イベントレポート
Adobe、新しいモバイルアプリ、CCデスクトップアプリのタッチ機能拡張などを発表
(2015/10/5 22:00)
Adobe Systems(以下Adobe)は、同社が10月3日(現地時間)より開催中で、10月5日午前9時半に基調講演が行なわれるクリエイター向けのカンファレンス「Adobe MAX 2015」での発表の概要を明らかにした。
Adobe MAXは、Adobeが毎年クリエイター向けに開催しているカンファレンスで、同社が推進しているサブスクリプション型のクリエイターツール「Creative Cloud」(以下CC)の新しいソリューションなどについての発表が行なわれているほか、Adobeのソフトウェア開発者とクリエイターとの交流の場としても活用されている。
今回Adobeは、昨年(2014年)に引き続きCreative Cloudに各種の機能を拡張を行なうことを明らかにした。具体的には新しいモバイルアプリとして「Photoshop Fix」と「Capture CC」の提供を開始するほか、「Photoshop CC」、「Illustrator CC」、「Premiere Pro CC」などのデスクトップアプリケーションのタッチ対応を拡大する。
また、CCの最大の特徴と言える、クラウド同期ツール「CreativeSync」の機能拡張として、今年(2015年)の6月から提供を開始しているAdobe Stock(コンテンツマーケット)でビデオコンテンツのダウンロードおよび購入が可能になる。
クリエイター向けのカンファレンスとして毎年秋頃に開催されているAdobe MAX
Adobe MAXは、例年秋頃に行なわれているクリエイター向けのカンファレンスで、主にAdobeのツールを利用してコンテンツを作成するクリエイターを対象にして行なわれている。ここ近年ではAdobeが強力に推進しているクラウドベースのクリエイターツール「Adobe CC」に関する新しいソリューションを発表する場として利用されたり、クリエイターがAdobeのソフトウェアエンジニアと直接対話する機会が用意されるなど、Adobeとクリエイター、そしてクリエイター同士の交流の場としても活用されている。Adobeによれば今回のAdobe MAXは過去最高規模になっており、実に全世界から約7千人のもクリエイターが参加する予定になっている。
Adobe MAX 2015は、10月3日から始まっているが、10月3日と10月4日はいずれもプレカンファレンスと呼ばれる、CCの教育コースなどが行なわれている。本格的なイベントの開始は、10月5日午前9時半にメイン会場となるLos Angeles Convention Center(LACC)に隣接するMicrosoft Theaterで行なわれる基調講演からとなっている。この基調講演には、CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏、デジタルメディア担当上席副社長 デイビッド・ワドワーニ氏というAdobeの幹部が登壇して、今後のAdobeのクリエイター向けソリューションについて語ることになる。
また、2日目となる10月6日午前10時からは映画監督のバズ・ラーマン氏、Humans of New Yorkの創設者で写真家のブランドン・スタントン氏、Illustratorのマイラ・カルマン氏、アーチスト兼デザイナーのエル・ルナ氏などが登壇する予定となっており、こちらはクリエイターにフォーカスした内容になりそうだ。
CCにより、単なるアプリケーションから総合的なクリエイターソリューションへ
基調講演が行なわれるのに先立ち、10月5日の朝に、Adobe MAX 2015で発表される予定の新しいCCの新ソリューションに関する発表を行なった。主な内容は後述するが、Adobeが近年力を入れているクラウドベースのCCに関する発表が主な内容になる。
多くの読者にとってAdobeと言えば、PhotoshopやPremiere Proと言った写真や動画を編集するツールをリリースするソフトウェアベンダーとして認識されているだろう。Adobeは近年ビジネスの主軸を、従来のような永続的なライセンスを販売する方式から、月額課金のようなサブスクリプション型へと転換を図っている。そのAdobeがクリエイター向けに提供するサブスクリプション型のライセンスがCCで、全てのツールが利用できるコンプリートプラン、フォトグラファー向けにPhotoshopとLightroomだけをセットにしたフォトグラフィプラン、あるツールだけの単体プランなどが用意されており、クリエイターが自分の目的に応じて契約できるようになっている。Adobeによれば2015年8月時点でグローバルに533万人が利用しているとのことだ。
CCの特徴は、単にPhotoshopやPremiere Proが月額料金で利用できるようになっただけでなく、クラウドの機能を積極的に活用していることだ。CCを契約したユーザーは、PhotoshopやPremiere Proなどのデスクトップアプリケーションと一緒に、CreativeSyncと呼ばれる同期ツールを利用できるようになる。CreativeSyncが、クラウドとPC間の同期を行ない、複数のPCに導入されているデスクトップアプリ間でファイルやフォントなどの同期を行なったり、ほかのユーザーとコンテンツを共有したり、自分のコンテンツをほかのユーザーに提供して流通させたりできる。
また、近年のCCでは、モバイル機器(iPhone、Androidなど)向けのツールを多数提供されており、それらのモバイルアプリからデスクトップアプリにデータを渡したりという時にも、CreativeSyncが利用される。Adobeとしては、このようにクラウドを活用することで、従来の単なるデスクトップアプリケーションから、総合的なソリューションとしてクリエイターに提供する、これがCCの狙いとなっている。
新しいモバイルアプリケーションやデスクトップアプリの新機能などが発表される
Adobeが今回Adobe MAX 2015で発表する内容は、いずれもこのCCの拡張となる。大きく分けると、モバイルアプリに関する拡張、デスクトップアプリに関する拡張、コミュニティサービスに関する拡張の3つだ。
モバイルアプリの拡張に関しては、既にリリース済みのPhotoshop Mix、Photoshop Sketch、Illustrator Draw、Comp CC、Premiere Clipなどのモバイルアプリケーションのアップデートバージョンを提供していくと明らかにした。従来はできなかったモバイルアプリからモバイルアプリへのコンテンツ共有なども、今回のバージョンアップで可能になる。
また、今回新たに2つの新しいモバイルアプリを提供する。1つはPhotoshop Fixで、写真レタッチや修正をタッチで行なえるほか、カラー、ペイント、補正、ぼけツールなどで編集を行なうことができる。また、より詳細な編集を行なうために、画像を直接デスクトップアプリのPhotoshop CCに転送できる。当初はiOS向け(iPad、iPhone)のみに対応するが、2016年前半にはAndroidにも対応予定だ。
もう1つの新しいアプリはCapture CCで、従来提供されてきたBrush CC、Color CC、Hue CC、Shape CCを1つにまとめたモバイルアプリになる。分かりやすく言えば、Adobe純正のカメラアプリのようなもので、クリエイターがこのCapture CCを利用してキャプチャすれば、ブラシ機能を利用して編集したり、CreativeSyncを通じてデスクトップアプリと連携させることが可能になる。
いずれのモバイルアプリも即日リリースされる予定で、Creative Cloudのサブスクリプション契約をしていれば、iOSやAndroidなどのアプリストアからダウンロードしてアカウントを入力することで利用することができる。
デスクトップアプリケーションの拡張では、Photoshop CC、Premiere Pro CC、Illustrator CC、InDesign CCのデスクトップアプリにタッチ対応機能が追加拡張される。また、Premiere Pro CCで4K動画、HDR型式へのネイティブサポートが追加される。Creative Cloudフォトグラフィプラン(Lightroom CC+Photoshop CCのプラン)も拡張され、Photoshop CCとLightroom CCにタッチ機能の機能拡張が加えられるほか、Lightroom CCには写真キャプチャ機能とかすみの除去機能が追加される。なお、デスクトップアプリに関してはLightroom CCのみが即日アップデートされ、それ以外に関しては11月中のアップデートとなる予定だ。
コミュニティ機能の拡張では、Adobe Stockの拡張とAdobe Portfolioが新たに導入される。Adobe Stockは今年の6月に導入された、Creative Cloudのツールから検索してコンテンツのダウンロードや購入ができるサービス。従来は静止画のみの対応となっているが、今回のAdobe MAX 2015ではビデオコンテンツへの対応が発表される。
また、Adobe Portfolioは、クリエイターが自分の活動などを紹介するWebサイト(ポートフォーリオサイトと呼ばれる)を制作する時に使えるツールで、難しいコーディングなどを知らなくてもサイトを制作できる。世界最大のクリエイティブソーシャルプラットフォームの「Behance」がベースになっており、クリエイターがより容易に自分の作品を披露することを助けるツールとなる。Adobe Stockのビデオコンテンツへの対応やAdobe Portfolioは年末までに提供が開始される予定だ。
これらの発表は、Adobe MAX 2015の基調講演やセッションなどで紹介される予定になっている。今回PC WatchではこのAdobe MAX 2015を取材していくので、随時レポートなどを掲載していく予定だ。
なお、日本法人であるアドビシステムズ株式会社では、基調講演の模様を日本のアドビ社員による解説とともに再放送するUstream放送「Adobe MAX 2015基調講演プレイバック!」を、10月6日(火)21時~23時に開催する予定だ。視聴するには登録などが必要になるため、同イベントのWebサイトを参照して欲しい。