーズの販売が始まった。今年はサイズやフォームファクタ、カメラ装備が異なる4種類のPixelが登場する。発売や発表も例年よりも約2カ月早い。新iPhoneに先駆けての発売を狙ったものという見方もできそうだ。

小さなProと大きなXL

 今年のPixelシリーズは、無印のPixel 9、基本形で上位のPixel 9 Pro、大画面のPixel 9 Pro XL、折りたたみのGoogle Pixel 9 Pro Foldという4種類のモデルで構成される。無印とProはカメラ装備の仕様をはじめ、メモリ容量を含む基本仕様が違う。無印とProの画面サイズは6.3型で、Pro XLが以前のProと同じ6.8型、折りたたみタイプのFoldは外側画面が6.3型、内側が8型となっている。無印とPro XLはすでに販売中、ProとPro Foldは少し先の9月4日に発売だ。

 Pixel 8シリーズでは無印とProだけだったが、従来のProはPro XLとなり、無印と画面サイズが同じProが追加された。

 おそらく日本では6.8型でのスマホは大きすぎると感じるユーザーが多かったのかもしれない。Googleはそれを重要視したのだろう。Pro XLは画面の大きさと引き換えに、重量も221gと軽くない。画面サイズ以外はPro XLとほぼ同じ仕様でわずかでも200gを切るProが用意されたのを歓迎する層も多そうだ。

 まとめると、スレートタイプのPixelは、

  • 比較的安くでベーシックな基本性能が手に入る無印(Pixel 9) : 128,900円~
  • 無印と同じ手ごろなサイズ感で最高峰の性能を持つPro(Pixel 9 Pro) : 159,900円~
  • より大きな画面が欲しい場合のPro XL(Pixel 9 Pro XL) : 177,900円~

の3種類からの選択となる(価格はGoogleストアのもの)。無印、Pro、Pro Maxで構成されるiPhone 15シリーズに似た構成であるともいえる。

 その一方で、Pixel 9が198g、Pixel 9 Proが199gと、先代のPixel 8のように6.2型で187gというコンパクトな軽量さからは、いったん退いた。そこが残念という層も少なからずいるように思う。最新を含む歴代Google Pixel のハードウェア仕様についてはここに詳しい。ちなみにiPhone 15シリーズは無印が171g、Proが187g、Pro Maxが221gだ。

アクセサリメーカーもやる気満々

 Pixelの売れ方は日本が支えているという話もあちこちから聞こえてくる。あまりにタイミングがあいすぎで、一体どういう方法で実現しているのかよく分からないのだが、アクセサリメーカーもいち早く対応ケースなどを発売する。たとえばトリニティは、Pixel 9シリーズ発売前の2024年8月14日(水)に予約販売を開始し、端末発売日前日までに届けると発表した。

 Pixel 9シリーズ以降、指紋認証方式は、光学式認証よりも精度の高い超音波式に変わったが、新シリーズ用の画面保護ガラスやフィルムは超音波式への対応をアピールする。さらに、図面を示しながら、形状がほぼ同じに見えるPixel 8 ProとPixel 9 Pro XLの違いなどを解説するという同社のマニアックなブログは斬新だ。

 興味深いのは、Pixel 9とPixel 9 Proが同サイズであることから、ノート型ケース、そして、5種類ものタイプの異なるクリアケースを用意しているところだ。その一方で、Pro XLについては対応ケースが1種類のみとちょっと寂しい。同社の読みでは、日本で売れるのは無印かProのどちらかで、Pro XLはさほどでもないということなのか。

 8シリーズまではカメラ仕様を含むハードウェアが無印とProで大きく違っていて棲み分けができていたが、今年のPro XLはちょっとはみ出しというイメージなのかもしれない。

 ちなみに、同社のクリアケースは一部をのぞいてストラップホールが左右2箇所にあり、2点支持の両吊りストラップに対応できるのがうれしい。

AIならAndroid

 ご存じのように、GoogleはPixel 9シリーズの発表にあたり、そのAI機能の数々を大々的にアピールした。発表会イベントはAIの解説に時間の多くを費やし、新発売される端末についてはずっと後回しにしているような印象もあった。よりによって新しいPixel 9シリーズよりも、SamsungのAIスマホGalaxy S24 Ultraの方が目立っていたくらいだ。見方を変えれば、AIはAndroid OSの強みであると言いたいのかもしれない。

 発表済みのGemini関連の豊富なAI機能については8月中旬に英語でサービスインしたが、日本語対応は先送りにされている。また、AIとは無関係かもしれないが、サテライトを使ったSOSなどの通信機能についても同様だ。

 発表会のデモで披露された電話での会話を要約してメモにしてくれるCall Notes機能などは素晴らしいと思うが、それも発売時点では未実装となっている。音声対話で気軽に使えるAIとしてのGemini Liveもまだ先だ。音声アシスタントの新たな当たり前を提供するであろう鳴り物入りの機能だけに、少しでも早く体験したいものだ。

 その一方で、カメラにまつわるAI機能の数々は、すぐに使える。集合写真にあとから参加できる一緒に写る機能(Add Me)などは、機能そのもののすごさというより、画像生成AIが暮らしに与える効果を実感できる好例になっている。ものすごい説得力で、これを考えたプランナー/デザイナーはすごいと思う。

入手後に進化するAIスマホ

 いろんな意味で、今年のPixelは期待を買うシリーズだと言えそうだ。約束された機能の多くがすべて揃うのはおそらく数週間後、ものによっては数カ月スパンでの時間が必要だろう。つまり、今年のPixelは待ち時間が長い。買ったあとで、ジグソーパズルで言えばいくつかの重要なピースが揃い、洗練された高みに向かう。

 もともとPixelシリーズには、Feature Dropと呼ばれる仕組みがあって、ハードウェアが対応できる限り、旧機種を含めて新しい機能が追加されていく。AI機能についての後日追加はあからさまで、最終的には別の新製品に近いスマホに成長することになる。発売後1年近く経ってもFeature Dropで0.5世代くらい新しくなるのは嬉しい。

 だからこそ、同じプロセッサであるGoogle Tensor G4を搭載していても、無印が12GB、Proが16GBというメモリ容量の違いは、あとからボディブローにように効いてくるかもしれない。いろんな意味で今回の本命は「Pro」だろう。

 生成AIサービスが急速に浸透していくなかで、言語モデルについては、各国語への対応はそれほど大きな問題ではないように感じていたのだが、ここにきて、少し日本語環境が不利になってきているような懸念も感じる。少しでも早期にこうしたギャップが解消され、どんな言語でも同じように、暮らしを豊かにする各種のAIサービスを使えるようになってほしいものだ。