福田昭のセミコン業界最前線

ルネサスの設計開発部門再編が本格的に始まる

 国内最大の半導体専業メーカー、ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)の事業再編成が第2段階に入った。第1段階とは、生産部門の再編成である。2014年4月1日付けで生産部門と生産関係会社群を子会社2社に統合したことで、生産部門の再編成は一段落した。

設計開発部門を機能別に整理

 続く第2段階が、設計開発部門の再編成である。2014年7月9日にルネサスは、「設計・開発体制の強化に向けた設計・開発機能の再編について」と題したリリースを発表した。発表リリースによると、同年8月1日付けで、関係会社を含めて機能別に3つのレイヤーに、設計開発部門を再編成する。

 3つの機能別レイヤーとは、「キット開発やプラットフォーム開発、用途別ソリューション開発」のレイヤーと、「デバイス開発と共通ソリューション開発」のレイヤー、「開発支援業務」のレイヤーである。従来は、ルネサス本体がこれらのレイヤー全ての機能を有し、設計開発関係会社のルネサスソリューションズ(略称:RSO)が前2つの機能を備えており、同じく関係会社のルネサスシステムデザイン(略称:RSD)が「デバイス開発と共通ソリューション開発」のレイヤー、ルネサスエンジニアリングサービス(略称:REG)が「開発支援業務」のレイヤーを担っていた。お互いが複雑に入り組んでいた。この重複を、再編成によって解消する。

 具体的には、「キット開発やプラットフォーム開発、用途別ソリューション開発」をルネサス本体に集約し、「デバイス開発と共通ソリューション開発」を関係会社のルネサスシステムデザインにまとめ、「開発支援業務」を関係会社のルネサスエンジニアリングサービスに集約する。残る関係会社のルネサスソリューションズは、プラットフォーム開発機能や用途別ソリューション開発機能などをルネサス本体に移管するとともに、デバイス開発機能と共通ソリューション開発機能をルネサスシステムデザインに移管することで、事実上は消滅する模様だ。

再編成前の設計開発部門の状況と再編成の概要
再編成後(2014年8月1日時点)の設計開発部門における機能分担
再編成される関係会社の1つ、「ルネサスソリューションズ(RSO)」の概要(文中敬称略)
ルネサスソリューションズ(RSO)の主な拠点。東京、横浜、大阪に拠点を有する
再編成される関係会社の1つ、「ルネサスシステムデザイン(RSD)」の概要(文中敬称略)
ルネサスシステムデザイン(RSD)の主な拠点。横浜、北伊丹、玉川、武蔵、高崎に拠点を有する
再編成される関係会社の1つ、「ルネサスエンジニアリングサービス(REG)」の概要(文中敬称略)
ルネサスエンジニアリングサービス(REG)の主な拠点。武蔵、北伊丹、高崎、玉川、相模原、甲府に拠点を有する
8月1日付けで予定されている主な人事異動(文中敬称略)

今年2回目の早期退職優遇制度の背後にあるもの

 そして同日、早期退職優遇制度を実施することもルネサスは発表した。ルネサスが早期退職優遇制度を実施するのは、今回が第5回目、今年(2014年)では第2回目に相当する。退職日は9月30日である。対象者は、今回の設計開発部門の再編成により、高崎地区に転勤となる従業員だとする。

7月9日に公表した早期退職優遇制度(第五回)の概要。発表リリースの内容だけを抜粋した

 発表リリースでは、募集人員を定めていない。ただし、一部報道によると設計開発部門はルネサス本体が約3,350名、RSOが約700名、RSDが約1,300名、REGが約550名であり、その中で早期退職優遇制度の対象となるのは約800名だとする。その主力は東京地区と神奈川地区から、高崎地区に異動になる従業員だという。

 先に説明したように、RSDとREGで勤務地が変更になる従業員は原則、ゼロだと考えられる。勤務地の変更があるのはルネサス本体からRSDに異動する従業員、ルネサス本体からREGに異動する従業員、RSOからルネサス本体とRSDに異動する従業員である。そしてルネサス本体、RSD、REGはいずれも高崎地区に拠点を有する。

 RSOの従業員数は約700名(東京、横浜、大阪)なので、その5割が高崎地区に異動すると仮定すると、約350名である。すると残り450名がルネサス本体の東京地区および神奈川地区から高崎地区に異動することになる。ここで気になるのは、玉川事業所と相模原事業所の行方だ。

玉川事業所と相模原事業所の配置転換

 本コラムの前回で説明した、設計開発拠点の再編成に関する案の概要を再掲しよう。

 前回の本文から引用する。「2014年1月の労使協議で、設計開発拠点を再編成する案が経営陣から労働組合に提示された。具体的には玉川事業所(神奈川県川崎市、元はNECエレクトロニクス)、相模原事業所(神奈川県相模原市、元はNECエレクトロニクス)、北伊丹事業所(兵庫県伊丹市、元は三菱電機)を2015年9月までに閉鎖し、従業員を配置転換する案である。配置転換の対象となる従業員はおよそ6,000名に及ぶ」。

 前回の本文から、さらに引用する(続き)。「残る設計開発拠点は、武蔵事業所(東京都小平市、元は日立製作所)、高崎事業所(群馬県高崎市、元は日立製作所)、那珂事業所(茨城県ひたちなか市、元は日立製作所)である。例えば玉川事業所からは約2,300名が転勤対象となり、約1,600名が武蔵事業所、約500名が高崎事業所、約200名が那珂事業所へ配置されるもようだ」。

 経営側が労働組合側に2014年1月に提示した案では、玉川事業所から高崎事業所に配置転換される人数が「約500名」とある。今回の再編成で、玉川事業所と相模原事業所の閉鎖をにらんだ、設計開発部門の配置転換が始まった可能性は少なくない。また一部報道では、ルネサスが高崎地区への異動困難者を「450名前後」とコメントしている。異動困難者が数多く存在すると認識して辞令を出すのだとしたら、故意犯とも言える。

事業売却と早期退職で人員削減を積極的に進める

 ルネサスは今年(2014年)に入ってからも、人員削減を積極的に進めている。3月31日には鶴岡工場のソニーセミコンダクタへの売却が完了し、約500名が同社に移籍した。10〜12月には、合弁会社であるルネサスエスピードライバの持ち株の売却が完了する。この結果、同社の従業員である約240名がルネサスグループを離れる。

 また3月31日付けで、第4回の早期退職優遇制度によって696名が退社した。これらだけで約1,440名がルネサスグループを去ることになる。第5回の早期退職優遇制度を利用して9月30日に退社する従業員を含めれば、今年だけで2,000名を超える人員をルネサスは削減してしまう可能性が少なくない。

2014年4月〜6月におけるルネサスの主な動き
ルネサスエスピードライバの概要

ルネサス甲府工場は今年10月末に閉鎖へ

 そして今年(2014年)の10月末には、ルネサスの甲府工場が閉鎖される。この7月7日には、甲府工場の全従業員に対して配置転換先の内示があったもようだ。配置転換先は西条工場、大分工場、米沢工場、那珂工場である。

 甲府工場は一時期、液晶パネル加工会社の「グラス・ワン・テクノロジー」に譲渡する交渉が進んでいると報道されていた。しかし、交渉はあまり進展しなかったと見られる。

 甲府工場の所在地は山梨県甲斐市である。配置転換先と甲府工場の距離を見てみよう。異動先の主力とされる西条工場の所在地は愛媛県西条市。かなり遠い。大分工場は大分県中津市にあり、さらに遠い。そして甲府工場が前工程工場であるのに対し、大分工場は後工程工場である。業務内容が大きく変わると予想される。米沢工場は山形県米沢市にあるので、大分工場に比べれば、甲府工場に近い。ただし米沢工場も後工程工場である。甲府工場に最も近くてなおかつ前工程工場なのは茨城県ひたちなか市の那珂工場なのだが、那珂工場への配転者はあまり多くないもようだ。

ルネサス甲府工場をめぐる動き

 7月9日に公表した早期退職優遇制度の対象者を「高崎地区への配転者」に限定したのは、なぜなのだろうか。興味深いことに、この限定条件だと甲府工場の従業員は今回の早期退職優遇制度に応募できない。

 甲府工場の従業員が応募可能な早期退職優遇制度は、10月末までに新たに設けられるのだろうか。仮に早期退職優遇制度がない状態で遠距離の配置転換が実行されるとすると、ルネサスの従業員、特に甲府工場に対する扱いは、一段と厳しさを増したと見なせる。しばらくは状況を見守りたい。

(福田 昭)