Intelは、2011 International CESの会場において記者会見を開催し、開発コードネーム“Sandy Bridge”で呼ばれてきた第2世代Coreプロセッサ・ファミリーを正式に発表した。この中で同社の社長兼CEOのポール・オッテリーニ氏は「Sandy Bridgeは数十億ドルの売り上げをPC業界にもたらし、その売り上げはIntel全体の3分の1に相当するだろう」と述べ、Sandy Bridgeの成功は間違いないと自信を見せた。
また、ハリウッドのスタジオ(コンテンツ企業)がゲストスピーカーとして呼ばれ、PC向けHDコンテンツをネット配信するプラットフォームとなる“Intel Insider”に、ハリウッドの複数のスタジオがコンテンツを供給することを明らかにした。
記者会見後に、Intelの幹部は第2世代Coreプロセッサ・ファミリーの販売計画を明らかにし、クアッドコア版は1月9日に、デュアルコア版は2月に、ULV版のモバイルデュアルコアは3月に販売を開始する予定であることを明らかにした。
●Sandy Bridgeは売り上げの3分の1を占める重要な製品に第2世代Coreプロセッサ・ファミリーに対応した製品を開発しているOEMメーカー、ソフトウェアベンダ、コンテンツホルダーなどを紹介 |
Intelのオッテリーニ社長兼CEOは、冒頭でIntelのビジネスの現状について説明した。「Atomベースのネットブックは依然として堅調なニーズに支えられている。また、スマートTVやセットトップボックスなどの新しいビジネスも順調に立ち上がっている。さらに、Xeonなどのサーバー向けプロセッサはIntelの歴史の中でもかつて無いぐらい急速に成長している」と述べ、まずはIntelのビジネスが例年通り順調であることを強調した。
今年のCESの1つのテーマである、スマートフォンやタブレットデバイス向けのプロセッサに関しては「CESでは新しい発表はしない。これらに関しては2月にバルセロナで行なわれるMobile World Congressの話題になるだろう」とし、新しいスマートフォン向けプラットフォームである“Medfield”(メドフィールド)、タブレットデバイス向けのプラットフォームである“Oak Trail”(オークトレイル)などに関しての発表時期を示唆した。
また、オッテリーニ氏はMicrosoftとの関係に関しても言及し、「我々はマイクロソフトとの密接な協力関係を続けており、Windows 7や今後リリースされるWindows 8に関しても協力している」と述べ、次世代WindowsにおけるARMサポートを意識した発言も注目を集めた。
オッテリーニ氏は、同日に発表した新プロセッサとなる開発コードネームSandy Bridgeこと第2世代Coreプロセッサ・ファミリーについて触れ「私は担当者として80286の時代からさまざまな発表に携わってきたが、今回のSandy Bridgeほど重要な製品はない」とし、Intelにとって新製品が重要な位置づけであることを強調した。「Sandy Bridgeは数十億ドルの売り上げをPC業界にもたらし、その売り上げはIntel全体の3分の1に相当するだろう」と成功の自信を見せた。
●ノートPCへの需要は引き続き強いと、Intelのイーデン副社長
その後、オッテリーニ氏は第2世代Coreプロセッサ・ファミリーの製品事業部 本部長であるムーリー・イーデン副社長に交代し、第2世代Coreプロセッサ・ファミリーの特徴についての解説が行なわれた。
イーデン氏は「2000年にはPC全体の出荷数のうち企業向けが71%で、一般消費者向けは29%に過ぎなかった。しかし、2010年にはそれが完全に逆転している。つまり、今は市場を決定づけているのは一般消費者だ。そしてその一般消費者に調査をしてみると、ノートPCは3年連続で購入したい製品のトップにある」と述べ、一般消費者がスマートフォンやタブレットへの興味が高まっているにもかかわらず、依然としてノートPCを購入したいと望んでいると指摘した。
第2世代Coreプロセッサ・ファミリーについて、イーデン氏は「Sandy Bridgeは最大で4つのコア、強力なGPU、L3キャッシュ、システムコントローラなどがすべて1つのダイに統合されており、強力な製品になる。そして、Intelの最先端の32nmプロセスルールで製造されており、高い性能を誇っている」とし、高い処理能力をアピールした。
その証明としてイーデン氏が示したのが、1年前のCore i7-840QM、3年前のCore 2 Duo T7250と、Core i7-2720QMとの比較データ。1年前のCore i7-840QMではExcelの金融シミュレーションで69%、写真編集ソフトのスライドショー作成で62%も処理能力が向上し、3年前のCore 2 Duo T7250との比較では、Excelの金融シミュレーションで831%、写真編集ソフトのスライドショー作成で333%も処理能力が向上したといい、その高速さをアピールした。そして、実際にCineBench R11.5、写真の編集ソフトウェアを利用した比較を実際にデモし、第2世代Coreプロセッサ・ファミリーが最も高速に処理が終わる様子を紹介した。
●Sandy Bridgeの内蔵GPUは、市場にある40%の単体GPUを凌駕する性能を発揮
そしてイーデン氏は、第2世代Coreプロセッサ・ファミリーの最大の特徴である、オンダイになった統合型GPUに関する説明を行なった。従来の2010年Coreプロセッサ・ファミリーでは、統合型GPUは、オフダイ、つまり別のダイとして生産され、CPUのパッケージに封入される段階で基板上で接合されるという形をとっていた。製造プロセスルールも、プロセッサ(32nmプロセスルール)より一世代前の45nmプロセスルールで製造されており、性能も従来製品と大きく変わることはなかった。これに対して第2世代Coreプロセッサ・ファミリーでは、GPUが完全にプロセッサに統合されたオンダイになっており、処理能力が従来製品に比べて大幅に向上しているのだ。
イーデン氏は第2世代Coreプロセッサ・ファミリーのGPUを「2006年の内蔵GPUに比べて性能が25倍になっている。我々の統合型GPUは、40%の単体型GPUの性能を凌駕していると信じている」と説明し、現在市場にあるローエンドからミドルレンジクラスの単体型GPUを十分上回る性能があるとアピールした。
そして壇上にはPCゲームを開発するソフトウェアベンダーの代表者を呼び、内蔵GPUの性能があがることでPCゲーム市場へのニーズが高まる事への期待などが語られたほか、Sandy Bridgeの内蔵GPUの固定エンコーダ機能(Intel Quick Sync Video Technology)のデモを行ない、2010年のCPU+単体GPUの環境に比べても、高速にエンコードすることができる様子などがデモされた。
内蔵GPUの性能の進化。2006年の内蔵GPUに比べて25倍の性能向上 | PCゲームの開発者が壇上に呼ばれ、内蔵GPUの進化でPCゲーム市場の拡大への期待が語られた | Quick Sync Videoを利用したエンコードの比較。昨年(2010年)のCPU+単体型GPUの組み合わせは終わっていないが、第2世代Coreプロセッサはすでに終わっている |
●米国、西欧、インドで新しいコンテンツ配信プラットフォームIntel Insiderを展開
最後にイーデン氏は、新しい取り組みとなる“Intel Insider”に関する発表を行なった。Intel Insiderは、第2世代Coreプロセッサ・ファミリー向けのコンテンツ配信プラットフォームで、ハードウェアを利用することでセキュアに(つまりインターネットなどに流出させたりすることがなく)コンテンツを配信することができる仕組みだ。
壇上にはハリウッドのメジャースタジオの1つであるワーナーブラザーズ ホームエンターテイメント事業部 事業部長のケビン・ツジハラ氏が呼ばれ、Intel Insiderに関する期待が語られた。ツジハラ氏は「これまでPC向けにコンテンツを配信する際にはコンテンツの流出などの心配があったが、Intel Insiderを利用することでコンテンツホルダーは安心して配信できるので、新しいビジネスチャンスになると考えている」と期待を表明し、今後Intel Insider向けに多数のコンテンツを配信していくと表明した。ツジハラ氏によれば、サービス開始時にはSD解像度でのコンテンツの配信になるが、今年中にはHDコンテンツの配信が開始される見通しだという。
なお、Intelの発表によれば、Intel Insiderのサービスは、米国、西欧、インドで今年に開始される予定であり、それ以外の地域でのサービスに関しては何も発表がなかった。
Intel Insiderはハードウェアの機能を利用してコンテンツをセキュアに配信することができる仕組み | ワーナーブラザーズ ホームエンターテイメント事業部 事業部長 ケビン・ツジハラ氏は、Intel Insiderへの期待を表明 |
●クアッドコアが1月9日に販売開始、デュアルコアは2月に発売開始
なお、第2世代Coreプロセッサ・ファミリーはすでにOEM向けの出荷が開始されており、まもなく販売が開始される。
Intel モバイル製品事業部 事業部長のカレン・レジス氏によれば「第2世代Coreプロセッサ・ファミリーはまずクアッドコア製品が1月9日に販売開始され、デュアルコアは2月に入ってからとなる。クアッドコアがまず出荷され、その後デュアルコアという状況は、前世代と同じだ」という。なお、デスクトップとノートは同時期とした。
また、レジス氏によれば薄型ノートPC向けの超低電圧版(ULV版)のデュアルコア製品は、標準電圧版(SV版)の1カ月後、つまり3月頃に投入という予定であり、さらにいわゆるCULV版に関しては、今年の半ば、夏頃に市場に投入される予定だとのことだ。
(2011年 1月 7日)
[Reported by 笠原 一輝]