1カ月集中講座
旅先でも困らないリモートTV視聴を手にする 第2回
~NexTV-F準拠のnasneやレグザサーバーで環境構築
(2014/12/20 06:00)
前回は、デジタルTV放送のリモート視聴を実現する規格や必要となる機材などについて解説した。第2回からは実践編として、デジタルTV放送のリモート視聴が可能な機器を用意し、実際にリモート視聴を行なうまでの手順などを紹介していく。今回は、次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)が定めた「デジタル放送受信機におけるリモート視聴要件(NEXTVF TR-0001)」に準拠する製品を利用したリモート視聴の手順を解説する。
「デジタル放送受信機におけるリモート視聴要件」に準拠する機器を用意
「デジタル放送受信機におけるリモート視聴要件(NEXTVF TR-0001)」(以下、NexTV-F)準拠のリモート視聴を実現するには、第1回で紹介したように、NexTV-Fに準拠する録画機器と、対応するクライアントソフト、そして対応クライアントソフトを実行できるPCや携帯機器が必要となる。このうち、2014年12月上旬現在でNexTV-Fに準拠する録画機器は、表にまとめた通りとなっている。
サービス名称 | 対応機器(レコーダ) | 対応機器(TV) | |
---|---|---|---|
シャープ | 外からリモート視聴 | BD-T3600 BD-T2600 BD-T1650 BD-W2600 BD-W1600 BD-W560 BD-W560SW BD-S560 | なし |
ソニー | 外からどこでも視聴 | BDZ-ET2200 ET1200 EW1200 EW520 BDZ-ET2100 ET1100 EW1100 EW510 E510(録画番組のみ対応) nasne CECH-ZNR2J nasne CECH-ZNR1J | なし |
東芝 | おでかけいつでも視聴 | DBR-T560 DBR-T550 D-M470 D-M430 DBR-Z520 DBR-Z510 | なし |
パナソニック | 外からどこでもスマホで視聴 | BRZ2000 BRZ1000 BRW1000 BRW500 BRS500* BXT970* BXT870* BZT665 BZT9600 BZT860 BZT760 BWT660 BWT560 BRT260* (*一部制限あり) | AX900 AX900F AX700 AX800 AX800F AS800 AS650 |
表を見ると分かる通り、NexTV-F対応の録画機器は、シャープ、ソニー(ソニー・コンピュータエンタテインメント含む)、東芝、パナソニックから発売されている。NexTV-F策定が2014年2月ということもあり、多くがそれ以降に発売された製品だ。それ以前に発売された製品でもファームウェアのアップデートによって対応する製品が存在しているが、基本的には比較的新しい製品でのサポートになると考えた方がいいだろう。また、対応機種でもリモート視聴に関していくつか制限がある製品も存在している。このあたりの対応製品に関する詳細は、各メーカーのホームページで確認してほしい。
なお、ソニーのE510と、東芝製の録画機器に関しては、リモート視聴できるのは録画番組のみで、放送中番組のリモート視聴には対応しない。
当然だが、NexTV-F非対応の録画機器では、NexTV-F準拠でのリモート視聴は不可能となる。ただ、次回紹介する予定のDTCP+準拠の製品と連携させることで、NexTV-F非対応の録画機器で録画した番組のリモート視聴は実現可能となる場合が多い。そのため、録画番組のリモート視聴が目的であれば、NexTV-F対応機器へ買い換えが必須というわけではない。
【お詫びと訂正】初出時、表中の東芝製品の型番に誤りがありましたので修正しました。お詫びして訂正いたします。
リモート視聴用のモバイル機器と専用クライアントソフトを用意
次に、リモート視聴を行なうモバイル機器と視聴用クライアントソフトを用意する。
先ほど紹介したNexTV-F対応録画機器と連携してリモート視聴が行なえるモバイル機器としては、Androidベースのスマートフォンやタブレット、iPhone、iPadが中心となる。機器によっては、WindowsベースのノートPCやタブレットを利用したリモート視聴も行なえる。ただし、全てのモバイル機器が利用できるわけではなく、リモート視聴用クライアントソフトが利用できるものに限られる。
表2は、録画機器のメーカーごとに利用できるリモート視聴用クライアントソフトをまとめたものだ。これを見ると分かるように、利用できるリモート視聴用クライアントソフトは、基本的に録画機器メーカーごとに異なる専用ソフトとなっている上、ほかのメーカーの録画機器との連携も基本的に行なえない。つまり、特定メーカー内で完結する仕様となっており、汎用性はない。異なるメーカーの録画機器を1つのクライアントソフトでリモート視聴できると便利なのだが、現時点では基本的に不可能だ。
例外となるのは、シャープと東芝の録画機器用として用意されているiOS向けリモート視聴用クライアントソフトで、双方ともデジオンの「DiXiM Digital TV for iOS」を採用している。これによって、シャープと東芝の録画機器に関しては、iPhone、iPadを利用したリモート視聴が同一のクライアントソフトで行なえる。
リモート視聴用アプリ | リモート視聴時の画質 | |
---|---|---|
シャープ | ・Windows:なし ・Android:AQUOSリモートプレーヤー(Android 4.1以上、1,500円) ・iOS:DiXiM Digital TV for iOS(iOS 7.0.4以上、1,000円)+宅外視聴プレミアムアドオン(500円) | (ビットレートは非公開) 7GBで視聴可能な時間 リモート用高画質:約5時間11分 リモート用中画質:約14時間08分 リモート用低画質:約31時間06分 |
ソニー | ・Windows:なし ・Android:TV SideView(Android 4.0.3以上、無料)+TV SideViewプレーヤープラグイン(500円) ・iOS:TV SideView(iOS 7.0以上、無料)+TV SideViewプレーヤープラグイン(500円) | ・レコーダー (ビットレートは非公開) 1時間視聴時のデータ通信容量 720p:1時間で1.47GB [VGA2.0M](360p): 1時間で約980MB 360p:1時間で567MB [VGA1.0M](360p): 1時間で約510MB [QVGA768k](180p): 1時間で約440MB 180p:1時間で279MB [QVGA384k](180p): 1時間で約255MB ・nasne 画質優先(480p、2Mbps) 速度優先(480p、1Mbps) |
東芝 | ・Windows:TVコネクトスイート(dynabook、dynabook Tabでのみ利用可能、無料) ・Android:DiXiM Play for REGZA(Android 4.1以上、1,300円) ・iOS:DiXiM Digital TV for iOS(iOS 7.0.4以上、1,000円)+宅外視聴プレミアムアドオン(500円) | 720p、12Mbps 720p、8Mbps 720p、6Mbps 720p、4Mbps 720p、2.4Mbps 360p、1.5Mbps 240p、1.0Mbps 240p、0.6Mbps |
パナソニック | ・Windows:なし ・Android:Panasonic Media Access(Android 4.0.3以上、無料) ・iOS:Panasonic Media Access(iOS 7.0以上、無料) | 最高画質(720p、3.5Mbps) 高画質(720p、1.5Mbps) 標準画質(360p、650Kbps、非対応機種あり) 通信優先(180p、400Kbps) |
リモート視聴用クライアントソフトの動作環境については、Android用リモート視聴用クライアントソフトは、Android 4.0.1以上、またはAndroid 4.3以上で動作するものが中心。また、iPhoneやiPadではiOS 7以降での対応が中心となる。そのため、対応しないOSを搭載する端末でのリモート視聴は不可能だ。ただし、対応OS搭載でも、端末の仕様によって利用できない場合がある。2014年に登場したスマートフォンでも非対応の場合があるため、対応有無は事前に必ず確認しておきたい。端末ごとの対応有無は、各メーカーのホームページに記載されているため、そちらで確認してほしい。
Android端末やiOS端末に対し、Windows PCでのリモート視聴環境の構築はかなり難しい。多くのメーカーがWindows向けのリモート視聴対応クライアントソフトを用意しておらず、汎用のクライアントソフトも存在しないためだ。
唯一、東芝がWindows 8/8.1用のリモート視聴対応クライアントソフトを用意しているが、動作するのは東芝製PCであるdynabookおよびdynabook Tabシリーズのみとなるため、利用できるユーザーは限られてしまう。
また、NEC製のPCにもNexTV-F準拠のリモート視聴対応クライアントソフトが用意されているが、こちらもNEC製PC以外では利用できず、さらに表1で紹介している録画機器を親機としたリモート視聴も行なえない。
このように、PCでのリモート視聴の実現はAndroid端末やiOS端末に比べてかなりハードルが高いと言える。それでも、PCを利用したリモート視聴の方法はいくつかあるので、それについては次回以降で取り上げることにする。
自宅とモバイル機器双方の通信環境も重要
リモート視聴時の画質は、メーカーによって異なっているが、基本的には放送時の画質そのままで視聴できるわけではなく、720p以下のフォーマットに再変換された映像での視聴となる。ただ、画面の小さなスマートフォンであれば、画質の低下もそれほど気にならない。大画面のタブレットでは実際の放送時と比べて画質低下が気になる場合もあるが、ある程度ビットレートが高ければ、それほど不満は感じない。
ビットレートも、メーカーによって異なっている。東芝は最大12Mbpsとかなりの高ビットレートでのリモート視聴が可能だが、そのほかのメーカーは最大3Mbps前後となっている。高ビットレートほど画質は高まるが、データ通信量は多くなる。また、高ビットレートほど安定して高速なデータ通信速度が発揮される回線が不可欠となる。そのため、リモート視聴時に利用するデータ通信サービスの速度や、容量制限などのプランに応じてビットレートを変更すべきだろう。
例えば、1カ月あたり最大7GBの定量制となっているLTEデータ通信プランを利用している場合、高ビットレートのリモート視聴を行なうと数時間で容量の上限に達してしまう。しかし、低ビットレートに設定しておけば20時間以上の視聴が可能だ。
ただ、WiMAXや公衆無線LAN、滞在先の無線LANなど容量無制限で比較的高速なデータ通信サービスを利用する場合には、データ転送容量を気にせず視聴できる。電車や車での移動中では公衆無線LANサービスの利用は難しいが、容量無制限のデータ通信サービスが利用できる状況であれば積極的に活用したい。
そして、もう1つ重要となるのが、録画機器を設置している自宅の通信環境だ。自宅の録画機器から外出先のモバイル機器へ映像データを送信することになるため、当然自宅のインターネット接続環境にも十分な速度が不可欠となる。それも、受信(下り)ではなく送信(上り)の速度が重要だ。
通常、自宅で利用するインターネット接続回線は、下りが高速なのに対し上りは速度が遅い場合がほとんどだ。例えば、ADSLの場合、下りが10Mbps以上の速度なのに対し、上りは3Mbps以下という場合も少なくない。自宅のインターネット接続回線の上り速度が遅いと、いくらモバイル端末側の通信速度が高速でも安定したリモート視聴は不可能。そのため、リモート視聴を行なう場合には、自宅の通信回線もなるべく上り速度が速いプランを利用するか、可能であれば光回線を利用するようにしたい。
自宅でペアリングすればリモート視聴が可能に
では、実際のリモート視聴実現までの設定手順を紹介しよう。今回は、ソニー(ソニー・コンピュータエンタテインメント)の「CECH-ZNR1J(nasne)」を利用した場合と、東芝の「レグザサーバー DBR-T560」を利用した場合の手順を紹介する。なお、リモート視聴に利用する携帯端末は、双方ともAndroid端末を利用している。
nasne
nasneでリモート視聴を実現するには、nasneのファームウェアがVer.2.50以上であることが必要なため、アップデートがまだの場合には済ませておこう。ここでは、nasneが家庭内のLANに接続され、ファームウェアのアップデートも終了しているとして進めていく。
必要となる作業は、それほど面倒ではない。nasneの本体側の設定は特に変更する部分はなく、リモート視聴を行なう携帯端末側での設定のみが必要となる。まず、リモート視聴を行なう携帯端末に、リモート視聴対応クライアントソフトである「TV SideView」と「TV SideViewプレーヤープラグイン」をGoogle Playからインストールする。
次に、その携帯端末を無線LANなどを利用してnasneと同一のLANに接続してTV SideViewを起動。TV SideViewを初めて起動すると機器登録のメニューが表示されるので、「機器登録」ボタンをタップする。すると、ネットワーク上のnasneが検出されるので、nasneのアイコンをタップし機器登録する。さらに、外出先視聴に関するダイアログが表示されるので、「はい」をタップ。その後、リモート視聴時の画質を設定すれば設定作業は完了となる。これで、外出先からもnasneに接続して放送中番組や録画番組のリモート視聴が可能となる。
レグザサーバー DBR-T560
DBR-T560は、出荷時からリモート視聴に対応しているため、ファームウェアアップデートなどの作業は不要。また、リモート視聴の設定は携帯端末側だけで済み、DBR-T560本体側の設定は不要だ。なお、ここではDBR-T560がすでに家庭内のLANに接続されているとして進めていく。
設定作業はnasneの場合同様に非常に簡単だ。まず、リモート視聴を行なう携帯端末に、リモート視聴対応クライアントソフト「DiXiM Play for REGZA」をGoogle Playからインストールする。次に、その携帯端末を無線LANなどを利用してDBR-T560と同一のLANに接続してDiXiM Player for REGZAを起動。すると、DBR-T560が見つかるので、DBR-T560のアイコンをタップした後、「利用規約に同意する」にチェックを入れて「登録」ボタンをタップする。そして、「DBR-T560がリモートサーバーとして登録されました」というメッセージが表示されたら設定は完了だ。
ところで、録画機器とリモート視聴用携帯端末のペアリングは、最大3カ月間保持され、3カ月経過するとペアリングが解消される。ただ、自宅のLANに接続してクライアントソフトを起動して録画機器に接続すれば、同時にペアリングも行なわれ、ペアリング期間もリセットされる。そのため、外出先だけでなく自宅でも携帯端末を利用したリモート視聴を日常的もしくは定期的に行なっていれば、ペアリング期間を意識する必要はほぼないと言える。
しかし、3カ月を超える長期間の出張先などでリモート視聴したい場合には、ペアリング期間の更新が行なえず、視聴不可能となってしまう。この点こそ、NexTV-Fの最大の欠点と言える。将来の規格改訂で解消される可能性はゼロではないと思うが、現時点ではこの点を考慮したうえでの運用が求められる。
リモート視聴対象外のチャンネルが存在する
録画機器とリモート視聴用携帯端末のペアリングが完了していれば、リモート視聴は非常に簡単だ。外出先でリモート視聴対応クライアントソフトを起動し、親機に接続して見たい番組を選択するだけでいい。
nasne
nasneの場合は、TV SideViewを起動し、画面左端からのスワイプで開くメニューから番組表または録画番組を選択して行なう。現在放送中の番組をリモート視聴する場合は、番組表から番組を選択し、画面下の「リモート視聴」の横にある再生ボタンをタップするだけだ。また、録画番組のリモート視聴は、同じく左スワイプで開くメニューから「録画番組」を選択すると、ペアリングしたnasneで録画した番組が一覧表示されるので、その中から見たい番組を選択し、同じく画面下の「リモート視聴」の横にある再生ボタンをタップするだけだ。
レグザサーバー DBR-T560
DBR-T560の場合は、DiXiM Player for REGZAを起動し、左上の「DM」アイコンをタップして開くメニューから、「リモートサーバー」をタップする。そして、ペアリングしたDBR-T560をタップすると、DBR-T560に接続され、録画番組が選択できるようになる。あとは、見たい録画番組を選択してタップするだけだ。なお、DBR-T560のリモート視聴は録画番組のみで、放送中番組のリモート視聴は不可能。この点は今後の改善を期待したい。
ところで、放送中番組のリモート視聴に関しては、一部制限がある。それは、リモート視聴対象外のチャンネルがいくつか存在しているという点だ。以下に示すチャンネルの放送中番組をリモート視聴しようとしても、「視聴できません」という旨のメッセージが表示され、視聴は行なえない。
ただし、これらチャンネルでも録画番組はリモート視聴が可能だ。そのため、これらチャンネルの番組をリモート視聴したいなら、番組を録画した上で行なえばよい。
地上デジタル放送 | なし |
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次回は、DTCP+対応の周辺機器を利用したリモート視聴について紹介する。