1カ月集中講座
旅先でも困らないリモートTV視聴を手にする 第4回
~Windows PCを利用したリモート視聴環境を作る
(2014/12/29 06:00)
前回まで、NexTV-F準拠とDTCP+準拠のリモート視聴について見てきたが、リモート視聴用クライアント機器としてWindows PCを利用する例が少なかった。意図的に省いていたわけではないが、やはりPC WatchとしてはWindows PCを利用した運用方法も取り上げるべきだろう。というわけで最終回の今回は、Windows PCを利用したリモート視聴環境について見ていこうと思う。
東芝製Windows PCなら東芝製レコーダーとの連携でリモート視聴が可能
前回紹介したように、DTCP+対応NASには基本的にWindows PC用クライアントソフトが付属している。最新製品ではWindows 8.1用クライアントソフトのみとなるため、利用環境に若干制限があるものの、全体的にはDTCP+準拠のリモート視聴に関しては、Windows PCでの運用は比較的やりやすいと言える。
ただ、DTCP+準拠のリモート視聴では、録画番組のリモート視聴は行なえるものの、放送中番組のリモート視聴は不可能。どうせなら、NexTV-F準拠のリモート視聴で放送中番組も見たいところではあるが、Windows PCでのNexTV-F準拠のリモート視聴は運用は少々難しい。それは、第2回を見てもらうと分かるように、NexTV-F準拠のリモート視聴に対応する録画機器を発売するメーカーのほとんどが、Windows PC用クライアントソフトを用意していないためだ。
例外となるのが、東芝製Windows PC「dynabook」および「dynabook Tab」シリーズと、東芝製レコーダーとの組み合わせだ。2014年秋冬モデルのdynabookおよびdynabook Tabには「TVコネクトスイート」というNexTV-F準拠のクライアントソフトがプリインストールされている。それらTVコネクトスイート搭載の東芝製Windows PCと東芝製レコーダーとの組み合わせで、外出先からの録画番組のリモート視聴が可能となる。連携できる東芝製レコーダーは、レグザサーバーシリーズの「DBR-T560」と「DBR-T550」、レグザブルーレイシリーズの「DBR-Z520」と「DBR-Z510」の4機種となる。
残念なのは、TVコネクトスイート搭載の東芝製Windows PCと東芝製レコーダーの組み合わせでは、放送中番組のリモート視聴が行なえない点だ。もちろん、レコーダー側のファームウェアアップデートやクライアントソフトのバージョンアップによって、放送中番組のリモート視聴にも対応する可能性は十分に考えられるが、少なくとも現時点(2014年12月現在)では不可能。この点に関しては今後の機能拡充を期待したい。
ただ、やはり運用が特定メーカーのWindows PCに限られるという点は非常に残念だ。もちろん、対象となる東芝製Windows PCと東芝製レコーダーを既に所有しているというのであれば、当然活用すべきだ。しかしながら、汎用性がないという点で魅力が損なわれているとは言わざるを得ない。
NEC製PCでは放送中番組のリモート視聴が可能
実は、東芝製のWindows PCとレコーダーの組み合わせに近い仕組みを用意するメーカーがほかにも存在する。それはNECだ。NECは、民生用レコーダーを販売していないが、TVチューナを搭載する液晶一体型Windows PCをサーバーとし、ノートPCやWindowsタブレットをクライアントとしてリモート視聴を実現している。
NEC製の液晶一体型PC「VALUESTAR」シリーズには、TVチューナを搭載するモデルがラインナップされ、TV視聴や録画を行なう「SmartVision」というソフトがプリインストールされている。そして、2014年秋冬モデルのVALUESTARシリーズより、SmartVisionがNexTV-F準拠のリモート視聴機能をサポート。2014年秋冬モデルのNEC製ノートPCやWindowsタブレットにプリインストールされているTV視聴ソフト「SmartVision/PLAYER」にもNexTV-F準拠のリモート視聴機能が追加された。
これにより、TVチューナ搭載のVALUESTARとSmartVision/PLAYERをプリインストールするNEC製ノートPCやWindowsタブレットの組み合わせで、NexTV-F準拠のリモート視聴が可能となる。しかも、録画済み番組だけでなく、放送中番組のリモート視聴にも対応している点が大きな特徴だ。放送中番組のリモート視聴を行なうには、サーバーとして利用するVALUESTARに複数のTVチューナが搭載されている必要がある(シングルチューナモデルでは録画番組のリモート視聴のみとなる)が、これはほかのPCに対する優位点と言えそうだ。
とはいえ、こちらも先ほどの東芝製Windows PCとレコーダーの組み合わせと同じように、汎用性はない。該当する製品を持っているならいいが、他社製のWindows PCでは実現できないものであり、やはり少々残念だ。
ピクセラの「ワイヤレスTVチューナ」なら汎用性を確保可能
では、汎用性のある手段が全くないのかと言うと、そうではない。ピクセラが販売している「ワイヤレスTVチューナ」シリーズの2製品、「PIX-BR310W」または「PIX-BR310L」を利用すれば、特定メーカーの縛りなく、Windows PCを利用したリモート視聴が実現できる。
ワイヤレスTVチューナシリーズは、ネットワーク接続で利用するTVチューナボックスで、映像出力端子は備えず、ネットワーク接続されたWindows PCやAndroid端末、iOS端末を利用してTV視聴を行なう製品だ。本体にHDDは内蔵しないが、USB接続の外付けHDDを接続することで録画も可能。録画番組もネットワーク接続されたWindows PCなどで視聴できる。仕様的には、ソニー・コンピュータエンタテインメントが販売している「nasne」シリーズに非常に近い製品だ。
ただ、nasneとの大きな違いは、Windows PCを利用したNexTV-F準拠のリモート視聴を実現している点だ。nasneでは、Android端末とiOS端末ではNexTV-F準拠のリモート視聴が実現されている。しかし、Windows PC用のクライアントソフト「VAIO TV with nasne」と「PC TV with nasne」では、同一LAN内での放送中番組や録画番組の視聴は可能だが、インターネットを介したリモート視聴には対応していない。AndroidやiOSで実現されていることを考えると、Windows PCでもリモート視聴は実現できると思われるが、将来対応するかどうかは現時点では未定。つまり、現時点でWindows PCを利用してリモート視聴を行なえるのは、ピクセラのワイヤレスTVチューナシリーズが唯一の存在となる。しかも、リモート視聴用クライアントソフトは汎用で利用できる。これは、大きな魅力だ。
PCによっては利用できない場合も
ワイヤレスTVチューナシリーズのWindows PC用クライアントソフトは「StationTV」というものだ。製品には添付されておらず、Windowsストアからインストールして利用する。Windowsストアアプリとして用意されており、利用できるOSもWindows 8.1のみとなる。
また、StationTVを利用するには、インストールするPCが著作権保護の条件を満たしている必要がある。サウンドやディスプレイなど、1カ所でも条件を満たさない部分があれば、警告メッセージが表示され、TVの映像や音声が一切再生されないため要注意だ。
利用しようとするPCやWindowsタブレットが著作権保護の条件を満たしているかどうか確認するには、ピクセラが配布している「StationTVX環境チェッカー」を利用すればいいだろう(こちらで配布している)。ワイヤレスTVチューナシリーズ用に配布されているものではないため、この環境チェッカーで条件を満たしていると判断されても、PCによっては正常に動作しない場合があるかもしれない。
しかし、筆者が複数のPCやWindowsタブレットで試した限りでは、この環境チェッカーで著作権保護の条件を満たしていることが確認できたPCでは、全てStationTVが問題なく利用できたため、十分目安にはなるはずだ。そのため、ワイヤレスTVチューナを購入しようと考えているなら、購入前にStationTVX環境チェッカーを利用して条件を満たしているかどうか必ず確認することをお勧めする。
著作権保護条件を満たせばリモート視聴を簡単に実現可能
StationTVのインストール自体は無料で行なえ、同一LAN内での放送中番組や録画番組の視聴が行なえる。ただし、NexTV-F準拠のリモート視聴を行なうには、「リモート視聴機能」の拡張機能を購入する必要がある。購入はアプリ上から行なえ、価格は300円だ。もちろん、リモート視聴を行なわないなら購入は不要だ。
リモート視聴機能の拡張機能を購入すれば、リモート視聴を行なう下準備は完了だ。あとは、第2回で解説した場合と同様に、ワイヤレスTVチューナとクライアント視聴用PCを同一LANに接続した状態でペアリングを実行すれば、それ以降外出先からのリモート視聴が可能となる。
なお、ペアリングの維持期間はNexTV-F準拠ということで最長3カ月だ。その間に同一LAN内で接続を行なえば、そこでペアリングが更新されるので、定期的に自宅でStationTVを利用してTV番組や録画番組を視聴していれば、ペアリング期間を意識する必要はほぼない。
リモート視聴時には、外出先でインターネットに接続した状態でStationTVを起動する。リモート視聴のペアリングが完了していれば、ここで同一LAN内視聴かリモート視聴かを選択するメニューが表示されるので、リモート視聴と画質を選択する。すると自宅のワイヤレスTVチューナに接続され、放送中番組や録画番組のリモート視聴が行なえる。
今後、より多くの対応製品の登場を期待したい
StationTVは、Atom Z3795搭載タブレットでも映像がスムーズに再生され、大きな不満なく活用できた。LTE回線を利用したリモート視聴も、再生する番組を選択してから実際に映像が表示されるまで数秒待たされるが、イライラするほどではなかった。メニュー構成などやや洗練さに欠ける印象もあるが、操作性は悪くない。放送中番組のリモート視聴にも対応している点も魅力で、今回試した限りではWindows PCやWindowsタブレットを利用したTVリモート視聴を実現する汎用的な手段として、現時点ではベストの選択肢と言えそうだ。放送中番組のリモート視聴が不要というなら、DTCP+対応NASを活用したリモート視聴も十分にお勧めできる。
とは言え、Windows PCやWindowsタブレットを利用した汎用リモート視聴対応機器の選択肢が少ないのは寂しい限りだ。検証作業の難しさもあって、特に民生用録画機器を販売するメーカーがなかなか手を付けられない側面もあるとは思うが、AndroidやiOSデバイスだけでなく、Windows PCにもより注力してもらいたい。
さて、4回に渡ってリモート視聴について紹介してきたが、特に今年(2014年)に入ってデジタル放送のリモート視聴を実現するためのハードルが大きく下がり、かなり手軽に実現できるようになっていることがお分かりいただけたのではないだろうか。
これから年末にかけて、帰省や旅行を予定している読者も多いと思うが、機材の調達から設定まで、これからでもまだ十分に間に合う。ぜひとも旅先でのリモート視聴を楽しんでみてもらいたい。