山田祥平のRe:config.sys

デスクパッドで戦闘モードをオンにする

 この3年間、いやがおうでも在宅での仕事を強いられている方は少なくなかった。その結果、本来は仕事をする場所ではなかったところで仕事をすることになる。それがいいときと、そうでないときがある。在宅勤務で本気を出す環境を作りたいが、それもままならない。だったらどうすればいいんだろう。

在宅勤務の功罪

 仕事をするための専用のスペースが確保できるというのは理想的だ。組織というのは運命共同体のようなところもあって、本来的には誰かが誰かをバックアップして個人ではできないことを成し遂げるような面もある。だから仕事をするための場所としてのオフィスは仕事をしているときには居心地がいい。その居心地のいいオフィスが使えないのが在宅勤務だ。

 以前は帰ってくる場所であり、出かける起点となる場所が自宅だ。風呂敷残業などといったキーワードもあったが、基本的には仕事をする場所じゃなかった。独居世帯でも家族がいても似たようなものだろう。これからどうなるのか分からないが、自宅で仕事をするというパターンがなくなることはないだろう。一定数は残るはずだ。

 でも、そのことは働き方の進化でもある。例えば介護や出産/育児などで、どうしても出勤を伴う仕事が難しいこともある。在宅勤務ならなんとか仕事を続けることができて、本人も、そして組織としても人材という貴重な財産を失わなくてすむ。障がいなどで自在に外出して活動することが難しい方でも、担える仕事のカテゴリが拡がる可能性もある。

 これは決して悪いトレンドではない。

40年間使った大きな机

 ぼく自身は自宅での仕事を基本的なパターンとして長年やっている。だから自宅内の一室を仕事専用に確保することができている。通勤時間は数秒といったところか……。

 使っているデスクはそんなに上等なものではない。幅2m×奥行き1mのイトーキ製会議室用テーブルだ。引き出しもない。シンプルな造りだけに、すでに40年以上使った今もビクともせずに健在だ。このデスクに向かうだけで戦闘モードに入る。グラグラするようなこともなく、まったく不満を感じない。

 購入当時、最初にここに鎮座していたのは、14型ブラウン管のモニターだった。そこからスタートして、20型ブラウン管に入れ替え、そのうち、台数も増えてマルチモニター環境にもなった。ブラウン管のモニターは奥行きがあるが、1mの奥行きがあるデスクではあまり困らなかった。

 ブラウン管はいつしか液晶モニターに変わった。だから机上がさらに広く使えるようになった。今は、42.5型、28型、27型、23.8型という4台のモニターを並べて作業している。普段は28型と42.5型を使い、Web会議などが入ればもう1台を追加、作業が煩雑になってきたら4台を総動員するという感じで運用している。

 悩みは全モニターのサイズが異なるし、1台だけがフルHDで残りは4Kなのだが、拡大縮小率を個々に調整して文字サイズなどを同じにできないところだ。これは、現在のWindowsにおけるもっとも大きな不満点だ。25%刻みというのはあまりにも大雑把すぎないだろうか。

長い距離をマウスに走らせると手首の付け根が痛くなる負担をデスクパッドで解消

 操作はキーボードとマウスだ。基本的にはマウス派で、特に自分の仕事部屋でデスクに向かって仕事をするときには必ずマウスを使う。

 昔と比べてマウスポインタの物理的な移動距離は増えた。たかだか14型VGA(640×480ドット)とか20型XGA(1,024×768ドット)といったスクエア画面をカバーできればよかった昔と違い、マルチモニターということもあるが、かなりの距離をマウスが走る。

 いろいろな作法があると思うが、ぼくは、右手でマウスをつかみ、右腕の肘より先はデスクの上に委ねるようにしている。キーボードを叩くときにも腕を浮かせることはなく、ほぼべったりと肘から手首までがデスクに接触している。必然的に手首を動かす頻度が高く、手の平の付け根への負担が大きい。これは打鍵時もマウス操作時も同様だ。

 マウスパッドについてはできるだけ大きなものを使ってきた。ちゃんとポインタがマウスの動きに追随しないとストレスがたまるので、使いやすいマウスパッドは必須だ。

 マウスが長距離を走るようになって、そのマウスパッドを少し大きなサイズのものにして、手首だけではなく、肘までをカバーできるようにしたいと考えた。いわゆるデスクパッドと呼ばれる製品がゲーミング用を中心にいろいろと出ているようだ。

 まずは試しにと、100均のダイソーでデスクパッドを買ってみた。330円だ。サイズは30×70cm、厚みは2mmだ。これを縦長で使うとちょうどいい感じだということが分かった。色は黒だけなのだが、エッジの処理やら表面の微妙にケバケバした感じが気になって、同等の製品がないかと探していた。

 いくつかのメーカーの製品を試してみた。以前、試したロジクールのXLゲーミングマウスパッド G840がよかったのだが、しばらく使ってみると、ぼくの使い方には40×90cmというのはちょっとサイズが大きすぎることが分かって宝の持ち腐れになってしまっている。

 その造りがとてもよかったのを思い出し、デスクマット - STUDIOシリーズを試してみたところ、ドンピシャだった。30×70cm、そして厚みは2mmと、スペックとしてはダイソーのパッドと同じなのだが、比べる方がおかしいにしても質感が全然違う。

 比べてみないと分からないかもしれないが、腕をベタッと置いた状態で作業を続けたときに、なんとなく汗でベトベトするのがダイソーのものだが、ロジクールのものにはその感じがまったくない。さすがだと思う。ただ、使ったときのイメージを確認するならダイソーのもので試してみるのもいいだろう。

 たった1つ不満があるとしたら、裏面の滑り止めラバーがちょっと弱く、気がつくと定位置からずれてしまっている。たぶんデスクの表面の滑りとも関係があると思うので、誰もが不満に感じるものではないだろうけれど、少なくとも手元の環境では何か滑り止めの方法を考える必要がありそうだ。

 2mmの厚みしかないので、その下の一部に厚みのあるものを敷くわけにもいかない。両面テープなども考えたがスマートじゃない。まあ、これについてはそのうち妙案を思いつくだろう。滑り止めスプレーなども視野に入れて考えよう。

自分自身の戦闘モードをオンにするために

 仕事のスペースを確保するのが難しい場合、食卓のテーブルなどで作業せざるをえないこともあるだろう。ノートPCの手前部分にこうしたデスクパッドを敷いて、その向こう側にノートPCを置くだけでも腕が楽になる。

 パッドの上にPCを置かないというのがポイントだ。パッドの奥行きが30cmだとノートPCを置けば、奥行き方向に50cm以上のスペースが必要になるがPCに特等席を譲る必要はないし、熱対策的にも不安がある。

 いずれにしても、仕事をすることが想定されていない場所で、仕事をするためには、自分自身の戦闘モードをオンにするために、何らかの儀式が必要だと思う。PCを開いてデスクトップが表示されるだけで戦闘モードに入れるならそれにこしたことはないが、カラダへの負担軽減を含めて、パッドを敷くという儀式でなんとかなるなら、それも悪くない。

 世の中、ああすればいい、こうすれば効率が高まるといったノウハウはたくさんあるが、いいのは分かっていてもそれを実践するのは難しいということもある。それでもできることはある。カラダへの負担を軽減できるのに加えて、ちょっとした気分の切り替えが、低予算でできるのだから、だまされたと思ってちょっと試してみてほしい。